※8/13(月)に編集しました。2018年06月18日~08月08日に渡って執筆した全九話のうち、2018年06月18日・24日・07月02日に投稿した三話(1/9~3/9)を統合したものです。
「お久しぶりです」
「そうだな。夏季休暇で寄ってくれてそれからだから……まあ、取りあえず世界大会での優勝おめでとう。龍麻氏の活躍にも我々からしてみれば驚きだったと言うのに、君はまたその上を行くとはね。今度の会合は楽しみにしていると皆が言っているよ」
「ははは。存分に腕を振るわせていただきますよ」
ココは京都。大岡家の本家だ。中東の大富豪もかくやという敷地面積の中にある当主の執務室。つまり、俺が今対峙しているのは紅葉のお父さん…俺にとって未来の義父というわけだ。
「さて。今日君を呼びたしたのは他でもない。その世界大会での優勝でのことだ」
今この場に紅葉はいない。つまり、父親としての彼か。もしくは大岡家の当主としての彼の立場でこの場に望んでいるわけで……今回は後者だったと言うわけだ。
「君が表舞台で前人未到の偉業を達成したのは紅葉の父親としてとても誇らしい。緋勇家の跡取りとしてではなく、娘の彼氏として接した君は婿にするのには申し分ない。申し分ないが……」
「
「…君は本当に察しがいいね」
そう言って苦笑いを浮かべるお義父さん。これはまあ、戦闘経験で培った観察眼や料理を味わう人の感情を読み取るために訓練したものの賜物だろう。
それはおいといて、京都に根を張り長い歴史を持つ旧家である大岡家。勿論京都を起点に活動していた緋勇についても代々口伝で受け継がれてきている。その事から、初めて会ったときに一悶着があったんだが…それはまた別の話だな。
ともかく、緋勇が表の権力のある家と血縁関係を持つことは長い歴史上ないわけではない。だが大抵は周りからの圧力や一族同士のいざこざが起きたと言うのは枚挙にいとまがなかった。
「しかも君は宗家の跡取り息子。火種になるのは間違いない……それに君の料理の技術力。君のお父さんの後追いとは言え今回の事でさらに権力者にとって魅力があがった。まあ表からの干渉は私の力もあるし何とかなるだろう。だが、君たちの世界のいざこざに巻き込まれるとたちまち無力になってしまう」
「そこを任せると言うほど自分は恥知らずなつもりはありませんよ。父さんが母さんと結婚したとき、いやそれ以前から私達のような一族は時の権力者に追われたり血を狙われたり、はたまた人体実験の材料として狙われてきました」
「それは聞き及んでいるよ。そのことごとくを撃破していき、今では新参の道理を知らぬ阿呆だけしか狙わないと」
「実行犯の私達にはさらに詳しく情報が残っているんですが……身内にも厳しいのが鉄則の私達ですが身内を害されればその苛烈さは表や裏の人間の比ではありません。それに、緋勇としてではなく
「……それは、
「いえ。
「……」
俺のその言葉に二の次も告げない様子だった。まあ、SP透影の名のごとくむやみやたらに人を襲うことは無いしまず第一優先として紅葉の安全を確保するだろうから戦闘行為は最小限だけどね。
「紅葉との関係も良好で連れてきた俺より今では彼女に懐いていますよ」
「……それはなんと、まあ。娘も器が大きいと言うかなんというか」
「生き物を慈しむ心はその人の優しさの表れですよ。動物に好かれると言うのはそう言う事です。まあともかく、俺が紅葉と一緒になった時ある程度混乱は起こると思いますが全力で彼女を守りますよ。俺には彼女がいない人生なんて考えられませんから」
