クールな彼女 in 東京!   作:A i

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今回はタイトル通り明るい子が出てきます。
まあ、のほほんと楽しんでください。

おきにいり、感想、してくれたらうれしいです。


天真爛漫!

村上さんとの別れから、電車の乗り換えを幾つも繰り返し、かれこれ四時間ほどの旅路の末に、ようやく最寄り駅にたどり着いた。

時刻は夕方。

疲れてクタクタなのだが、タクシーなど使えるわけもないので、残りの道のりを黙って歩く。

都会だけあってまだ人通りは多い。

地元ならこのぐらいの時刻になるとほとんど人通りがなくなって、物騒にもなってくるのだが、これぐらい人がいればそんな心配もいらない。

 

しかし、何故だろう?

 

茜色に染まる西の空を見ると無性に寂しくなるのは。

 

どこか悲しくて切ない風景。

 

早く家に帰りたい、そんな思いが沸き起こり、俺の歩を速める。

 

最寄り駅から徒歩10分ほどのところに俺の下宿先はある。

比較的便利なところに安くで入ることができた。

 

まあ、俺の場合小さなアパートなので安く上がったが、はす向かいのでっかい高級マンションなんかだと俺の家賃の三倍はするであろう事は想像に難くない。

 

一回ぐらいはああいう高級マンション住んでみたいよなあ・・・。

 

そんなあこがれを抱きながら自分の下宿先に到着する。

小さなアパートの一階、一番奥が俺の部屋だ。

鍵を開け、電気を付ける。

ベッドとキッチンが見える。

六畳一間。

一般的な暮らしぶりだろう。

 

俺は背中に背負っていた荷物を床に置く。

重かったー。

そう呟きながらベッドに腰掛け脱力するようにしてごろっと横になる。

 

少し目を閉じ、今日あったことを振り返ってみると様々な事が思い起こされる。

 

中学校までの俺には友達すらおらず、高校生になっても変わらないと思っていた・・・。

だけど、村上さんと幸運にも出会えたことで一応知り合いが一人増えた。

女の子の知合いは皆無だったのでうれしい進歩だ。

しかも、ただの女の子ではない。

美人の女の子、だ。

普通に女子の知合いってだけでもうれしいのに彼女ほどの美人と知合いになれるなんてうれしすぎて涙チョチョ切れそうになる。

しかし、未だ友達はゼロ・・・。

今は村上さんとは知合いレベルだがゆくゆくは友達にはなりたいものだ・・・。

それにしても、俺未だに友達ゼロなんだな・・・涙チョチョ切れそうになる。

知合いが増えたうれしさと友達が未だにゼロな悲しさ、その両方を味わっていると、突然耐えがたい睡魔が襲う。

ああ、今日は疲れたなあ、でも楽しかった。

そんな疲労感と充足感で満たされたままに俺は眠りへと落ちていったのだった。

 

 

しばらく後、携帯の鳴っている音で目が覚める。

誰だ・・・?

画面を見るが知らない番号だ・・・。

まだ、回らない頭のまま電話に出る。

 

「はい。・・・どちら様で?」

 

「私よ。村上憂美子。分かる?」

 

「・・・え!村上さん!どうして?」

 

「はあ。あなたもう忘れちゃったの?写真、撮ってくれたでしょ?取りに行くから今晩電話するって言ってたじゃない?」

 

「ああ・・・完全に忘れてた。ごめん。」

 

「ホントよ。まったく・・・。それでいつには渡せそう?」

 

「うーん、明後日には現像したものを渡せると思うよ。」

 

「そう。なら、明後日に伺うわ。あなたの住所は?」

 

「えーと、俺の家は・・・。」

 

俺の住んでいる住所を村上さんに伝えると、彼女は少し驚いた様子で

 

「え!あなた私の家の前に住んでるって事?」

 

「え?そうなのか?」

 

「ええ、そうよ。あなたの家の前に大きなマンションがあるでしょ?」

 

