名探偵と料理人   作:げんじー

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このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路が元になっています。


※8/13(月)に編集しました。2018年06月18日~08月08日に渡って執筆した全九話のうち、2018年07月31日・08月07日・08日に投稿した三話(7/9~9/9)を統合したものです。

すみません、お知らせの投稿が文字数稼ぎの規約に引っかかってしまい非公開となってしまいました。
該当箇所は削除し、再び公開となりました。このたびはご心配をおかけして申し訳ありませんでした。今後このようなことがないよう、お知らせは全て活動報告で行いたいともいます。最新話現在も執筆中です(8/13、23:30時点)なのでもうしばらくお待ちください。


第六十三話 -迷宮の十字路(後編[完結編])-

「……新ちゃんの提案に乗って先に来てみたけどこれはちょっと予想外。いや、なんとなく既視感があるからこれも原作通りの流れなのかな?しかし、この目で見るとまたなんだか感慨深いものがあるね。そんなに長い別離でもないのに」

 

俺は今、玉龍寺の本堂の屋根の上で気配を溶け込ませながら平ちゃんの姿をした新ちゃんの推理を聞いていた……ふむふむ、西条さん改め源氏蛍の弁慶は以前は普通に剣道場に通うどこにでもいる義経大好きな一般人だったがとあるときに京都に義経流なる流派があることを知り、独学で学んで後継者を自ら名乗った、と。盗賊団の中の名前で「弁慶」なのは盗賊団の頭、廃寺になった玉龍寺の管理をしていた元住職が盗賊団のリーダーで義経を取ったから、戦闘力もありNO2だった彼が「弁慶」になったという。そして今回の連続殺人事件は金のために、盗賊団が盗んだ山能寺の仏像を一人占めしたいがために行ったことだそうだ。盗品を捌く役目を負った桜さんも殺したのはインターネットで販売相手を見つける事が出来たからだそうだ……技術の進歩の功罪のひとつだねえ。お茶屋から凶器を消したのも、手軽にできる携帯のGPS機能のおかげだし。

しっかし、本人は私欲じゃなくて洛中に「義経流」の道場を立てる費用のために、とか言っているけどそれだけで五人も殺すとはね。しかも元住職のリーダーも仏像を盗んだりとかなり罰当たりなことをしているし。この分だと他のメンバーもろくでもないことを裏ではしてそうだなあ。桜さんはお茶屋で物色して、家宅捜索では盗品がいっぱい出てきたって言うし。今回の事件って結局悪党が食いあったってだけの話かい……まあ和葉ちゃんに、平ちゃんに手を出さなければ勝手にどうぞと言いたいところだけれど落とし前はきっちりつけさせてもらうよ?

 

「それと、もう一つ!お前は龍斗には絶対に知らせるなと言ったな?あれはなんでがな?」

「!!」

 

……あー。新ちゃん。それ聞いちゃったか。弁慶は本堂に背を向けているからその顔は見えないけれど雰囲気が変わったのが見て取れる。

 

「……そおいえば、お前は|アイツ()()()()の幼馴染みなんやってなあ……!」

「っ!それがどないしたってわけや!?」

「まあええで。最後に聞かせちゃる。アイツは八年前、俺ら源氏蛍が盗みに入った家にたまたま遊びに来てよってなあ。その家は京都に古くからある家で山に畑に、どデカイ屋敷にごっつい土蔵があるっちゅうことが分かってて俺らも意気揚々と盗みに入った……」

 

ああ。確かにその時は俺は父さんの帰省に合わせて爺ちゃんの家に遊びに行っていた。

その頃はまだリミッターも十分に解かれておらず、だけど緋勇の血はしっかりと俺に引き継がれていた。爺ちゃんは遊びに来るたんびに俺に遊びと称して色々なことをしてくれた。今思えば、かなり戦闘訓練の色が濃い事が分かるが普段は出せない全力で体を動かすことが出来ていたので俺は深く考えもせずそれを楽しんでいた。

で。今日爺ちゃんに聞いて来たのだが、源氏蛍が盗みを働くために家に侵入した所に俺はかちあったらしい。勿論、爺ちゃんもその当時にいた大人の親戚の皆も盗人が入ってきていたことは気付いていて俺がその場を離れたら捕縛するつもりだったらしい(そこで「孫の身の心配は?」と聞いたところ「お前に必要か?志麻の所の志織ならまだしも」とありがたいお言葉を頂いた)。

ともあれ、様子を伺っていた爺ちゃんたちの予想に反して俺は彼らに襲い掛かった……らしい。これには爺ちゃんたちもびっくりしたそうだ。源氏蛍の連中も当時八歳の子供が襲い掛かってくるとは思っておらずびっくりしたそうだが。

まあ結果は、あれだ。ぼっこぼこにしたらしい。特に、弁慶は自身の剣術があしらわれて相当ショックだったという。そして今その思いは激しい憎悪になっているそうな。

……いや、それ俺悪くないよな?爺ちゃんたちが遊びと称してしていた戦闘訓練の延長の、「家に侵入者が入ってきたときの対処」だと思って襲ったと当時の俺は言い訳したらしいし、そもそも盗みに入った奴が悪い。まあそれでなんでそいつら(源氏蛍)が野放しになっているかというと俺に説教をしてそのまま放置してしまったからだという。その時の緋勇家の態度がまるで路傍の石、いやそもそもいないような振る舞いも弁慶には癪に障ったそうで。いつか復讐をと研鑽を重ねたらしい。いやあ、うちの一族はアウトローには厳しいからなあ。

 