「たかが17の子供が!…と言いたいところだが、君はそこらの大人よりしっかり社会を見ているからね…」
それはもう。人の綺麗な所も汚い所も一通りは、ね。
「じゃあ問題はあと一つだな」
「もう一つですか?」
「ああ。君が婿入りするか、紅葉を嫁に出すか。だ」
お互い一人っ子。それも背負う家名がある二人同士。そこも重要な論点だった。
俺とお義父さんはこの後しばらく話したが結局結論は出ず、紅葉がお茶に呼びに来たことでこの話は流れた。
娘の手作りのお菓子が東京から戻ってくるごとに美味しくなってくることに嬉しいような、さびしいような表情を浮かべているのが印象的だった。
――
「おーい」
「おー、龍斗君!」
「龍斗クン、紅葉ちゃん!」
「ようこそおいでやす、京都へ」
「そうだよね、紅葉ちゃんは京都が実家だもんね」
「まあ、俺も父さんの実家は京都だからなじみ深いんだけど…いらっしゃい、コナン君」
「あ、うん……」
紅葉の実家にお邪魔した翌日。俺と紅葉は京都駅で毛利御一行を待っていた。
久しぶりに顔を合わせたが……ジョディ先生から俺があの現場に登場したことを聞いて疑問に思っているのだろう。俺がいたこともそうだがそもそも
まあそんなことがあれば噂になるだろうし、その可能性も潰しているだろう。
俺は、紅葉が他の皆の相手をしている隙に新ちゃんを連れて少しだけみんなと離れた。
「や。浮かない顔しているね?」
「オメー……分かって言ってるだろ?」
「ははは。まあね。詳しくは平ちゃんも一緒にいる時に俺のじいちゃん…緋勇家本家に連れて行って伝えるけど取りあえずはこれだけは先に伝えておこうかなって」
「??」
「俺は自分の言葉に絶対の責任を持つ。守ると言ったら守るし、手伝うと言ったら手伝う。俺は新ちゃんに隠していることも、その隠し事を誤魔化すための方便を使ったりしたことはあったけど
絶対に、とは言えなかったのは俺の家の宿命かな。これから先、無力化に徹していても向こうが命を捨てる術式でかかってくる敵が現れるかもしてない。そんな敵に対して俺も殺さないという選択肢を取れないかもしれないし。それがある意味慈悲となるからね……
最後の言葉は冗談めかして言ったけど、その言葉に新ちゃんは毒気が抜けたのか。
「はっ。なんだそりゃ…」
「どうやってあそこまで行ったのか、とかは俺の一存では言えないんだ」
ジョディ先生たちは警察という立場があったから、その情報に触れる権利があったからぎりぎり開示出来た。紅葉は大岡家という古くからの協力者でかつ俺の伴侶となる予定だったから問題はなかった。だけど、新ちゃんや平ちゃんはいくら高校生探偵とは言え俺の家にとっては
父さんも平ちゃんや和葉ちゃんのお父さんたちに話せたのは両家の当主が許可を出したからだ。服部家も遠山家も割かし古い家だからね。でも、それを待たずに話すのは俺もただの次期当主でしかないからその結論は出すことが出来なかった。
「……あんまり、オメーの実家の話とか聞いたこと無かったけどそーいう
「まあ、ね。これもすべては世のため、ひとのため、って分かっているから言えない。でも、俺はこの秘密を語れるなら新ちゃんに語りたい……そう思うよ」
彼なら、俺の一族の力を知っても無暗に広めたり頼ったりしないだろう。むしろ、手を出すなと言いそうだ。
「?なんだよ、笑いやがって」
「いいや、なんでもないよ」
どうやら俺は笑みを浮かべていたらしい。
「さあ、みんな向こうで待っているから行こうか」
「あ、待て!龍斗」
「ん?」
皆の方に行こうとしていた俺を引き留めた新ちゃん。なんだ?
