Fate/Game Master   作:初手降参

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エグゼイドほどライダーの日常が分からないライダーはない
永夢なんて自宅が映ったシーンがバガモン回の机の上にガシャット忘れた時しかない!!
飛彩だって序盤にナース達に介護された時しか映ってないし!!

永夢に女性経験があるのかないのか、それが問題だ
具体的には魔力供給(隠語)の経験があるのかどうか(無言のハイパームテキ



第四話 Stomy story

 

 

 

「……どうしましょう」

 

 

社長室から戻ったマシュは、これといったすることもないので、会議室の机をいくつか並べ布団を敷いた簡易的なベッドに寝転んだ。

天井の染みを数えてみる。一つ二つ三つ、それらは小さく無意味でも、確かにこの世界に生まれ、存在していたもので。

 

 

「……」

 

 

うつ伏せになった。目を強く瞑り、何も見ないようにしようと思った。

しかし眠ることは出来なかった。何しろまだ外は夕方だ。部屋に西日が差し込んでマシュの頭を照らす。

 

マシュは結局、数分間布団の上で転がった後に立ち上がった。

元よりサーヴァントには食も睡眠も不要、だからこの部屋にマシュの為の食料はほぼ無い。あるのは誰かが落としていった飴程度だ。布団だって、元々この近くの開発室に押し込んであった社内共用の物を借りているに過ぎない。

 

 

「……甘い」

 

 

その、落としてあった飴を舐める。どうやらパイン味だったようで、マシュの口を甘味と酸味が少しだけ潤した。

微妙に塩気も感じた。

 

───

 

それから十分程後に、彼女は自室から出た。

黙っているのは辛かった。誰かと話がしたかった。

だから彼女は、自分と共に召喚された他のサーヴァントの元を訪ねようと考えていた。

 

ゲンムのサーヴァントは十一体存在する。

ゲンムのセイバー、ジークフリート。

ゲンムのアーチャー、織田信長。

ゲンムのランサー、エリザベート・バートリー。

ゲンムのアサシン、ファントム・オブ・ジ・オペラ。

ゲンムのキャスターその1、ジル・ド・レェ。

ゲンムのキャスターその2、ナーサリー・ライム。

ゲンムのバーサーカー、カリギュラ。

ゲンムのアヴェンジャー、エドモン・ダンテス。

ゲンムのカップル、ラーマとシータ。

そしてゲンムのシールダー、マシュ・キリエライト。

 

マシュは、彼らと話してみたいと思った。この自分達の状況を、どう思っているか知りたかった。いや、それは本心ではない……彼女は、自分の不安を共有したかったのだ。

 

 

   コンコン

 

「……入って、いいですか?」

 

 

彼女が叩いたのは、自分の隣の部屋……ゲンムのカップル、ラーマとシータの部屋だった。彼女はラーマによって部屋に迎え入れられる。

 

 

「どうしたのだ? 何かあったか?」

 

「ああ、いや……」

 

 

どうやら二人の部屋も会議室のようだった。奥の方の簡易ベッドでは既にシータが眠っている。マシュは座らされながら、軽く部屋を見渡した。

 

 

「ん、シータか? すまないな、どうにも疲れているらしい」

 

「いえ、そうじゃなくて……話を聞きたくて」

 

「……何のだ?」

 

「ラーマさんは……これで良いんですか? 自分達が偽物でも、良いんですか?」

 

 

マシュはそう切り出した。同時に彼女は、ラーマも不満を漏らしてくれると信じていた。

しかしラーマは彼女の期待通りのことはしてくれなかった。彼はその言葉に頭を掻き、少し目を瞑ってからぽつぽつと答える。

 

 

「……余には、かつてシータを疑った記憶がある。そのせいでシータを永遠に失った記憶がある」

 

「でも、それは」

 

「かつて余はシータを信じきれなかった。だから彼女を失い、哀しみ、苦しんだ。信じきれなかった己を憎んだ」

 

 

それは、檀黎斗というクリエイターに作られた偽りの記憶。ラーマーヤナという作品に沿って作られた設定。本来は存在しないバグスターの過去。

それでも。

 

 

「仮にそれが偽りの記憶でも、確かに余は、哀しかった。どうしようもなく、苦しかった」

 

