Fate/Game Master   作:初手降参

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私とも作戦を共有しましょうよ先輩!?

 

 

 

 

 

「──ちっ、あの野郎、以外に速いね」

 

 

ヘクトールを追跡しながら、ドレイクがそう漏らした。

一艘の小舟としては異常な速さで進むそれは、あっという間に遠くの船に近づいていく。

間に合いそうに無かった。というか、間に合わなかった。

ヘクトールの船は敵の船の隣に静止し──

 

 

「──おお、やってくれたかヘクトール!!」

 

「はいはい、聖杯持ってきましたよキャプテン。例の女神もあの船の中ですよ」

 

「ならばよし、よくやった」

 

 

ヘクトールが仲間の物らしき帆船に飛び乗る。当然聖杯をその手にもって。

甲板にはヘクトールと金髪の男、紫の髪の女、そして岩のような大男が見えた。

 

黄金の鹿号はその帆船に相対し砲台を向けた。だが、向かいの船はそんなこと気にしないと言わんばかりに、こちらから目を放さない。

そして、金髪の男が口を開く。

 

 

「さあ、決着を着けようじゃないか。聖杯戦争に相応しい幕引きだ!! さあゆけヘラクレス!!」

 

「■■■■■!!」

 

 

どこの誰ともつかないそいつは、隣にいた岩に指示を出す。

そして岩は、高くジャンプして黄金の鹿号に飛び移った。

 

 

   ズドンッ

 

「■■■■■■■■■■■!!」

 

「っくぅ……図体のわりに素早い野郎じゃないか」

 

「黎斗さん……このサーヴァント、ヘラクレスと呼ばれていましたが」

 

「やはりか。つまり……敵はアルゴノーツと考えるのが自然だろう。あの金髪はリーダーのイアソン、そして隣にいるのが……裏切りの魔女メディア。……面白い」

 

『ガッチョーン』

 

「■■■■!! ■■■■■■!!」

 

 

声高に吼えるヘラクレス。ギリシャ神話の大英雄。黎斗は楽しそうに顔を歪め、そのドライバーにガシャットをセットする。

 

 

『デンジャラス ゾンビィ……!!』

 

「変身……!!」

 

『バグル アァップ』

 

『デンジャラス ゾンビィ……!!』

 

 

瘴気と共に死を纏うゲンム。その隣ではドレイクやらアンやら、船室から引きずり出されたエウリュアレやらが飛び道具を構え援護の体制を整える。

 

 

「ほう、敵のマスターは、何やら奇特な性質を持っているようだな。だがまあいい……押し潰せ、ヘラクレス!!」

 

「■■■■!!」

 

───

 

戦闘開始から5分。

現在、マシュがヘラクレスの猛攻を防いでいた。ゲンムがそう指示したのだ、時間を稼げ、と。

 

 

「■■■■■■!!」

 

「宝具、展開します……!!」

 

   カッ

 

 

ヘラクレスの強打を、覚えたての宝具で受け止めるマシュ。しかしじりじりと押され後退していく。

 

 

「ぐ、ぐ……」ジリジリ

 

「■■■■!!」ブゥンッ

 

   ズドンッ

 

「あ、がぁっ……!?」ジリジリ

 

 

普通の攻撃でさえこれなのだ、ヘラクレスに宝具など使われたら防ぎようもない。

だから、だからこそ、ここで落とす必要があると、ゲンムは確信していた。

 

 

「……マシュ・キリエライト、退避しろ!! 準備が整った!!」

 

『バンバン クリティカル フィニッシュ!!』

 

「目に物を言わせてあげる!!」

 

「「さあ、海賊のお通りだ!!」」

 

 

マシュの宝具の陰で必殺技のチャージを終えていたのは、ガシャコンマグナムを構えたゲンム、そして女神と二人組の海賊。

狙いは既に定めてある。面々は各々のトリガーを引き。

 

 

「はぁっ!!」

 

女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)!!」

 