「さあ、お喋りは終わりや!その水晶玉を渡してもらおうか!」

「そのかわりにか、和葉を離せ!」

ちょっとどもったな。

「ええで!仏像の隠し場所を教えてくれたらなあ!!」

「何!?」

「さあいえ!」

「…この寺の中だ!」

「なに!?」

「っふ。灯台下暗し、ってとこかな?」

「嘘言うな!この寺は頭が死んですぐに探した!どこにも「嘘じゃない!」っ!……いけ」

 

弁慶はその言葉に傍らに捕えていた和葉ちゃんの背中を乱暴に押して新ちゃんの方へと歩くようにしゃくる。和葉ちゃんはそれに従い、新ちゃんの方へと歩き弁慶と新ちゃんの丁度中間ほどになった瞬間。

 

「和葉!走れ!」

「え?」

「いやえぇあぁあああ!」

 

突如走り出した弁慶は腰に差した太刀を抜き、和葉ちゃんへと切りかかった。それを見た新ちゃんは同じく木刀を手に駆け出し。

 

「はあああ!」

「てあ!」

 

上段に構えた刀を勢いよく振り下ろす弁慶。

 

――キンっ!

 

「くっ!!」

 

その刀を木刀で何とか受け止めた新ちゃんは切り払い。弁慶の体勢を崩す…いや、あれは誘いだな。平ちゃんを昨夜襲ったときに剣の心得があることに気づいたのだろう。あれはわざと作った隙だ。まあ、外見平ちゃんの中身新ちゃんだからその隙に気づくことなく両者の距離が開くだけとなった。それは新ちゃんたちにとっては好機で、新ちゃんは和葉ちゃんの手を取って山門の方へと走り出した。

あと数メートルで到達できるという所で山門の方から駆け上がる足音が複数聞こえた。その音に気づいた新ちゃんと和葉ちゃんが足を止めると、山に方から般若の面を被り帯刀した男たちが8名、寺の敷地内へと入ってきた。そして、山門の前に立ちはだかるように並びそれぞれが抜刀した。

新ちゃんたちが山門から本堂…弁慶の方へと向き直ると弁慶の後方にも12人の抜刀した般若面がいた。

 

「ふっふっふ。俺の可愛い弟子たちや。ほんま、便利な世の中になったやんなあ。元々いた弟子たちにインターネットの闇サイトっちゅうところでくすぶっとった、人をぶった切る勇気のある連中もこの数カ月で弟子入りしてもろた。仏像を売って道場建てたら、緋勇の家を襲いに行くっちゅうわけや……お前らは手ぇ出すな!こいつのせいで八年も宝を肥やしにする羽目になった鬱憤、晴らさせてもらうで!てえええやあ!」

 

呵成を上げながら胴打ちを繰り出す弁慶。手に持っているのは刀なので当たればもちろんただでは済まない。新ちゃんは手に持った木刀で受けようとするが、とっさに身を引いた。その時、中段で構えていた木刀がその場に残り横なぎの餌食となった。

柄のみとなった木刀はすでに武器として用をなしておらず、新ちゃんは振り寄せてくる刀を危なげながら紙一重で避けていく…が。

 

「やめて!その人、平次とちゃう!!」

「はあああ!」

 

―――っスパン!

 

回避に専念し、後退した新ちゃんに押しのけられて体勢を崩した和葉ちゃんが新ちゃんの顔をしたから仰ぎ見てそう叫んだ。その叫びと同時に、振り上げられた刀が帽子を切り飛ばした。

 

「!!?だ、だれや?誰なんや、お前は!!」

 

帽子がとれ、顔を正面から見た弁慶もお茶屋で見た平ちゃんと顔立ちが違う事に気づいたのだろう。誰何の声を上げる。

その言葉に、顔全体を二の腕で拭っていた新ちゃんは顔を晒しながらこう言った。

 

「工藤新一……探偵だ!」

 

 

――

 

「く、工藤君?」

「さあ、立って」

 

呆気にとられる和葉ちゃんを立たせた新ちゃんは周りを伺う。だが、左右にもゆるく包囲陣が敷かれていて逃げ道がない……というか、そろそろ限界なんだけど。

 

「くそ、だましよったな!」

 

駆けてくる弁慶から逃げるように反対方向へと動いた二人だったけど、すぐに般若面が立ちふさがった。新ちゃんは振り返りざまに弁慶へと手に持った木刀の残骸を投げつけた。

弁慶はそれを刀ではじいたが、その隙に二人は弁慶の脇を走り抜け、鐘楼の傍に位置を動かした。

新ちゃんが和葉ちゃんを慮るように見て、だが次の瞬間表情を歪ませて心臓の当たりを掻き抱く。

その、動きが止まった新ちゃんに対して好機と見たか般若面を被った一人の男が包囲陣から抜けだし刀を振り上げて新ちゃんに迫る。

 

「しまっ……!?」

「っっ!!!」

 

思い切り振り下ろされた刀はしかし、新ちゃんの目の前でぴたりと止まる。

 

「!?」

「探偵をやらしたら天下一品やけど、侍としてはいまいちやな」

「は、服部!?」

「平次!?」

 

 

 

――

 

 

 

 

『じゃあこういうのはどうだ?折衷案だ。龍斗はこれから玉龍寺に単身で乗り込む。勿論、その時に彼女が傷つけられている、又は傷つけられそうになっていたら服部には悪いがオレはもう何も言わねえ。だけど、無事だったら。服部が目を覚ますのを待っててはくれねえか?せめて約束の時間。奴らがしびれを切らせて妙な行動をし出す前までは』