「うん。あるよ。すっごく大きな高級マンションが。」

 

「それ、私の家。」

 

「・・・え?あれ、よく聞こえなかった。もう一回言って。」

 

「だ、か、ら、そのマンションが私の家だって言ってるの!」

 

ばかな・・・。そんな偶然が起きるとは・・・。信じられねーよ・・・。

俺はあまりの事実に愕然としていると、彼女が明るい調子でこう言う。

 

「私も正直驚いたわ。でも、逆に近いし便利だとも言えるわね。」

 

「いやいやいや。切り替え早いな!」

 

「そう?あなたが遅いのではなくて?男のくせにうじうじ悩んで。しゃきっとしなさい、このウジ虫和田君?」

 

「おい!なんだ、そのいかにも無理やり作ったようなあだ名は。それに別にうじうじなんかしてない。ただ、こんな偶然が起きるなんて事が信じられなかっただけだ。」

 

「それがウジウジだと言っているのよ。別に何の問題も無いじゃない。家が隣な事ぐらい。それとも何?いかがわしいことでも企んでいるのかしら?」

 

後半に行くに従って、電話越しでも分かるほどに声の調子が冷たくなる村上さん。

ひえー、怖いです。

内心ではびびりまくっているが、なるたけそれが現れないように平静を装いながら答える。

 

「企んでねーよ。ま、村上さんが良いなら良いんだけどさ。」

 

「ええ、良いのよ。じゃあ、明後日の朝十時頃にそちらに伺おうと思うのだけれどそれでいいかしら?」

 

「おう。良いぞ。それじゃあ、また。」

 

「ええ、また明後日に。」

 

そう言って電話は切れた。

俺はスマホから耳を離し、電源ボタンを押す。

ポーンと枕元にスマホを放り、バフッと枕に顔を埋めた。

あー、なんかニヤケが止まらねえ。

知り合いと夜中に電話するなんて初めての経験だ。

嬉しさがこみ上げ、足をバタバタさせてしまう。

うー、なんかよく分からんけどうれしい・・・。

村上さんの声はやっぱり綺麗で、最後の「また明後日に。」のところなんかはうれしさのあまりに何度も脳内リピートされている。

 

しかし、こんな単純なことだけで喜べるなんて俺はなんてチョロい男なんだろ・・・。

先行きに不安を感じる・・・。

 

はあ、と一つため息をつき、俺は眠りにつくべく目を閉じたのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、またも携帯の鳴る音によって起こされる俺。

何だよ・・・まだ七時じゃねーか。

心の中でそう毒づいてから携帯をとる。

 

「はい・・・十和田です。」

 

「おにい!起きてるの?朝ご飯たべた?歯磨いた?お風呂は・・・。」

 

あまりにもうるさかったので電話を切る。

ふー、一仕事終えたぜ・・・。

そう思っているとやはりまた電話が鳴る。

 

「はい。」

 

「なんで電話切るのよ!おにい!」

 

「あー、うるせーなー。切るぞ!」

 

「あ、ごめんごめん。切らないで!謝るから!」

 

本気で泣きそうになりながらそういってくるので、俺も嘆息しながら答える。

 

「はあ、で、なんだよ。静」

 

「おにいが私の名前を呼んでくれるなんて静感動だよ・・・。」

 

「あー、そういうの良いから。用件を言え、用件を。」

 

「うん、そんなのどうでも良いよね。」

 

どうでもいいのかよ・・・。切り替えがどいつもこいつも早すぎだろ、長友かよ・・・。

内心で突っ込みを入れていたがそんなことお構いなしに次々しゃべる妹の静。

 

「いやー、おにい友達も、彼女も、知合いすらもいないじゃん?だから、静が仕方なしに、ほんっとうに仕方なしに、おにいの生存確認をしてあげてるんだよ?ありがたいでしょ?」

 

フフンと電話越しにドやる愚昧。

いや、こいつ俺のことバカにしすぎじゃね?

