トミカヒーローだとレスキューファイアーが好きです
ウルトラマンだとオーブが好きです
皆もオーブクロニクル、観よう!! (提案)
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「……ん、う……」
鏡飛彩は、何故か道端で目を覚ました。土の臭いがする。起き上がってみれば、丁度中世ヨーロッパ、といった風景が広がっていた。
おかしい、俺は普通にベッドて寝たはずだ……飛彩はそう回想し、黎斗神の言っていた言葉を思い出す。
『サーヴァントとマスターは、夢という形で記憶を共有する──』
「ここは……セイバーの過去か?」
飛彩はそう思い至った。そしてそれを裏付けるように、道の向こう側にジャンヌを見た。
彼女は、膝にすがり付く彼女と似た女性……恐らく母親であろう女性を優しく引き剥がしているように見えた。
距離が遠かったため、会話は聞こえなかった。しかしそれが別れの場面であることは、傍目からでも容易に理解できた。
ジャンヌ・ダルクは百年戦争の英雄だ。その百年戦争の中でイギリス兵に包囲され、オルレアンに立て籠ったシャルル七世を救うために立ち上がったのがジャンヌだ。誰かがしなければならなかったことをしたのが彼女だ。
今は丁度、そのシーンなのだろう。
ザッ
「っ!?」
いつの間にか、彼は戦場に立っていた。鉄の甲冑に身を包み、手にはガシャコンソードがあった。
夢特有の急な場面転換だろう、飛彩はそう思いながら辺りを見回す。
旗を見た。数時間前にジャンヌがゲンムのキャスターに振るっていた旗を見た。当然、その持ち主はジャンヌだった。
彼女が一度旗を振れば、何人ものフランス兵が突撃した。当然の如くそれらはイギリス兵にぶつかっていき、殺しあった。
「……百年戦争の戦場か」
痛みに呻く声が聞こえた。喪失を嘆く声が聞こえた。命乞いする声が聞こえた。助けを求める声が聞こえた。
しかし飛彩の手にメスはない。あるのは相手を殺すための武器。
またジャンヌが旗を振った。それによって、飛彩の回りの兵士が走り始めた。飛彩も巻き込まれて走り始めて……
ザッ
「……危なかったな、また変わったか」
場面が切り替わる。今度は彼には甲冑も剣もなく、商人然とした服に不格好な十字架を持っていた。
左手の方から、馬が歩いてきた。そこから伸びる鎖に、ジャンヌが繋がれていた。
「セイバー!! ……っ」
うっかり飛彩は叫んでしまった。慌てて自分で自分の口を塞ぐ。
幸運なことに、見回してみれば誰も彼もがジャンヌに罵倒を浴びせていたお陰で、誰も飛彩の声など気にしてはいなかった。
少しだけ心が痛んだが、当然のことだとも思った。彼らは、ジャンヌ・ダルクに害されたのだから。
フランスを勝たせた英雄は、イギリスを負けさせた英雄だ。彼女が先導した兵に殺されたイギリス兵なんて何人もいるだろう。遺族、関係者、ひいてはイギリス国民皆から恨まれるのは当然だ。
「誰か、誰か十字架を下さい」
……そんな声が聞こえた。夢の中で、飛彩が始めて聞いたジャンヌの声だった。
手元には丁度十字架があった。きっと彼女に渡すためのものだろう。飛彩はそう感じ、観衆をすり抜けてジャンヌにそれを手渡す。
「……これを」
「……ありがとう」
会話はそれだけだった。ジャンヌは馬に牽かれて歩き続け、火刑にするための舞台まで連れていかれる。
飛彩は護衛の兵士によって道へ連れ戻された。彼の脳裏には、ジャンヌの声が焼き付いていた。
これは夢だということは分かっている。
彼女はバグスターだということは分かっている。
あれはジャンヌ・ダルクではないということは分かっている。
それでも気分は悪かった悪くない訳がなかった。
「魔女を火刑にせよ!!」
「魔女を火刑にせよ!!」
「魔女を火刑にせよ!!」
「燃やしてしまえ!!」
「殺してしまえ!!」
そんな声が辺り一面から聞こえてきた。
磔の下にくべられた薪、そこに火が投げ込まれた。
たちまち煙が立ち上ぼり、火の粉が天まで舞い上る。
