今日って火曜日なんですね…完全に曜日を勘違いしていました。遅くなって申し訳ありません。
それではどうぞ!
「え?」
「そ、そんな…」
「まさかそいつ、殺されたんじゃねえだろうな!?」
「違うわよ!三丁目の交差点でトラックにはねられたのよ」
「(交通事故)」
「ああ……確かに一昨日の昼過ぎ。高校の午後の授業が始まってからだったので二時くらいでしたか?パトカーに救急車がうるさかったですね」
「そう言われてみれば、その交通事故。ニュースでちらっとやってたな。確か身元不明の男性だとか」
「ええ。そっちのイケメン君が言っての通り、事故があったのは一昨日の午後二時前。通行人がすぐに救急車を呼んでくれて病院に運ばれたけど打ち所が悪くてその日の夜には…ね。それでなくなったのがどこの誰なのかを調べていたってわけ」
「ちょ、ちょっと待て。その交通事故、ひょっとしてひき逃げってなんてことはねえよな?」
「いいえ。その人を轢いたのはトラックなんだけどその運転手は逃げてなんかいないし、それなりに人通りの多い所で事故の目撃者も多かったの。その話だとトラックの運転手の人に同情の声が多いのよ」
「と、いうと?」
「なんでもその名無しの権兵衛さん、路駐していた車の陰から突然飛び出したそうなのよ。通行人も「危ないぞ!」ってわざわざ声をかけた今時珍しい優しい人もいたみたいで。まあ、その人も目の前で人がひかれてショックを受けて病院のお世話になりそうなのよ」
「それはまた気の毒に。ん?突然飛び出したって言うと自殺の線もあるんじゃねえか?」
「そっちの可能性も皆無だと思うわよ。その人轢かれる前に事故現場近くのコンビニで道を聞いていたの。「ポアロって店、どこにあるか知っていますか?」って、すごく慌てた様子でね。今から死ぬ人間がそのコンビニから2キロ離れたこの喫茶店の事を聞くなんて思う?」
「まあ確かにな。でも、その証言のお蔭で何故事故が起こったのかが分かるな。つまりその男はこの店に忘れた携帯電話を取りに戻ろうとしたところでトラックに轢かれたってわけか」
いや、小五郎さんの推理には一個忘れていることがある。あの携帯電話が故意に忘れられていたものじゃないかという事だ。だけど…俺は何気なくポアロのウィンドウから外を見て、新ちゃんへと目線をやる。
「なあなあ、新ちゃん。本当に忘れ物なんだろうか?それにしては」
「ああ、不自然すぎる。そこにあると分かっていれば見つけられるが、そうでなければ梓さんみたいに下を覗きこまなければ発見できない場所にアンテナを出して置いておくなんてな。しかもその中身は謎の数字の羅列に製造番号シールを剥がしている。ぜってえなにかある……」
だよなあ。でも、暗号ってそのものだけでもロジックを推理して分かるやつと暗号にキーを設定していてそれがないと解けないものがあるって前に新ちゃん言っていたし。前者ならまだしも後者ならお手上げだぞ?
「それにしても、事故があって2日。天下の警視庁がココに辿り着くまで随分と時間がかかりましたなあ?」
「仕方ないでしょう?その人が身元の分かるものを一切所持していなくて、そのかわりに持っていたものが……」
――ドサっ!
「この山のような領収書だけなんだから」
「ほっほー、杯戸に利善に賢橋……都内の至る所を回ってやがるな」
「そうなのよ。しかもその束、ほんの一部よ?だから地域ごとに分けてしらみつぶしで回っているってわけ。まあ私達の担当分だけでも昨日一日でここ以外を回るのが精いっぱいでやっと今日ここに来たってわけ」
「うっへえ、まだあんのかよ」
「そうよ。昨日までの収穫は、その人物が来たことを覚えている人が何人かいたってことくらい。どこの誰かを知っている人はいなかったわ」
「うーむ、そうなるとその男がサラ金から逃げ回っていたって線も考えられなくはないな」
「サラ金?」
「ああ、その名無しの権兵衛の携帯にかかってきたらしいんだ。「奴を出さねえとぶっ殺すぞ!」ってガラの悪い男からな」
「それホント?」
「え、ええ。そのお客さんが帰ってから一時間後くらいに三回。そのあとは怖くなって電源を切ってしまったのでかかってきませんでしたけど……さっきつけてみたらコナン君が携帯が解約されたみたいになってましたし」
「それじゃあ、手掛かりはなし…ってちょっと待って。その名無しの権兵衛の携帯なら彼の知り合いの番号とか入ってるんじゃないの?」
「それが……」
梓さんは先ほどまで話していた内容を婦警さんに説明した。あ、また入るの止めた。
「それはまた、謎が深まったわね…」
「だから、サラ金をあたってみる事をお勧めするよ。金を借りたのなら住所や名前もそこに書き残しているはずだからな」
もしかしたら、本当にサラ金でお金を借りていてその男に辿り着けるかもしてないけれど恐らくは遠回りだ。この携帯の事をもっとよく調べればすぐにたどり着けそうだけど…うん?
