Fate/Game Master   作:初手降参

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大我の全バグスター撲滅の範囲にポッピーは入ってるんだろうか
永夢の場合は危害を加えない善玉菌なら良いっぽいけど、大我あれのせいで酷い目にあってるからな……バグスター絶対殺すマンと化していつかパラドとポッピーを狙い始めそうだな……



第十話 Ideal white

 

 

「……マスター、CRのライダー陣営が近づいてきたわよ」

 

「九条貴利矢とマルタか……妨害は?」

 

「もうやってるわ、でも全部避けられちゃって……」

 

 

貴利矢がマルタと共に飛び出して十数分。ゲンムコーポレーション社長室にて、真黎斗と共にお茶会と言う名の一時の休息を過ごしていたナーサリーはゲンムコーポレーションに近づく敵影を捕捉し、そこを映したモニターを覗く。

既に変身しバイクの状態になったレーザーと、それに乗ったマルタが走っていた。自動で起動するトラップの作動に滞りはなく、しかしてそれらは易々と突破されていた。

 

 

「どれどれ……? ほぉ……」

 

 

真黎斗もそれを覗き込む。そして、ため息を吐いた。

 

 

 

「「ヒャッホホォーウッ!!」」

 

 

ゲンムコーポレーションに監視されていることにはとうに気づいていたライダー陣営の二人は、それでも最早何も取り繕わずにあらゆる障害を走り抜けていた。

道から競り上がる壁、追尾してくる外灯、ガードレールのジャンプ台、無人で動く車のNPC。それらは即席のレースサーキットを形成し、二人の気分をもり立てる。

 

 

「流石は騎兵(ライダー)ってだけはあるなぁ!! 名人(宝生永夢)より上手いんじゃないか!?」

 

 

そう言いながらジャンプ台を飛び越えた。飛距離は9メートル程になり、道に出来上がる幾つもの陥没を簡単に飛び越える。乗り手は騎乗A++なマルタだったため運転が上手いこともあり、レーザーは上機嫌だった。

そしてレーザーを駆るマルタの方も、杖をしまい法衣を動きやすいよう加工したせいか、段々開放的な気分になっていた。

 

 

「アンタも人使いが粗いわねぇ!! でもいいわ、テンション上がるわ!! ……んっんん、気分が高揚してきますね」

 

「今さら取り繕うなって姐さん!!」

 

「姐さん!?」

 

 

マルタはうっかり、町娘時代の性格を表面に出してしまう。それは普段聖女として振る舞う自分には相応しくないものだと自制していたが、レーザーはそれを既に看破していた。

 

 

「……で!? この後どうするのマスター!? 突っ込むの!? 重く行くの!?」

 

 

取り合えず話題を切り替える。もうゲンムコーポレーションは遠くない。どうするかをそろそろ決めなければならなかった。

 

 

「出来れば社長室に直接攻撃したい!! とにかく向こうのパソコンやサーバーを叩く!!」

 

「それなら、私の宝具で行けるわよ!!」

 

「宝具!? あー、超必殺技的なあれか!! 良いぜ良いぜ、で、何をどうやるんだ!!」

 

 

反り立つ壁を駆け上がる。その角度およそ75度。後ろから追ってくる三台のバイクをかわしながら飛び上がったレーザーは、追尾してくる鉄パイプを弾きながら着地して。

マルタはマルタで気分がノッてきたのか、レーザーを駆りながら障害物を蹴り飛ばしていた。

 

 

「ゲンムコーポレーション付近で社長室に狙いを正確に定めて、そこへタラスク……超巨大ドラゴンをぶつけるわ!!」

 

「豪快だな!! ノッてやる!!」

 

 

ちょうどそのタイミングで、マルタはレーザーを止めた。既にゲンムコーポレーションの玄関前にやって来たからだ。

レーザーはレベル1体型に戻って爆走バイクを引き抜き変身を解く。見上げてみれば、既に数体のサーヴァントの姿が見受けられて。

 

 

『ガッシューン』

 

「……じゃあ、自分が攻撃は防いでやる、存分に狙いを定めな姐さん!!」

 

『爆走バイク!!』

 

『ガッシャット!!』

 

「──0速、変身」

 

『ガッチャーン!!』

 

 

そして彼は、調整されたレーザーターボ用ガシャットを装填した。そして、ゲンムコーポレーションの四階あたりから飛び降りてきた赤い髪のサーヴァントを回し蹴りで吹き飛ばし、後方のマルタを守りつつも戦闘できる体勢を整える。