飛彩はジャンヌに近づこうとした。しかし彼だけでなく誰もが魔女の死を目にしたがったために、結局近づくことは出来なかった。
「主よ、この身を委ねます──」
そんな声が聞こえて、彼の意識は闇に落ちた。
─
──
───
「……夢か。当然だな」
飛彩はベッドから起き上がった。時刻はまだ六時程だった。まだ、土の臭いが鼻に残っていた。
ゲンムのゲームもいよいよここまで来ていたのか、と思いながら彼は湯を沸かす。食パンをトースターに入れる。
少しだけ逡巡して、皿は二つ分用意した。
「おはようございますマスター」
「ああ、セイバー。今近くにサーヴァントは?」
「んー……いませんね、安全です」
「そうか、ならいい」
湯は沸いた。飛彩はマグカップにココアの粉末を入れ湯を注ぐ。
トースターからパンが飛び出た。飛彩はそれを手早く切り、幾らかの具材を挟んでホットサンドのようなものにして皿に乗せた。
そして彼はそれらをテーブルに並べ、腰かける。ジャンヌも、せっかく用意されたのだから、と言いながら席につき、マグカップに手を掛けた。
「……セイバーの過去を見た」
飛彩はそう切り出した。ジャンヌはそれに少しだけ目を見開きながら、しかし声を上げて驚くことはしなかった。
「……私も見ました、マスターの過去」
「……そうか」
飛彩はココアを飲み下した。少しだけ黎斗が恨めしかったが、それすらも顔には出さなかった。
「マスターは……その、小姫さんと」
「言うな。どうせ、お前が何を見たかなんて分かりきっている」
飛彩はそう言った。
小姫が消えていく様は、今でもありありと思い出せる。きっと彼女はそれを夢に見たのだろう。いや、それ以外あり得ないとすら思えた。現在の天才外科医、鏡飛彩の原点はそこなのだから。世界で一番のドクターになって、という言葉に他ならないのだから。
「……セイバー、お前はあれでよかったのか」
今度は飛彩が問った。ジャンヌはホットサンド擬きを完食し、少し目を瞑ってから答える。
「ええ、後悔はありません。私は啓示に従い、人々を戦いに駆り立てた。あの結末は、悔いるものではありません」
「……そうだろうな」
「ですから……マスターが人を救う側の人間であったことを、私は嬉しく思います」
「……そうか」
いつの間にか、六時半を少し過ぎていた。そろそろ、病院に向かわなくてはならなかった。
二人は黙って立ち上がり、身支度を開始する。
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「ぅ"ぁ"……ぐぎゅわ"ぁ……」カタカタ
黎斗神は、朝も夜もなく聖都大学附属病院を守っていた。メディア・リリィがひたすらにサポートしていることもあって、残りライフは91と、労働量の割には多めだった。
「あれは、流石に苦しそうなのだが」
「気にするなアサシン。ゲンムはあれが普通だ」ピコピコ
それを横目に、パラドはゲームをしていた。画面の中ではマイティアクションXのキャラクターが走っていた。
サンソンは興味ないふりを貫こうとしていたが、目の前でマスターがよく分からない物を弄っていたら気にならない筈もなく。彼は少しばかり気恥ずかしさを覚えながら、画面を覗き込んでいた。
どうやら、パラドはボスラッシュをプレイしているようだった。画面の中でマイティアクションXのプレイアブルキャラクター、マイティが動き回り、ソルティという名の敵を倒していた。そして次の敵の部屋へと進んでいく。
……何とも間が悪いことに、その部屋への仕掛けにモナカを模したギロチンのようなものがあった。
「っ……」
サンソンは思わず目を反らした。しかし反らした先では黎斗がパソコンの前で蠢いている。
パラドはそれを察してゲームを中断した。
「……申し訳ありません」
「いや、いいんだ」
シャルル=アンリ・サンソン。ギロチンを産み出した人間にしてそのギロチンで世界的に見ても大量の罪人を処刑した人間。死刑に抗い、死の苦しみと戦い、その中で苦しみ続けた人間。後悔した存在。
パラドは、少しだけ彼の後悔に理解を示そうとしていた。彼もまた、己の行いを後悔し、償いを求めた存在だった。