「アハハハ、バカだね!おじさん!!」
「あん?」
「そんなことしなくてもすぐに分かると思うよ!だってその携帯電話に電話をかけてきた恐い男の人ってその番号を知ってるって事でしょ?だったらその番号を携帯の会社に問い合わせてどこの誰かを調べてもらうよ!だから携帯の会社に聞いてみれば怖い男の人が来たかわかるんじゃない?それにもしかしたら怖い男の人が調べてほしいって電話番号も教えてくれるかも…」
「ブァーーカ!警察じゃあるまいし、電話会社が一般人に電話番号で住所や名前を教えてくるわけねえだろうが!だからそのこわーいおじさんは電話会社に電話なんて掛けるわけが…」
「あ、でも私ならやっちゃうかも……」
「やっちゃうって…携帯会社に連絡をですか?梓さん」
「うん。私もそそっかしい所があって。新しく引っ越した友達の家に遊びに行こうとして向かってたら正確な住所を聞いていないことに気づいたのよ。それで電話して聞こうとしても電源入っていないって言われてつい電話会社に電話してきいちゃったことありますもん。勿論その時は教えてもらえなくて結局交番で断片的な情報から割り出してもらいました」
「んー。普通なら確かにしないかもだけど、名無しの権兵衛さんは焦って車にひかれているし、その怖い男性も同じくらい焦っていたのなら万が一の可能性にかけて電話しているかもですね……」
「(龍斗なら援護射撃してくれると思ってたけど梓さんナイス!そして龍斗もサンキュ!)」
「まあ、これ以上は私たち警察の持ってる現在の情報じゃ進展しなさそうだし電話会社に電話してみますか」
「いいねえ。警察はそう言うことを何でも聞けて…
「これぞ国家権力ってね♪でも、権力が大きい分使いどころはしっかりわきまえないといけないわよ?それにすぐ聞けるってわけでもないし、手続きに少しかかるかも。でもこれで電話番号が分かれば住所もどこの誰かも分かったも同然よ」
「…………」
「コナン君?……っちょっとこっちに来て」
新ちゃんが電話を掛ける婦警さんの様子をがんみしていた。その様子にちょっと違和感があったので彼を小五郎さんたちから引き離して話を聞いてみることにした。
「婦警さんをがん見して……そう言う趣味があったの?新ちゃん」
「へ?な!?ち、ちげえよ!ただ、な。あと一歩って所だったのに、てことを思い出してよ」
「あと一歩?」
「ああ。ベルモットと対峙した時の話しさ。オレがベルモットに麻酔銃を利用されて眠らされたあの後、連れ去られたのはとある山中でな。オレは途中から目を覚ましていたんだが奴がある程度安全圏まで逃げたらどこかに連絡すると踏んでわなを仕掛けてたんだ。奴のスマホは
「でも、あと一歩ってことは失敗だったってことだよね?」
「ああ。奴にしてやられたよ。記録していたデバイスは破壊されちまったし、奴には逃げられた。簡単に言えばそんな感じだ。まあ詳しい話はココじゃなんだから博士の家でするさ……因みに、だけどよ」
「うん?」
「龍斗の所にベルモットからなんか届いたりしてねえのか?」
「…あー、うん。まあどうなんだろうね。これからどうなるかはわからないよ。しれっと普通にお歳暮とか送ってきそうじゃない?開き直って」
「……否定しねえよ。むしろ何考えてるかわかんねえからそっちの方がしっくりくるわ」
「だよねえ。まあ心配しないで。
「…なんつうか、京都に行く前のオレだったら食って掛かるんだろうけど。中々面倒な育ち方してたんだな?オメー」
「ははは。そういう話はココでするもんじゃなかったね。それで?取りあえず今の話に戻すけど名無しの権兵衛の正体はわかったの?」
「いや。やっぱりあの携帯に入っていた情報の謎を解く方が先みてえだ。あと、由美さんの情報もな」
「なら少し時間がかかりそうだね。じゃあ俺は迷惑料を払ってくるよ。お腹もすいたしね」
「は?迷惑料??」
俺は新ちゃんの疑問の声には答えず、カウンターの中で暇そうにしているポアロのマスターに話しかけた。
「こんにちは、マスター。一段落ですね?」
「やあ龍斗君。いつもはもう少し忙しいんだけどね…」
「じゃあ今から忙しくしてあげますよ」
「え?」
――
「なら、行ってみましょうじゃない?もう一つの名探偵のお店に!」
