Fate/Must Be Doneとかいう歌詞ネタ要素しかないアマゾンネオ主人公のクロスを思い付いた
明らかにバッドエンドしかなさそうだなーと思いつつ、呼び出すキャラとして故意に作られた英霊縛りでサーヴァントを考えてみた
……フランと邪んぬしか思い付かなかった
誰か書いて(他力本願)
CRのアサシン、シャルル=アンリ・サンソン。彼は消滅した。金の粒子がパラドの鼻を一瞬だけ擽って空へと昇っていく。
……その、彼が消滅した瞬間に、黎斗神が窓から顔を出した。隣ではメディア・リリィが杖を空に向けている。
「おい神!! 何しに来た!!」
「ゲンム……!!」
パラドは無意識の内に恨みの籠った目を向けていた。このタイミングで出てくるなんて、まるで……
「よし、まだ間に合う!! 令呪をもってキャスターに命ずる!!」
「はいっ!!」
いや、彼は確かに待っていたのだ。
サーヴァントが倒され、魂が剥き出しになる消滅の瞬間を。空気中にカリギュラとサンソンの魂が吐き出され帰り行く瞬間を。
「アサシンとバーサーカーの魂を捕縛しろ!!」
そして、その企みは成就する。
消え行く魂はメディアの生成した可変性の檻に強引に囚われ、黎斗神の手元に落下する。
黎斗神の顔は愉しげに歪んでいて──
───
「……さーて、妨害出来たわよマスター!!」
「なら良い。政府に下手に動かれると困るからな」
その時ナーサリーは、CRの処遇に対して行われていた会議に嫌がらせを行っていた。停電させ、パソコンのデータを飛ばし、ついでに部屋のテクスチャを弄って髪の毛を机と融合させた。まだ人間本体を弄ることは出来ないが、それを出来るようになるのも遠くはない。
そんな嫌がらせをした理由はただ一つ。政府がCRに対しての処罰を考えていたからだ。真黎斗に日本が脅かされている現状は彼らのせいだということにしてしまおうという動きが現れ始めていたからだ。
無理もない。これまでに掌握された情報は数知れず、そしてとうとう先程、政府の名を騙る謎のメールを全ゲームエリアの人間に送信されてしまった。すぐに政府への文句が殺到した。だからこそだった。
……真か神かに関わらず、檀黎斗は政府というものを好いていない。神の場合は自分を捕らえたという私怨もあるが、それはともかくとしても、政府は黎斗の計画の邪魔ばかり行う。
「全く。私の楽しみを邪魔するなど……」
真黎斗は、
……だからこそ、正面から倒す。少なくとも、政府の権力に屈する檀黎斗なんてものは真黎斗は望んでいなかった。
……その時、マシュが部屋に入ってきた。
「……話って何ですか」
「ああ、来たか……マシュ・キリエライト。君はどうして九条貴利矢を取り逃がした?」
真黎斗はそう問う。カリギュラはその役目をきっちりと果たしたが、しかしレーザーターボがいなければもっと良い結果を叩き出せたのも確かなことだった。
……いや、真黎斗はもうマシュと、彼女と相対したエミヤとの間のやり取りを観察していた。
正直な話をするなら、真黎斗はマシュが貴利矢を取り逃がしたことをそこまで恨んではいないしエミヤとのやり取りも勝手にしていればいいと思ったのだが……ナーサリーが状況を少しばかり危険視したためにそれに従ったのだった。
「……」
マシュは黙っていた。
彼女は、エミヤとの会話を思い出していた。
───
──
─
『君には、幾つも聞きたいことがある』
マシュと対峙して、エミヤは最初にそう言った。
マシュから感じる守護者の気配。
マシュから感じるあからさまな迷い。
マシュの手にある聖剣。
マシュのガシャットから出た『ブリテン』という単語。
その全てが、エミヤの神経を逆撫でするものだった。
『君は……お前は、何者だ』
『……ゲンムのシールダー、マシュ・キリエライト』
マシュはガシャットをバグヴァイザーに挿入する。それは、真黎斗に指示された通りの行動。敵の足止め。一人、取り逃がしてしまったが。
『マザル アァップ』
『ブリテンウォーリアーズ!!』
『そして……仮面ライダー、シールダー』
シールダーのエクスカリバーが、ガシャコンカリバーに変質した。しかし、エミヤは確かに彼女のエクスカリバーが、アルトリア・ペンドラゴンの物と同じだと確信していた。