同時に、彼はその姿を仮面ライダーに替えた。

 

 

『爆走激走独走暴走!! 爆走バイク!!』

 

「そんじゃあ、ノリに乗って行くぜ?」

 

「……マスターの邪魔はさせぬ!!」

 

───

 

「……くっ、まさか退散することになろうとは!!」

 

「……すまない」

 

 

ゲンムのセイバーとキャスター……ジークフリートとジル・ド・レェは、ブレイブとジャンヌ、そしてメディア・リリィの奮戦の結果撤退を選択していた。壁を走り瓦を蹴り、ゲンムコーポレーションへと戻っていく。

 

 

「……それにしてもジークフリート殿。……何故宝具を使わなかったのです?」

 

「……すまない、少しばかり、加減してしまった」

 

 

ジークフリートは走りながら小声で侘びた。

彼は宝具を使わなかった。幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)を使ったならブレイブを殺すことも出来たが、そうはしなかった。

 

 

「しかしキャスター、貴方も宝具を使わなかっただろう?」

 

「っ……」

 

 

ジル・ド・レェもまた、宝具を使わなかった。螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を使えば、ジャンヌなら容易く引きちぎったとしてもメディア・リリィは捕まえられた筈だ。彼女を人質とすれば勝つことは容易かった。

 

二人とも、そうすることに少しだけ躊躇いがあった。その躊躇いが、セイバー陣営を延命させたのだった。

 

───

 

「アンタの真名は何だ!!」

 

「余の真名はラーマ!! ゲンムのカップル、その片割れのラーマ!!」

 

「カップルぅ!?」

 

 

レーザーターボは苦戦していた。

調整された爆走バイクは、確かに対サーヴァント性能は向上していたが、しかしそれは微々たるものだったのだ。精々、十分の一が十分の二になった程度のものだったのだ。

しかも、調整されたのはあくまで爆走バイク。つまり、ギリギリチャンバラ由来のガシャコンスパローはサーヴァントに対して殆ど意味を成さなかった。

 

 

「っ……」

 

『ときめき クリティカル ストライク!!』

 

「これならどうだ!!」

 

 

苦しい状況に置かれたレーザーターボは一発逆転を狙って、調整されているもう一つのガシャット、ときめきクライシスでキメワザを発動する。

そしてレーザーターボは彼自身から飛び出したハートや星と共にライダーキックを敢行したが──

 

 

「甘い!! 羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)!!」

 

   ガガガガガガ

 

「っ……ぐあああっ!!」

 

 

ラーマが剣を投げつけてきたことによってあえなく撃ち落とされ、大ダメージを食らってしまった。残りライフはあとゲージ三つ分しかない。

 

 

「姐さん!! まだか!!」

 

「ちょっ……無理があるで、しょっ!!」

 

 

レーザーターボは振り向いてマルタを見る。

しかし彼女もまた攻撃を受けていて、宝具どころではなかった。ゲンムコーポレーション四階にいるシータが、彼女をしつこく狙撃しているのだ。

 

降り注ぐ矢の雨をマルタは転がって回避したり、盾を呼び出して防いだり、反撃として光弾を打ち出したりするのだが、シータは構わず彼女を狙い続けていた。

 

 

「……っ、駄目だこれは!! 逃げるぞ姐さん!!」

 

『爆走バイク!!』

 

 

レーザーターボはそう判断した。彼はバイクゲーマを呼び出して飛び乗り、マルタを回収して走り出す。

 

……しかし、すぐに彼は逃走を止めた。

その視線の先に、見覚えある顔が並んでいたからだった。

 

 

「待たせたなレーザー!!」

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

パラドと明日那だった。そしてそのサーヴァントもいる。彼らはゲームエリアの拡張を察知して、ここに駆けつけたのだった。

 

レーザーターボは、明日那にときめきクライシスを手渡す。そしてバイクゲーマを回収し、再びゲンムコーポレーションを仰ぎ見た。

 

 

「……今から暫く時間を稼いでくれ。そしたらうちの姐さんが社長室にドラゴン投げ込める」

 

「何それ!? ……でも、それが出来たら……」

 

 

明日那はそう言いながら、玄関前で身構えるラーマを見た。強そうだが……数からして、こちらが勝てない相手ではない筈だった。

どうやら、レーザーターボの言葉に乗るのは得策のようだった。明日那はバグヴァイザーⅡを腰に装備する。

 