『なるほど。俺が潜入して監視していればひとまず和葉ちゃんの身の安全は保障できるから、だね?』

『そういうこと。少なくとも、こっちの奴らの欲しがっている(白毫)がある以上、彼女が龍斗の言ったような目に合っている可能性は低い。だが、オメーや服部の心配は0じゃねえと解消されねえだろ?だから、先行して龍斗の目で確かめてくれ。そして、出来る事なら服部を待っててやってくれ。こいつなら這ってでも行くだろうからよ』

『本当なら、そんな時は止めないといけないんだろうけど、ね。紅葉(大切な人)ができた今の俺ならその気持ちが分かるよ。でも、だからこそ。俺は平ちゃんが起きる様な小細工はしないよ?気付けの技術は確かにあるけど、そこは平ちゃんの根性を見せてもらう』

『お、おう。分かった。でもくれぐれも先走るんじゃねえぞ?そして動くことになれば全力で大暴れだ』

『……分かった。それなら俺も安心して動ける。じゃあ、新ちゃんまた後で』

『…ああ。龍斗も気を付けて」

 

 

 

平ちゃんの病室でのやり取りの後、俺は玉龍寺へと侵入し和葉ちゃんの無事をこの目で確認して新ちゃんとの約束の通り監視に移った。

そして約束の時間が過ぎ、和葉ちゃんが監禁部屋から移動を始めた頃に寺に侵入する影を見つけた。俺はその人物が一人でいた般若面を気絶させて衣服を奪っている所を後ろから口を押えて話しかけた。

 

「平ちゃん」

「(~~~~!??!?た、龍斗か!?)」

「声を小さくね?」

「……っぷっは!?ビックリするやないか!?というか龍斗?!」

 

忍び込んでいたのは平ちゃんだった。事情を聴くと、どうにかこうにか目は覚めたが自分の衣服はないし新ちゃんの姿はないし約束の時間は移動時間を含めると過ぎてしまうしとかなり逼迫した状態であるということにはすぐ気付いたそうだ。しかも、部屋の外には自分を監視するような声も聞こえると言うので彼は部屋のカーテンを伝って階下に降りてきたらしい。

本当は正面堂々と登場したかったそうだが、時間も過ぎていたので奴らの仲間に変装して侵入することを選んだそうだ。俺も、自分がなぜここにいるかを説明した。

 

「そらあえらい世話かけてしもたな」

「そういいっこなしだよ。和葉ちゃんは俺にとっても大事な妹みたいなものだしね。じゃあ…んん?」

「どないした?」

 

じゃあ一緒に和葉ちゃんを助けてお暇しようかと言って脱出しようかと考え、俺は和葉ちゃんの監視のために範囲を玉龍寺のみにしていた感覚を鞍馬山全体へと(逃走ルートの把握のため)伸ばすと、参道を登る一人の男性に気づいた。

 

「あーあー……」

「だからどないしたって聞いとんのやけど?」

「いやね……」

 

俺は気付いたことを正直に話した。

 

「それはまたけったいなことに…いや、確かあの科学者のねーちゃんも京都に来とったから協力を仰いだんやろな」

「哀ちゃん、きてるの?」

「そや、知らんかったんか?まあそれはともかくなんや混沌としてきたな……龍斗。工藤が元の身体に戻るっちゅうのはそない簡単なことなんか?」

「いや、聞いた話じゃあかなり体の負担になるって話だ。しかも頻回すると元に戻れなくなる可能性もあるらしい」

「…そない深刻な可能性もあるっちゅうんか。オレが時間通りに意識を取り戻せなかったから……なら、その漢気を無駄にするわけにはいかんやんな?龍斗」

「……なんとなーく、平ちゃんの言いたいことが想像ついたけど。もしもの時は構わずぶち壊すからね?」

「上等ォ!」

 

平ちゃんの提案は、新ちゃんと和葉ちゃんが合流脱出するまで手を出さない。命の危険がある場合は介入(本堂の屋根にいる位置関係上、礫で攻撃)する。もしくは平ちゃんが姿を晒し、俺の名前を呼んだ場合も同様。

 

「…俺は平ちゃんや新ちゃんの意向があるなら出来うる限りは尊重したいよ?前者は分かるけど後者はなんなんだい?」

「そらあ、オレがこの肩の怪我の借りを返すために邪魔な取り巻きを龍斗に相手取って貰うつもりやからに決まってるやろ?」

 

こ、この色黒男……

 

「まあ冗談やけど。あの男は和葉に手ぇ出しよった。きっちり落とし前つけさせな男が廃る!」

「…そっか。まあ、それならいいや……平ちゃん」

「??なんや龍…斗ぉ!?」

 

俺はさっきのセリフを言ったせいでちょっと照れてあさっての方向を見ていた平ちゃんを呼んだ。

その言葉に振り返った平ちゃんに有無を言わさず、とある()()を行う。

 

「いったぁ!?いきなりなにすんね、ん?あれ?痛ない?」

「流石に病み上がりじゃあ不安だから。これから二時間の絶好調をプレゼント。代償は三日間の筋肉痛。まあ、若いしだいじょーぶだいじょーぶ」

「……ホンマに絶好調みたいやな。ちゅうか整体って時間をかけてするもんでしかもこないな劇的な効果なんてあるわけないやろ!?」

「まあそこはほら。驚異の技術力?ですよ。勿論代償は効果が高い分、相応にきついから覚悟してね?」

「は、はは……それじゃあ」

「うん。行こうか」

 

 

 

 

――

 

 

 

「待たせたなぁ、和葉」

「…!……って、何が待たせなあ、や!何しとったん?!このドアホ!!」

「ああ、それは「ってい!」っは!……それはええ!おいコラ工藤!「はああ!」っと!せい!よくもオレの服をパクリよったな!お蔭で病院着で歩き回る羽目に「隙あり!」…隙なんてないわボケ!……それに」

