Fate/Game Master   作:初手降参

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あ け お め

ようやく聖杯戦争始まって二日目に突入という事実
実は六話かけてようやく一日目が終わりました、超スローペース

今年度中に完結させたい……


あと第二部くっそ面白そうですね
早くやりたい



第七話 Switch on

 

 

───

──

 

『……ふふ、はははは……!!』カタカタカタカタ

 

(……これは)

 

 

マシュ・キリエライトは夢を見ていた。夢としては飾り気が無さすぎる、つまらない夢だ。

その夢では、黎斗がいた。まだ黎斗神でも真黎斗でもない、ただの檀黎斗が、パソコンに向かっていた。パソコンに向かって──Fate/Grand Orderを作成していた。

 

 

『ハーハハハ……恐ろしいのは、私自身の才能だなァ……!!』カタカタカタカタ

 

(……違う)

 

 

そう一人ごちながら、彼は世界を作り上げる。マシュは丁度、ブーディカのグラフィックが作られていくのを目の当たりにしていた。

白いマネキンのような姿に服がつき、色がつき、質感がつけられる。その様は酷く機械的で。だからこそ、マシュは嫌悪感を覚えた。

 

 

『さて、これをどう動かすか……』

 

(違う、違う、違う!!)

 

 

画面の上をカーソルが滑る。ブーディカの体がぐりぐりと回され、調整されていく。

 

きっと自分もああして作られたのだ。そう思うだけで息苦しかった。声を上げて否定しようとしても、喉はただ痙攣するだけ。

 

目眩がする。吐き気もする。頭痛はますます酷くなる。悪夢の終わりはまだ来てくれない。

 

 

(世界は……私は……私が救った、世界は……)

 

 

そこで彼女の意識は落ちた。

 

──

───

 

 

 

 

 

「……む……夢……のようなもの、だったんでしょうか」

 

 

布団の中でマシュは目を開け、そう呟いた。

偽り(バグスター)の体で暖められた布団はまだ生暖かく。マシュは起き上がる気力すらなく、顔だけだして窓から差す朝日を覗く。

 

 

「……綺麗」

 

 

そう思った。同時に、自分が汚ならしいものに思えた。

 

サーヴァントは、時おりマスターの夢を見る。いや、夢のような感覚でマスターの過去を覗き込む。今回は、とうとう自分達(Fate/Grand Order)を作る過程を見てしまったらしい。

恐らく黎斗はロックをかけていたのだろうが……もし仮に、旅の途中にこの夢を見ていたなら。例えば、第二特異点でブーディカが黎斗に暗殺されたあの夜にこの夢を見たなら。自分はどうしただろう。

 

 

「……」

 

 

旅を、止めたのだろうか。ドクターには伝えただろうか。ダ・ヴィンチには伝えただろうか。……いや、何をしたところで、きっと黎斗はその記憶を消したのだろう。結局自分達は、黎斗の、その手の上で転がされていたのだ。

 

 

「私は……私が守った、世界は」

 

 

そんな世界はなかった。そんな答えが頭の中を巡る。マシュは涙を浮かべながら頭を抱えた。消えたい衝動に襲われる。声を出さないように気を付けながら、無言で叫んだ。

 

 

「……あ、ああ、あ……!!」

 

 

声が漏れる。夢から覚めたのに、まだ息苦しかった。

 

その時だった。

 

 

   バタン

 

「おーいマシュ!! 観光じゃ、観光行くぞ!! 支度をせい!!」

 

「っ──信長さん!?」

 

 

マシュは慌てて布団で涙を拭い、泣き腫らした顔を見られないように彼女に向かって横向きに立ちながら、何でもない素振りをした。

信長は何も見なかったふりをしながら、彼女に女物の鞄を投げ渡す。

 

 

「折角こっちに来たんじゃから、何もせんのは損じゃろう。黎斗の許可も下りた、金はここの金庫から掻っ払った、服や鞄は忘れ物から調達した!!」

 

「えぇ……何するんですか?」

 

「じゃから観光じゃって。取りあえずおされな食堂でもー、と思ってな」

 

「アタシもいるわよー♪」

 

「えっ、エリザベートさん!?」

 

 

さらに、信長の後ろから既に私服で変装を終えたエリザベートも現れる。頭の角を帽子で隠し、はみ出た尻尾を大きめの鞄に無理矢理収納したような姿はどこか滑稽だが、それでも可愛らしかった。黙ってれば美少女、という奴だろうか。

 

信長の方も、見直してみれば服を変えていた。長い髪を一つ縛りに纏め、軍服のような衣装を黒っぽい女物の服に変えてミニスカートをひらつかせる彼女は、かの第六天魔王とは思えないほど可憐で。やはりこっちも黙ってれば美少女、という奴だろう。

 

 

「ほーれ、はよ着替えをせい。もーにんぐは待ってくれんぞ?」

 

