更新遅くなりました。
時間をかけて書いてみたいと思い、もう少しもう少しと粘っているといつまで経ってもできあがらない。
時間があればあるほどサボっちゃう。
あるあるですよね・・・。
これからは早め早めに上げていこうと思いますので応援よろしくです!
修羅場とはなにか?
こんな問い、今まで考えたことすらなかった。
なぜなら、俺自身、修羅場と言われる状況に必要不可欠な要素が決定的に欠如していたから。
では、その要素とは何か。
――そう!女の子の知合い、これに尽きる!
とどのつまり、修羅場とは女の子と知合いであることから生じる痴情のもつれである。
まあ、なので、おおかた修羅場に見舞われる男というのは女の子から言い寄られるほどのいわゆるイケメン(笑)であるため、修羅場に見舞われている男の噂を聞けばそれだけでご飯三杯はいけるし、もしそれが原因で別れたなんて聞いた日にはもう飯ウマすぎて日本の米がなくなるまである。
その点、俺はどうであったかというと、異性の知合いどころか同性の知合いすらおらず、いるのはうるさい妹と放任主義な両親ぐらい。
これではどうやっても修羅場イベントなど起きるはずもなく、せいぜい起きるとしてもバカな妹との仁義なきおかず争奪戦や食後のテレビゲーム大会ぐらい。
これはこれで結構大変だったのだが、修羅場に比べれば可愛いものだし、実はそこそこ楽しかった。
と、言うわけで、俺は友達と知合いが全くいないという常人ならばかなり致命的であろう欠点が奇しくも功を奏し、今まで『修羅場』とは無縁のぼっち生活を送ることができていたのだが・・・。
「十和田君、その女誰・・・?」
え・・・ここ南極?
そんな疑問すら浮かぶほどに冷たい口調で村上さんが言う。
「えっと・・・。」
「えー?だれって・・・舜君の友達兼愛人?」
見ると、あごに人差し指を添えながらとぼけた様子の高槻さん。
いや、愛人ってなんだよ・・・。一瞬そうだったっけ?と真剣に考え始めちゃいそうだったじゃん。
高槻さんがあんまり自然に言うもんだから俺でさえもだまされそうだった。
でも、俺はまだいい。
彼女との関係性における真実を知っているのだから。
問題は・・・村上さんだ。
なにも知らない彼女が今のを聞いたらどんな反応をするか・・・。
そーと横目に伺うと・・・ピキッと音がするほどにこめかみをひきつらせている村上さん。
眉間には見たことのないほど深いしわができている。
うん、誰がどう見ても怒っていらっしゃる。
これで怒っていないって言うやつがいたらそいつは目が腐っているな、うん。
俺はこれ以上のヒートアップは避けるべく、二人の間に割って入り事態の収束を計る。
「まあまあ。二人とも落ち着い・・・。」
「うるさい!駄犬は黙っていなさい!」
「舜君は少し黙ってね?」
「はい・・・!」
思わず速攻で『はい』って言っちゃったよ・・・。
だって、二人ともすごい形相なんだもん。
あれで『はい』って言わないやつがいたら俺は素直にそいつのことを真の勇者であると称えるぞ。
あ、言っておくが、俺がチキンすぎる訳では断じてない・・・本当だぞ?
しかし、この修羅場を収束させることに失敗したのは火を見るより明らかで、今も俺の目の前で二人は顔をつきあわせ、罵詈雑言の応酬を繰り広げている。
ああ、昨日は女の子が家に来てくれてうれしさのあまり死にそうだったのに、今日は一転、二人の女の子が来てくれて、あまりの恐怖で死にそうになるなんて・・・。
「勘弁してくれ・・・。」
俺はそうつぶやき、低い天井を仰ぐ。
何でこうなった・・・。
事態のそもそもの始まりを探るため、俺は三十分ほど記憶をさかのぼった・・・。
時刻は九時半。
まだ、村上さんとの約束まで三十分ほどある。
だが、俺はもう先ほどからソワソワしっぱなし。
妹が見たら『お兄ちゃんトイレ、行ってきなよ。』と蔑みをこめた視線で言ってくることだろう。
だけど、今は悠々自適の一人暮らし。
ソワソワし放題だぜ!