「……」

 

「それから救ってくれたのは、他でもない。マスターなのだ。檀黎斗なのだ」

 

 

それがラーマの本心。彼の抱く感謝。

仮にその苦しみが偽りでも、救われたと思う心は確かに存在していて。

 

 

「余は、シータと会えて、嬉しかった。共に戦えて、楽しかった。こうして彼女の寝顔を見られることが、余は、幸せで堪らない。本当なのだ。彼女は、ここにいる」

 

「……」

 

「余は感謝している。救われて、本当に幸せだ。その感謝を忘れたら、もう余はコサラの王でも、サーヴァントでもない。最早何者でもなくなってしまう」

 

 

だからこそ、彼は忠誠を黎斗に誓う。彼のマスターである真檀黎斗に忠誠を誓う。例え彼の全てが偽りでも、彼は己が救われたと感じた。例え黎斗の思う通り(マッチポンプ)の感情だとしても、それは確かにラーマが抱いた感情だ。

 

 

「余はマスターに感謝している。だから良いのだ。例え自分達が偽物でも。今度は、余が彼に、彼のくれた幸せに酬いる番だ」

 

「……そう、ですか」

 

 

……マシュは、そうとだけ言って立ち上がった。半泣きだった。ラーマは止めなかった。

 

 

   ガチャ

 

「失礼、しました」

 

 

部屋を出る。微妙に滲む視界の中をマシュは歩こうとして、何かにぶつかった。

アヴェンジャーだった。

 

 

「……」

 

「ああ、すいません……」

 

「……待て」

 

 

頭を下げて通っていこうとするマシュをアヴェンジャーが呼び止める。マシュはやや虚ろな目を彼に向けた。

 

 

「……何があった、マシュ・キリエライト」

 

「いや……ああ、アヴェンジャーさんは、どうして平気でいられるんですか? それとも私が、おかしいんですかね?」

 

 

マシュはアヴェンジャーの問いには答えず、そう小さく呟く。その言葉で、彼はマシュの考えていることを理解した。

そして肩を竦めながらタバコの箱を取りだし、一本だけ差し出した。

 

 

「吸うか? 拾い物だが……割と甘い味がするぞ」

 

「ああ、いや……遠慮します」

 

「そうか。まあいい……少し付き合え」

 

 

そうして、二人は喫煙室へと歩く。その間に、マシュはアヴェンジャーに己の心の迷いを話した。自分が偽物なのに、誰も気にしていないように見えること。偽物でもいいと思っていること。

 

 

「なるほどな、言いたいことは理解した」

 

「……」

 

「コサラの王ラーマ、彼の考えがお前と違うことは当然のことだ。何しろあれには、まともな人生があったのだから」カチッ

 

 

アヴェンジャーは、そう言いながらタバコに火をつける。銘柄は奇遇にもキャスターというらしく、何処か因果を感じさせた。

 

 

「ラーマは英霊だ。彼には聖杯探索以前の過去がある……悲劇として終わった過去が。だがお前にはそれがない」

 

「聖杯探索、以前の……」

 

「そうだ。どちらにしろ偽物だが、ラーマは黎斗に感謝する余地があった。年長者の余裕とも言えるか? ……それは違うな。だが彼にはどちらにせよ、黎斗に救われる余裕があった」

 

「……」

 

「だがお前には、聖杯探索をしたことしか経験していない。当然だ、お前だけはそのように作られた。メインヒロインだったからな」

 

「……ヒロイン、ですか」

 

 

アヴェンジャーが煙を吐き出す。立ち上る煙は喫煙室に溶けていく。

時計は、大体五時半を指していた。

 

 

「見方が違うのは当然のことだ。お前が可笑しいわけでも、ラーマが可笑しいわけでもない」

 

「じゃあ……じゃあ、アヴェンジャーさんは、どう思っているんですか?」

 

「オレか? ……オレは、旅の途中で気づいていたからな」

 

「……!?」

 

 

アヴェンジャーが何気無くいったその言葉に、マシュは目を剥く。

今、何と言った? 気づいていたのか? 気づいていたのに、仲間でいたのか? 誰にも伝えずに?