「世界大会の優勝、おめでとう。夢がかなったな!!」
「……!!ああ、ありがとう!」
その言葉を発した新ちゃんは、新幹線を降りた時より晴れ晴れとした表情を浮かべていた。
――
「さて、と―」
毛利一行を京都駅で迎えた俺は平ちゃんを回収するために単身五条大橋に向かっていた。皆には京都の友人と会う約束があると言って。紅葉は蘭ちゃんたちと一緒に小五郎さんの依頼された寺、「山能寺」に行った後京都観光するそうだ。和葉ちゃんも明日には合流する予定らしい。明日は俺もそっちに合流する予定だ。
「おーい、龍斗!」
「平ちゃん。久しぶり」
「悪い、待たせてしもたか?」
「いいや、俺が先に来ていただけで時間通りだよ」
「そうか、そらよかった。でもなんや?唐突に京都で会えへんかー?って電話来たときは珍しいこともあるもんやなと思とったけど」
「あー。まあ、ちょっといい機会だなと思ってさ」
「??龍斗が聞けぇいうから親父にもこの事聞いたけど、かなり深刻そうな顔しとったで?」
「……平蔵さん、何か言ってた?」
「ああ言うとったで。腹の立つことをな!確か、「ウチのぼんくらが龍斗君のお眼鏡にかかったのは服部の者として嬉しゅうことやがちょっと時期尚早やないか?」ってな!ホンマ一言余計なんじゃっちゅうんや!」
平蔵さんに言われた時の様子を思い出したのか額に血管を浮かび上がらせている。深刻そうにしていたってことは本当に心配していたんだと思うよ、平ちゃん。それを素直に言う人じゃないから、平ちゃんもこうなっちゃうけどさ。
「それで?用件はなんやったん?お前んとこの家業を教える言うとったけど。確かお前のオトンはオマエと同じシェフやし、何回か遊びに行った本家におる爺様は家で護身術を教えてたよな?」
「そうそう。
「……龍斗。なんかお天道様に顔向けできないことをしてきたんとちゃうやろな?」
「うーん。お天道様に見せられないような事はしてきた、かな。でも俺達の一族は胸張って生きてはいるよ」
「なんやそれ……どうやらオレが思てたことより大分ヤバイことっぽいな……」
うん、やっぱり探偵なんかやっていると頭の回転も速いな。おちゃらけた雰囲気ではないことを察して真剣な顔になった。
「説明は本家……爺ちゃん家で爺ちゃんがいる所で話す事になってるよ。もう一人もつれてね」
「もう一人?」
「ほら」
俺が指差した方向には何やら手に紙切れを持った新ちゃんが俺達に向かって小走りで近寄ってきていた。
「く、工藤!?」
「おう、服部。やっと来たか」
「大丈夫?呼んでおいてなんだけどよく抜け出せたね」
「ああ。近所で仲良くなった子とちょっと遊んで、夜もごちそうになるって言って出て来たよ。明日もそれで回避したけどな」
蘭ちゃん……なんでそんな言い訳を信じたんだ…いや、素直な性格だって褒めるべきなのかな?
「じゃあ帰りは俺が送っていくよ。偶然会ったとでも言ってね」
「頼むよ」
「……って!何で工藤がココにおるんか説明しぃ!!!」
――
「なるほどなあ。オレが手伝うたあのハロウィンの事件の後にそんなことがあったんかいな」
「ああ。よくよく考えてみれば龍斗の性格から悪事の片棒を担ぐような真似はしねえと今は思ってるが流石に事件直後にそれを聞いた時はオレも冷静じゃ無くてな。そもそもどうやってフランスから二時間足らずで日本に戻ってきたのかも謎だし」
「んなもの実現するためには軍の超高速戦闘機にでも乗らな無理やしな」
「しかもジョディ先生の話では彼女たちの目の前から消えたから一時間も経たないうちにまたフランスで現れたってんだからもうわけわかんなくてよ」
「そりゃあ……今の科学技術じゃあ無理な話やな」
新ちゃんがコナンになったのも今の公の科学技術じゃあ説明つかないことだし案外どっかの国では秘密裏にそう言う技術は出来ているかもよ?まあフランス日本間を飛ばして耐えられるような機体かどうかは知らないけどね。
「さあついたよ」
「…すげえ、でけえな」
「そうか?まあ確かに後ろの山もそうやしかなり広いんやけど家自体はそう大きないで?」