リスペクトとか尊敬とかっていう言葉を教わらなかったのかね・・・まったく。

いや、俺も教わってないな、うん。

しかし、我が妹だけあって俺の痛いところを的確についてきよる・・・。

確かに、これまでの俺ならぐうの音も出なかっただろう。

だがしかし、今の俺は違う!

この愚昧めに衝撃をもたらしてくれるわい!

そう意気込んで俺は会心の一撃を放った。

 

 

「俺、知合いできたぞ。」

 

 

「・・・・・・・またまたー。寂しくてついに幻覚でも見たんでしょ、おにい?」

 

「いや、ホントのホント。しかも、女の子。」

 

「マジ?」

 

「マジ。」

 

「・・・・」

 

しばしの沈黙。

ふふ、我が愚昧め。

驚き腐っておるわい、ざまあみろ!と思っていると、静は突然叫び出す。

 

「・・・な、なななんですとー!これは事件であります!万年ぼっち。非リア代表。オタク根暗童貞野郎のおにいに女の子の知合いができるなんて・・・。ありえない・・・。」

 

「おい、傷ついちゃうからね?いつもそんな風に思われてたんだ、ってへこむからやめてね。」

 

そんな俺の懇願も耳に入らない、と言った様子で静は続ける。

 

「うう。ついにおにいも脱ぼっちか・・・。感慨深いよ。」

 

「いや、まだ知合いになったばっかりだし、友達でもないからな。」

 

「と言うより、どうやって女の子と知り合うのさ!教えて!」

 

「ええ・・・。嫌だ。」

 

「教えてくれないと電話掛けまくるから。」

 

「はい!教えます。教えるので掛けてこないで!」

 

「はあ、なんか複雑だけど・・・まあいいや。教えて!」

 

こうして俺は根掘り葉掘り、村上さんとの出会いやその後のエピソード、明日家に来ることになっていることまですべてを打ち明けてしまったのだった。

なんかすげえ疲れた。

疲労の色を濃くにじませている俺とは対照的に、水を得た魚のようにイキイキとしている静。

 

「じゃあ、憂美子さんの電話番号ちょうだい!」

 

「は?何で?」

 

「私のおにいがいつもお世話になっております、って挨拶するからに決まってんじゃん。」

 

バカじゃないの?とでも言うような調子でそんなことを言ってくる我が愚昧。

なんか嫌な予感しかしないんだが、まあ断ると面倒なことになりそうだし、いいか、渡しても。

そう思い、

 

「そんじゃあ、あとでメールかなんかで送っとくわ。」と言うと

 

「うん、お願いね!あ、あと送ってこなかったらわかってるよね?」

 

「わかってるよ。安心しろ。」

 

「うん!それじゃあね。愛しのおにい。」

 

そういって電話を切る静。

騒がしい妹からの電話によってHPをガリガリ削られた気分だ。

朝からなんでこんなに疲れてんだ。

そう思いながらメールを送信し、朝ごはんの用意に取り掛かったのだった。

 

 

 

朝ごはんを食べ終え、しばしごろつきながらテレビを見ている。

今日はこのあと、行きたいところがあるのでそろそろ支度するか。

そう決めて、テレビの電源を消し、立ち上がる。

カメラを手に取り、あとは特に何も持たずに外へ出る。

 

外は春らしい暖かな快晴。

風は強くもなくそれといって全くないわけでもない。

穏やかな風が時折吹く。

 

絶好のカメラ日和だ。

こんな日には写真が撮りたくなる。

 

今、家を出たのもそういうわけなのだ。

 

どうしても撮りたいものがこの近くにある。

昔からこういうタチで、写真に収めたいものがあると、いても立ってもいられず家から飛び出しては、時間も忘れて写真を撮ってしまう。

まあ、そんなことをしていたから友達できなかったんだけど・・・。

 

もちろん、友達はほしい。

 

でも、どうしてもこの趣味だけはやめられそうにないのだ。

だから、俺はこの趣味が同じ人間としか友達になれないであろう・・・。

願わくは村上さんも写真を好きであってほしいんだけど・・・望み薄だろうなあ。

 