 

新ちゃんに話しかけながらも襲い掛かる般若面を捌いて行く平ちゃん。攻撃の波が一旦落着いたところで二人の傍に戻り、新ちゃんの顔を人差し指でなぞった……そろそろ、俺も参加していいのかね?タイミング逃した気がする…あ、まずいなこれは。

 

「何塗ったんか知らんけどなあ、オレはここまで色黒ないぞ?」

「そうか?」

「まあええ……っち。しもた」

「え?」

「平次!!」

「囲まれたか」

 

第一波を退けたまではいいが、そのまま包囲されてしまった。背中に鐘楼、三方向は刀を持った般若面。

 

「やっと本物が来よったか。さっきまでは俺自らたたっきってやろうかと思てたけど気が変わったわ…弓隊!構え!!」

「何!?」

「平次、あれ!!ヤバイで!?」

 

和葉ちゃんが指差した方には本殿から横筋の階段に10人ほど弓を構えた般若面が弦を引き絞っていた。

 

「インターネットで集めた弟子は刀だけやないで?動く人を狩りたいいう、狩人(射手)もおったんや。刀隊21名、弓隊10名。戦闘だけで言えば俺は御頭(義経)の率いた源氏蛍を超えたんや!さあ、緋勇への復讐の前哨戦や!その三人は矢達磨にしてしまえ!!」

 

その言葉により一層弦を引き絞る般若たち。それを阻止すべく動こうとした、鋭敏化させていた俺の聴覚は。

 

「大丈夫や、和葉。オレ達には頼りになる兄貴分がついとる……なあ?龍斗」

 

そんな平ちゃんの呟きを聞いた。

 

 

 

その直後、10本の矢が三人へと殺到した。

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「ぐあっ!」「いてえ!?」「うわあ!?」「あぶねっ?!」

 

「お、お前ら!?なんだ、何が起きたんや?!」

 

平ちゃんたちに矢が放たれた瞬間、俺は手に持っていた礫を都合10発弾き飛ばした。弾いた礫は狙いにたがわず新ちゃんたちに殺到していた矢に命中し、弾かれた七本は囲い込みを行っていた般若の足元に刺さった。そして残りの三本は新ちゃんたちが寺の門へと進むために邪魔となる般若の腕に刺さっていた。

 

「な、なんだ?突然矢が砕けた?」

「な、何が起きたん?平次?」

「………(ナイスや。龍斗!)道は開けたで、工藤。お前ははよいけ!ちっさなるまでどっかで隠れとけよ?元に戻ったら帰ってこい……ま、オレと()()で終わらせてるかも知れへんけどな!」

「(龍斗…?成程、そう言う事か)わりぃ、服部!」

 

そう言って山門の方へと駆けていく新ちゃん。首元からは白い煙が見え始めている。そろそろ限界だね。

 

「!?まて、何が起こったのかはまた後や!そいつを!「おっとお!」っこの、ガキ!」

「お前らの相手はオレじゃあ!ってえああ!」

 

新ちゃんを追うように指示を出す弁慶、その指示が出る前に動き出した般若たち。だが、その行動は山門を背に仁王立ちする平ちゃんによって気勢をそがれた。

上段から振りかぶられた刀を刀の鎬で巧みに払い、相手の勢いに平ちゃん自身の勢いを合わせて体勢を崩す。一人目の般若が体勢を崩し始めたと同時に動き出した、平ちゃんから見れば死角にいた二人目の横払いに平ちゃんは瞬時に反応し刀を合わせて切り上げる。握りが甘かったのか、刀は本堂の方へと飛んで行った……いい集中力だ。俺がさっき平ちゃんに施したのは痛みを忘れさせるのと、彼の潜在能力を引き出す業だ。といっても、そこまで劇的なものではなく真面目に鍛練を積んでいれば二十歳には到達できるくらいの平ちゃん自身の未来の力。だが、目に見えて動きに差が出る程なのだから平ちゃんの潜在能力(ポテンシャル)が高い事の証左だね。まあ殺陣をやっている事、和葉ちゃんを守らないといけないことが限界以上の力を出させている要因にもなってるだろうな…って呑気に考察している場合じゃないね。

 

「和葉!工藤に会うたこと誰にも言うなよ?あの姉ちゃん(蘭ちゃん)にもな!」

「え?蘭ちゃんにも!?なんで!?」

「なんでもや!……どうせ会われへんのや。言わん方がええ」

 

…そう、だね。

 

「っはああ!」

「…っふ!」

 

平ちゃんと和葉ちゃんが会話している間にも般若たちは構わず襲い掛かっていた。だが、平ちゃんは時に受け流し時には避け蹴りをかましていた。

 

「っはー……雑魚は雑魚やけど、こう数が多いと敵わんなあ」

「……なんやと?」

「あ、怒りはりました?まあ大将のあんたがその体たらくやからわからんでもないけどなあ」

「お、お、お、お前!?こ、殺したる!!」

「だってそうやろう?あんたの仇が一時間以上この寺にいるいうのにぜんっぜん気づかへんかったもんなあ?」

「……なんだと?」

「なあ、龍斗!」

 

顎をしゃくって俺の位置を示唆しながら俺の名前を呼んだ平ちゃん。多分、意図するところは平ちゃんと俺にヘイトを向けて新ちゃんと和葉ちゃんに凶刃が行かないようにすることなんだろうね。刀はともかく、弓で一斉に射かけられたら平ちゃんも身を挺さなくちゃいけなくなるし。

 

「ひ、ひ緋勇うぅぅうううううう!!!」

 

わ。そりゃあ平ちゃんのあおりと俺への憎しみ?ですごい顔になってるな。

 