もう、これでもか、というほどソワソワ落ち着きのない様子で村上さんの到着を待っていると、突然『ピンポーン』というインターホンの音が聞こえる。
俺はビクン!と体をこわばらせた。
うそ、まだ少し早いんじゃ・・・でも村上さんまじめそうだから、時間よりも早く行動するのかも。
それでも、三十分前行動はどうなのだろうか、と思いながら玄関へと向かう。
その間にもピンポーンピンポンピンポーンとやけにインターホンを鳴らす訪問者。
いや、ならしすぎだろ!
「はいはい。今開けますから、ちょっと待ってくださいー!」
俺は急ぎ足でドアへとたどりつき、鍵を開ける。
ガチャ
「おまたせー、早かったね・・・ってあれ?なんで高槻さんがここに!」
「おっじゃましまーす!」
俺が驚いている隙に颯爽と部屋へと侵入する高槻さん。
いまいち状況が飲み込めない。
なんで、村上さんじゃなくて高槻さんがいるんだ?
もしや、幻覚?高槻さんが村上さんで村上さんが高槻さん?(意味不明)
頭を抱えて悶々と考えていると、ケラケラと楽しそうに笑いながら話しかけてくる高槻さん。
「ねえ、舜君どったのー?そんなに驚いちゃって。」
俺はドアを閉めて振り向き言う。
「なんで、高槻さんこんな朝早くから来たんですか!?」
「えー、なによ。来ちゃダメなの?」
「い、いえ。そういうわけじゃあないんですが。」
「なら、良いじゃん!それに昨日、気まぐれで来るかもって言ったでしょ?」
「まあ、言ってましたけど。」
全くもって彼女の行動原理がつかめないままになんかうまいこと丸め込まれてしまう。
俺は一応納得してお茶を淹れる。
「はい、これお茶です。」
「わあ、ありがとう。気が利くね?」
「いえ、それほどでも。」
そう言って俺は昨日と同じように彼女の前に卓を挟んで座り、お茶をすする。
うん、結構なお手前だ!
心の中で自分のお茶を淹れる技量の高さに舌を巻いていると、高槻さんがお茶を一口飲んでこちらを見つめてくる。
「ねえ、こっからは私の単なる邪推だから聞き流してもらってもかまわないんだけど・・・。」
「え、あ、はい。」
彼女は少しためを作りニヤッとする。
あれ?なんか嫌な予感が・・・。
そしてやはり、その予感は当たってしまう。
「君、今日女と会うつもりでしょ?」
「ブフォッ!」
「わかりやす!」
俺が飲みかけのお茶を吹き出すとケラケラと楽しそうに笑う高槻さん。
だが、俺は笑ってられる心境ではなかった。
やばい、なんで分かった・・・?
何一つぼろは出していないはず。
じゃあなんで・・・はっ!これが女の勘って言うやつか!
俺は冷汗をダラダラ流し、彼女を見て言う。
「・・・なんで分かったんですか?」
すると、それを聞いた彼女は「んー?」と可愛く少し首をかしげ
「・・・なんとなく?」と言う。
俺はかなり焦りながら
「ま、マジですか。なんで分かるんですか、やはりあなたはエスパー・・・?」
「なによ、やはりって。私のことをエスパーと思ってたの?そんなんじゃないよ。それに、なんとなくって言ってもまったく根拠がないわけでもないし。」
「え・・・。そうなんですか?」
高槻さんは部屋をぐるりと見回し鼻をスンスンと鳴らす。
「うん、たとえば匂い。さっき、消臭スプレーかなんかしたでしょ?ミントみたいな匂いが微かに漂ってるし、部屋も昨日よりなんとなく片付いてる。」
「な・・・なるほど。」
「それに、さっきの様子でばれない方がおかしいでしょ?」
「え・・・?」
「だって、さっき、私のこと誰かと間違ってドア開けたでしょ?」
「あ・・・、やっぱり気づいてたんですね?」
「当たり前だよー。私をなめるでない。若者よ。」
「ははあ。お見それしました。姫。」
「うむ、くるしゅうない。」
などと、ちょっとした小芝居を挟み二人して笑う。
なんか友達同士でふざけあってる感があってすごくいい!