「は、はい……!!」

 

 

マシュも慌てて服を脱ぐ。下向きの気持ちは、少しだけ楽になった。

 

───

 

「ほーらセンパイ、行きますよ美味しいお店!!」グイグイ

 

「あわ、あわ、あわわ……」

 

 

BBと仮野明日那(ポッピー)、そしてパラドもまた、観光を開始していた。とはいえ観光なんて言われても大したことをしたことがないバグスター二人は、返答に困った結果永夢の行きつけのカフェに行くことにする。

 

先が思いやられる。パラドはそう思わざるを得ない。サンソンは霊体化し気配遮断を行いながら彼女らの護衛を行っていた。

 

 

「ねぇ引っ張る力強いって……」

 

 

明日那はそう言いながら辺りを見回す。自分は人前に出るため目立たない黒髪モード(仮野明日那)で出歩いているというのに、サーヴァントの方は何の遠慮もなく紫髪で出歩いているものだから、すれ違う人々は皆BBに振り向いていた。しかもBBは気にしていない。

 

 

「なーに止まってるんですセンパイ?」

 

「あ、あうう……パラドぉ……」

 

「心が……踊らない……」

 

 

非常にやりにくい。そう思わせる人々の奇異の視線の中三人は歩く。

その時突然、パラドの脳内にサンソンからの念話が入った。

 

 

『止まるんだマスター!!』

 

「っ!? ポッピー、止まれ!!」

 

「えっ!?」

 

『……進行方向にサーヴァントの気配がする……三体いるぞ!!』

 

「なっ……サーヴァント!?」

 

 

BBが怪訝そうな顔をしている。パラドは明日那とBBに、近くにサーヴァントがいる旨を伝えた。恐らく、敵だと。

 

 

「えー、もうすぐ何ですよ!? 何でこんなときに出てくるんですか!?」

 

「そんなこと言っても……ガシャットは預けてるし……」

 

 

戸惑う明日那。BBを下手に刺激するのも危険だが、最悪市街で戦闘になったら怪我人も出るだろう。というか戦えない以上自分達がまず危ない。

……唸る明日那の肩を、パラドがつついた。

 

 

「何?」

 

「……なあ、もしかして、あれ」

 

 

明日那は顔を上げ、パラドの指差す方向を見る。丁度、これから向かうはずだったカフェの方向だ。

 

黒髪、赤髪、ピンクっぽい白髪。

それらが、カフェのテラス席に座ってハンバーガーを頬張っていた。

 

 

「んー、旨いのぅ!!」モッキュモッキュ

 

「なかなかイケるじゃない!!」モッキュモッキュ

 

「美味しいです……!!」モッキュモッキュ

 

 

「……なあ、あれ」

 

「もしかして……もしかしなくても……」

 

「あ、あれサーヴァントですね」

 

「だよねぇ……ピヨるぅ……」

 

 

明日那はその場に踞った。

 

───

 

「はぁ……はぁ……!!」カタカタカタカタ

 

「あの、マスター……?」

 

「ふはぁ……ぶぇあぁ……」カタカタカタカタ

 

 

黎斗神は眠ることなく作業を続けていた。しかしガシャットのアップデートはほぼ進まず、真黎斗からの干渉への抵抗も苦戦続き。既に左手の親指は疲労骨折のような状況になっていた。メディア・リリィはあたふたしながらも命令された通りに戦闘シミュレーションを脳内で展開する。

 

 

「ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!」

 

 

……突然黎斗が笑い始めた。

 

 

「マスター?」

 

「え、出来たの? 出来たの?」

 

 

彼のサポートをしていた貴利矢が黎斗神に声をかける。少しだけ期待を込めて。

……次の瞬間、黎斗神はキーボードに突っ伏した。

 

 

「駄目だァ……!!」

 

「ア"ァ"ーッ!!」

 

 

しかしまあ、突然上手くいく、なんてことはあり得ず。

貴利矢はストレスで壁を殴った。

 

 

「あれ……大丈夫なのですか? もう朝ですが」

 

「気にするなライダー、あいつにはあのぐらいの罰じゃあ全然足りねぇよ」

 

「そう、ですか……何をしたのです?」

 

「……まあ、色々だ」

 

 

疲れた貴利矢は、座っていたマルタの元に向かう。マルタはこれまでの会話で貴利矢は黎斗の話をすると無意識に苦い顔をすることに気がつき、二人の間にただならぬ確執があるのだと察していた。

 

 

「……そういえば、マスターもドクターなのですよね? 何のドクター何ですか?」

 

「ん? 自分は監察医……分かる? 監察医。死体の検死とかするんだけど」

 

「一応、与えられた知識には入ってますね」

 

 

露骨に話題を反らす。

監察医については、マルタ自身聖杯……いや、ガシャットに与えられた知識として知っていた。死体を解剖したりする職はキリスト教的には少々複雑な心境だが、人のための職だということには素直に好感が持てた。