「貴様、そんな所にいないで降りて俺と戦え!積年の恨み、今ここで晴らしてくれる!!」

「いや、唯の逆恨みでしょうに……しかも犯罪者がそんなこと言うなんて片腹痛い」

「~~~!?~~!!?弓隊!何してるんや!?今すぐあいつを落とせ!!」

「は、はい!」

 

あーあー。リーダーがあんなに感情を表に出して。冷静さを失ったらだめだろうに。

俺は飛んでくる矢を礫で、手で払いながら下の様子を伺っていた。

 

「おい!龍斗ばかりに気が行っとるなんてオレをなめすぎとちゃうか?」

「どいつもこいつもオレを、バカにしやがって!はああ!」

「っし!」

 

俺が矢を打ち払い、和葉ちゃんの方へと行こうとする般若の足元に礫を投げていると弁慶と平ちゃんが打ち合いを始めていた。

先ほどまであしらっていた般若たちを相手にするとは違って、正眼に両手で構えた平ちゃんに唐竹、胴薙ぎ、さらには剣法にはないような無軌道な軌線で刀を払う弁慶。その、怒りに任せた猛攻も冷静に払い、流し、受けていた平ちゃんだったが切り上げを流そうとした時刀が半ばから折れてしまった。

 

「焼きが甘すぎんで、この刀!」

「すきあっりい!」

「平次!……てぇええい!」

 

刀が折れたことを好機と見たか、囲んでいた雑魚般若が囲みから抜けて平ちゃんへと切りかかった…そう言うとき自己判断で勝手に動くから追い詰めきれないのに。やっぱり寄せ集めだからかな?

俺が冷静にそんなことを考えられたのは、平ちゃんの後ろで守られていた和葉ちゃんがすでに動いていたのが見えていたからだ。

彼女の合気で見事に飛ばされた般若は丁度牽制する形で弁慶たちの前に倒れ、その隙を見て平ちゃんは和葉ちゃんの手を取ってお寺の建物へと走って行った。

 

「まてや!…弓隊はそのまま緋勇を射かけえ!アイツが飛ばす礫も限度があるやろ!?それから刀隊も五人、落ちてきた緋勇を殺さない程度にめったざしにしとけ!残りは逃げた奴を追うで、ついてこい!」

 

あ、流石に13人(21人の刀隊の内、3人は矢が肩に刺さり戦闘不能。5人はココに残る。数人は明かりを持たないといけないから13よりは少ないけど)今の平ちゃんでも無手だとヤバいか。俺はそう思い、走っていく般若のうち、刀を持っていた最後列の4人の頭に礫を投げた。

充分に手加減したそれは狙い通りに当たり、四人の般若は声もなく倒れた。

 

「さて、と」

 

俺も本堂の上で話を聞いていて少しだけ思い出したことがある。この後の展開だ。確か刀をどこかで手に入れて本堂の屋根の上で一騎打ちをするのが原作の流れだ。俺がいる以上その通りにする必要もないが弁慶の力量、平ちゃんの今の能力なら俺が雑魚払いに専念してもいいと判断した。やっぱり、ここは平ちゃんの信念を優先しよう。

 

「おい!さっさと降りてこんかい!師範がいうとった通りそこ(屋根の上)におったら弾切れになるやろ!観念せい!!」

「………」

 

俺はその言葉に()()()()()()投げていたものの原寸大の物体をその男の足元に投げた。

 

――パリーン!

 

「ひ!?……って、これ瓦か!?」

 

そう、俺がさっきから投げていたのは本堂正面の反対側の屋根から引っぺがした瓦を砕いたものだ。手元にはまだ裏から取ってきた瓦が残っているし、足りなくなれば俺の足元から引っぺがしてまた投げればいい。ある意味弾数無限だ。

下にいる般若たちもそのことが分かったのだろう。般若面の下で苦虫を噛み潰したような表情になっているだろうな。けどね?

 

「んあ!?」

「別に上からちまちま狙撃してしても良かったんだけどね?」

 

本堂の屋根の上にいた俺が飛び降りたことにきょどる指示を出していて般若。

 

―俺も、和葉ちゃんを攫われてキレテイルンダヨ?

 

 

 

――

 

 

 

ん?どたどたと足音が。まあ二人の同行はしっかり()()()()()()()誰かは分かっているんだけどね。

 

「龍斗!」

「龍斗君!」

「二人とも無事で何よりだよ」

「……まあ、わかっとったけどな」

「って!なんでそんな気の抜けた声出してんねん!?そいつら弓引き絞って!引き絞って…?」

 

そこでどうやら違和感に気が付いたようだ。弓を引き絞った体勢で固まり、時折プルプルと震えた様子の弓隊に、刀を水平にもった状態で固まる刀隊。その全員が俺が背を向けているのに一向に動かないことに。正直に言うのも納得いかないだろうし、今は説明している暇もないので小さい時にやったことを引き合いに出した。

 

「ほら、昔和葉ちゃんに「ものすごく力が出るツボ」って押してあげたことがあったじゃない?あれの応用でしばらく動けなくなるツボってのがあるんだよ」

「そ、そうなん?」

「そうなんそうなん……平ちゃん、武器手に入れたんだね」

「おうよ。それで龍斗。そっちにも因縁があるみたいやけど」

「分かってる。今回は『邪魔な取り巻きを俺が(龍斗に)相手取って』やるよ」

「うわ!今の平次の声?」

「……そう言えば工藤が前いうとったな。声帯模写もできるって。龍斗、お前さん大道芸人でも食っていけるんとちゃうか?」

 

 

 

――

 

 

 