こういうの憧れてたんだよ・・・。
俺が一人感動していると、高槻さんは笑いながら聞いてくる。
「あはは。それにしても女の子を部屋に連れ込むなんて、友達が私しかいないはずの舜君がどういう風の吹き回しなのよ?」
ああ、そういえば彼女に村上さんのことを話していなかったな。
「えーとですね、どこから話したら良いか。結構長くなりますよ?」
「いいよいいよ。どうせ今日はなんもないし。」
「そうですか、じゃあ・・・。」
俺はそれから村上さんとの出会いや彼女との約束、俺自身初めてできた女の子の知合いなのだ、と言うことまで伝えた。
すると、それらを聞いた彼女は少しあごに手を当て、黙考する。
「・・・あれ?ってことは、私は初めての女の子じゃないのか・・・?いや、べつにそんなこと気にしないけど、だけどなんかこう・・・。」
「どうしました?高槻さん?一人ブツブツつぶやいてますけど?」
「・・・えっ!なに?なんか言った?」
「い、いえ。何でもないですけど・・・。どうしたんですか?なんか機嫌が悪くなったような・・・。」
「べっつにー。機嫌悪くないですよーだ。」
「そ、そうですか・・・。」
ツンとそっぽを向き、腕を組む高槻さんは絶対怒ってるように見えるんだけど、彼女曰く怒っていないのだからそうなのだろう。
それに今の会話で怒る要素なんてなかったと思うし・・・。
すると、彼女は横目に俺のことを見ながら、もごもごと歯切れ悪く言う。
「で、でも、その村上って言う女の子とは・・・友達、じゃないんだよね・・・?」
「あ、はい。そうですね。一応知合いっていうだけで友達ではないです。なので、まだ高槻さんだけが俺の友達です。」
「ふ、ふーん。そうなんだ。そうなんだ・・・。」
そっぽを向いていた彼女はそう言うと、更に顔を俺から背けてもうほとんど後ろを向いている形になる。
顔が全く見えず、どういった表情をしているのかが全く分からないが、彼女の小ぶりな耳が少し赤くなっているのを見ると、まだ少し怒っているのかもしれない。
うーん、なんでそんな怒ってるんだろ?
俺は腕を組み、彼女の怒りの原因を探るが、なにも思い当たる節がなく悩んでいると、彼女は不意に振り向き、少し赤みの差した顔で笑いながら言う。
「えへへ、って事はやっぱり、舜君には私が必要って事だね?」
突然そんなことを極上の笑顔で言われた俺は少しどぎまぎしたが、すぐに首肯する。
「・・・え、ええ。そうですね。俺にはあなたしか友達いないですから・・・。」
「そうかそうか。」
うんうんと満足げにほほえむ彼女は俺からするとあまりにもまぶしく、目をそらしてしまう。
ずるいぞ、あの笑顔は。
いつもはなんか大人びている感じなんだが、笑うと途端に幼く見え、庇護欲さえもそそられてしまう。
この笑顔を見て可愛いと思わない男子がいたら、そいつはすぐに眼科へ行くことをおすすめする。
俺は照れくさいことをごまかすように鼻の頭をかき、彼女に向き直った。
見ると彼女はあごを組んだ両手の上にのせてニコニコと笑顔を浮かべて俺を見つめている。
「・・・な、なんですか、高槻さん。そんなに見つめて。」
「えー、なんか嬉しくって。舜君の友達が私だけって事が。」
「そんなに嬉しいですか?」
「うん、嬉しいよ。君のオンリーワンなんだから。」
「はあ、そんなもんですかね。」
「そんなもんよ。女の子は特別とか唯一とかっていう言葉に弱いものなの。」
「な、なるほどね。」
「だから・・・。」
そこで言葉を区切り、立ち上がる高槻さん。
え?なに、なんで近づいてくんの?え、近い近い近い!