───
「はーい、回診の時間ですよー」
永夢はその頃、ナイチンゲールを引き連れて小児科の回診を行っていた。病室の子供たちの元を回り、健康状態を確かめていたのだ。
「えーと、怪我の具合はどう? 痛くない?」
足を複雑骨折して入院していた子供に永夢が笑顔で問う。決して、黎斗に向けるような乾いた顔はしない。
会話をしながらリストにチェックを入れていく永夢をナイチンゲールが覗き込んだ。
「……マスター、彼は、足を折っているのですか?」
「ああ、そうですよ。でも今はもう大丈夫」
「足を折ったのなら、切除した方が良いのでは?」
……ナイチンゲールから出たその言葉は、そのまま彼女の本心だった。突然
「取り合えず切除しましょう切除」
「駄目ですよ!! これは簡単に治せます……気にしないで、大丈夫だからね」
永夢はそう言って宥めた。
ナイチンゲールの頃ならば、複雑骨折なんてことになれば、切除は免れなかっただろう。傷口から病原菌が入る恐れがあった。上手く骨がくっつかずに炎症を起こす危険があった。しかし、もうそれは今の病院にとってはただの杞憂だ。
「今はもう、治療に痛みはいらないんです」
永夢は次の部屋へと向かう過程で、ナイチンゲールにそう言った。その声は、かつての誇り高き医療人への感謝と優しさに満ちていた。
ナイチンゲールはその言葉を受け止めた。ここまで綺麗な病棟にあっては、彼らの言葉は信用せざるを得なかった。
「次の部屋はこっちです。ついてきてくださいね」
「ええ、分かりました……ドクター」
───
「調子はどうかしらマスター?」カタカタカタカタ
「駄目だァ……このまま抵抗しても埒が開かないな……!!」カタカタカタカタ
真黎斗とナーサリーは、ひたすらにパソコンを操作する。未だに聖都大学附属病院は落ちない。
「誰か来ているかァ……?」カタカタカタカタ
「いえ、誰も来ていないわ。そこは安心よマスター。あ、さっきラーマとシータが出ていったけれど大丈夫よね?」カタカタカタカタ
「まあ構わないさ……!!」カタカタ
真黎斗はそこで手を止めた。
もう何度も侵入を試みたか知れない聖都大学附属病院のデータから一旦離れる。窓の外を見てみれば、ゲンムコーポレーションの回りにはもう誰も見えなかった。
「……次だ。次の一手だ」
「何をするの?」
真黎斗は突然そう言った。それと同時に彼は都内の変電所、地下変電所の全てにアクセスを開始する。
「聖都大学附属病院を、一斉に停電させる」
「……名案ね!!」
それが成功したならば。成功したならば、檀黎斗神のパソコンは確実に電源が落ちるだろう。すぐに非常電源に切り替わり復旧するだろうが、これまでに積み上げたプログラムの破損は免れない。
「……来い、ファントム」
スッ
「お呼びですねクロスティーヌ……」
そして真黎斗はゲンムのアサシン、ファントム・オブ・ジ・オペラを呼び寄せた。彼は歌うように真黎斗の名を呼びながら彼に跪く。
真黎斗は彼に聖都大学附属病院の地図を渡した。その地下三階の辺りに赤で丸が書いてあった。ただ非常電源に切り替えさせるだけでは足りない。故に、ダメ押しの手も用意する。
「……明日の早朝、非常電源を破壊しろ。侵入は余裕だろう?」
「クロスティーヌ、クロスティーヌ……分かりました分かりました、ただ私は従うのみ……例え、この命に代えてでも」
ファントムは受け入れた。真黎斗の計画に賛同した。
それはファントムの誓い。
ファントムを見つめる真黎斗の目には、勝利への自信が満ちていた。
次回、仮面ライダーゲンム!!
──出撃する狂人
「クロスティーヌ、クロスティーヌ……」
「黎斗さんは、クリスティーヌではありません!!」
「……言ってはならないことを言ったな」
──巻き起こる不仲
「今日も何処か行きましょうよ」
「あのさぁ……」
「裏切りますよ!?」
──最悪のタイミング
「っくそ、ここで侵入者かよ!!」
「数が足りない、向こうもきっと仮面ライダーだ」
第十三話 SURPRISE-DRIVE
「こいつ、使えるか?」
『仮面ライダー ビルド!!』