 

『ガッチョーン』

 

『ときめき クライシス!!』

 

「……変身!!」

 

『ドリーミンガール!! 恋のシミュレーション!! 乙女はいつもときめきクライシス!!』

 

 

明日那が仮面ライダーポッピーに変身する。その右隣ではBBが指揮棒を構え、その左隣ではサンソンが刃を構える。

第二ラウンドが始まった。

 

───

 

追想せし無双弓(ハラダヌ・ジャナカ)!!」

 

 

シータはゲンムコーポレーションの四階でラーマをひたすらに援護していた。

眼下ではラーマがポッピーとBB、そしてサンソンの三人から同時に攻撃されて圧されている。

 

しかし彼女はそっちを助けることは出来なかった。レーザーターボがシータの近くの窓を狙ってガシャコンスパローで狙撃していたからだった。

 

 

『ギリギリ クリティカル フィニッシュ!!』

 

「っ……!!」

 

 

風に乗って電子音が流れてくる。打ち出されるであろう矢で会社を破壊されれば、シータは一時的にガラスの雨を食らい、それはラーマに襲いかかるだろう。それは阻止しなければならない。

 

 

追想せし無双弓(ハラダヌ・ジャナカ)!!」

 

   ズドンッ

 

 

だからこそ、宝具の連発は避けられなかった。それは非常に疲れることだったがやらない訳にはいかなかった。

 

 

「っはあ、はぁ……!!」

 

 

レーザーターボの打ち出した矢を相殺して、シータは疲れでその場に膝をつく。もう、何かにもたれていないと立つことすら厳しかった。しかしそれでも戦うのは、夫と恩人を守るため。

 

 

「まだ、まだ……!!」

 

「……まだやるのか、シータ」

 

「っ、アヴェンジャーさん……!!」

 

 

その隣に、いつの間にかアヴェンジャーがやって来ていた。彼は煙草を出そうとして、しかしここは喫煙室ではないとそれをしまいながらシータに問う。

 

 

「お前は、あれを殺せるか? あれらは決して諦めない、死ぬまでこちらとは相容れないぞ」

 

「……」

 

 

彼は、シータに迷いがあると踏んでいた。ラーマは完全に決意していたが、シータは本当に黎斗の為に戦っているかは微妙だと思っていたのだ。夫の意見に追従しているのだと思っていたのだ。

しかしシータは、迷いなくその問いに答える。

 

 

「……殺せます。私達の恩人の道を、理想の道を、私達は切り開く。例え命を奪ってでも!!」

 

「……そうか。待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)

 

 

……アヴェンジャーはその言葉に頷き、シータに回復宝具をかけてやった。そしてシータが再び立ち上がる前に彼は四階から飛び降り、変身しながらレーザーターボへと突撃していく。

 

 

『ガッチョーン』

 

『Knock out fighter!!』

 

『Perfect puzzle!!』

 

「……変身」

 

『マザル アァップ』

 

───

 

『赤い拳強さ!! 青いパズル連鎖!! 赤と青の交差!! パーフェクトノックアーウト!!』

 

「嘘だろ、また増えた!!」

 

 

レーザーターボは、突然乱入してきたアヴェンジャーに容易く吹き飛ばされた。彼はあと一歩で宝具を発動できたマルタに背中からぶつけられ小さく呻く。

 

 

「っつ……!! おっと、悪い姐さん」

 

「その呼び方止めてください……この話し方もさっきの話し方も、どっちも私の素ですから」

 

「そうかい、でも自分はこの呼び方の方が好きだからな。何しろ自分も仮面『ライダー』だ、ライダーがライダー使役するなんて何か変だろ……って、そうも言ってられねえな!!」

 

 

アヴェンジャーはさらに彼らに追撃を加えた。どこからともなく取り出したパラブレイガンでレーザーターボとマルタを攻撃し、さらに二人を追い詰める。

 

パラドはそれを見ることしか出来なかった。令呪でサンソンをレーザーターボに加勢させることも考えたが、ラーマの方も手一杯だ。

彼は今変身できない。何も出来ない。地面を向いて歯噛みする。

 

 

「っ……どうすればいいんだ」

 

 

そんな彼の元へと、シータが容赦なく矢を放って。

 

 

 

 

 

『マイティジャンプ!! マイティキック!! マイティマイティアクション!! X!!』

 

   ガキンッ

 

「待たせたなパラド!!」

 

「永夢……!!」

 

