クールながらも時折見せる笑顔って良いですよね?
そんな、クーデレな村上さんも楽しんでくれたらうれしいです。
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ガタンゴトン ガタンゴトン
一定のリズムを刻む電車の揺れ。
車内に乗客の姿はほとんど見えない。
窓の外を見ると、田舎特有のあぜ道がまだ田植えも始まっていない殺風景な田園を囲むようにして走っている。
一面の茶色と所々に生えた雑草による少量の緑。
毎年見てきた春先の風景。
この風景とも今日でおさらばだ。
そう思うと急に、どこか名残惜しく感じる。
折良く、次の駅にて小休止を挟むので十五分ほどお待ちください、という内容のアナウンスが入る。
次の駅で少し外に出よう、と心に決めていると、列車が速度を落とした。
体に鈍く慣性力が掛かる。
窓の外を向いていた体を元に戻し、大人しく座って列車が停止するまでの間しばし待つ。
列車が停止し、ドアが開く。
少ない乗客のほとんどが下りていく。
俺もそれに続いてホームへと降りる。
何の変哲も無い、無人駅。
駅員もおらず、乗客もほとんどいない。
しかし、この地元ではこれでも大きな駅として名が通っている。
はあ、と少しため息をつき、ホームの端まで歩き、白いペンキで塗られた柵から上体を乗り出す。
この駅は少しばかり標高が高くなっているので、村の全体を見渡すことができる。
見納めだ・・・。
そう思い、首元に掛けてあった一眼レフカメラを構え、パシャリという音とともに写真を撮る。
カメラに付いた画面で今の写真を確認すると、かなり美しくとれている。
不思議だ・・・。
どんなに平凡で見慣れた景色であっても、レンズを通して見た世界はこんなにも美しい。
これこそが写真の醍醐味だと思う・・・。
写真の魅力に取り憑かれた俺は、小学校、中学校と写真を撮ることばかりに心血を注ぎすぎたたため、友達は皆無、彼女に至っては、は?なにそれ?おいしいの?、という状態である。
だけど、悲しいかな。
友達とか彼女なんか何の役に立つの?写真が友達!みたいに割り切れたら良いんだけど、俺のメンタルはそこまで強くない。
俺は望んでぼっちになっているタイプとは違い、ならざるを得なくてなったタイプだ。
趣味が写真、というおよそ普通の小中学生の趣味とはかけ離れたものだったので、これまで誰一人として共感して貰えず、話も合わず、普通に友達ができなかった。
だから、高校生になったら友達がほしいな、と思っているが先行きはかなり不安である。
今まで友達のいなかったやつが東京に出て行っただけで友達ができれば苦労しない、と心の中にいる悪魔が俺にそう囁く。
まあ、そうだよな・・・俺なんかに友達ができるわけ無いよな・・・。
鬱々とした気持ちになって、はあ、とため息をついていると、「すみません」という抑揚のかけらもない声とともに肩をポンポンとたたかれる。
振り返るとそこには、冷たい目つきでこちらを見つめる女の子がいた。
見つめる、というよりは睨む、の方がしっくりくるほどに眼光が鋭い。
あれ?俺なんかした?この子怖いんだけど・・・。
などと情けない事を考えていると
「あの、写真撮ってくれませんか?私と祖父の。」
女の子がまたも抑揚のない、だけれど不思議と聞き惚れてしまうような美しい声で俺にそう言ってくる。
俺は少しの間固まっていたが断る理由もないので
「・・・・・・ああ。いいよ。カメラはあるの?」と聞く。
女の子は少し思案顔になった後、
「その大きな一眼レフで取って貰えませんか?」と言う。
確かに、スマホや携帯カメラなんかよりは絶対綺麗にとれるんだけど、一つ問題がある。
「いいよ。でも、このカメラで撮るとこの場で写真を渡せないんだ。あいにく画像送信できるほど新しいものじゃなくて・・・」
そうなのだ。このカメラは俺が小学校三年生の時にお年玉を貯めてようやく手に入れたものである。
性能も申し分なく今でも十分使えるため、このカメラを手放すことはなかったのだが、こんなところで不都合が出るとは思ってもみなかった。
すこし、いや、かなり申し訳なく思っていると彼女は平然と言い放った。
「では、後日あなたのところへ伺うのでそのときに渡してくれませんか?」
「・・・え?いやいやいや。無理だよ。俺今日から東京の方に行くから。ここからじゃ片道四時間はくだらないよ?」
「ええ。でもご心配は無用です。私もあなたと同じ高校に通うことになっていますから。」
「・・・え?」
「あなたも開明高校の学生でしょ?」
彼女はそう言いながら俺の着ている制服を指さす。
俺は少し驚きながら
「う、うん。そうだけど。じゃあ、君も東京に出て、一人暮らしをするの?」
「いいえ。私の家は東京にあるの。今は春休みだから祖父の家に帰省してるっていうこと。でも、両親はすでに他界しているから一人暮らしって言う点は当たっているわ・・・。」