またも、ネガティブな気持ちになっていたのだが、目の前の光景を見たらそれらすべてが吹き飛んだ・・・。

 

「綺麗だ・・・。」

 

自然とそんな言葉が漏れる。

 

目の前には、大きな八重桜が満開に咲き誇っている。

それも、公園をぐるりと囲むように何本も・・・。

視界すべてを埋め尽くすほどの桃色に、鼻腔を満たす桜の甘酸っぱい香り・・・。

 

これが撮りたかったんだ・・・。

 

そう思うと体が動き出す。

 

この素晴らしい情景をカメラにすべて収めたい・・・。

 

そんな衝動に突き動かされるのだ。

 

俺は何枚も夢中になって撮った。

遠目から公園全体を収めてみたり、近づいて花一輪に焦点を当ててみたり。

自分が思いつく限りの構図を試し、一番この桜の魅力が伝わるものを探す。

アイデアが泉のように沸きだし、止まらなかった・・・。

 

どれぐらいの時間がたっただろうか。

 

相変わらず俺は桜を撮ることに夢中になっていると向こうの方から一人女の子が公園へと入ってくるのが見えた。

 

どうやらその女の子も桜を見に来たらしい。

桜の木をぐるっと眺めたり、近づいて花の香りを嗅いでみたりしている。

口元には優しげな笑みが浮かんでいて、とても楽しんでいるように見える。

 

彼女の立ち姿や桜を愛でる態度、彼女の容姿がなんとも絵になっている。

 

そう思ったときには指が動き、パシャリと一枚写真に収めてしまっていた。

 

レンズから顔を離すと、彼女と目がばっちり合う。

彼女は少し驚いたような表情だったがすぐに笑顔に戻り、こちらに近寄ってくる。

ああ、これは怒られるな、最悪警察行きかあ・・・いやだなあ。

そんな事を思い、目線を地面の方へと向けていると、彼女は俺の真正面に立つ。

怒られる・・・と思い体を硬くしていると予想外の言葉をかけられた。

 

「君さ、写真好きなの?」

 

「すいま・・・え?」

 

「だから、君、写真好きなのかって聞いてるのよ。」

 

「え、あ、ははい。好きです。」

 

「へえ、好きなんだ。そりゃそうだよね。私が見てただけでもかれこれ三十分ぐらい桜撮ってたもんね。」

 

「う・・・はい。」

 

「そうかー、いや、恥ずかしがらなくて良いよ。好きな事があるって素晴らしい事だからね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「いや、どういたしまして。私は高槻ひとみ。君名前は?」

 

「高槻さんか。俺は十和田舜。」

 

「舜君ね。よろしく。」

 

「うん、よろしく。」

 

高槻さんから差し出された手をよく分からないままに握る俺。

よろしくって言われても何をよろしくするんだ・・・?

少し戸惑い気味の俺だったが、そんなことはお構いなしに話を続ける高槻さん。

 

「でさ、さっき私のこと写真に撮ったでしょ?なんで?」

 

「何でって言われても・・・。しいて言えば絵になっていたから。君と桜が。」

 

「へー、うれしいこと言ってくれるね。このこの!」

 

そう言って俺の背中をバシバシたたいてくる高槻さん。

やめて!痛いし恥ずかしいからやめて!

 

「痛いですって。それに事実を言ったまでですし。」

 

「それがうれしいって言ってんの。ありがとね。」

 

「いえ・・・。」

 

卑怯だこの人・・・!満面の笑みでそんなこと言うなんて。

 

「なに?赤くなってるよ?舜君。」

 

「な、なってませんし。」

 

「ふふ、まあそういうことにしといてあげよう。」

 

「ぐぬぬ・・・。」

 

何なんだこの人。敵う気がしねー。

 

「ところで本題なんだけど、今撮った写真見せてくれない?」

 

「え、良いですけど。あ、消してほしいんですか?」

 