新ちゃん家も大概だと思うけどね。まあ京都の中心地からちょっと離れた場所に居を構える緋勇家の本家はそれなりに土地が広い。敷地内の自給自足で十人がまるまる生活できると言えばその広さが分かるだろう。
「それは、家の中で迷子になった平ちゃんが言うセリフかな?…まあそれは置いておいて爺ちゃんに会いに行こう」
「お、おい龍斗!それは子供の時の話で…おいこら待ちぃ!」
「…って、オレここに来たの初めてだって!置いてくなよ!!」
俺は二人に先導して爺ちゃんの待つ道場へと向かった。
「はー。龍斗の家にも道場はあるけどやっぱりこっちのもあるんだな」
「なっつかしいのう。よくここで龍斗の爺様に稽古つけてもらたわ」
「あれ?龍斗って剣使ったっけ?蘭の空手みたいに素手の拳法使いだったような」
「爺ちゃんの趣味だね。本業は……というか、緋勇の一族は徒手空拳の古武術を習得するけど別にそれをおろそかにしなければ制限はないし」
「片手間の技術にしてはオレは結局一本も取れへんかったけどな。今なら分かるで。ありゃあ相当手加減しとった」
「それは外の子供に怪我させるわけにはいかないからねえ」
「「わっっっ!?」」
「爺ちゃん」
「良く来たのう。龍斗」
「うん」
「……服部。オレにはどう見ても小五郎のオッチャンと同じくらいの歳の男性がいるようにしか見えねえんだが」
「おう。間違うてへんで。オレのガキの時分からまーったく形が変わってへんけど、あの人が龍斗の爺ちゃんの緋勇弦麻さんや」
「爺ちゃん。この2人が俺の選んだ秘密を打ち明けてもいいと思った友人だよ」
「ふむ…服部の嫡男はともかくその小学生は…うん?」
流石はじいちゃん。こっちの修羅場で言えば俺が足元にも及ばない数をこなしてきているから新ちゃんの違和感に気づいたか。
「なるほどなるほど。見てくれは小学生のようだが成長年月…生きてきた年数は龍斗と同じくらいか?術式の気配や氣に長けた雰囲気もなし……科学も若返りの技術を開発しとったんじゃな。ワシが知らんかった所を考えるに秘密裏に進められていると見える」
「!!?!?た、龍斗!?」
「いや、喋ってないよ?俺も爺ちゃんも人とは違う世界がちょっとだけ見えるから、ね」
「……ま、そこら辺の話も今からするからの。でもその前に。龍斗。お前はちょっと
「へ?壮麻おじさんとか当麻おじさんとか志麻おばさんが今はいるでしょう?」
「その三人は別件で動いとる。花見の時期で心が緩んでおるのか中々活発になっておるからの。他に九州方面もよろしく頼む。お前さんならすぐじゃろ?二人の説明はワシがしておくから」
「……分かりました。じゃあ二人とも。また後で」
俺はそう言うと二人の目の前から消えた。
――
「き、消えよったで!?」
服部が驚く声が聞こえる。声は出していないが俺も同じだ。
「……全く。ワシらはしっかりと準備をしないと
そう言って苦笑いを浮かべる龍斗のお爺さんは今消えた様子には全く驚いていなかった。そしてスマートフォンを少しいじった後にオレ達に向き直った。
「……さて。服部君の事は知っているが君の事は知らないな。自己紹介してくれるかい?」
オレはその言葉に、オレが龍斗の幼馴染みである工藤新一であることを伝えるのに躊躇した…躊躇したが龍斗がこのことをオレ達に話すことはかなりのリスクがあること、そもそも話すと言う選択肢自体がかなり重要なことらしいことは今までの事でよく分かった。だからオレも嘘偽りなく話した…そもそも嘘が通用しなさそうだしな。
「……なるほど。中々波乱万丈な経験をしているようだね。それでは我々の話をしようか」
――そこから語られたのはオレ達の常識を壊すのに十分な内容だった。そしてオレは龍斗が言っていた言葉の意味も理解した。アイツ、それであんな濁した言い方をしていたんだな。実際にお爺さんに見せられた技でこの道場内は気温が上がっていて少し汗が出て来たぜ……この汗は暑いからだけじゃねえな。
「それじゃあ、龍斗がフランスから日本に瞬間移動したのも…」
「あれは龍斗だけの力だね。彼は彼独自の力でも移動できるが地球の力の流れ…
龍脈?レイライン?なんだ?また新しい言葉が出て来たぞ?