「どうやら、オレの出番はなさそうだな」

「コナン君!どうしてここに?」

「え?あ、ぼ、ボクも和葉姉ちゃんが心配で!」

 

あの後、追ってきた弁慶を挑発し平ちゃんは弁慶と一騎打ちへと持ち込んだ。その一騎打ちの場所は俺がさっきまでいた本堂の屋根。下にいた俺達にも残りの弟子たちを嗾けてきたがそこは平ちゃんとの約束通り俺が対処した。そして下から二人の決闘を見守っている所にコナンに戻った新ちゃんがやってきたと言うわけだ。

 

「そうだコナン君。この場に銃刀法違反者が大量にいることを知らせないといけないんだけど」

「あー、ココ圏外だもんね…そうだ!」

 

そう言って新ちゃんはかがり火が倒れて散らばっていた火のついた材木の1つを手に取ると塀の傍にまとめてあった枯れ木へと投げ入れた。乾燥していたようで、見る見るうちに火は大きくなった。

 

「あの火に誰か気づいてくれれば…!」

「い、いやコナン君?結構な勢いで燃えてるんやけど?」

「んー、派手に燃えているけど生木を燃やすほどじゃないよ?空気も湿ってるし、ある程度燃えたら勝手に鎮火すると思う。でもまあ、もしもの時のために俺が火の近くにいるよ。それより…」

 

俺が目線を上にやると、それに合わせて二人も平ちゃんたちを見た。

 

 

 

 

「そろそろ決着をつけようやないか?オレにはお前だけやのうて(龍斗)の相手がおるさかいなあ!」

「お前に次はないで?はああ!」

 

正眼の構えを解き、両手を下げた弁慶に猛然と走り切りかかる平ちゃん。隙だらけの顔面に渾身の振り下ろしが決まる―寸前に今まで下げていた左手を刀の前へと差し出す弁慶。平ちゃんはその腕に刀を振り下ろさず寸前で止めて2歩分後ろへと飛びのいた。

 

「はん!小手の巻いた腕で受け止めて、体勢を崩すその手!2度目は通用せんで?」

「そんなら……これならどうや!」

 

…小手なんか差し出したらそのまま小手ごとバッサリ逝くような人って結構いるのにな。

そんな風に思っていると弁慶は腰に差していた脇差…「小太刀か…」小太刀を抜いた。

 

「大小合わせての二刀流…義経流やのうて宮本武蔵流に改名しとったらどうや?」

「ふん、軽口叩くのもそこまでやな!これはただの小太刀やない!即効性の猛毒がぬってあるんや。ちいとでもかすればお陀仏やでぇ?」

「……」

 

その言葉に唯々目を細める平ちゃん。今日一番の集中だ。

 

「てゃ、はっ、ったあ!」

「ふ、っち、おおおお!」

 

弁慶が太刀と小太刀を縦横無尽に滑らせる。しかし平ちゃんは小太刀に警戒しつつ、隙があれば反撃を返していた。むしろ、太刀を一本で打ち合っていた時の方が…いや?

 

「毒を使うなんて卑怯な奴!って思ったけど…」

「うん。平次兄ちゃんが最初より押してる?」

「いや、あれは…」

「あれは?」

「平ちゃんの調子がどんどん上がって行っているんだよ。明確に「死」に直結する刃を前に、持てる全てを出してさらにその高みを駆け上がってる…って言えばいいのかな?とにかく…」

 

―弁慶に勝ち目は、ない。

 

そう続けようとしたのだが、平ちゃんがバックステップしたときに何かに引っかかり体勢を崩してしまった。弁慶はその隙を見逃さず、さりとて小太刀を持っている左手は平ちゃんのいる所と逆方向に流れていた体勢だったため、蹴りを放った。

それを喰らった平ちゃんは屋根から落ちそうになるが刀を屋根に刺し、なんとか踏みとどまった。

 

「はあはあはあはあ……は、ははは!これで、オレの勝ちや!」

「っく!」

 

「あかん、平次が危ない!た、龍斗く「龍斗!」…!!」

 

新ちゃんの声に目線をやるとキック力増強シューズのダイヤルをまわし、俺の方へと駆け寄ってくる新ちゃんの姿があった。俺はその意図を理解し、両の掌を組み中腰になって構えた。

駆けてきた新ちゃんはその勢いのまま俺の方へとジャンプ、手のひらに足を掛けられたと同時に俺は新ちゃんを空中へとかちあげた。新ちゃんは空中を舞い、ボール射出ベルトからサッカーボールを出して小太刀を振り上げている弁慶へと蹴りだした!

 

「くらええええええええ!」

「!!?っぐあ!?」

 

ボールは平ちゃんの方ばかりに気をやっていた弁慶の腕に寸分の狂いなく命中し小太刀を弾き飛ばす。

 

「って。うわ!」

 

若干本堂側に投げてしまったので、新ちゃんの落下位置は和葉ちゃんの隣になっていたので俺は落下ポイントに駆け寄り落ちてきた新ちゃんを受け止めた。

 

「いっけええ!服部!!」

「平次!!」

「これで決着だ!!」

 

その声援に笑みを浮かべ、刀を構えた。二人は裂ぱくの声を上げながら刀を振る。煌めく白刃が二人の間で交錯するが…

 

――キィイィイイィン!