「いやいや、違うよ。君の写真がどれくらいうまく撮れてるのか見てみたくて。」

 

「はあ、それじゃあどうぞ。」

 

高槻さんにカメラの画面を見せ、先ほどの写真を出してあげる。

それを見た彼女は「ほお、うまく撮れてる。なんか私じゃないみたい。」と声を漏らしながら見てくれている。

なんかうれしそうに見てくれてるとこっちまでうれしいな・・・。

 

「どうですか?」

 

そう聞くと満面の笑みで答える彼女。

 

「いいね!最高だよ。こんなに綺麗に撮ってくれたの君が初めて。」

 

「そうですか。それはうれしいです。」

 

「この写真って貰えたりしない?」

 

「あの・・・残念ながらこのカメラ送信機能とかなくて、今すぐに渡すことはできないんです。」

 

「そっか、じゃあ今から君の家行ってもいい?」

 

「・・・は?」

 

「だから、君の家行ってもいいかって聞いてるの。」

 

「なんでそうなるんですか?」

 

「え、だって君の家なら現像できるでしょ?それなら、行った方が早いよね?ここから遠いの?家。」

 

「いや、遠くないですけど・・・。」

 

「なら行くよ!」

 

「え・・・まあ良いですけど。」

 

「よーし、行くと決まれば善は急げだ!レッツゴー。」

 

と謎のテンションの高さで俺の腕を取り、走り出す高槻さん。

しかし、俺の家は逆方向だ。

 

「高槻さん、俺の家逆です。」

 

「え、そうなの?ならこっちだ!レッツゴー。」

 

こうして俺の家へと高槻さんが来ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここです。どうぞ。まあ狭苦しいところですけど。」

 

「わー、ありがとう。」

 

高槻さんを連れて、というかつれられてと言うか俺の家にまでようやくたどり着き、彼女を家へと招き入れた。

女の子が自分の家に来たのなんて生まれて初めてなのでさっきから手汗が止まらん。

高槻さんはへーとかほーとか良いながら部屋を眺め回す。

 

「あんまり見られると恥ずかしいです、なんか。」

 

「えー、気になるじゃない。男の子の一人暮らしがどんな感じか。」

 

「まあ、そうでしょうけど・・・あ、お茶入れますからそこ座っといてください。」

 

「うん、ありがとう。」

 

そう言って座布団の上に腰を下ろす高槻さん。

俺はキッチンへと向かい、お茶を入れる。

 

「高槻さん、お茶はいりましたよ・・・ってなにしてるんですか!」

 

「いやー、ベッドの下を覗くのは定番かな、と思って。」

 

「覗かないでください。何もないですから。」

 

「ぶー。まあ、良いけどさ。」

 

しぶしぶ、といった感じでベッドの下をのぞき込んでいた顔を上げる。

俺は、はいどうぞ、と良いながら机の上にお茶を置いてあげる。

ありがとう、といいながらお茶を飲む高槻さん。

彼女の正面に俺は座り、お茶をすする。

 

すると彼女は心底不思議そうに問うてくる。

 

「なんでエロ本ないの?」

 

「ぶふっ!けほ、けほ。」

 

あまりに驚いてお茶を盛大に吹き出す俺。

何聞いてきてんだこの女は・・・。

 

「大丈夫?落ち着いて。」

 

心配そうにハンカチを差し出してくる彼女。

俺は素直に受け取りながら答える。

 

「ああ、大丈夫です。・・・というか高槻さんが変なこと聞くからでしょう。あとこれありがとうございます。」

 

「いいえ、どういたしまして。そんな変なことかな?男の子ってそういうもんじゃないの?」

 

ハンカチのやりとりをしながら、話を継続する二人。

 

「いや、皆が皆そういうわけじゃないでしょ・・・。」

 

「あ、そうなんだ。・・・それじゃあ、君はどういう子がタイプなの?」

 

「な、な、何聞いてんですか。」

 