「それは爺様も出来るんですか?」
「いや、龍麻ならましかもしれないがワシら普通の一族なら数秒…県移動くらいしかできないよ。しかもどこに出るかは我々では決められない。言うならばマグマの中でマグマの動きに身を任せる我々と水の中を自由に動きまわるイルカ位に違いがある。まあそれはそれとして……」
「??なんですか?」
「龍斗は独自の力で時間をすすめる力を持っている。それを使えば君は17歳まで成長する事が出来る……まあ龍斗は良くそれで熟成肉や年代物の食材を作ってくれていたなぁ」
「!!?」
そ、そういえば昔寝かす作業がいるはずなのに、そこまで時間が経っていないのに料理が完成したりメモリーズエッグの時に夏美さんにカヌレについて突っ込まれたりしていたな。つまり、そういうことだったのか!
「どうする?」
「オレは…オレは……」
いや、悩むまでもねえことだな。
「これはオレが向う見ずに行った行動の結果です。誰でもない、オレの迂闊さが招いたことだ。龍斗が…緋勇って家はオレ達の生活を誰に気づかれるでもなくずっと守ってきたって言うのは分かりました。龍斗もそれに従事しているってことも。これ以上龍斗に助けてもらったらオレは龍斗の幼馴染みを名乗れなくなっちまう。この件はオレ自身のヤマです。自力で元に戻ります!……ま、まあ龍斗と一緒にいる時に事件に巻き込まれた時に龍斗がくれるヒントは有り難く教えてもらっていますけどね?」
「……そうか、そっちの服部君は?」
「オレもおおむね同じやな。探偵として龍斗のあの感覚の鋭さはうらやましいと思とったけどそう言う事情があったんやったらむやみやたらに力を借りるんはなんか違うんやと思うしなあ。そもそも、向こうが善意で貸してくれる力をはじめっから当てにするのはなんか利用しているみたいで気分悪いやんか。二進も三進もいかなくなったら相談位するかもしれへんけど」
「そうか……壮麻、当麻、志麻。どう思う?」
「いいんじゃない?その言葉に嘘はないみたいだし」
「そうだな。龍斗はいい友達を持ったと思うぞ」
「探偵って言う職業に思わないところがないわけではないけどいいんじゃないかな?」
「な!?」
いつの間に!?というかその名前、さっき龍斗が上げていた親戚の人か!!
「ど、どういうことですか?」
「ふむ。先ほど龍斗をあっちに送った後、そこの三人はメールで呼び出してな。君たちの本心を試させてもらったよ。特に工藤君。君は問題を抱えているようだしね」
「…もし、お眼鏡に適っていなかったら?」
「厳しい事を言うが、記憶を処理して龍斗にはダメだったと報告する手はずだった」
き、記憶を?そこまでできるのか……!?
