名探偵と料理人   作:げんじー

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このお話は原作第42巻が元になっています。

大変遅れてしまって、申し訳ありません。活動報告やあらすじに載せたように少々立て込んでおりまして、次の投稿は6月に入ってからになります。
まあ、遅くなったのは龍斗視点以外を書いたことも理由の1つなんですが…

それではどうぞ!


第五十八話 -二元ミステリー(2/4)-

「(ははは…すっげえ自信)じゃあ、今度は8日だね。絶対優勝してね!」

「切れちゃったね。龍斗君はああ言ってたけど大丈夫かなあ?」

 

蘭が切れたパソコン画面を見ながら呟いた。前回のパティシエの時は急遽、決まって参加していたが、今回は結構前から鈴木財閥の力を借りて少しずつ準備していたから大丈夫だろ。前回から四年。どんどん美味くなってるしな。

 

「じゃあそろそろお父さんのお夕飯を作らなきゃいけないから帰るね」

「うん。もう外は暗いから気を付けてね!」

「分かってるって。私は家で応援するけど、哀ちゃんはまだ病み上がりだから遅くまで起きてちゃだめよ?それじゃあ博士、哀ちゃん。またね」

「…またね」

「気を付けて帰るのじゃよ」

 

蘭はそう言うと地下室へと降りて行った……ん?

 

「メール?龍斗から?……!!」

「どうしたの?工藤君?」

 

『新ちゃん、博士の家に盗聴器あり。除去まかせる』だと!?()()()()そうだったのか!?だがいつだ?龍斗はいつ気づいたんだ?

 

「おい、灰原!龍斗は直近でいつここに来た!?博士も!!」

「ちょ、ちょっと急に何よ?」

「落ち着け、新一。そんな剣幕で哀君に迫ったらいかん。まだ風邪が完全に治っておらんのだから」

「わ、わりぃ…」

「それでいつ龍斗君が来たか、じゃったな?確か…ほら、ポルシェで人が絞殺された事件があったじゃろ?その時にワシが頼んで哀君にフルーツジュースを作って貰ったんじゃよ。その前はその一週間前じゃったかの?」

 

ってことは、おそらくその日のうちに仕掛けられたってことだよな。もしそれ以前に仕掛けられていたのならその一週間前に何かしらのアクションを取ってるはずだし。

確かその日はジョディ先生と新出先生が来てたんだったな…くっそ。どっちなんだ?

龍斗に聞くか…?いやココに盗聴器が仕掛けられていてることを教えてくれただけでもありがいたい。アイツはこれから夢を叶えようとしているんだ。それにこれは本来俺や灰原の問題だ。これ以上アイツに助けられてばかりはいられねえ。

 

「……いや、なんでもねえ。ありがとよ、博士」

「お、おう?」

「……(工藤君)?」

 

微妙な空気になっちまったが、開会式で龍斗のお父さんが登場したことでさらに微妙な空気になっちまった……龍斗、優勝できるのか…?

 

 

――

 

 

「……勝っちまった、な」

「ええ。優勝したわね……」

「ど、どうしんたんじゃ?二人とも。世界一じゃよ?しかも二部門最年少制覇の偉業を達成したんじゃ!もっと喜ぶとかあるじゃろうが!」

 

そう興奮した様子で言う博士。

いや、喜んでいるさ。龍斗がずっと言っていた「夢」を最高の形で達成できたんだから幼馴染みとして祝福する気持ちでいっぱいだ。でもなんていうか。

 

「実際、テレビ越しでアイツの活躍を見るとな。なんか遠くに行っちまったみてえに感じてよ。それに驚きで言葉が出ないって言うか…」

 

世界大会三日目。アイツは親子対決の決勝に望んでいた。そこでアイツが「料理」にどんな思いを持ってきたのかが語られた。やってることは相変わらずぶっ飛んでいたがアイツがどれだけそれ(家庭料理)に情熱をかけていたのかがあの短いスピーチでも十分伝わってきた…オレはそんなアイツを初めて見た。

ああ、探偵らしくねえ。論理的思考が全然まとまねえ。でも、ま。

 

「おめでとう、龍斗」

「そうそう。そうやって素直にお祝いするのがええぞい。そう言えば新一。昼間に持って帰ってきた郵便は何じゃったのかの?」

「ああ、それは……」

 

 

―Prrrr……

 

「おっと、すまん。電話じゃ…もしもし?蘭君?」

 

ん?蘭?