 

 

「……あれ? 監察医って、そっちの教義的に不味かった? 確か『復活するときには元の肉体に戻る、遺体を傷つけるな』って言われたような……」

 

「ああ、そこの解釈はそれぞれだから、気にすることはありません。立派だと思いますよマスター」

 

「……」

 

 

……唐突に、貴利矢はマルタの目を覗き込んだ。マルタは己のマスターの突然の行いに少しばかりどぎまぎしながらも、目線を反らすのはどこか負けたように思えて、しっかりと見つめ返した。

 

……数秒してから、貴利矢の方から目を放した。意味深げな笑みを口元に浮かべながら。

 

 

「あー、なるほどなー……?」

 

「……マスター?」

 

「……いや、何でもないさ。ただ……アンタと自分が似てるかもなってだけさ」

 

 

丁度そのタイミングで、黎斗神が倒れ伏した。

残りライフ、97。

 

───

 

その頃、飛彩はジャンヌと共に聖都大学付属病院に入った所だった。これからは緊急に備えて交代でCRに入るようにしようという話になり、永夢は午後になってからCRに向かう手筈になっていた。

ジャンヌは、非戦闘時に何時もの格好をするのも不味いということで、普通の私服を来てCRへと向かっていた。

 

……そこに、運悪く一人の男が現れる。

 

 

「……なっ、ななな、飛彩!?」

 

「親父!?」

 

 

昨日は泊まり込みで医師会に向かっていたため今日病院に帰ってきた飛彩の父にして聖都大学付属病院の院長、鏡灰馬。彼は飛彩を見て……いや、飛彩の隣のジャンヌを見て、腰を抜かしていた。

 

 

「ひひひ、ひひ、飛彩!! そ、その人は……」

 

「親父……」

 

「わわ私はし、失望したぞ!! 確かに過去に縛られるのは良くないかも知れないが、早姫ちゃんを取り戻すと言っていたのはお前だろう!!」

 

「だから親父!!」

 

 

……灰馬は一つの勘違いをしていた。無理もないことだった。

数日ぶりに会った息子が金髪の美女と共に出社してきたのだ。当然ここの看護婦ではないし、見たところ病人でもない。

つまり……彼は、ジャンヌが飛彩の新しい恋人の類いだと勘違いしたのだ。

 

 

「このことを早姫ちゃんが知ったらどうなるか……!!」

 

「あの、マスター……?」

 

「だから違うんだ親父!! 彼女は──」

 

 

激昂する灰馬、困惑するジャンヌ、冷や汗を垂らす飛彩。更に言えばここは聖都大学付属病院の玄関口である。

冷たい視線を浴びながら、飛彩は弁解を余儀なくされた。それも、周囲の人々になるべく状況を知られないようにしながら。

 

───

 

そしてパラドと明日那も、かなり厄介なことになっていた。

簡単に説明すると、BBが勝手に三体のサーヴァントへ突撃し、勝手に話をして敵だと断定、今にも赤い髪のサーヴァントと戦闘を始めようとしているのだ。

 

 

「ちょっ、ダメだよBB!! ここで戦っちゃ!!」

 

「駄目ですよエリザベートさん、ここで戦ったら!!」

 

 

向こう側もピンクっぽい白髪のサーヴァントは戦いを避けたいらしく、赤い髪のサーヴァント──恐らく前に永夢を襲ったランサーであろう彼女を押さえていた。

明日那はそれにちょっとしたシンパシーを覚えながら、どうにかしてBBを引き剥がす。

 

 

「なんでですかセンパぁイ、今チャンスだったんですよ、敵が減ってセンパイにも悪い話じゃあないんじゃないんですか!?」

 

「ここには他の人たちもいるから!! 巻き込むから!!」

 

 

そう言って説得している間に、向こうの三体もどうにか立ち去ってくれた。ハンバーガーの代金はしっかり払っていったらしい。

 

パラドは明日那とBBの隣でサンソンと念話で 会話していた。

 

 

『……どうだ、アサシン?』

 

『三体は立ち去った。そこは安全になったようだ』

 

『ありがとう』

 

 

そう伝えながらパラドは二人の方を見る。

……迷惑行為を行ったとされて、二人は店を追い出されていた。




次回、仮面ライダーゲンム!!


──ナイチンゲールと永夢

「おはようございます、マスター」

「……何してたんですか?」

「部屋の掃除ですが」


──行き詰まる黎斗神

『Game over』

「残りライフ、95……」

「奇跡の概念が崩れていく……」


──そして、飲み込まれる東京都

「これは……ゲームエリアの拡張!?」

「この勢い、まさか」


第八話 Horizon


『東京都全体にザザッ謎の電波障害がザザッ』

「……不味い、これじゃあ、東京都が……!!」

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