『お前は、守護者か?』
『……ええ』
『その剣は、セイバー……アーサー王の物か?』
『……そうですね』
『……どこで手に入れた』
『私が……受け継ぎました』
『その剣を受け継いでおきながら……お前は、何をやっているんだ……!!』
エミヤはそう言わずにはいられなかった。彼女の持つ歪みは、エミヤにはありありと見てとれた。腹の立つ歪みだった。かつての自分の歪みとも違う、ただただ不完全な歪み。
……シールダーはその時、少しだけ自分の手元を見つめたがすぐにガシャコンカリバーを握り直して、エミヤに飛びかかった。
剣を振り上げて、降り下ろす。その一撃はシンプルにして強力だったが、エミヤの双剣かそれを受け流した。斬りあいが始まる。
───
『何故お前は守護者になった!!』
刃が交わる。火花が飛び散る。シールダーは、エミヤに対して一撃も加えられない。何処かを救急車が走り抜ける音が聞こえた。
『何故守護者になったと聞いている!!』
『っ──人理を、人の明日を守るためです!!』
『なら何故ゲンムの側についた!!』
『──』
『何故、そんな迷いの籠った剣を振るう!!』
マシュは圧されていた。交えた剣は簡単に押し返され、放つガンド銃はあらぬ方向へ飛んでいき、ルールブレイカーは空を切った。彼女は、戦えなかった。迷いが戦いを許さなかった。
『どうしてっ……』
いつの間にか、涙が浮かんでいた。
『じゃあ貴方は、どうして守護者になったんですか!!』
『……私が守護者になったときは、お前と同じ歪みを抱えていた』
剣を振るう。剣を振るう。エミヤは何の迷いも容赦もなく、シールダーへと剣を振るう。こうして話してやるのも、冥土の土産位の認識しかない。彼は、シールダーを見ているだけでイライラさせられていた。
『私の回りの皆が死に絶え、私だけが生き残った。オレだけが救われた。そしてオレを救った人は喜んでいた!! だから憧れた、誰かを救うという夢に憧れた、それだけだった!!』
『……っ』
『この身は誰かの為にならなければならないと、強迫観念につき動かされてきた。それが苦痛だと思う事も、破綻していると気付く間もなく、ただ走り続けた!! だが所詮は偽物だ。そんな偽善では何も救えない。否、もとより、何を救うべきかも定まらない!!』
苛立ちのあまり、エミヤは自分の過去を吐露していた。それは、シールダーも知っている道筋だった。
強迫観念に突き動かされた。苦痛だとすら思わなかった。……何も救っていなかった。
シールダーは思わずガシャコンカリバーを取り落とした。慌ててルールブレイカーで剣を受けるが、剣先はすぐ目の前にあった。
『もしかして、貴方が……エミヤ、シロウ?』
……言葉が漏れた。シールダーの聞いた道筋は、かつて彼女の使用しているガシャットの中で聞いた守護者と全く同じだった。
『……っ、誰から聞いた』
『……アルトリアさんが、言っていました。貴方のこと』
……エミヤの攻撃が、緩んだ。それに合わせてマシュはガシャコンカリバーを拾って飛び退き、変身を解く。
マシュは、彼には勝てないと悟ってしまっていた。今の自分は、彼を倒せない。誰も倒せない。倒したいのかも、分からない。
『……逃げるのか』
『……はい』
……エミヤは、その気になればマシュを始末出来た。宝具を展開してから徹底的にいたぶり潰すことが出来た。何なら令呪を貰ってエクスカリバーを使うことも出来た。
それをしなかったのは、マシュがアルトリアと知り合っていたからだった。彼女と会った上で剣を託されたなら、それはアルトリアがマシュを認めたということととれる。それなら……もう少し、信じたいと思ってしまった。
『……そうか……何かあったなら、私の元へ来るといい』
『……見逃すんですか?』
『……お前が、セイバーの信じたお前が、正しい決断をすることを、信じよう』
─
──
───
「……」
正しい決断とは、何なのだろう。マシュには分からない。
今の自分には、何もない。救うものすらない。自分の道すら、結局見失ってしまった。
君が世界を救うんだ──マーリンの言葉が脳裏を過る。
「……マシュ?」
「……」
エミヤの意見に従って、取り合えず裏切れば良いのだろうか。それが正しい守護者と、言われた気がした。