 

 

「何でですか」

 

「……」

 

「何でs

 

   ガシッ

 

 

……その瞬間、誰かがマシュの首を掴んだ。アヴェンジャーではない誰か。マシュはあわてて振り向く。

 

 

「おー、やっぱりマシュか!! ちょっと付き合え!!」

 

「あ、え、信長さん!?」

 

 

そこに現れ、突然マシュの首根っこを掴んだのは信長だった。彼女は楽しげに顔を歪めながらマシュを喫煙室から引きずり出し、アヴェンジャーに軽く断りを入れて階段へと連れていく。

 

 

「信長さん!? ちょ、何を!?」

 

「今から黎斗の所にガシャットの催促に行くからな、お主も付き合え!!」

 

「ええ!?」

 

───

 

「ここが、マスターの家ですか」

 

「散らかってるのは許してくださいね」

 

 

永夢とナイチンゲールは、その時丁度永夢の自宅……とあるマンションの一室に帰ってきていた。ナイチンゲールは霊体化することも出来たが、永夢はそれを望まなかった。

彼は適当に部屋を片付け、麦茶をナイチンゲールに差し出す。

 

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます。本来は不要なのですが」

 

「僕がやりたくてやってることですから。それより、話がしたくて」

 

「……?」

 

「ずっと知りたかったんです。ナイチンゲールさんは、どうして看護師になったんですか?」

 

 

永夢はそう切り出した。

永夢もナイチンゲールも、ナイチンゲールという存在は既に亡く、ここにいるのは黎斗が産み出したナイチンゲールっぽいキャラクターであることは理解していた。でもそれはそれとして、永夢は会話を望んでいた。

 

ナイチンゲールという女性が白衣の天使と謳われるようになったのには理由がある。

かつて裕福な地主の元で生まれた彼女には、華やかな生活を送ることが可能なだけの立場も、知識もあった。しかし彼女は敢えて卑しい職である看護師となり、敵味方関係なく治療した。

更に彼女は病院の改革を求めて統計学を産み出し、数多くのグラフを開発し、それらでもって、自らの体も省みずたった一人で政府に立ち向かった。

その苛烈さ、その勇敢さ、その誠実さは多くの医療人の胸を打ち、励みとなったのだ。

 

だからこそ、知りたかった。永夢は、尊敬すべき偉人ナイチンゲールと言葉を交わしてみたかったのだ。

 

 

「どうして看護師になったのか? ……きっと、貴方と同じでしょう、マスター」

 

「え、いや……」

 

「苦しんでいる人を救いたい。地獄にある人を助けたい。それ以外に理由がありまして?」

 

「……ありませんよね」

 

「なら、良かった」

 

 

言葉は、それだけだった。

足りないようだったが、それで十分にも思えた。はぐらかされたようだったが、本心にも感じられた。

 

ナイチンゲールが右手を差し出す。永夢はその手を握り、笑った。

 

 

「私たちは力あるかぎり、人々の幸福を導きましょう。病原菌(真檀黎斗)を排除して、人々に、笑顔を」

 

「……ええ!!」

 

───

 

友好的な関係を築きつつあるバーサーカー陣営に対して、飛彩とジャンヌ・ダルクのセイバー陣営は自宅についても非常に固い雰囲気だった。

 

飛彩の中に元カノの顔がちらつく。

つまり彼は、どのようにジャンヌと接すればいいのかがさっぱり分からなかったのだ。

あまり積極的に会話するのは小姫に申し訳ないが、会話0でいるのも無理がある。取り合えず世間話から入ろうかとも思うが、下手に躱されたら切り出し損だ。

 

……上のような思考が延延と渦巻いていた。会話なんて出来るわけがない。

結局話を始めたのは、ジャンヌの方からだった。

 

 

「……あの、マスター?」

 

「えっ、あ、あぁ……何だ、セイバー」

 

「マスターは何のために戦うんですか?」

 

「……苦しむ人々を、救うためだ」

 

 

頷くジャンヌ。会話が続かない。時計の針が動く音だけが部屋に響く。

 

 

「私も、結局はそうなんですよね。主の掲示があったのは確かですけれど」

 

「そうか」

 

 