「別にこれは変な質問じゃないでしょ?ね、どういう子?」

 

「えーと・・・」

 

どうしよう、友達いなかったからこんな話、したことないしあんまり考えたことなかったから思いつかねー。

何かないか、何か・・・。

うーん、あ、そうだ。

 

「写真が好きな人、とか」

 

「えー、なんかつまんない、その答え。もっとこう、あるでしょ。なんか。たとえば髪の毛長い子がいい、とか明るい子がいい、とかおっぱい大きい子が良いとか。」

 

「なんか最後おかしくない!?」

 

「おかしくないでしょ?男の子は皆好きじゃない、おっぱい。」

 

そう臆面も無く言って、ケラケラと明るく笑う高槻さん。

いや、この人オープンすぎでしょ・・・。

まあ、確かに、好きだけどね、おっぱい。

今もあなたのカーディガンを押し上げている小さいとはおよそ言えない二つの膨らみに目が行かないよう、精神力の八割を使っているし・・・。

 

しかし改めて見ると、この人本当に美人なんだよな・・・。

 

今も言ったけど、スタイルは抜群に良い。

腰回りや二の腕なんかはキュッと締まっているのに、胸やおしりは素晴らしい肉付きである。

そして本人もそれを自覚してのことなのか、服装も上はカーディガン、下はタイトめのスカートという出で立ちである。

 

彼女の美しいシルエットを存分に生かしたその格好は誰もが魅力的に思うだろう。

 

そして彼女はスタイルが良いだけではない。

 

白くなめらかな素肌や爛爛と輝く大きな瞳。

肩口まで伸びた黒く艶やかな黒髪やそこから少し覗く血色の良い耳。

 

それらすべてがことごとく俺の琴線に触れる。

 

そんな超弩弓の美女が俺の部屋に来て、下ネタを言って笑っているなんて・・・。

運命とはなんと数奇なものなんだろうか。

運命とはなんぞ、などと考え始めそうになっていると、彼女はコロコロと笑いながらおーいと手を振ってくる。

あ、会話途切れたまんまじゃん・・・やらかした・・・。

彼女からしたら、俺はおっぱいに対応できなくて答えに窮した童貞そのものなんじゃ・・・。

そんな恐れを抱きつつ彼女に目を合わせると、ニッと笑いかけてくる。

 

「舜君ってやっぱり童貞だよね?反応がウブすぎるもん。」

 

「な!え・・・まあ、はい。そうです・・・。」

 

「いやー、赤くなっちゃって。かわいらしい。食べちゃうぞ?」

 

がおー、とかわいくいいながら手でライオンのようなポーズを撮る高槻さん。

ホント、ずるいなこの人は。

 

「まあ、なんか高槻さんは経験豊富そうですよね?」

 

「でしょ?でも私、処女だよ?」

 

「・・・え?」

 

「しょーじょ。」

 

「嘘。まじですか?」

 

「マジもマジの大マジであーる。」

 

大きな胸を張りながらドやる高槻さん。

俺は意外すぎて驚きまくっている。

すると、高槻さんはあまりにも驚く俺にさすがに心外だ、という調子で言う。

 

「私そんなに遊んでるように見えるかな?なんかショックかも・・・。」

 

「い、いや、そういうことではなくてですね。」

 

「じゃあ、どういうことなのよ。」

 

ジーと疑惑の目つきで見つめてくる高槻さん。

う、ごまかせそうではない・・・。

あきらめて本音を伝える。

 

「高槻さん、美人だし優しいし、明るくて親しみやすいじゃないですか。だから、男の人からはすごくモテるだろうな、と思いまして・・・。」

 

人生でこんなに女の人を褒めた事なんて無かったからすげーハズい。

絶対顔赤くなってるわ。

顔を下に向け目だけで高槻さんを見ると、意外な表情をしている。

顔をほんのり赤く染め、上目遣いでこっちを見つめてくる高槻さん。

あれ?なんか意外にウブな反応なんですけど。

絶対からかわれると思ったのに・・・。

俺は少しばかり気恥ずかしさを忘れ、彼女のその新鮮な表情に見入る。

 

