Fate/Game Master   作:初手降参

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とうとうお気に入り数が連載開始時よりの目標だった961.0(黎斗)人に到達しました!!(6日 8時現在)
これからも応援よろしくお願いします



第三十話 Alive a life

 

 

 

 

 

「大我!! 聞こえた!?」

 

「ああ!!」

 

 

大我は、ニコと合流して互いの情報を確かめあった。夢でもなんでもなく、本当にゲームは始まってしまっていた。

彼らは共に診察室を出て、患者達が待機している筈のスペースへ出る。

 

がらんどうだった。

 

 

「……大我」

 

「……ああ」

 

 

ニコが気がついたときには、花家医院はもぬけの殻になっていた。誰も彼もが、己のサーヴァントと共に外へ出ていったのだ。どうやら真黎斗はわざとゲーム病を軽くしたらしく、もう誰も病院を求めていなかった。

 

二人は慌てて外へ出る。

──そこはもう、戦場だった。サーヴァントとサーヴァントが殴りあい、マスターも手に刃物を持って武装していた。

 

 

「止めて皆!!」

 

 

ニコが声を張り上げる。しかしその声は届かない。理性を捨て暴虐に走る民衆に、一人の少女の声など届くべくもない。

大我がニコの肩を叩いた。その手には、ガシャットが握られていた。

 

 

「大我……?」

 

「……行ってくる」

 

「患者を、撃つの?」

 

「まさか。俺がぶっ殺すのはバグスターだけだ。……こんな下らない戦いは、俺達が、ドクターが止めるしかねぇんだ!!」

 

『バンバン シューティング!!』

 

 

……数人が、大我に目を向けた。サーヴァントの剣が、槍が、彼に向けられた。

しかし大我は動じない。もう、するべきことは分かっていた。

 

 

「……変身!!」

 

『レベルアップ!!』

 

『バンバ バンバン シューティング!!』

 

『ガシャコン マグナム!!』

 

 

そして、仮面ライダースナイプに変身する。ガシャコンマグナムを取り出す。

その照準が狙うのはサーヴァントのみ。患者には傷一つつけない。無傷で無力化させる。

 

 

「……アーチャー!!」

 

「……行くのか」

 

「ああ。張り倒してでも安静にさせてやる……!! ニコ!! ここは頼む」

 

 

そしてスナイプはエミヤと共に駆け出した。病院の前に、ニコとフィンを残して。

 

幾らかのマスターは、フィンの存在にも気づいていた。凶刃はニコにも向けられた。

魂を聖杯に焚べろ。器を満たすまで戦い続けろ。それだけの目的が、マスター達を突き動かす。

 

 

「どうするマスター? 隠れているかい?」

 

 

フィンが槍を構えながらそう言った。ニコは一瞬迷ったが、戦いに赴くスナイプの背中を見てポケットを漁る。

 

 

「……使ってみるかな」

 

「……それは?」

 

 

ニコはそれには答えない。手には、名前の掠れた詳細不明のガシャット。しかし大我が戦いに赴いているのだから、彼女が戦わない理由はなかった。

 

 

『■■■■■クロニクル!!』

 

 

電源を入れる。音声は掠れていたが、後半部分は仮面ライダークロニクルと同一だった。出来る。ライドプレイヤーになれば、戦える。

もう、複数のサーヴァントがニコの目の前にいた。

 

 

「……ゲームスタート!!」

 

『Enter the game!! Let's riding the war!!』

 

 

姿が変わる。音声は仮面ライダークロニクルの物よりほんの少しだけ陽気だったが、ライドプレイヤーとなった彼女の姿はかつてのものと瓜二つだった。

ニコは走ってきたサーヴァントの拳を受け流して、鳩尾に肘を叩き込む。これまでの戦いで、どうするのが良いのかは何となく分かっていた。そして。

 

 

『ガシャコン マグナム!!』

 

「えっ、出せるの? ……でも、これなら!!」

 

 

さらに、どうやら今の彼女はガシャコンウェポンも呼び出せるらしかった。

フィンが、ガシャコンマグナムを構えたニコに並び立つ。

 

 

「指示を、マスター」

 

「前衛で押さえ込んで。私が狙撃する!!」

 

「分かった。さあ、輝いてしまおうか!!」

 

───

 

「おいキリがないぞこれ!!」

 

『ギリギリ クリティカル フィニッシュ!!』

 

 

その時、レーザーターボはシャドウ・ボーダーの上に立ち、ガシャコンスパローを構えていた。

後ろから、何体ものサーヴァントが追跡してくる。サーヴァントを倒せ、魂を焚べろ、それらの名の元に、彼らはシャドウ・ボーダーに襲いかかった。

 

 

