Fate/Game Master   作:初手降参

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『随喜自在第三外法快楽天』のタイトルを決めたのはキアラ
作に考えさせると『アマ・オブ・テラー』とか『AMA ZONE』とか『快楽天国キアランド』とか提案してきたからキアラが膨れっ面で考えたという裏設定がある



第十六話 Eternity blue

 

 

 

 

 

聖杯戦争の五日目は、大我の報告から始まった。当然、話されたのは良い報告ではなかった。

 

 

「まさか、作さんが……」

 

『そうだ。復帰はアーチャー曰く絶望的らしいな』

 

 

画面越しに大我が苦い顔をする。その向こう側ではニコとエミヤが何かの作業に追われているように見えた。フィンの姿も見える。

 

 

「確認する。CRのアルターエゴ、殺生院キアラ……そう名乗ったんだな?」

 

『そうだ。当然だが、そんな女は歴史上には存在しない。してたまるか』

 

「そうか……しかし、別人格(アルターエゴ)かぁ、何してくるかさっぱりだな」

 

 

その場のドクターは、誰もキアラに対する対処を思い付けなかった。そもそも何をしてくるか分からない。剣士(セイバー)なら剣を使ってくると考えられるし、暗殺者(アサシン)なら殺しに特化しているだろうという推察は出来るが、別人格(アルターエゴ)なんてどうするのか理解できる訳がなかった。

そして当然、サーヴァントもキアラについて心当たりはなかった。

 

……いや、一人だけあった。

 

 

「……え? あいつ(キアラ)いるんですか?」

 

「BB? 知ってるの!?」

 

 

BBが、キアラの名を聞いて驚いていた。

ポッピーが目を向いてBBに詰め寄る。おかしい、前CRのアルターエゴの存在を話したときにはそんな反応はしていなかった。まさか聞き逃していたのか?そうともポッピーは考えた。

 

 

「てっきりアルターエゴと聞いていたからメルトかリップかそこらだと思っていたんですが、あれだったとは……」

 

「……黎斗、知ってる?」

 

 

メルトとやらもリップとやらもポッピーは全く知らないが、キアラについてもポッピーは何も知らない。彼女はBBから黎斗神の方向を向いて彼にも意見を問う。

 

 

「知るか!! 私の邪魔をするな!!」カタカタカタカタ

 

 

しかし黎斗神はそう突っぱねた。

 

……彼も知らないのだ。殺生院キアラなんて。メルトやらリップやらに関しては少しだけ考えたような気もするが、キアラ……彼には心当たりがない。

 

 

「知らないの!?」

 

「知らない!! というか本当に不味い、私の邪魔をするな!!」カタカタカタカタ

 

 

黎斗神はキーボードを叩きながら最悪の展開を浮かべていた。新キャラクターを考えたのが真黎斗ではなくナーサリーである可能性だ。黎斗のバックアップであった彼女だが、それ自体にも人格はある。それも夢見る少女のそれが。それがキャラクターを作ったならば……もう、黎斗神の想像を越える存在が出来上がる。

──いや、現に出来上がっていた。黎斗という(性欲を排した)男には作れない、殺生院キアラ(性欲の具現)が。

 

 

「……パソコン下さい」

 

「え?」

 

「パソコンですよパソコン!!」

 

 

黎斗神の様子を眺めたBBが唐突にそう言う。ポッピーは言われるままに黎斗神の予備のパソコンを差し出した。現在真黎斗の干渉を受けない機械はどこの家電量販店にもない。それが、最後のまともなパソコンだった。

 

 

「殺生院キアラ……あれはヤバいですよ。何だってあれは──」

 

 

BBはそう言いながらパソコンを起動する。

しかし、その作業を中断させるある事態が、発生してしまった。

 

 

   ズン

 

「……!?」

 

「この空気……まさか」

 

 

パラドが目を細めた。彼が少し前にポッピーと共に感じた、ゲームエリアの違和感だった。しかし今度は広がっている訳ではない、ゲームエリアのサイズに変化は感じない。では、何が──