また、沈黙。時計の音すら焦れったい。

さっさとこいつ何処かに行ってくれないか、とも飛彩は思うが、それを口に出す勇気もなく。

彼としては、自分の部屋に小姫以外の女性を連れ込んだ時点で酷い裏切り行為に思えてならないのだ。物凄い自己嫌悪に陥っていたりするのだ。しかしそれは隣のサーヴァントには伝わらず。

 

 

「……マスター?」

 

「……」

 

「……マスター!!」

 

「ひっ」

 

 

先にジャンヌの方が痺れを切らした。

 

 

「サーヴァントととのコミニュケーション不足は敗北の原因です!! ちゃんと目を見て話す!! 患者にもそうやってるんですか!?」

 

「いや違う、しかし、今は……」

 

「はっきりと話しなさい!! もっと堂々と!!」

 

「いや、その、俺には彼女が……」

 

「これは彼女を守るためのことなんですよ!?」

 

「ひっ」

 

 

その姿に、飛彩は微妙に、怒っているときの小姫を幻視した。

 

───

 

「と言うわけで、ガシャットあるか?」

 

「少し待っていろ信長……!!」カタカタカタカタ

 

「今ハッキング対策プログラム構築中なのよぉぅ」カタカタカタカタ

 

 

信長とマシュは社長室を訪ねたが、しばらくはそのように言われて部屋の中で放置を食らった。ハッキングしてくる輩……そんなものは一人しかいない。檀黎斗神、真檀黎斗と分岐したもう一つの檀黎斗。

 

真黎斗は暫く時間をかけてようやくそのプログラムを組み上げて、Fate/Grand Orderガシャットからバンバンシミュレーションズとブリテンウォーリアーズ、そしてガシャコンバグヴァイザーNにガシャコンバグヴァイザーL・D・Vを投げ渡した。

 

 

「いやー、お疲れさまじゃのう!! いっそお主本物の神にでもなったらどうじゃ?」

 

「ふ、神性の獲得か。私の才能をもってすれば三分とかからないな。考えておこう」

 

 

笑顔になる信長に真黎斗が誇らしげに鼻を鳴らす。

……しかし彼はすぐ真顔になった。何者かがこちらに接近してきている事を察知したから。真黎斗は社長の椅子から立ち上がった。既に日は暮れていた。

 

 

「……ん?」

 

「あー、何か近づいてきたか?」

 

「そのようだ」

 

───

 

「なるほど……君か、檀黎斗神」

 

 

暗くなったゲンムコーポレーション前。そこに真黎斗は一人立ち、挑戦者を待ち受けていた。

そこに歩いてきたのは檀黎斗神だった。サーヴァントのキャスターも連れている。

 

 

「君を倒しに来たぞ、真檀黎斗」

 

「そうか……なるほど、メディア・リリィを引いたのか」

 

「我ながら運が悪いと思うよ」

 

 

そう言いながら、互いにゲーマドライバーを巻き付ける。ガシャットを取り出す。メディア・リリィは真黎斗の元から飛び退き支援の体勢を整える。

 

 

「誰かに負けるのも十二分に屈辱だが──」

 

「──私自身にも、負けられない。か」

 

「……そういうことだ」

 

 

既にどちらも臨戦態勢。彼らの思考はただ一つ。神である己は、自分含めた何者にも、負けてはならない。

 

 

『マイティ アクション X!!』

 

『デンジャラス ゾンビィ……!!』

 

「グレードX-0──」

 

 

檀黎斗神のガシャットが鳴る。

 

 

『マイティ アクション NEXT!!』

 

「グレードN──」

 

 

真黎斗のガシャットも鳴る。

 

そして。

 

 

「「変身……!!」」

 

『『『ガッシャット!!』』』

 




次回、仮面ライダーゲンム!!


──衝突する二人の神

『デンジャラス クリティカル ストライク!!』

「流石は私か……!!」

「神の才能に、不可能は無い!!」


──複雑化した戦闘

修補すべき全ての疵(ペインブレイカー)!!」

『ドラゴナイト クリティカル ストライク!!』


──訪れる優位性の崩壊

「待たせたな、神!!」

「争いは悲しいことです」

「私のライフの数は──」


第五話 Disillusion


「期待はずれだな、それでも私か?」

「この程度で終わる私ではない!!」

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