「……はあっ!!」

 

   ダダダダダダダダ

 

 

矢が放たれる。それはサーヴァントのみを的確に射抜き、少しずつ減らしていく。どうやら本当に、ガシャットの対サーヴァント性能は上がったらしかった。

……しかし、数の力には敵わない。倒しても倒しても、いつの間にか増えていく。シャドウ・ボーダーへの攻撃も増加する。

 

 

「もう駄目だぞこれ!!」

 

「逃げ切るのよ!!」

 

「これ普通の車なんだろ!? 攻撃食らったらバァンなんだろ!?」

 

「だから当たらないようにしてるんでしょうが!! つべこべ言わずに倒しなさい!!」

 

 

マルタが運転席から怒鳴る。既に彼女は何度も逃げ切ろうと悪路に踏み込んでいたが、しかし撒くことは出来ていなかった。

 

 

「いっそマスターを狙ったらどうだ!!」

 

「患者に手を出せる訳がねぇだろ!!」

 

 

黎斗神の煽りに怒鳴るレーザーターボ。彼もドクターであることに変わりはなく、命を守るという認識は確かに持っていた。

 

黎斗神は今、ひたすらにポッピーの修復を行っていた。思った以上にキアラの侵食は激しかったらしく、その残滓を分離することに命を注いでいた。

 

───

 

 

 

聖都大学附属病院も、すっかりがらんとしてしまった。患者は減り、狂気を浴びず戦いを望まなかった数十名とそのサーヴァントが引きこもっているのみだった。

サーヴァントも多種多様で、戦いを望まないサーヴァントというのも、それなりにいるようだった。逆に、マスターに戦いを強制しようとするサーヴァントもいたが、それは仕方がないので倒した。

 

 

「困りましたね、マスター」

 

「そうですね……戦いは、止めないと。それに」

 

「ええ。負傷者の回収もしなければなりません」

 

 

永夢とナイチンゲールは、そう話していた。彼らの顔は窶れていたが、その決意に曇りはなかった。

しかし、彼らの前にその決意を邪魔する者が現れる。

 

 

「……おい」

 

「はい?」

 

 

永夢が顔を上げれば、いつの間にやら数人の男がいた。乱れた様子のないスーツは、いかにも役人然としていた。彼らの回りに、サーヴァントの気配はなかった。

最初に呼び掛けた一人が永夢に近づき、その腕を掴む。

 

 

「……日本政府の者だ。小児科医の宝生永夢だな?」

 

 

 

 

 

「……本当ならメールで伝えたかったが、これは檀黎斗には知られたくない話だからな」

 

 

日本政府の役人。彼らはそうとしか言わなかった。彼らは病院の別の場所にいた飛彩とパラド、そして責任者として灰馬も呼び、一つの使っていなかった部屋に入る。サーヴァントは外に出したままで。

 

役人は独り言を言いながら、部屋中の監視カメラの類いを覆った。マイクも取り外す。余程真黎斗には知られたく無いのだろう。

そして役人はその作業を終え、椅子に座った。座る姿はどこか威圧的だった。

 

 

「さて。現在日本政府は、あらゆる省庁を放棄した。……いや、衛生省だけはまだ残って抵抗しているが、それ以外の役人は皆、国会議事堂に移動した」

 

「……はあ」

 

「そして結論を出した。これは革命だ。国民の一斉蜂起による史上最大の革命だ。当然、国の危機だ」

 

「……つまり」

 

 

役人は、そう言いながら永夢らに国会議事堂の地図を押し付けた。

開いてそれを見てみれば、数ヵ所に丸がつけてあった。

 

 

「そういうことだ。政府は、CRの勢力を護衛に登用する。否定は赦さない、強制的にだ」

 

「な──」

 

 

徴兵。危機に陥った国家は、自分達を守るための人員としてついに仮面ライダーに目をつけた。

 

 

「無理です!! 今は患者の──」

 

「国の危機だ、受け入れろ。国に牙を剥いた国民は皆犯罪者だ。……国会議事堂を守れ。反乱に加担した国民には、何をしてもいい」

 

「そんな言い方……政府は、国民に銃を向けるんですか!!」

 

 

到底、ドクターには受け入れられない。救うのではなく殺せ。反逆者は死罪だ。そう、国は結論付けた。それは命を救うドクターの理念からは程遠く、それは人を守る人の心からは程遠く。

しかし、その命令からは逃れられない。

 

 

「これは命令だ!! 仮面ライダーはまず護衛として配備する!!」

 

「嫌です!! 僕らはドクターです!! 兵器じゃない!!」

 

「兵器だ!! 少なくとも、お前たちに力があるならそれは現状兵器と変わらない!! これは革命だ!! 戦わなければ生き残れない!!」

 