おじいさんの話によると偶然巻き込まれた被害者が出ないこともないので世の中にその話が出ないのはその記憶処理のお蔭だとか……秘密を守るためにそこまでしていたとはな。
そうそう、海外では魔術師とかいう一族もいてその中には幼女の姿をした100歳超えのお婆さんがいるらしい。その人にだまされてからおじいさんは人を見た目で判断せずに彼ら独自の目線で人を見るようになったそうだ。
「ただいまー…あれ?おじさん達来てたんだ?」
その後、帰ってきた龍斗に事情を聴いたことを説明しまあ…
さて、龍斗があの場に現れた謎も解けたし後は仏像探しの謎を解くだけだな。明日は服部も協力してくれる約束も取り付けたし、後は大人しく寺に戻るとするか。
あ、夕飯食べるの忘れてた……我ながら、締まらないなあ。
――
「それで?どないやったん?」
「爺ちゃんや他の一族の人のお眼鏡に適ったみたいだよ。特に記憶の処理されることなく、俺の事を教えられた……正直ほっとしているよ」
「まあ、龍斗の様子からして大丈夫やったのは分かってたけどな。昨日別れてから何の連絡もなかったからダメやって落ち込んでるんかと思いました」
「ごめんごめん。昨日は親戚が集まっちゃってその給仕に追われていてさ」
「もぅ……」
「おーい、二人とも!和葉ちゃんが来たよー!!」
「はーい!……この埋め合わせは絶対するからさ。今日は蘭ちゃんと園子ちゃんに京都を楽しんでもらおうよ。ね?」
「……忘れたらあきまへんよ?」
新ちゃんたちと話した次の日。俺と東京住みのJK三人衆は京都観光に繰り出していた。蘭ちゃんが和葉ちゃんにアポを取っていて、まずは彼女と合流してから京の町に繰り出すと言うわけだ。和葉ちゃんは京都に親戚の人も多く、幼いころからよく遊びに来ているからよく知っているし、それは俺も同様だ。そもそも紅葉は16年間京都に住んでいるのだから、東京生まれ東京育ちの蘭ちゃんと園子ちゃんを案内するには最高の布陣だ。高校生だけで利用するのに憚れるようないい店の中には一見さんお断りのお店もあるしね……そんな店、今日は行かないか。
蘭ちゃんは新ちゃんも誘ったようだが昨日言っていた通り、近所の子たちと遊びに行くそうだ。実際は小五郎さんの依頼を独自に捜査するために単独京都の町に繰り出しているんだろうけど。平ちゃんも平ちゃんで東京と京都で起こった連続殺人の捜査で京都には来るけど観光は共にしないそうだ。
「さて、と。久しぶりに京都散策を楽しみますか」
――
「きれーいー」
「ああ。こんなきれいな景色、しん「真さんと」え?」
「真さんと一緒に見られたら、超ハッピーかもかも♪」
「も、っもう!蘭ったら!」
「へへー、いつものお返し」
俺達は蘭ちゃんたちが行ってみたいと言うスポットを軸に、ガイドブックには載っていないが良い観光に向いたお店や名所を回り今は清水寺の舞台で景色を堪能していた。
「そう言えば、紅葉も聞いていたんだろ?小五郎さんの依頼。どんな内容だった?」
「お寺の仏像が盗まれて、その在り処を示す暗号を解いてほしいんやって。でもあれは東京人にはすぐには分からんやろうな」
「じゃあ新ちゃんも苦戦しそう…って紅葉には分かったんだ?」
「ええ。依頼のお寺に行ったときは檀家の方たちもいらっしゃってたんやけど逆になんでずっと京都に住んでますのに分からないのか不思議で仕方ありません」
本気で首を傾げている紅葉。最近は五感だけではなくて元から聡明だった頭脳にもさらに拍車がかかってきているようだった。
「これです。原本はお寺にありますけど、人数分からコピーしてくれはって」
紅葉がそう言って俺に渡してきたのは階段の上に色のついた絵が描いてある暗号だった。
「ふーん……?う、ん?どっかで見たことあるような…?」
「せやろ?普通は言葉やけど、絵に惑わされんで書かれているものをちゃんと名称を書いたら気づくようなもんやのになぁ」
いや。確かに何かひっかかるけど、それは
「うちからみんなに言うことは無いけど、龍斗にならええやろ?蘭ちゃんたちにいうたら毛利さんに伝わってしまいそうやし……」
そして、紅葉はこの暗号の意味を教えてくれた。絵柄は通りの名。それを同じ色同士で繋げると「玉」になると。そして、盗まれたものが仏像である事から考えられる可能性は玉の名を冠するお寺の玉龍寺に隠されているのではないかという事だった。昨日実家に戻った時、玉龍寺について検索をかけてみると現存する鞍馬山(紅葉はこっちの存在を知っていたそうだ)に移動する前には仏光寺の近く、つまりは暗号を地図に照らし合わせした際に玉の点に当たる位置にあったそうだ。
玉龍寺、仏光寺、盗まれた仏像、そして京都…?