「「比翼にして連理(カリビアン・フリーバード)!!」」

 

   ズギュウンッ

   ズギュウンッ

   ズギュウンッ

 

「■■■■……!?」ドサッ

 

 

ヘラクレスは体に穴を開け膝をついた。筋肉から白い煙を出している。

 

 

「やったかい!?」

 

「……■……■■……!!」

 

「いや、まだのようですドレイクさん!!」

 

「そんなっ!? 私もう疲れたんだけど!?」

 

 

そんな状況になっても、ヘラクレスが唸りを止めることはなく。段々腹の穴が塞がっていくのが見えた。

 

 

「……ヘラクレスの命のストックが……大体二つ削れたようですぜキャプテン」

 

「おお頑張る頑張る!! そんな君らにとっておきの情報だ。……ヘラクレスはね、死なないんだよ」

 

 

ここで明かされる衝撃の真実。イアソンは朗々と語る、ヘラクレスは十二個の命を持っているのだ、と。

愕然とするドレイク、アンとメアリー、そしてエウリュアレ。特にエウリュアレの足はもうふらついていた。運動不足だろう。

 

だが、ゲンムのサーヴァントは、至って真顔だった。

 

 

「別に珍しくもなんともありませんね」

 

「そうだろうそうだろう、ヘラクレスには勝つこ……ふぇっ?」

 

 

マシュの塩対応が意外だったのだろう、イアソンは変な声を上げて黙り混む。

 

 

「だから、珍しくもなんとも無いんですよ」

 

「クロスティーヌは、まるで不死鳥。不死鳥の戦士、ホウオウソルジャー」

 

「我が主は神の才能を持っておられますからな!!」

 

「うおおおお!! 神いぃぃいいいい!!」

 

 

ゲンムのサーヴァント達が、一欠片の不安すら見せずに口々にそう言う。……イアソンは、自分の中の大切な何かが崩れる音を聴いた。

 

 

「えっ、えっ……嘘だろ? ハッタリだろ? だって、だってヘラクレスだぞ? ギリシャ神話最強の英雄だぞ? なのに……」

 

 

目に見えて動揺する金髪。ゲンムはその姿に指を突きつけ、一際大きく嘲笑う。

 

 

「ハーハハハハハ!! そっちのヘラクレスは、たったそれだけ(残機10)なのか!! 私は……不滅(残機∞)だあっ!! 神だからなあっっ!!」

 

「……な……ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!! やっちまえ、ヘラクレスぅっ!!」

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 

傷の治ったヘラクレスがイアソンに合わせるように猛り狂い、ゲンムに掴みかかる。ゲンムは避ける様子もなく、ガシャコンマグナムを投げ棄てて別の武器を呼び出す。

 

 

『ガシャコン ブレイカー!!』

 

「さあ来いヘラクレス!! 神の才能をとくと見ろ!!」

 

『マイティ クリティカル フィニッシュ!!』

 

 

ハンマーにプロトマイティアクションXガシャットを突き刺して叫ぶゲンム。二人の間にはもう10センチも無く。

そして、次の瞬間。

 

 

   バギンッ

   グギョグジョギョョ

 

「■■……■……!?」

 

「っ、ごぽぉ」

 

 

ヘラクレスの一撃で、ゲンムの背骨が後ろに90度近く折れ曲がる。それと同時にゲンムの一撃が、ヘラクレスの腹の左半分を吹き飛ばす。

 

明らかな致命傷。ヘラクレスはよろけ甲板のすみに再び膝をつく。命のストック、残り9。

 

そしてゲンムは。

 

 

「」

 

「……すいませんマシュさん。アレ、本当に大丈夫なんですの?」

 

「ああ、アンさん。大丈夫ですよ黎斗さんは。ほら……」

 

 

「ハーハハハハ!! ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!」ピョコン

 

「嘘だろ……まさか……本当に……!?」

 

 