 

甲高い音とともに今度は弁慶の刀が折れる。そして…

 

「てええりゃ!」

 

平ちゃんの胴打ちがきれいに決まり、弁慶は本堂の屋根を勢いよく滑り落ちそのまま屋根の縁から落下する…間際に平ちゃんが足首をむんずと掴み彼を救った。弁慶はまだかろうじて意識はあるようだが動けなくなっている。

 

「義経になりたかった弁慶か。あんたが義経やったら史実に残るような偉業も仲間もでけへんかったやろな。そもそもあんたが貰とった字の「弁慶」でもしも義経とともに安宅関におったら義経一行は皆殺しにされとったやろな」

 

まあ平ちゃんの言う通り自己顕示欲の塊で私欲にまみれた西条(弁慶)ならそうなっていただろうね。実力も…だし。

 

「…ああ、いや。「もしも」やないな。実際、あんたは古巣(源氏蛍)の仲間を皆殺しにしよった。そないな奴が歴史に名の残る大人物になれるわけないやろが。剣術だけ極めてまっとうに生きていれば、誰か(義経)()()()()やのうて誰かの()()()()()()()と志して竜円さんたちとつるんどったままやったら、また違うた未来があったかも知れへん。けど、横道の邪道にそれまくったからにこの結果があんたの限界や……ジャリ(小学生)の龍斗に負けて。そっから鍛えてきて今、ガキ(高校生)のオレに真剣勝負で負けた。昨夜はオレが木刀でやりおうて負けてんやから、あんた…」

 

―剣術の才能、なかったんとちゃうか?

 

 

その言葉に打ちのめされたのか、西条は気を失った。

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

「これで源氏蛍の1件は全部片付いたな」

「そうなる、のかな?伏兵もいないみたいだし…はー、なんかもう疲れたよ」

「龍斗が疲れるなんて言うなんて珍しいな?」

「そりゃ、屋根の上でずっと気を張ってやきもきしていたからね。平ちゃんに化けた新ちゃんが来て殺陣を演じてた時は、いつ平ちゃんとの約束なんてぶっちして飛び出そうかと身構えていたからさ」

「もう!コナン君、また龍斗君の事「龍斗」って呼び捨てにしてる!さっき平次の事も「服部」って呼び捨てにしてたやろ?ダメやで、年上の人を呼び捨てにしちゃ。龍斗君も注意せなアカンよ!」

「ご、ごめんなさい。つい興奮しちゃって」

「ごめんごめん。まあ子供だし、気が昂ぶってたんだろうなって気にしていなかったよ」

「ちゃんと周りの大人がダメなことはダメやって教えてあげんと子供のためにならへんよ?…あ、平次!」

「おう」

 

西条が気を失ってすぐ、玉龍寺には警察や蘭ちゃん親子そして何故か博士と哀ちゃんがやってきた。警察は気絶していたり、なぜか構えた体勢で硬直している般若たちを次々と逮捕していった。そして、屋根から降りた平ちゃんに駆け寄る和葉ちゃん。

 

「この寺……」

「何か気づいたの?」

「ああ。さっき言った源氏蛍の1件、って言うのはメンバーを捕まえたことだけじゃねえ。あの謎も解けたって事さ」

 

どうやら、新ちゃんたちが京都に呼び出される要因となった仏像の在り処にもめどがついたようだ。

 

「どうやら、薬の効果は一過性の物だったようじゃの」

「博士。それに哀ちゃんも。平ちゃんに哀ちゃんが来てるって聞いていたけどどうしてこっち(京都)に?」

「ははは、子供たちのどうしてもせがまれてのう」

 

それでこっちに連れてくるんだから人がいいと言うかなんというか……それと、玉龍寺に警察を連れてきたのは博士たちかな?

 

「あの……」

「哀ちゃん?」

「いえ、なんでもないわ。貴方のお蔭で、また薬の貴重なデータが取れたわ」

「はははは……」

 

京都に来たことで、俺は新ちゃんと話は出来たけど哀ちゃんとはまだ黒の組織との邂逅以来しっかりと話せていないからなあ。折を見て。話さないとね。

 

 

 

「大丈夫なん?平次」

「まあ、なんとかな。この後が怖いけど」

「この後?」

「何でもあらへん。それにしても、仏像はどこにあるんやろか?西条はこの寺探し回ったいうとったけど、暗号の答えは玉龍寺(ココ)やし…」

「うぉっほん!」

「ん?」

 

わざとらしい咳払いをして意味深に平ちゃんへと首肯を見せた新ちゃん。

 

「??」

「ねえ、服部君!しんいっ!……」

「お?なんや?」

「……ううん、なんでもない」

 

……さては新ちゃん。山道かどこかで蘭ちゃんと出くわしているな?

新ちゃんを見ると神妙な面持ちで蘭ちゃんを見ていた。

 

 

――

 

 

「いったたたったった!なんなんや、これ!?」

「だから言ったでしょう?筋肉痛になるって」

「言われたけどこないな痛みになるとは聞いてへんで!?」

「そりゃああんだけ派手に動けばプラスアルファで負債がたまるに決まっているでしょう?まだ今は文句言えるくらいだろうけど、その様子だと俺達が今日帰ってから夜は声も出せないくらいになりそうだね」

「!?!?オマエ、他人事やからって気楽にいいよってからに!今でも動くの辛いんやぞ?!」

「……いいじゃねえか、そんくらいにしとけよ服部。オメーが服着替えている時に龍斗に聞いたけどこれから3日間まともに動けねえことなんか目じゃないくらいメリット有るって聞いたぜ?」

 

俺達はあの後日付が変わっても続けられている実況見分の舞台である玉龍寺にいた。ここはその鐘楼の中。

平ちゃんは俺の施した整体の効果が切れてその反動が体を襲っている真っ最中で動きに先ほどまでのキレはない。

 