俺があれこれ考えていると、景色を見ていた二人が和葉ちゃんに声をかけていた。
「ねえ、和葉ちゃん。服部君と喧嘩でもしたの?さっきから暗いよ?」
「実は平次、ある事件の調査のために京都に通っててん……それに京都には平次の初恋の人がいてんのや」
「「ええええ…!?」」
「おや、まあ」
その言葉に和葉ちゃんを心配して声をかけた蘭ちゃんたちは驚きの声を上げて、俺の隣で聴いていた紅葉も目を丸くしていた…んん?平ちゃんの初恋……?
「と、とにかく詳しくその話を教えてくれる?ねえ、龍斗クンに紅葉ちゃん。この近くに落ち着いて話のできる場所…お茶とか飲める場所に案内してくる?」
園子ちゃんがそう提案してきたので俺と紅葉は顔を見合わせて。
「それじゃあ、今度は俺のおすすめの場所に案内するよ。美味しい菓子を出すお茶屋にね」
「それじゃあ、龍斗に任せます」
俺の先導で、場所を移すことになった。
――
「それで?服部クンの初恋の人がいるってどういうことなの?」
「平ちゃんが自分の口で言うわけなさそうだけど…」
「そう言えば龍斗君、服部君からそう言う話は聞いたこと無いの?」
「んー。小学生の頃になんか報告を受けたような。確か三年生の時だったかな?」
「それほんま!?」
「うわっっ!?和葉ちゃん落ち着いて」
隣に座っていた和葉ちゃんがいきなり迫ってきたので驚いてしまった。
「とにかく話してみてみません?龍斗もその話を聞いて思い出したことがあれば付け加えて言うてくれると思いますし」
「思い出せるだけ、だけどね」
「……うん。さっき園子ちゃんがいうとった通り、これは平次から直接聞いたわけやないんや。ウチが知ったのは平次が雑誌のインタビューにそう答えとった記事を読んだからなんや」
「雑誌のインタビュー記事?」
「せや」
和葉ちゃんは鞄から一冊の雑誌のページの切り抜きを出して机に置いた。雑誌の名前を聞いた俺は確かに思い当たることがあった。確かに従姉妹の子が買って読んでたのを親戚の集まりの時に見たことがある。
「これ、関西でめっちゃ人気のある情報誌でな。この本で平次、初恋の人の事について聞かれてて「小学校三年生の時に会うた、ちょっと年上の女の子」って答えてんの。しかもその女の子にもろたのか、その子との大切な品っていうてこんな写真までのせてもらってんの!」
語気を強めに指を指す和葉ちゃん。その先には笑顔でガラス玉を摘みあげて写真に写っている平ちゃんがいた。
「これ、なに?」
「ただの水晶玉。その女にもろたんやろ」
「じゃあ和葉ちゃんはその女の子の事…」
「知ってるわけないやん!平次も会うたのはその時だけで、京都に来るたんびに探しているみたいなんよ」
「ああ!だから水晶玉と一緒に写真を撮ったんだ!その記事を見た女の子が連絡してくると思って!!」
「なあ!やらしいやろ!?しかもご丁寧にその頃の写真までのせてもらってるんやで!?」
和葉ちゃんがページをめくると確かに昔の平ちゃんの写真が載っていた。
「へえ。ウチが初めて会うた時とそっくりやな。あん時よりちょっと幼いけど…」
「確かあの時は四年生で、この一年後だったっけ。それにしても幼いねえ。懐かしい」
「どれどれ?……へえ!」
「わあ、可愛い!」
「そやろ!?この頃の平次、むっちゃ可愛いんやって!……あ。……う、うううん!蘭ちゃん?そう言う事やちゃうんやって」
平ちゃんがほめられたことが嬉しかったのか、さっきまでの不機嫌さが吹き飛んで上機嫌になった和葉ちゃん…だったが、自身が興奮したことが恥ずかしくなったのか赤い顔で仕切り直そうとしていた。
「でも、そんなに気にすること無いんじゃない?服部君に初恋の相手がいたとしてもそれは過去の話。今は和葉ちゃんといい感じに見えるけど?」
……それを、麻美先輩と新ちゃんの関係でやきもきしていた君が言います?