彼女の顔に少しばかり暗い影が差す。
悪いこと聞いちゃったな・・・。
少しばかりバツの悪い空気になってしまったのを切り替える為、明るい調子で言う。
「そうなんだ。じゃあ、俺の一眼レフで撮るっていうことで決まりな。また後日に渡すっていうことで。」
「うん。じゃあ、祖父を呼ぶわね。」
彼女は振り向き後ろの方のベンチに座っていた祖父を「おじーちゃーん。こっち来てー。」とかわいらしい声でこちらに呼ぶ。
杖をつきながらやってきた彼女のおじいちゃんは俺のことを見て柔和な笑みを浮かべる。
「どうぞ憂美子をかわいく撮ってあげてください。」
「なななに言ってるの!おじいちゃん!」
おじいちゃんの言葉を聞き焦りに焦る憂美子と呼ばれる彼女。
俺も笑顔でおじいさんのその言葉に応える。
「はい。任せてください。」
それを聞くとうれしそうにほっほっほ、と笑う祖父とは対照的に彼女はヤレヤレ、とあきれ顔だ。
でもどこか少し顔がほころんでいるように見える。
ホントに好きなんだな、おじいちゃんのこと。
そんなことを考えながら二人の立ち位置を決めていく。
どうせならやはり、この村が見えるところで撮りたいとのことだったので、先ほど俺が立っていた、白い柵の前に二人並んで立ってもらう。
レンズ越しに彼女と祖父が並んでいるのが見える。
祖父は満面の笑顔であるのに対して彼女は少し照れながらも優しくほほえんでいる。
俺は「はい、チーズ。」のかけ声とともにシャッターを切った。
今撮った画像を確認していると横合いからのぞき込んでくる彼女。
フワッと香るシャンプーの匂いが俺の鼻孔をくすぐる。
横目に彼女を伺うと、顔が触れそうなほどに近く、いろいろと意識してしまう。
肌は透き通るように白く、ぱっちりとした大きな目。
ぷっくりとした柔らかそうな唇に、桜色をした小ぶりな耳。
今更ながらに、彼女は美しい、と認識してしまった。
画像の確認を真剣に行っていた彼女だが、ふと俺の視線に気づいたのか怪訝な顔でこちらを見てくる。
「なに見てるのよ。どこか変?」
「い、いいや。何でも無いよ。」
「そ。なら見ないで。汚らわしい。」
彼女はそう言うとフン!とそっぽを向いてしまう。
怒らせちゃったな・・・というか彼女口が悪い。
汚らわしい、といわれたことに普通に傷ついていたが、なんとか持ち直し顔を彼女の方へ向ける。
「あのさ、どうだった。写真。俺的にはうまく撮れてると思うんだけど。」と言うと
彼女は俺の方に向き直り仏頂面のまま答える。
「うん。まあ、綺麗に撮れてる。さすがね。それじゃあこれは今度、取りに行くから連絡先教えてくれるかしら?」
「ああ、良いけど。その前に名前教えてくれてもいいかな?俺は十和田 舜。君は?」
「十和田君ね。私は村上 憂美子。よろしくね。」
「村上さんね。よろしく。それじゃあこれが俺のスマホの番号だし登録してくれる?」
「ええ、やっておくわ。また今晩にでも電話掛けるから、そのときに私の電話番号登録してくれる?今やるのも邪魔くさいし。」
「邪魔くさいってうら若き乙女の言葉かなあ・・・。」
「うるさい。別に何だって良いでしょ?」
「うん。まあ良いんだけどね。でも、そんなんだと村上さん友達少ないでしょ?」
「十和田君には言われたくないわ。そんな写真が趣味の男なんて誰も友達になんてなってくれなかったでしょ?」
「う・・・、耳が痛い。」
「まあ、図星かしら。ふふ。それじゃあ、今日初めてあなたに女の子の知り合いができたわね?ありがたく思いなさい?」
そう言って、ニコッと笑いかけてくる彼女。
しかし、罵倒するときの方がイキイキしているってどんだけドSなんだよ・・・。
まあ、この人の笑顔を見ていると反論する気にはなれないな・・・。
すると、少しの沈黙が訪れ、彼女の白いワンピースが風でたなびく。
腰ほどまである長いつややかな黒髪やすらっとした立ち姿がとてもそのワンピースに合っている。
俺が何も言ってこないことを不思議に思ったのか小首をかしげる村上さん。
まあ、こんな美人さんとお近づきになれただけでも幸せだろう。
俺にはこれで十分だ・・・。
そう思っていると電車の出発を告げる呼び子笛の音が鳴り響く。
「うわ、やば!」
俺は駆け足で電車に乗り込んだ。
後ろで間一髪ドアが閉まる音が聞こえる。
窓の方を伺うと村上さんがこちらへと歩み寄ってくるのが見えたので、車窓をガラッと上に開き顔を出す。
すると、村上さんが笑顔でこちらに小さく手を振って
「お元気で、写真ありがとう。」と言っているのが聞こえたので
「また、東京でお会いしましょう!」とこちらも彼女の姿が見えなくなるまで手を振り続けたのだった・・・。
いかがでしたか?
まあ、まだ一話なのでなんとも言いがたいですよね?
なので次話も楽しみにしていてください!笑
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