 

 

   プルルル プルル プルルプルルルル プルル

 

「っ!!」

 

 

その刹那、電話が鳴った。それとほぼ同時に院内通信用のポケベルも鳴り響く。ポッピーはBBの話も気になったが、それより電話を優先した。

 

 

「はいこちら電脳救命センター……ゲーム病ですか!? 場所は!?」

 

 

……ゲーム病の発症を告げる旨を、伝えられた。ポッピーは患者の場所を聞き電話を戻し──次の瞬間に別の患者から掛かってきた電話を取る。

しかもそれは二度、三度の連続ではない。何度も、何度も、絶え間なく電話がかかってくるのだ。

 

 

「まさか、全員ゲーム病だって……!?」

 

「急患が多すぎる!! どういうことだ!!」

 

「いや、もう考えられることは一つしかねぇ……」

 

 

貴利矢がそう言いながら白衣を羽織る。絶えることのない患者達の対応は急務だった。もう既に、聖都大学附属病院の救急車は皆出動済みだった。

 

 

「パンデミックだ。真黎斗の支配領域にいる全員が、ゲーム病を発症した!!」

 

 

最悪の事態が、起こってしまった。

 

───

 

 

 

 

 

「あんなに沢山の人が……」

 

 

マシュは自分の部屋で、社内に残されていたスマホで緊急特番を眺めていた。パンデミック発生から一時間、ゲーム病に喘ぎながら取材を行う記者達が会見を行う衛生省に詰め寄っていた。

 

 

『非常事態宣言からゴホッ三日になりますが!!』

 

『何故まだゲホッ政府は、自衛隊は動かないんですか!!』

 

『国民にグッ被害がゲホッ出ているんですよ!!』

 

 

彼らのマイクは、大臣である日向恭太郎に向けられていた。彼らの悪意も、日向恭太郎に向けられていた。

 

 

『ゲーム病の対応は、特別な処置を施したゴホゴホッ、電脳救命センターのドクターにか行えない事です!!』

 

『じゃあ、大臣が自衛隊の出動を止めているのですか!!』

 

『……その通りですゴホッ』

 

 

そこでマシュはスマホの電源を切った。どうせこの恭太郎という大臣がこの後記者達の槍玉に上げられるのだろうということは、容易に想像できることだった。

 

マシュは布団に寝転がった。目を閉じれば、旅をしていた日々が蘇る。ロマンの顔が蘇る。泣いていた顔が蘇る。

それらの日々は、それでも偽物で。

……しかし、本物ならば善いのだろうか。マシュはそう思い至った。ここでも、平和に見えた本物の世界でも、こうして悪意はあった。

……マシュには、偽物には、何も分からない。

 

───

 

「あら、何で皆倒れているのかしら?」

 

 

ナーサリーは社長室で首を傾げていた。のんびりと紅茶を啜っていた彼女は不思議そうに真黎斗に振り返る。

 

 

「別にこんなことになる予定じゃなかったわよね、マスター?」

 

「その通りだ……バグが発生したらしい」カタカタカタカタ

 

 

真黎斗の方はキーボードを叩きながら、何故か発生したゲーム病の収拾を行っていた。このパンデミックの原因は彼にあったが、彼も望んで行った訳ではなかった。

 

 

「本来ならば始められるはずだったのだが……急ぎすぎたか」カタカタカタカタ

 

「そうかもしれないわね。少し休んだら、マスター? 私が交代するわよ?」

 

 

ナーサリーが、自分の使っていたティーカップに紅茶を注ぎ直して真黎斗に差し出す。真黎斗は一つ伸びをしてそれを受け取り、一口飲んで目を閉じた。

 

 

「しかし……少しのミス程度は構わないさ。修正など容易い、寧ろより良いものにして見せよう」

 

「ええ、その意気よマスター!!」カタカタカタカタ

 

「ああ……私達に、神の才能に不可能はない。ゲームマスターの私こそが、私達こそが……神だ」

 