 

 

――

 

 

「じゃあ、しっかり伝えるからの……ふう」

 

どうやら博士に電話してきた蘭はオレにも来た「季節外れのハロウィンパーティー」についての事だったらしいな。しかしこれは…母さんの返答待ちだが、乗るしかねえよな。

 

「それで、貴方も乗る気?その幽霊船に」

「ああ。さっきの博士の質問の答えは蘭の電話の内容で分かるだろうから省くとして。これを送ってきた差出人が気になるからな」

「心当たりがあるのか?蘭君はヴァームースとか言うとったが」

「それがあるのは灰原じゃねえか?ヴァームースもジンやウォッカと同じ酒の名前だからな」

「さあ?私、お酒にそんなに詳しくないし。組織にいた時もそんな人の名前聞いたこと無いわ」

「イタリアで産まれた酒さ。ヴァームースって言うのは英語読み。日本じゃあこう呼ばれてる。ヴェルムト。もしくは…」

「『Vermouth(ベルモット)……』」

「!!!」

「その反応を見るに聞き覚えのある名前。やつら(黒の組織)の仲間のコードネームってわけか」

「じゃ、じゃあその招待状は!?」

「ああ。奴らの仲間のベルモットさんのご招待券ってわけだ。用意万全を備えたか、しびれを切らしたのか…」

 

いや、奴らの組織力なら用意なんて容易く出来るだろう。博士は発明家としてここらへんじゃ有名だ。爆弾でも仕掛けて木端微塵にすれば発明中の事故で済ませられる。ってことはやっぱり…だがこの考えをここでいうわけにはいかねえ。龍斗のお蔭で盗聴器があることが分かっている事はこっちのアドバンテージだ。撤去しなかったことこんなに早くいかせるとはな。

これを聞いているクリス…()()()()()蘭が教えてくれた高校での龍斗への態度から十中八九分かっちゃあいるが……

 

「雲をつかむような相手がわざわざ手を差し出してきたんだ。お誘いに乗らねえ手はねえな」

「ダメよ!行っちゃダメ!止めなさい!!こんなの罠に決まってる!行ったら殺さ…」

 

興奮して喋ったせいか、ごほごほと苦しそうに咳をする灰原。

 

「ああ。かもしれねえな」

「だったら、だったらどうして…う……」

「お、おい!新一!!いくらなんでも麻酔銃はやりすぎなんじゃ」

「わりいな。灰原。このままじゃ、一歩も前に進めねえんだ」

「おいおい。いくら寝かせたからって哀君をここに残していくのは反対じゃ!」

「大丈夫だ、そこら辺は考えてある…だがな、これを見て見ろ。オレの家に来た招待状を」

 

そう言って博士に手紙を見せる。これを見たせいで龍斗の優勝を何も考えずに祝福できなかったのかもしれねえな。

 

「封筒と招待状は工藤新一だが、一緒に入っていた手紙の出だしは…」

「し、親愛なる…え、江戸川コナン様!?」

「バレちまってんだよ。俺の正体が。APTX4869で幼児化しちまった工藤新一だってことがな…そして灰原の正体が同じく幼児化したシェリー。宮野志保だってこともな」

「し、しかしおかしいじゃないか!そこまで分かっているならなんで奴らはココに殺しに来ないんじゃ!それに奴らの目は群馬の一件であっちに行ってるんじゃなかったのかの!?」

「さあな。その理由ってのは分からねえけど」

 

いや、このタイミングで仕掛けてきたこと。それは奴が龍斗の話の通りのやつなら想像はつく。龍斗が日本を出たからだ。あいつが近くにいればぜってえ首を突っ込んでくる。そう言う性格だってことはベルモットも知っているはずだからな。まあその事は言えねえが。

 

「その原因の1つならなんとなくわかったような気がするぜ」

 

そして、オレも…ごっほごほ。

 

「おいおい、まさか哀君の風邪がうつったんじゃないじゃろうな?」

 

それならば好都合だけどな。()()()()()()()()()()()()()()()()……お?