今や彼女は俺の目の前に立ちはだかっており、見上げると、彼女のスカートから綺麗な太ももの付け根が見えそうだ。
幸いというか、残念ながらと言うか、それ以上は見えることなく、彼女は俺の横に寄り添うように座る。
座る瞬間にフワッと優しい香りが俺の鼻孔をくすぐった。
俺はどぎまぎしながら彼女に言う。
「な、ななんで、こっちに来たんですか!それに近いですし!もう少し離れてくださいよ。」
「うふふ、照れちゃってー。」
「照れてないですよ!」
「・・・顔、真っ赤だよ?」
「え・・・?」
俺は慌てて顔を押さえる。
確かに顔は発火しそうなほどに熱い。
恥ずかしい、死にたい。
高槻さんはそんな俺の慌てっぷりをクスクス笑い、ひたすらに楽しそうだ。
彼女はひとしきり笑うと猫のように目を細め、顔を近づける。
「な、なんですか・・・。近いんですけど・・・。」
「ふふふ・・・。」
「こ、怖い・・・。」
俺はにじり寄ってくる彼女から逃げるように後ろへ後退しようとする。
すると彼女はニターと底意地悪そうな笑みを浮かべてから、『どーん!』というかけ声とともに俺を後ろへ突き飛ばした。
「うお・・・!」
情けない声を上げながら床の上に倒れる俺。
床はフローリングになっており、カーペットも敷いていないため結構痛い。
「いたー。何するんですか?高槻さん・・・?ってホントに何してんですかー!」
「うーん・・・?」
可愛くコテンと首をかしげる高槻さん。
ウグッ、可愛い//
だが、可愛いからって今回ばかりは見逃せない。
なんたって今回はなぜか彼女が・・・。
「なんで、高槻さんが俺の上にまたがってるんですか!?」
そう、今彼女に俺は文字通り尻に敷かれてしまっている。
さすがにこれはまずいだろ?
だって、俺も一応思春期真っ盛りの一人の男の子ですし、なにか間違いが起きる可能性もなくはないわけで。
その辺、俺はしっかりしているつもりだけど、いざとなれば理性なんか吹き飛んでしまうだろうし・・・。
悶々とした正直な感情を精一杯出した疑問符だったのだが、彼女はそんなのどこ吹く風。
ケラケラと笑い、指を唇に当てる。
「えー?ちょっと意地悪したくなっちゃって。」
「な・・・!そんな理由で!?」
「うん、だって舜君の反応が面白いんだもん。」
「理由になってない!」
「あははは。」
楽しそうに大口を開けて笑う高槻さん。
精一杯の抵抗として、そんな彼女に俺は恨みがましい目線をむける。
するとその視線を感じ取った彼女は『じゃあ・・・』と提案してきた。
「じゃあ、舜君にお願いがあります。」
「な、なんでしょう?」
「・・・私の事をひとみって呼んでください。」
「え、ええええ!」
「あと、敬語もやめてよ?たぶん私とそんなに歳変わんないと思うし。」
「え、そうなんですか?」
なんかお姉さんっぽいからてっきり年上かと思っていたから、ずっと敬語だったけど・・・。
「ええ、だって私この四月で十六歳よ?」
「えええ!ホントですか?俺と同い年だ。」
「でしょ?それなのに敬語なんておかしいよ。」
「まあ、それはそうですね。じゃあ、敬語はなくすよ。」
「よし、あとはひとみって呼んでくれたら完璧よ!」
「それは無茶だー!」
「呼ばないと、どかないから。」
「ええ・・・。」
「そんなに恥ずかしげる事じゃないでしょ?だって友達同士なんだし。ファーストネームで呼び合うぐらい普通よ。」
「そうかな・・・?」
「うんうん。普通普通!絶対普通!」
何か釈然としないが俄然前のめりで主張する高槻さんの迫力に負けて俺はそっぽを向きながら『ひとみ』と呼んでしまう。
するとそれを聞いた彼女はパアッと顔を華やがせて抱きついてきた。
「う・・・!ひとみ!苦しいし、恥ずかしい。」
「うっひゃあー!舜君に名前呼んでもらっちゃったー!」
「なんか恥ずかしいし、やめて良い?」
「絶対ダメ。」
至近距離で底冷えのする冷たい声音でそういう彼女はめちゃくちゃ怖くて俺は無言でコクコクと首肯してしまう。
なにか、彼女にやり込められた感がすごいがまあ、よしとしよう。
だって、初めての友達がこんなに喜んでくれているのだから。
俺は喜んでいる彼女をほほえみ混じりに眺め、感慨にふけっていると、インターホンが鳴った。
あれ・・・?今何時だ。
壁に掛かかる時計を見るときっかり十時。
「やばい・・・!村上さんが来た!離してひとみ!出ないと。」
「むふふ、ダーメ・・・。」
「ちょっ・・・!マジでダメだって。村上さん怒って帰っちゃうでしょ!?」
「いいのいいの。あんな女ほっといて私と良い事しましょう・・・?」
目をハートにしてムギュウーと抱きしめてくるひとみ。
そんなやりとりをしている間もインターホンは鳴り続ける。
ピーンポーン。
「あれ・・・?おかしいわね。ここであってると思うんだけど・・・。」
そんな声がドアの外から聞こえる。
いよいよこれは絶対村上さんだ!