「まあ、西条と一昨日やりおうた時に貰た怪我の違和感もなく今まで以上に力が出せたんやけど…」

「龍斗曰く、あれは「二十歳前後のお前」の実力だそうだ。しかも龍斗の見立てだとそれを今経験したことでしっかり鍛錬すれば3年後は今日以上の実力を得られるらしいぞ?」

「なんやそれ!?ホンマか?!道理で相手が何してくるかよう見えると思ったわ」

「先行経験、とでもいうのかな?しばらくは理想(未来)現実()のギャップに戸惑うかもしれないけどいずれ出来うる動きを経験したことは平ちゃんにとって大きな道標となるはずだよ。倒したいライバルがいるんでしょう?」

「ああ!なら、この経験を無駄にせんためにも練習に励んで今度こそ完膚なきまでに沖田を倒したる!……っていたたたたー!だあ!とにかく、あけるで!?……おお!あったで、工藤!」

 

新ちゃんは俺に放り投げられた空中でこの寺の建物が「玉」の字の形になっていることに気づき、点の位置に鐘楼があることからそこの中に仏像があると推理した。

 

「「玉」の漢字にウ冠をつけると「宝」になるだろう?そのウ冠っていうのは屋根を現しているんだ。つまり、仏像は鐘楼の屋根裏にあるって事さ」

「なるほどなあ」

 

筋肉痛にあえぐ平ちゃんに仏像を降ろさせるのは心配だったので俺が代わりに降ろした。床に下ろした仏像に平ちゃんは宝物の白毫を額につけた。

 

「これでほんまのほんまに大団円やな」

「だね」

「ああ」

 

その後、俺がこっそり仏像を担いで山能寺へ仏像を運び平ちゃんの帽子をかぶせて(平ちゃんにそうしろと指示された)、俺は事の顛末を紅葉に報告がてら、散歩へ誘った。

 

「そないな結末になったんやねえ。そう言えば東京組は今日帰るんやろ?なんとも忙しないことです」

「そうだね。俺達はお互いの都合で明日だけど、今日も家でじっとしているわけでもないし何とも言えないさ」

「それにしても、初恋の相手って誰やったんやろね?」

 

ああ、そういえば。俺もあの後何ともなしに聞いたけど、「秘密や!」って言われた。けど……

 

「なんだか、誰か分かったみたいだったよ?」

「え、ほんまですか?」

「本人は教えてくれなかったけどね。まあ多分、おめかしした和葉ちゃんをそうとは知らずに一目ぼれした、って所じゃないかな?」

「ああ、なんや想像つきます」

 

くすくすとお互い笑いながら、たわいもない会話を続けて俺と紅葉は桜並木の咲き誇る道を並んで歩いていった。

 

 




※統合した話の前書き・後書きを載せています。

(7/9前書き)
このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路 が元になっています。終わりませんでした……まさか八月にまたぐとは思いませんでした。火曜日に伸ばしてしまったのに、申し訳ありません。
(7/9後書き)
一応、原作からの相違点とその訳。
・弟子の数が十数人→30人ほど。
インターネットによる、人を刺してみたい射ってみたいという犯罪者予備軍を傘下にして緋勇家へ襲撃を掛けるという計画が進行していた。
・龍斗がすぐに和葉救出に出なかった訳、コナンが新一になった理由、服部が出てくるまで龍斗が動かなかった訳。
一応、本編に出てきたのがすべてです。ちょっとむりくりかなと思いますが、行動の裏付けには違和感ないように氣をつけたつもりです。
・源氏蛍との因縁(本編じゃ語られなかったこと)
八年前の子供の龍斗は弦麻(祖父)から色々な戦闘訓練(龍斗からしてみれば遊び感覚)を受けていたので源氏蛍との遭遇もその一環だと勘違い。龍斗がその事と源氏蛍を繋げられなかったのは返り討ちにした盗人連中が源氏蛍という輩だったという事を親戚の人たちが龍斗に伝えなかったからというオチ。警察に突き出さなければという事に気づいたのは全員が母屋に戻って暫くしてからだった(割と穏やかな性格だった龍斗が意外と容赦なく攻撃していたことに親戚一同驚いていた)。その時にはすでにある程度回復していた源氏蛍一行は脱兎ごとく逃げ出していた。
弦麻がその盗人が「源氏蛍」だと知っていたのは、取り逃がしてしまったことに多少の後悔があったため。なぜ、弦麻が改めて源氏蛍を捕まえなかったのか(そうすればこの事件自体無かったのではないか?)とかいうさらなる設定もありますが本当に蛇足なのでこの辺で。
(8/9前書き)
このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路 が元になっています。
どうにも、戦闘描写が龍斗の実況みたいになってしまいました。原作からの小さな変更点が多めです。あと、クライマックスシーンがあっさり風味になってしまいました。折を見て、加筆したいと思います。
(8/9後書き)
龍斗がノッキングで刀隊、弓隊を固定したのは部下が見た目健在であることで西条の行動を誘導させやすくする狙いがありました(一騎打ちの布石)
龍斗が弓隊を全滅させてしまっていたので、龍斗がコナンを空中に放り投げるという演出に変わりました。実はこれがクロスロードを題材に描く上で一番やりたかったシーンだったり…服部は割と感情でズばって言ってしまいそうなので(蜘蛛屋敷の時とか)和葉が誘拐された恨みつらみを西条が一番ダメージを受ける言葉で返しました。まあ、まだ彼も高校生ですしね。短いですがエピローグは明日にあげます。
(9/9前書き)
このお話は劇場版名探偵コナン 迷宮の十字路 が元になっています。
これにて十字路編完結です。しばらくしたら、十字路編は結合させて三篇くらいにまとめると思います。次回からは再び原作に戻ります。予定としては43巻の事件になります(現時点でまだ二択で迷っています)。
(9/9後書き)
なし。
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