 

それは確信だった。また事実だった。しばらく前に信長から神にでもなったらどうだと言われた彼は、作業の合間に自身に最上級の神性を付与していた。世界がFate/Grand Orderに塗り替えられたならば、彼は真の意味で最高神となる。

 

 

「……すまない」

 

 

そこにやって来たのがジークフリートだった。

ナーサリーは珍しい客だと顔を上げ、真黎斗を見る。真黎斗も、ジークフリートが来たことには少し驚いた様子だった。

 

ここ数日の間、ガシャットの配付と任務の伝達以外でこの社長室を訪れるサーヴァントは限られていた。

眺めが良いからとやって来る信長。企画の提案をしに来るジル・ド・レェ。出先でいい感じのお土産見つけたからお茶菓子にでも、と渡しに来るカップル。そして理由もなく真黎斗の顔を見に来るアヴェンジャー。

それ以外は基本的に、自分の部屋に残っていた。会社に残された金や道具は各々に分配しているため不自由はないはずだった。

 

 

「どうしたジークフリート」

 

「……これは、いつになったら終わるんだ?」

 

「これ、とは現在のトラブルのことか?」

 

「そうだ」

 

 

真黎斗はジークフリートの顔を見た。その目を見た。そして少しだけ考え、彼の考えを推察する。

 

 

「……安心しろ、このトラブルは私にとっても想定外のことだ。本意ではない」

 

「……」

 

「原因究明などもあるからあと少しはかかるが、半日もかからないさ」

 

 

ジークフリートは下を向いていた。何かに悩んでいるようだった。真黎斗は、最初からジークフリートが自分と相容れないということは分かっていたため、それを追及するつもりはなかった。

 

 

「……俺は、この状況は不味いと思う」

 

 

……しかし、向こうから切り出されたならば、真黎斗も無視は出来ない。

 

 

「何故だ?」

 

「プレイヤーに危害を加えているからだ。人々の為の、人々の幸せの為のゲームなのに、その過程で苦しめては本末転倒だろう」

 

「……」

 

 

真黎斗は、ジークフリートの勘違いを確信した。ジークフリートの設定を黎斗が作ったときから、恐らく彼が自分に対して起こすであろうと思っていたことではあったが、こうして突きつけられれば少しだけ頬が緩んだ。

そして、それを否定する。

 

 

「違うな」

 

「……?」

 

「私がゲームを作るのは私の為だ。この私の神の才能を腐らせるのは世界の損失だからな、私の才能を具現化するために、ゲームという手段を取ったに過ぎない」

 

「──な」

 

「私は神の才能を持っている。これを具現化し頒布し絶対の物とする、それこそが私の永遠の目標にして使命であり、人々の存在は私にとってはその次でしかない!!」

 

「それは、おかしい……歪んでいる……!!」

 

「私に逆らうな!!」

 

 

……ジークフリートは唖然としていた。

勝手に信じていた、と言われればそれまでかもしれないが、何にせよ己が信を置いていたマスターが言い放つには、それは勝手すぎる発言だった。

 

しかし、ジークフリートはすぐに真黎斗に激昂することも出来なかった。彼を信じてきた日々の存在と、彼を信じている仲間の存在がそれを妨げた。

 

 

「……すまなかった」

 

 

だからジークフリートは、取り合えず退出した。胸の奥に葛藤が燻った。それは、ジークフリートが初めて覚えた感情だった。

 





次回、仮面ライダーゲンム!!


──ジークフリートの葛藤

「何を、するべきなんだ?」

「お前は、ゲンムのセイバー!!」

「……俺のしたいことは、何なんだ?」


──ゲーム病の変質

「症状が、収まった……?」

「いや、違う」

「まさか、患者と一体化を!?」


──そして始まる天国

「かんせいしました、かんせいしました……!!」

『随喜自在第三外法快楽天』

「とてもとても、気持ちのよいことでございます……」


第十七話 JUST LIVE MORE


「天上解脱、なさいませ?」
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