ジル・ド・レェの意見に従って、世界を塗り替えれば良いのだろうか。そうすれば全てを好きなように守れると、確かに言われた。
誰も答えはくれない。人理を修復していた頃はそれしか選択肢はなかったし、マシュも人理修復しか考えなかった。
自分のやりたいことは、何なのだろう。
「……マシュ? マシュ?」
ナーサリーがマシュの名を呼ぶ。マシュは上の空だった。ナーサリーが肩を竦めて真黎斗を見る。
「マシュ・キリエライト」
「ねぇ聞いてるマシュ?」
声がマシュの脳内で響いた。歪んで聞こえた。急かしているように思えてしまった。早くしろ、早く決断しろ、お前はどうするんだ、そう攻め立てられているように思えてしまった。
「……私は!!」
弾かれるように、叫んだ。反射的だった。
「わ、私は!! 檀黎斗は、間違っていると、思います!!」
反射的だった。やはり……考えなしの発言だった。
真黎斗は眉をひくつかせ、理由を問う。
「……何故、そう思った?」
「何故って──」
……当然、理由なんて出なかった。
マシュは下を向いたままフリーズする。真黎斗は大きくため息を吐いた。
「……全く、私に理由なく歯向かうとはな。君は予想以上に脆かったらしい」
「きっと疲れてるのよマスター」
「っ……」
「君には考える時間が必要だろう。君を選んだのは私だ、君が最終的に何をしようと、私の目的に代わりはないが──考える時間はやる。君には、その権利は私が恵んでやる」
マシュはつい、顔を上げた。
その拍子に、ガシャットを奪われた。
「そして、ガシャットの使用権を剥奪する」
───
「早く蛇口から手で水を移し変える作業に戻りなさい!! とにかく癒しの水増やして!!」
「分かった分かった!! この私がウォーターサーバーになるとは……!!」バシャバシャ
花家医院にて、フィンはニコに顎で使われながらひたすらに癒しの水を生成していた。既に深夜だったが、フィンは一度も休めなかった。
フィンの宝具
「出来たぞマスター!!」
「遅い!! これ次のバケツね!!」
「っ、まだ終わらないのか……マスターは本当にサーヴァント使いが荒いな。これも女難か……!?」バシャバシャ
「はぁ? ならアンタが一人一人の患者の元を回って手当てする!?」
「はは、冗談はよしこさんだ!!」バシャバシャ
そう言えば、ニコはいかにも鬱陶しそうに顔をしかめて、その場からバケツを持ち去った。
……都合が悪いことに、サーヴァントの治癒宝具は、ゲーム病に対しては上手く効果を発揮できない。黎斗神に治癒をかけ続けているメディア・リリィはまだ調べていないが、少なくともナイチンゲールとフィンの各々の宝具では、ゲーム病は全く治らなかった。精神を落ち着かせ、ゲーム病以外での怪我を治すことは出来るから重宝はしているが。
黎斗神はこのことに対して、バグスターであるサーヴァントにとって、ひいてはバグスターの世界を作ろうとしている真黎斗にとってはゲーム病にかかっていることは当然のことであり、何ら治療の必要がないのだろう、だから治せないのだ……と仮説を立てている。
「ベッド増やすぞ!!」
「もう全部無くなったわよ!! それに薬も足りない!!」
「他所の病院からの援助はどれだけある!!」
「まだ半日はかかるって!!」
飛び交う怒号。止まらない患者。元々は大我しかいなかった廃病院は、今やゲーム病患者の生命線だ。
ゲーム病に対して治療が行えるのは、聖都大学附属病院とここ花家医院しかない。ゲーム病が知られてからまだ経っていないという理由もあるが、何れ根絶されるであろう病であることが、専門医の増加を妨げていた。故に、他の病院はゲーム病に対してろくな対策が取れない。夜は今日も更けていく。
───
そして更に更け行く夜のなかに、マシュは出てきていた。
「……」
聖杯戦争七日目、午前3時頃。ガシャットもバグヴァイザーも奪われたマシュがロビーを出ていた。荷物は全て部屋に置いてきていて、持っているのはアヴェンジャーに押し付けられた煙草と少しの金くらいだった。
空は暗く何処までも澄んでいた。星が美しかった。それが一層腹立たしかった。マシュは特に意味もなく、煙草を取り出す。
「……火が無かったら、吸えないじゃないですか」