このまま、居留守を使うのはあまりにも申し訳なさ過ぎる。
どうにかしてこの状況を打破しなくては!
まずはこの抱きつき女であるひとみを引っぺがすことだ!
そう結論づけ俺は彼女をどかすべくコチョコチョを敢行した。
「コチョコチョコチョ!」
「ウヒャヒャヒャー!やめて、死んじゃう、死んじゃう。私これ弱いのホント!」
「やめてほしくばそこからどきなさい!」
「嫌だ!絶対!ウヒャアア!」
「ウオッ・・・!」
ひとみにとどめの一撃を見舞うと大きな叫び声を上げてひとみが抵抗、俺がそれに巻き込まれ二人して倒れてしまう。
「いったー・・・。」
「いてて・・・。」
ひとみが俺の上で頭を押さえているところを見ると、お互いの頭をぶつけ合ってしまったらしい。
俺もぶつけた頭を押さえるべく手を動かすとフニュンという柔らかな感触。
数度モミモミと握ると、ひとみが「ん・・・」となまめかしい声を上げる。
目尻に涙を浮かべた彼女はなぜか妙に色っぽい。
彼女は吐息混じりに口を開く。
「・・・舜君。」
「・・・ん?」
「・・・触りすぎだよ?」
「・・・。」
絶賛心地よい弾力に包まれている右手を見ると、がっしりという言葉がふさわしいほどにしっかりと彼女の大きなものを握っている。
あまりの事態の急展開ぶりに、俺は状況を理解できず、何度か右手を動かして確認する。
言わせてもらうが断じて下心はなかった。
本当に不可抗力だったのだ。
しかし、端から見たら文字通り乳繰り合っているようにしかみえなかっただろう。
ガチャッ
ドアが開く。
俺はそちらを見る。
入ってきた村上さんの目が見開く。
次の瞬間、俺は目の前が真っ暗になった。
はあ、そこで目の前が真っ暗になれたらどれだけよかったか!
やはり現実ではそう都合よく気絶なんてできないわけで、実際には村上さんが入ってきて普通に現場が騒然として、そこからはご存じの通り修羅場、二体のハイスペック修羅達による、血で血を洗う、舌戦。
彼女たちの舌戦による流れ弾はことごとく俺に突き刺さり、俺はすでに瀕死だ。
それまでは互いの立場について舌戦を繰り広げていたのだが、村上さんとひとみによる話の矛先はついにさっきの大事件へと向かう。
「だいたい十和田君、さっきのは何?なんであなたが彼女の胸をもみしだいていたわけ?不純よ?」
「いや・・・あれは事故というか、なんというか。・・・って、もみし抱いてはなかっただろう!?」
「へー。事故なんだ・・・。事故なのにあんなモミモミ動かしちゃうんだ。けだもの、破廉恥、ドスケベ大魔王。」
「誤解だあ!」
「なーにが誤解よ。大体、私が来るまで女の子と二人っきりの時点でおかしいじゃない。普通、そんなことしないわよ?」
「いや・・・それはそうなんだけど。」
俺が応えに窮していると、ひとみが言う。
「まあ、私たち友達だからそれぐらい普通でしょ?」
「え、十和田君に友達?」
「お、おう。ひとみは友達になってくれたんだ。」
俺は『友達』という響きに少しの照れくささを覚えつつも言葉に出す。
俺からすると重大事実発表なんだが一般人にはこれが普通なんだろう。
でも、友達っていうことを確認している時点で、もうあれだよね、かなりこじらせてるよね。
だって聞くところによると、普通の友達ってなんか気づかぬうちになってるものらしいし。
・・・友達って幽霊かなんかだっけ?認識も許さないとか怖すぎんだろ・・・。
俺はぼっち特有の友達アレルギーに似た症状を引き起こしていると同じように体を震えさせている少女が目の前にいる。
「ありえない・・・、十和田君に友達・・・?天変地異の前触れかしら?」
「いや!失礼にもほどがあるだろ!?なんで俺に友達ができたぐらいで天変地異が起きるんだ!」
「あなたに友達ができるなんて、人間が海を二つに裂いたぐらい驚くべき事よ。」
「どんだけだよ!モーゼに謝れよ。いや、まず俺に謝ってくれ。」
そんなやりとりをしていると、突然立ち上がったひとみ。
俺がそちらを見ると、まるで何もかも分かっているとでも言いたげなまなざしで深く頷く彼女。