「──」

 

 

役人は、他の数人と共に永夢を連れ出す。飛彩も、パラドも連れ出す。

 

灰馬は、見送ることしか出来なかった。

 

───

 

 

 

 

 

「……ねぇ、マスター?」

 

「どうした」

 

「……これ」

 

 

ナーサリーは、ゲームエリア内の全てのマスターの動向をモニター越しに眺めていた。そしてあることに気がつき、それを真黎斗に見せる。マスターのパターンが、二極化してきたのだ。

 

一つは、積極的に外へと出て戦い、力を示す者。特に、強いサーヴァントを引き当てた人々は勢いがあった。

そしてもう一つが、家の中に引きこもるマスターだ。真黎斗は、サーヴァントを人間としての生活も出来る存在としてデザインした。だからこそ、家の中に引きこもるマスターの存在もある程度予測はしていた。

 

 

「……ああ、動かない選択をしたプレイヤーか」

 

「どうするの? 放っておいたら差が広がるし、それに……」

 

 

本来、ゲームとは好きなような取り組みが出来る物だ。それは真黎斗とてゲームの利点として認識している。だからこの多様性は、彼としては維持したかった。

しかし、そうも言っていられない。彼らの目的は、ただのゲームとは別のところにあった。

 

 

「……問題ない。対策は考えているし、データは取っている最中だ」

 

 

そう呟きながら、真黎斗は別のモニターに目をやった。

ニコが、戦っていた。

 

 

「ランサーのマスター? 彼女が、どうかしたの?」

 

「何……その内分かるだろう」

 

 

真黎斗が意味深げに笑う。

 

……その時、不意に階下から爆音がした。

ナーサリーが慌てて窓辺に駆け寄り、下を見下ろす。

 

 

 

 

「ゲームを止めろ!!」

 

「俺達を嘗めるな!!」

 

「今思い知らせてやる!!」

 

 

それなりの数のマスターが、ゲンムコーポレーションまで詰め寄っていた。当然のことだった。国の動きを不満に思うなら、それと共にゲンムコーポレーションへの怒りが募るのも当たり前だった。

 

 

「あらら……まだ聖杯は現れてないのに、せっかちさんね。どうする、マスター?」

 

「アヴェンジャーやラーマにでも迎撃させるさ」

 

「あら? 最後まで残った人と戦うんじゃなかったの?」

 

「サーヴァントとマスターは一対一の関係。私のサーヴァントは君だけだ。後はここにいるのははぐれサーヴァントのような何かさ」

 

 

真黎斗はそう笑いながら言う。そして窓に寄り、地上での戦闘を見下ろした。

 

───

 

羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)!!」

 

追憶せし無双弓(ハラダヌ・ジャナカ)!!」

 

 

剣が飛び矢が舞う戦場にて。

ゲンムコーポレーション三階から迫り来るサーヴァント達を迎撃するのは、ラーマとシータだった。四階では信長が火縄銃からの遠距離射撃を行って、一階ではジル・ド・レェが八面六臂の活躍を見せていた。

 

 

「……」

 

 

その様子を、アヴェンジャーは煙草を吸いながら眺めていた。本当なら喫煙室まで行かなければならなかったが、窓を開けて外に顔を出して吸っているのだから多分良いだろう、と彼は考えていた。

……今彼が吸っているのが、ゲンムコーポレーションにあった最後の一本だった。銘柄はやはりキャスターだった。

 

 

一人、また一人とサーヴァントが消えていく。ゲンムコーポレーションからの攻撃に、サーヴァントもマスターも死んでいく。しかしマスターが尽きることはない。何人も何人も押し掛けてきていた。

 

 

「……これでは、ゲームも現実も変わらんな」

 

 

そう言葉が漏れた。サーヴァント、マスター、サーヴァント、マスター。絶え間無く何度も押し寄せてくる敵達は、まるで無限に沸いてくる雑魚キャラのようだった。

そのようにして無感動に外を眺めていた彼は──唐突に目を見開く。

 

 

「──!?」

 

 

何の因果か。彼は、最も会いたくなかったサーヴァントと、出会ってしまった。

 





次回、仮面ライダーゲンム!!


───望まなかった再会

「お前とはもう会いたくなかった」

「わたしは割と良かったと思いますよ?」

「あら? もしかしてあれ……」


───議事堂防衛開始

「オレはやってやるよ。でも条件がある」

「そんなことをしたら……」

『掌の上の栄光 Perfect puzzle!!』


───ニコに異変

「……おい、どうした」

「っ、ちょっ、無理……!!」

「一先ず避難を……!!」


第三十一話 Moving soul


『アップデートのお知らせよ!!』

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