そして仕舞った。ライターを探すのも疲れるし、煙草に興味はなかった。分かるのは、銘柄がこの前と同じキャスターだ、ということだけだった。
キャスター……ゲンムのキャスター、ナーサリー・ライム。マシュは彼女を思い出す。
「私が……本当なら、あの場所にいたんでしょうかね」
独り言が漏れた。彼女は、既に自分がFate/Grand Orderのメインヒロインだと知っていた。夢で見ていた。
自分が黎斗の隣で作業する様を少し想像してみる。……嫌気が差した。
マシュはいつの間にか、それなりに歩いていた。……花家医院へのルートだった。エミヤの言葉が頭を過る。それを振り払おうと首を振った。
その時だった。
「……何、してるの?」
「……貴女は」
CRのムーンキャスターのマスター、仮野明日那がそこにいた。
明日那は花家医院まで行ってちょっとした用事を済ませ、歩いて戻っている所だった。その途中で、見覚えのある髪を見たから警戒しつつも声をかけたのだ。
明日那は何時でも令呪を使えるように身構えながらマシュを観察する。背負っている剣を振り抜かれたら真っ先にBBを呼びつけるつもりだった。しかし、ガシャットを取り出して来ないことを考慮すると、向こうに戦う気は無さそうだ……そうとも思っていた。
「……その、ええと、散歩……です」
「……本当に?」
マシュは誤魔化そうとするが、効かない。
「……」
「……」
暫く見つめあう。風が吹いていた。
……折れたのはマシュの方だった。彼女には戦う意思すらない。むしろ、真黎斗への当て付けとして少しばかり情報すらくれてやろう……そんな気さえしていた。
───
「これよりサーヴァントの魂を解析する」
カリギュラによって融かされ、患者が誰もいなくなった棟をパージし終えた黎斗神は、メディア・リリィに確保させた二つの魂を押し込んだ、マイティブラザーズと同型のブランクガシャットに手をかけた。
「……それを使えば、アサシンは復活できるのか?」
「それは不可能だ。サーヴァントを召喚するシステムは、今のところゲンムコーポレーションにしか敷かれていない。まあ、この魂自体にも鍵が掛かっているからどちらにせよ不可能か」
「じゃあ何のために──」
パラドが苛立たしげに声を上げる。彼は、サンソンを助けなかった彼に対して怒っていた。それは、自分自身への怒りでもあった。
「このガシャットを解析することで、外からでは分からなかったサーヴァントの中身の情報が手に入る。本当に大事な部分には更に鍵が掛かっているが──サーヴァントに効くガシャットの調整方法は確立できそうだ」
「マジで!?」
今度は貴利矢が声を上げた。そして爆走バイクを黎斗神に投げ渡す。
「そうだな。前回の……三倍は効くようになるだろう。私の神の才能をもってすればな」
「……そうか」
しかし、パラドは下を向いていた。彼には黎斗神に渡すガシャットすらなかった。黎斗神はパラドの様子を横目に確認して、しかし無視する。
「これからは、このガシャットをCR側の聖杯とする。とはいっても、このガシャットにはサーヴァントの魂を回収する機能はゼロだがな。少なくとも、向こうには二つの魂は行っていない」
「なるほどなー……じゃ、もしこのガシャットに更に魂が五つ入れば、願望機になるんだな?」
「理論上はな」
……そのタイミングで、CRに明日那が帰ってきた。貴利矢が彼女に目を向け……驚愕する。黎斗神も、目を見開いていた。
「……何故、お前がここにいる」
白い髪。背中の剣。貴利矢と黎斗神には、酷く見覚えのあるもので。
「お前は……ゲンムの……」
「マシュ・キリエライト……!!」
マシュが、そこにいた。
明日那が、隣で手を合わせて謝罪していた。
次回、仮面ライダーゲンム!!
──マシュとCR
「黎斗さん……」
「私は君に謝ることなど一つもしていない」
「それでも、私は」
──交わされる問答
「バグスターの、命」
「貴女が味方になってくれるなら……」
「私は……何がしたいんでしょうか」
──裏切りの提案
「私と一緒に……来てくれませんか」
「……わしは、賛成出来んな」
「……すまない」
第二十二話 Lose your way
「ここまで泳がせた甲斐があった……」