 

「なんじゃ?電話か?」

「シッ」

「(…メール?)」

 

博士のその言葉に言葉を返さず口に人差し指を当てたポーズを見せてから携帯の画面を見る。そこにはハートマークで作られた「OK!」の文字。よーっし、後は昼間に見たメーターがどうなっているかの確認と服部への電話だな。それは家に行ってからするか。

 

 

――

 

 

「…ったく。なんだよその水鉄砲はよ?」

「何だーって何よ?久しぶりに会ったお母様に言う言葉がそれなの?」

「久しぶりってほどでもねえだろうが。おっちゃんの借金解消の時にもあったしよ」

「あらそうだったっけ?」

 

メーターが増えていた原因は母さんだった。ちょくちょくオレに隠れて様子を見に来ていたそうだ。まあ別に自分ん家だから自由にしていいんだけどよ。それにロスから飛んで来てもらう予定で変装にかける時間を考えると結構微妙だからこれはまあ嬉しい誤算だな。

 

「じゃあ服部に電話しねえとな…」

「…ねえ、新ちゃん。ホントにするの?」

「あったりまえだ。恐らくこれ以上のチャンスはねえ。彼女を捕らえられれば奴らの情報が沢山得られるだろうし」

「そう…それで?そんな危ない橋渡ること、龍斗君に伝えたの?あの子に話さないでそんなことしたらきっと新ちゃん地獄を見るわよ?怒るとすっごく恐いんだから」

「……はっ。話す気はねえよ」

「な、なんで?」

「アイツはガキん時からの夢がついさっき叶ったばっかなんだ。それにあいつはこれからどんどん光の当たる舞台で活躍する。それなのに裏の世界に関わるようなことをアイツをずっと近くで見てきたオレがこれ以上するわけにはいかねーよ」

 

…それにいつまでもアイツに頼ってばっかじゃいられねえ。しっかりオレがカタをつける。オレの真剣な表情を見た母さんはそれ以上何か言うことは無かった。

オレは服部に電話を掛けるために携帯を取り出した。

 

 

 

……その時、俺は携帯を見ていて気付かなかった。母さんが何かを考えながらオレの事を見ていたという事を―

 

 

――

 

 

次の日。服部が大阪から合流し、母さんに特殊メイクをして貰っていた。

 

「しっかし、けったいなことになっとるのう。どう考えても罠やんか」

「まあ、罠っつってもオメーには危険はねえから安心してくれよ。あの手紙は十中八九オレと灰原を引き離すためのものだからな」

「あのちっこい姉さんといえば、昨日の夜から寝かせっぱなしなんやろ?大丈夫なんかそれ?」

「一応、博士が言うにはぎりぎり許容できるらしいぜ。まあもう麻酔は出来ねえから閉じ込めるしかないんだけど」

「あの地下室か。工藤が危惧しとった予備の眼鏡は見つからんかったけど、あの部屋にあるもんつこたら出てこれるんとちゃうか?鍵こじ開けて」

「大丈夫。それに使えそうな道具はちゃんと部屋の外に出しからな」

「(ほんまにそれだけで大丈夫なんかいな…?)しっかし、その(灰原)でいつもんのお前の声だと違和感ありまくりやな」

「バーロ。半分オレの顔のお前が関西弁喋っている方がオレには違和感バリバリだぜ」

 

オレは一足先に母さんに変装をして貰い、服部に「工藤新一」の変装して貰っている。オレが工藤新一に戻れることは学園祭で目撃されているからな。今回のオレ達の行動はこうだ。

①博士とオレが博士の家、盗聴器が仕掛けられているベッドの近くで工藤新一に戻れる薬を博士に作って貰って船に乗るという一芝居をうつ。博士に送って貰って港に待機してもらう、ということも会話に織り交ぜる。そして、灰原が眠らされていてテープで俺達の会話を聞かせて博士の家にいると誤認させる計画であることも聞かせる。博士にはオレのスマホのGPS機能を使ってもらって尾行(オレや龍斗を引き離そうとしている所を考えると別の場所に連れて行って始末する可能性が高い)と、この心電図をモニターしてもらう。

②船の乗船名簿に工藤新一に扮した服部と補佐で仮装した母さんが船に乗り込む。

③灰原が一人でいることを確信したベルモットが博士邸にきてオレが変装する灰原を連れ出したところで勝負に出る。

恐らくベルモットは単独の独断でこれらの行動をしていると考えられる。つまり、監視に組織の人員は使えていないはずだから目視によるチェックはない。今夜のベルモットの視点での行動は、

