ぐだ男「だから見ていてくれ。俺の、変身!」 作:おはようグッドモーニング朝田
よろしくお願いします。
9 約束
私の世界は灰色だった。
初めて目にしたのは病室のような部屋。透明な壁で遮られた小さな世界。瞼を開けておはよう。瞼を閉じておやすみなさい。
私の世界は灰色だった。
ベッドから出た。自分の脚で歩いた。でも部屋からは出られない。私にとってはこの部屋が世界だった。それが大きいか小さいかなんてわからなかった。だってここが、私のセカイ。
私の世界は灰色だった。
カルデアの広さに驚いた。職員の皆さんは優しい。友達もできた。小さくて、モフモフした、可愛い友達。私は部屋を出て歩き回り、「窓の外」を知った。
私の世界は灰色だった。
「窓の外」はいつも同じだった。職員の方の話によると、外には空があり、様々な色に変わるらしい。太陽と月があるらしい。でも一度も見たことがない。「今日も吹雪いてるね」と誰かが言った。
私の世界は灰色だった。
色々な本を読んでたくさんの知識を得た。いつか青空が見てみたい。そう思った。廊下を一人歩く。友達を見つける。追いかける。倒れている人がいた。大丈夫ですか?と話しかける。寝ていたその人が体を起こした。
吸い込まれるような、蒼い瞳と眼が合った。
先輩は覚えていますか?これは約束。これは契約。貴方と交わした、最初の契り。先輩にとっては、なんとなくこぼした軽口だったのかもしれません。でも、私にとっては、何よりも大事な約束。生きる活力をくれる、尊い道標。風に揺らめく弱弱しい灯火のような命に酸素を吹き込み、また明々と燃え上がらせてくれました。。
「吹雪ばっかりで参っちゃうよね」
そんな何気ない会話から始まった、私の小さな革命。私の口からポロッと零れ落ちた、私の願いの雫。誰もが見落としてしまうような、本当に小さい私の夢。
「いつか本物の青空が見てみたいです」
でも先輩はそれを掬い上げてくれました。些細なことだと笑わず、正面から受け止めてくれました。
「それじゃあ、約束だ。俺がいつか君に本当の青空を見せてあげるよ」
その言葉があったから、私は生きている。果てしなく、長く険しい旅でも頑張れる。貴方が隣にいてくれるから。貴方が約束してくれたから。貴方が、
「だから、それまで俺が君の青空になるよ。それでいいかな」
私の道標に、なってくれるから。
なんちゃって、なんて言っておどけていたけれど、私の世界はその言葉で急変しました。あの燃え盛る世界でも、必死で生を掴み取ることができました。
それに私は知っています。それは私にとっては冗談なんかじゃありませんでした。光輪の浮かぶ偽物の空だったのかもしれません。でも、初めて見た青空、オルレアンの空は、先輩の瞳と同じ
蒼色だったんですから。
私が初めて見た「色」は、
カルデアの廊下で倒れて眠っていた貴方。
所長の目の前で居眠りしていた貴方。
私の手を握っていてくれた貴方。
私を外の世界に連れ出してくれた貴方。
私の世界を色づけた貴方。
私に、色彩をくれた人……。
あなたがいる世界に、私も生きている。
今回はここまでです。また少し時間を頂きます。
次回もよろしくお願いします。