「ああ!」
「うん!」
「あの、私も言ってもいいですか?」
「え?でも梓ちゃん、仕事は?抜け出しても大丈夫?」
「気になって仕事に身が入らなくなっちゃいそうだし。今日はいつもよりお客さんが少ないし、夕方までに戻れば大丈夫だと思いますから。マスター!…マスター?」
「そういえば途中から龍斗君はカウンターに座って何、を……」
「んぐ?……失礼しました。
「「「「…………」」」」
なんか、唖然とした様子でこっちを見られている。婦警さんもドアノブを押している体勢で振り返ってそのまま固まっているし。
「あ、はは…梓ちゃん。夕方までに戻ってくるなら行っておいで。ボクはこの食器を片づけたりしてまったりしているからさ……」
「って、何してんの!?龍斗にいちゃん!!」
「何って……お店への貢献?俺も美味しいもの食べられたし、win-winだけどね」
新ちゃんに大きな声で尋ねられたが俺がしたことは単純明快。マスターにメニューの上から順に料理を出してもらっていたのだ。
婦警さんと小五郎さんたちが店のど真ん中で、しかも婦警さんは険しい顔をして立ったまま何かをしている様子を道路に面したウィンドウから覗き見たポアロに来た客が見て入るのをやめていたのに俺は途中から気付いていた。まあポアロのマスターも推理好きだから笑ってみていたし俺も別に小五郎さんたちに言うまでもないかなとも思っていた。思っていたんだが、、お客がほぼ来ずマスターがヒマしていたこと、名無しの権兵衛が結構な量を食べていたことを知り、そして俺が(コナン世界で)いつかやってみたかったことを思い出したことから実行したのだ。
「め、メニューの上から全部持ってこい?」
「そんな高圧的な態度じゃないですけどね。それに一品ごとにまだ行けるかどうかをマスターに申告して、無駄のないようにしていましたし」
「そ、それを繰り返して今最後のデザートを食べてたの?」
「そういうこと。婦警さん達がいていつもの客が入りずらそうにしていたから売り上げに貢献、それとマスターの手が完全にあいているなんて早々ないから前からやってみたかったことを実行したってわけ」
「…あ!も、申し訳ありません!長い間居座ってしまって。営業妨害になっていましたか!?」
「いやいや。ボクも店の名前に「ポアロ」ってつけるくらい推理物が好きだから目の前で警察の捜査が進むのを見れてありがとうと言いたいくらいだよ。龍斗君もちょっと意地悪みたいに言っているけど彼が一杯食べてくれたし、その合間の世間話でいいメニューのヒントも掴めたしむしろ収支で言ったらプラスだよ。だから気にしないでください」
「ありがとうございます!…龍斗?……!?……っ!?あ!…くぅーー!!」
「??」
「…いえ、なんでもありません。それでは本官たちはこれで」
「あ、龍斗君はどうする?」
「俺は…」
ちらりとカウンターの中の食器を見る。
「…いや、ポアロでまったりしていますよ。元々今日はその予定でしたし」
「そうかい?じゃあ行くか」
小五郎さんの音頭に皆ポアロを出て行った。
俺は食器の片づけの手伝いをしたり、お会計を支払ったり、ポアロのマスターのおごりでコーヒーをごちそうになりながら料理の話で盛り上がったりと優雅な午後を過ごした。
夕方ごろに梓さんが帰ってきて、事の顛末を聞き。客が増え始めた頃を見計らってポアロを後にした。
「ねえ。コナン君?」
「なーに、由美さん?」
「あそこにいたイケメン、出る時に気づいたけど緋勇龍斗よね?サインとか連絡先貰ってきてよ!知り合いでしょ!?あ!スイーツでもいいわよ?!」
「…なんで気づいた時に言わなかったのさ」
「だって、あの時は職務中だったし。捜査中にお願いなんかしたら問題になるじゃない?だから今コナン君に頼んでるのよ!」
「(捜査で知り合ったことには変わりないじゃないか…真面目なんだか不真面目なんだか……判断に困る)」
「ねえ~おねがーい!」
最後の方はバッサリ切ってしまいました。元々、ベルモットとのやりとりを入れたかったためにこのお話を入れたようなものだったのでそこが済んだので…という感じです。
由美さんは職業意識高めを設定してみました。なので龍斗を龍斗として認識しての会話は次回以降になります。