①オレが工藤新一の姿で罠である船に乗り込み、博士もその港で待機であることを知る。そして実際に乗っているかを電話して乗客者リストに工藤新一はあるかで確認する。

②灰原は博士邸に一人で寝ている。他には誰もいない。

これらを踏まえて奴は灰原を誘拐するはずだ。

 

「ねえ、新ちゃん。なんでそのベルモットはそんな回りくどい方法を取るの?あの娘が一人になるような工作を」

「え?ああ。考えられるのはベルモットが女優のクリス・ヴィンヤードでしかもシャロンと同一人物だった場合だな。服部には話したと思うけど、ベルモットはクリスだ。そしてシャロンは母さんの話じゃ怪盗キッドも顔負けの変装術と変声術を持っているんだろ?ならシャロンがクリスに変装しているなら、クリスのプライベートの情報が博士に調べてもらっても全然出てこないのも納得できる」

「けど、なんでシャロンが……」

「それはとッ捕まえてシャロンに聞かねえとわかんねえよ。母さん、シャロンとプライベートで遊んだことあるんだろ?そん時にオレの写真とか見せたことねえか?」

「ええ、あるわよ。アルバムとか。それにほら、シャロンに龍斗君を紹介してからかな。龍斗君、自分の写真をシャロンに送ってたみたいで大体それには新ちゃんが写ってたし。嬉しそうに見せてたなぁ…」

 

ここで龍斗が関わってくるか。まあ母さんが見せてたし、あんまり関係ないけど。にしても、だ。龍斗の奴、シャロンが帝丹高校に潜入していたの気づいてたんじゃねえか?いや、ぜってえ気づいてたな。キッドの変装を見破れるんだ。知り合いの変装を見破れない訳がねえ。アイツが帰ってきたら聞いてみねえとな。

 

「じゃあ、その写真を見てオレと工藤新一が同一人物に気づいたんだろうよ。それに母さんの知り合いだからオレを巻き込みたくないって言うのも分かるし。龍斗に関して言えば惚れ込んでるレベルだったんだろ?」

「そうね、いつも幸せそうに語ってたし…」

「ったく、そんな心配そうな顔すんなよ!絶対生きて帰ってくるから」

 

幹部クラスが下っ端構成員を使わずに単独で動いてオレ達がアドバンテージを握っているなんて奇跡的な状況、これ以降二度とねえだろうし気合入れていくぞ!

 

 

――

 

今、オレは車に乗っている。

作戦通り、俺は灰原に変装して博士邸で待っていた。すると、訪問してきたのはジョディ先生だった。新出先生から電話が来て灰原(オレ)を迎えにくるとあったから、ベルモットは新出先生だと踏んでいたんだが…新出先生がココに来ることを知っていてオレを連れ出したことからもしかして2人(新出先生とジョディ先生)とも黒の組織の奴らだったのか……?迂闊だった。単独行動だと決めつけてこの可能性の場合のことを考えていなかった!

 

「Huh……」

 

ん?バックミラーを見た?

サイドミラーで後方を確認すると、新出先生がオレ達をオレ達を追ってきていた。ってことは、ジョディ先生は別の組織…?蘭の話だとFBIが日本に来ているらしいし、そっちか?くっそ、こればっかは賭けだな。BETはオレの命…笑えねえぜ。だが、まだ街の、人通りがあるこの通りがチャンスだ。()()()()ここなら生きて逃げ出すことくらいは出来る。

 

「ねえ…」

「なんでーすかー?」

「新井先生って、クリス・ヴィンヤード?」

「!!へぇ…?」

 

さあ、どっちだ!?

 

 

――

 

 

 

 

「ごめんね、新ちゃん。あの約束を破ることになっちゃうわ。龍斗君のアドレスは……」

 




次回は、ベルモットとジョディとの対話からになります。それが終われば再び龍斗視点になります。恐らく?二元ミステリー完結編になります。
原作の二元ミステリーも結構綱渡り感がありますよね。一応そこら辺の所感を入れてみました。

それと龍斗が盗聴器をそのままにしていたのは世界大会間近で外す機会がなかったと言うが理由の一つです。シャロンは自分が近くにいる間は何もしないだろうと言う長年の信頼があったのですが、世界大会で日本を離れている間に何かあると困るということでコナンに盗聴器を外す依頼をしました。


多分、出した伏線は回収できているかな?「第??話 -彼のいないところで-」の冒頭のセリフもちゃんと書けましたし(誰のセリフかここで明かす事が出来ました)。
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