「でもねえ、男にとってふぁあすとラヴは特別だから!」
……それも、君が言いますかねえ?園子ちゃん?ほら、後ろで新聞を読んでいた会社員っぽい男性がぎょっとしているじゃないか。
「もう、園子ったら!」
「てへ?」
「…ふふ。辛気臭い話はやーめた!せっかく龍斗君のおすすめの店に来たんやから美味しもの食べよ!龍斗君、おすすめある?」
「え?ああ、それじゃあ……」
まだ心にわだかまりがあるだろうに、空気が暗くなることを嫌って明るく振る舞う和葉ちゃんにそれに気付いて心配そうにしている蘭ちゃん…大丈夫、
※統合した話の前書き・後書きを載せています。
(1/9前書き)
投稿が一日遅れて申し訳ありません。このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路が元になっています。現在進行形で執筆しているので何話になるかはわかりませんが、お楽しみいただけると幸いです。とはいう物の今回はまだ序章(ほぼオリジナル)といった感じで映画本編にはまだ入れていませんです。かなり短いですが、それではどうぞ!
(1/9後書き)
世界大会(高2の1月)→十字路の季節(春・桜の季節)で、作者的には四月かなーと思うんですが時系列に関しては突っ込まない方向でお願いします。まあ、原作の方でも時計仕掛けの摩天楼とゼロの執行人の二つを同時期に解決したことになってしまっていますし大丈夫、大丈夫……緋勇という設定を出してからそれに引っぱられている感がありますが、服部に話して決意表明(次話のネタバレ)をしたら自然とフェードアウトする感じになります。今話のオリ設定として紅葉の父親はオリキャラですが…出来るだけフラットな感じ(モブ的)をイメージしました。ほとんど絡みもないでしょうしね。まあ娘の父親、というコンセプトが根底にはありますが。そして服部家、遠山家もそれなりに歴史のある家にしました。
(2/9前書き)
このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路が元になっています。映画のDVDを見返してみて。
蘭「和葉ちゃんに連絡してあって…
…あ、そういえばコナンと服部が合流したのは偶然だった。しかも時系列的に京都に来た次の日……結構修正することになりましたorz
今回までオリジナルで次回から十字路の内容に絡めていきます。
(2/9後書き)
元々、緋勇家の設定を出さない時のプロットではハロウィン後、博士の家で自力で解決すると決意表明する→ある程度超能力を話すみたいな流れでした。それを話してもコナンが元に戻るのに龍斗の力を借りないと分かった上で話すというものから、今すぐ戻れるよ?どうする?からの決意表明と順序が逆になりました。これくらいの覚悟があれば龍斗の身内も納得いくかな、と。
(3/9前書き)
このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路が元になっています。活動報告にも乗せた通り、書きたいことを表現しきれず暫くは一話当たり3000~4000字ほどになってしまいます。ご了承ください。それと、頂いたコメントで気づいたのですが確かに夏バテしているんじゃないかと気付きました。少しずつ体によさそうなことをして体調を戻して、今までどおりの文字数に戻したいと思います。皆さまも体調にはお気を付け下さい。それと、九州に方は台風にご注意を!
(3/9後書き)
京都にはとんと詳しくないので紅葉の地元民ならではの案内は丸々カットとなりました……紅葉は地図を見ずに頭の中で思い浮かべて推理を行い文字が浮かび上がったので、点の位置にある寺に惑わされずに一発で玉龍寺に辿り着きました。