 

そこに、異変を知って走ってきたエグゼイドが飛び込んできた。彼はシータの矢を吹き飛ばして身構え、マイティブラザーズXXガシャットを取り出す。ナイチンゲールは既にポッピーの方に加勢しに向かっていた。

 

 

「使えるかな……」

 

『マイティブラザーズ XX!!』

 

「……よし、行ける!! 戦えるかパラド?」

 

「……勿論だ」

 

 

幸運なことに、どうやらレベル上限は20(XX)までのようだった。エグゼイドはパラドに手を伸ばし、彼をその身に取り込む。そして。

 

 

( だーーーい)、変身!!」

 

『ガッチャーン!! ダブルアップ!!』

 

『俺がお前で!! お前が俺で!! ウィーアー!! マイティマイティブラザーズ XX!!』

 

 

その音声と共に、エグゼイドは二人に分裂した。いや、パラドの人格を持つオレンジのエグゼイドと、永夢の人格を持つ緑のエグゼイドが現れた。

二人は一瞬互いの顔を見て、頷き、レーザーターボへと加勢せんと走り出す。

 

───

 

「……不味いことになった、な」

 

 

衛生省にて、大臣である日向恭太郎は苦い顔をしていた。真檀黎斗に情報を奪われたのは衛生省も例外ではなく、あらゆる機械に紫のラインが走っている現状において、衛生省内の職員は皆獅子身中の虫のようなものだった。

眼下では、情報を奪われた人々が小規模なデモを起こしている。彼らとてスマホの情報は奪われているのだが、それを指摘することは彼らに油を注ぐことでしかなかった。

 

そして彼の心を悩ませていたもう一つの事柄。それはもう何度かニュースで流れていて、日本中ほぼ全てに知れ渡っていた。

 

 

『繰り返しお伝えします。日本政府は、現在東京で発生中の大規模情報テロに対して非常事態を宣言しました。大規模情報テロに対して非常事態を宣言しました』

 

 

政府の非常事態宣言。正確には、緊急事態の布告。これが行われることによって、令状なしでの逮捕や、法律より優先度の高い政令の発動が自由に出来るようになってしまう。

 

 

『今後、必要に応じて自衛隊を派遣していく予定です。繰り返しお伝えします──』

 

 

そして、政府は自衛隊を派遣すると言った。ゲーム病について何も分かっていない。

これから暫くの恭太郎の仕事は、政府の抑制に絞られる未来がほぼ確定した。

 

───

 

『ズキュキュキューン!!』

 

『マイティブラザーズ!! クリティカルフィニッシュ!!』

 

「「はああぁぁぁぁ!!」」

 

 

エグゼイド二人がアヴェンジャーへと光線を放つ。高エネルギーのそれは確実にアヴェンジャーを捉えていた筈なのに、寸前で高速化されて回避されてしまう。

二つの勢力それぞれに加勢が加わった結果、パワーバランスは変わらずに彼らは苦戦していた。

 

 

「っ……また躱された!!」

 

「おい、避けるなよお前!!」

 

「フハハハハ!! 逃げない訳がないだろう!!」

 

『マッスル化!! 分身!!』

 

『1!! 2!! 3!! 4!!』

 

 

アヴェンジャーは高速で動きながらエグゼイドの裏を取り、強力な一撃を何度も浴びせてくる。その姿はどこか遊んでいるようで。

 

 

   ズダンダンダンダン

 

『4連打!!』

 

「ぐあああっ!!」

 

「うわああっ!!」

 

 

地を転がる二人。しかしもう誰も彼らを助けられない。

ライフゲージがいよいよ危なくなったレーザーターボは既に変身を解除して待避している。ポッピーもマルタもサンソンももうろくに戦えてはいない。当然宝具も撃ち込めなかった。

 

結局、退却しか選択肢はなかった。悔しいが、仕方のないことだった。

 




次回、仮面ライダーゲンム!!


──出された妥協点

「……駄目だ、今はもう無理だ」

「私の調整が終わるまでは、向こうに向かうな」

「待つことしか出来ないのか……!!」


──堕ちたクリエイター

「おい、いるか社長!!」

「返事をしろ!!」

「あらあら、私……妬いてしまいますよ」


──真檀黎斗の理想郷

「遠くない……あと少しだ」

「その未来は、間違っている……!!」

「何故そう言い切れる?」


第十一話 ASH


「完成した……マイティアクションNEXTのバージョンⅡが!!」

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