彼女のそのまなざしは不思議と信じられるような気がしてくる。
俺も頼んだぞ、とアイコンタクトを送り彼女が受け取る。
彼女は村上さんに向き直り、意を決して言い放った。
「そうよ!失礼だわ。舜君ならせいぜい起きるとしても、電車が遅延するぐらいよ!」
そこかよー!指摘するところ間違ってるんだけど。
しかも、起きる現象がめちゃくちゃしょぼいし・・・。
ひとみの中での俺のイメージはそんな感じなのかと軽くショックを受けつつ言う。
「あれ?ひとみさん?君は僕の味方なんだよね?おかしくない?」
「てへ☆」
「はあ・・・。」
もうなにがなんだか分からない。
俺があまりの現場のカオスぶりに頭を抱えていると、同じように頭痛でもするようにこめかみを押さえている村上さんが目に入る。
今は村上さんの常識的な判断力がすごく頼もしく感じているよ・・・。
ひとみの傍若無人ぶりは今に始まった事ではないがやはり改めてすごいと言わざるを得ない。
あの村上さんが頭を抱えるなんて想像だにしなかった。
ある意味、ひとみは村上さんよりも強いのかもしれない。
今もけろっとした表情で村上さんと話しているし。
しかも、さっきまでの険悪なムードはなんだったのか、と疑問に思うほどに打ち解けている気がする。
さすが、コミュ力の鬼。
まあ、俺と友達になれている時点でもう常人のそれではないよね、うん。
そんな事を思ってポーと二人の様子を眺めていると、二人がこちらを向く。
「それで、写真はどこにあるの?できているんでしょうね。」
「うん、私もみたいな。憂美子ちゃんの写真。」
「えーと、これです。」
俺はあらかじめ用意していた封筒から一枚の写真を取り出す。
そこに映っているのは村上さんとおじいちゃん。
二人とも笑顔で嬉しそうにしている。
村ののどかさと二人の絆が感じ取れる良い写真だと思う。
ひとみと村上さんの二人も俺と同意見のようで綺麗に撮れてる、だとか良い写真だね、とか言ってくれているので本当によかった。
俺達はしばらくその写真を鑑賞していたがさすがに五分もすれば飽きてきて話は今日の予定へと移っていく。
「今日ってみんなどんな予定なの?」
ひとみがこの場を仕切って話をしていく。
俺はうーん、と一つ考えるそぶりを見せたが実は何もない。
村上さんもおなじ感じのようだ。
ひとみもそれを敏感に察して話を続ける。
「二人とも特に何もないって感じかな?なら、よかった。これから三人で買い物に行きましょう!」
「はい?」
「・・・?」
「舜君は見ての通りここに引っ越してきたばかりで部屋にはほとんど何もありません。しかも、物ばかりでなく友達も知合いもほぼ皆無!」
「それ今言う必要あった!?」
なぜかメンタルに深刻なダメージを受けたんだが・・・。
俺がうめいているのにもお構いなしに続けるひとみ。
「だから、私たちでいっしょに彼の買い物をお手伝いしてあげませんか?村上さん。まあ、行かないというならば私と舜君の二人っきりで買い物に行った後、愛を育むことになりますが・・・?」
「育まないよ!」
一応、誤解の元になりそうな発言は否定しておいて、「でも・・・。」と続けた。
「でも、俺も村上さんいっしょに買い物したり、おしゃべりしたりしたいからどうかな?いっしょに行かない?」
「・・・」
あごに手をやり少し考える様子を見せた彼女であったが、すぐにふうとため息をつき諦めた様子になる。
「ふう、しょうがないですね。十和田君がドスケベなことには全幅の信頼を寄せているのでついていくことにします。高槻さんに何かあっては困りますから。」
「なんか、複雑なんですけど・・・。」
ひとみはそんな俺達のやりとりをほほえましげに見ていたが急に「さあ!・・・」といって俺と村上さんの腕を取る。
「な・・・!」「え・・・!」
「さあ!お買い物へレッツゴー!」
こうして俺達はショッピング街へと向かったのであった。
いかがでしたか?
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