すると見られていることに気づいた彼女は髪の毛をさわりながら答える。

 

「あ、ありがと。でも私そんなにモテてはないよ。つきあったこともないし・・・。」

 

「いや、絶対モテますよ。・・・まあ、友達も彼女もいたことがない俺に言われてもあれでしょうけど・・・。」

 

「え・・・!舜君友達もいないの?なんで?君いい子なのに・・・。」

 

「昔から、この趣味のせいであまりなじめなくて・・・。」

 

そう言いながら愛用のカメラを持ち上げ彼女に見せる。

それを見た彼女はさも合点がいったように頷いて言う。

 

「あーなるほどね。確かにあまり理解される趣味ではないよねー。ふーん、じゃあさ。私たち友達になろうよ。私ならいくらでも撮って良いし。私も綺麗に撮ってくれるとうれしいからWin-Winでしょ?」

 

「え・・・。そりゃ、俺はうれしいんですけど。あの、良いんですか?俺ほんとどうしようもない写真オタクですけど。」

 

「いいのいいの。でもその代わりに・・・少しは私の我が儘聞いてもらうかもしれないけどさ。」

 

そう言ってウィンクをバチコーンと決める高槻さん。

これだから敵わない・・・。

引け目を感じさせないようにそんなことを言うんだから・・・。

 

「ありがとう・・・ほんと。じゃあ、よろしく、高槻さん。」

 

「ええ、よろしくね。舜君。」

 

そう言って互いに握手を交わしどちらからとも無く笑い出す二人。

ひとしきり笑うと高槻さんはスマホを取り出し言う。

 

「それじゃあ、友達記念として電話番号を交換しよう!」

 

「いいですね、そうしましょう。」

 

互いに電話番号を教え合い、打ち終えると自然に口角が上がっている自分に気づく。

からかわれる、と思い高槻さんを伺うと彼女もまたうれしそうにしてくれていたので、俺も暖かな気持ちになれた。

 

こうして、電話番号を交換し終えた二人だったが、肝心なことを忘れていたようで、それに気づいた高槻さんが聞く。

 

「舜君。そういえば、写真どこで現像するの?ここにはプリンター無いみたいだけど・・・。」

 

そうなのだ。俺の部屋にはプリンターもパソコンもない。

ではどうするのかというと

 

「ここのアパートには共用のプリンターがあるんです。こっちに。」

 

そう言って、高槻さんと連れだって部屋の外に出る。

アパートの階段を上り、一番奥まで進むとすこし奥まったスペースがあり、そこにある洗濯機の横にプリンターが備え付けてある。

 

「なかなか、奇妙な取り合わせね。洗濯機とプリンターって。」

 

「うん、まあね。でも便利ですよ。一人暮らしの俺としてはすごく助かってる。」

 

「ふーん、そうなんだ。じゃあ、早速やってみてよ。」

 

「うん、少し待ってて。」

 

そう言って俺はコードをカメラとプリンターにつなぎ、画面操作をする。

すると、ウィンウィン言いながらコピー機が写真をはき出した。

 

「はい、これ。高槻さんの写真だよ。」

 

「わあ、ありがとう。やっぱり綺麗、この写真・・・。大切にするね、これ。」

 

「うん、そうしてくれるとうれしいよ。」

 

写真を彼女に渡し、階段を降りる。

 

 

「それじゃあ、私はそろそろ帰るわ。また今度、気まぐれに遊びに来るから!」

 

「気まぐれは困りますけど・・・。時々は遊んでください。」

 

「うん!それじゃあね。バイバイ。」

 

 

俺たち二人は部屋の前でお別れを言い、高槻さんは帰宅していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
クールな子、騒がしい妹、明るい子の三人が出てきました。
ようやく次は村上さんが写真を撮りに来ますので楽しみにしといてください。

お気に入りよろしくです!
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