命のストック、(無制限)。折れていたはずの背骨は瞬時に治り、ゲンムは高笑いしながら跳ね起きる。

イアソンは絶望した。ヘラクレスと同等の戦士? そんなのに、勝てるわけ無いじゃないか。

 

 

「く、ぬ……ふ、船を出せ!! 撤退だ!! この聖杯で新しいサーヴァントを呼べばいい!!」

 

「……まだヘラクレス死んでないよ? ま、キャプテンの命令なら仕方無いねぇ」

 

 

アルゴ船が動き始める。乗っていたヘラクレスを黄金の鹿号に放置して。

 

そうはゲンムが卸さない。

 

 

「ジル・ド・レェ、宝具!!」

 

螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)!!」

 

   ザバザバ ザバザバ

 

「ゴゴゴゴゴ……!!」

 

「ひいっ!?」

 

 

アルゴ船の周囲に海魔がへばりつき、黄金の鹿号と触手で強引に結びつけた。相手から逃げられないが、相手を逃がさない体勢である。

ゲンムは、ここで全てを終わらせるつもりだった。

 

 

「■■……■■■!!」

 

「おい黎斗!! ヘラクレスが動き出すよ!!」

 

「押さえておけ!!……先に乗っていろファントム、カリギュラ、ジル・ド・レェ、そして……マシュ・キリエライト。準備は良いな?」

 

「勿論ですよクロスティーヌ」

 

「うおおおおおおおお!! おkぇぇぇえええ!!」

 

「我が主よご照覧あれ!!」

 

「え? どういうことですか?」

 

 

その一言と共に、ゲンムは懐から……竜をあしらった特殊なプロトガシャット(プロトドラゴナイトハンターZガシャット)を取り出す。

 

そして、それらを放り投げると、()()()()()()()彼のサーヴァント四人の手に渡った。

 

 

「えっ、何ですかこれ、ねえ黎斗さん?」

 

「気にしてはなりませぬぞマシュ嬢。変っ身っ……」

 

『クロー!!』

 

 

真っ先に電源を入れたのはジル・ド・レェ。鳴り響く音声を聞きながら、ガシャットを胸に突き立てる。

 

 

「お……おぉ……はははは……あーははははは!!」

 

「ちょっ、ジルさん!?」

 

「はーはははははは!! 良いのですよマシュ嬢。これは新たなる神(我が主)の下さった力なのです。さあ、あなたも……!!」

 

 

ジル・ド・レェの体が黒に染まっていき……その両腕には異形の爪が生え、されどジル・ド・レェは怯えず、恐れず。

それは自らの主をかつて信じた神と同一視しているからか、それは誰にもわからない。

分かることは……目の前の、黒く染まったジル・ド・レェは、非常に強くなっていた。

 

 

「恐れを捨てましょうマシュ殿。クロスティーヌを信じるのです……変身」

 

『ファング!!』

 

「へぇぇんしぃぃんっ!!」

 

『ガン!!』

 

 

ファントムの胴体には翼が生え、カリギュラの左手には大砲が作られる。そして黒く染まった三人は、海魔の触手を渡ってアルゴ船に飛び込んでいく。

 

マシュは一瞬の迷いこそ見せたが……やはり、彼らに続こうと決意した。

 

 

「私も……私も……!!」

 

『ブレード!!』

 

「くっ……んっ……ああっ……!?」

 

 

胸にガシャットを突き立てると、体が未知の何かに侵されていくのが手に取るように伝わってきた。

 

 

「ああっ、あ、はあっ……んっ……!?」

 

 

戦闘服は竜のごとく硬質化し、鱗が出来上がる。皮膚は浅黒く染まっていく。盾の下の部分に、豪快と言えばあまりにも豪快なサイズの刃が生成される。

 

体を侵していく異物。デミ・サーヴァント、マシュ・キリエライトは、その力を受け入れた。

 

 

「……マシュ・キリエライト、行きます!!」

 




ん? プロトドラゴナイトハンターには『ブレード』とか『ガン』じゃなくて『グラファイト』だろって?
気にしてはいけない(戒め)

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