Fate/Game Master   作:初手降参

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社運をかけたクロノス攻略イベントに二人しか参加しなかった時点で仮面ライダークロニクルは失敗してたと思う



第三十一話 Moving soul

 

 

 

 

 

『パーフェクト ノックアウト!! クリティカル ボンバー!!』

 

 

……アヴェンジャーは変身し、ゲンムコーポレーションから飛び降りて人々を撃退していた。隣でマスターが吹き飛ばされていくのには彼は何も思わなかったが、しかし彼はサーヴァントだけを攻撃していた。

 

 

『鋼鉄化!! 伸縮化!!』

 

『1!! 2!! 3!! 4!! 5!! 6!! 7!! 8!! 八連鎖!!』

 

 

パラブレイガンが弾丸を吐き出し、サーヴァントだけを的確に射抜く。鋼鉄の弾は相手に確かなダメージを与え、撤退にしろ消滅にしろ、しっかりと脱落させていく。

 

アヴェンジャーが加勢してからは、戦況は圧倒的にゲンムコーポレーションに傾いた。元々戦闘経験も、さらには冷静な思考すらほぼない烏合の集だったのだから、手が増えれば勝てるのは当たり前だった。

 

 

「だ、駄目だ!! 撤退するぞ!!」

 

「おい!! まだ消えるな!!」

 

「くそっ、逃げるぞ……!!」

 

 

一人また一人、数は段々減っていく。人々は無謀な戦いを止め、再び聖杯を作る戦いへと戻っていく。サーヴァントがまだまだ戦える状態でも、マスターが諦めて撤退を命じる。そうせずにまだ戦おうとするものは殺されていく。

……そしてゲンムコーポレーション前に残るのは、ついにただ一人だけになった。

 

 

「……っ……」プルプル

 

 

ただの少女。そんな風に見えた。しかし消滅しかけていることを鑑みれば、彼女もまたサーヴァントだということは明らかだった。恐らく先の戦いで、マスターを失ったのだろう。

……銀髪、赤い目、小柄な肢体、そしてその手の微妙に震えているステッキ。サーヴァント・キャスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが、そこにいた。

 

アヴェンジャーがイリヤを見つめる。イリヤの方は、消滅と目の前の男に対する恐怖にうち震える。

……アヴェンジャーは暫く迷ったあとに、己の外套を彼女に掛けた。そして。

 

 

「──待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)

 

 

宝具を発動する。誰も傷つけない治癒宝具。消滅しかけていたイリヤは、それによって一時的に生き長らえる。

 

 

「……お前とは、もう会いたくなかった」

 

 

外套を回収して、アヴェンジャーは最初にそう言った。イリヤの方は呆然としながらアヴェンジャーを見上げ、しかし何も言えない。

 

 

「……誰、ですか?」

 

 

イリヤは、アヴェンジャーに対してそう言うことしか出来なかった。ようやく絞り出せた言葉がそれだった。

イリヤはアヴェンジャーを測りかねていた。彼はさっきまで敵で、他のサーヴァントを攻撃していて、しかし消えかけていた自分を助けてくれて、さらに妙に初対面じゃないような心持ちがした。

 

彼女は、アヴェンジャーのことを覚えていない。あの魔法少女の特異点での出来事は、イリヤの手に握られているステッキであるルビーが消去したのだから。アヴェンジャーはイリヤが自分のことを知らない反応をすることに安堵と、少しの寂しさを覚えた。

 

 

「お前、マスターは?」

 

「マスターさんは……その……」

 

 

イリヤはその問いに目を伏せる。彼女のマスターはまだ大学生位の女だったのだが、彼女はイリヤが目を離した隙に消えてしまっていた。もし死ぬ様子を目の当たりにしていたなら、彼女は恐慌状態にあっただろう。

 

 

「……そうか。そうだろうな」

 

「……酷いです」

 

「……」

 

「……その、私を、どうするつもりなんですか?」

 

 

今度はイリヤがそう問った。アヴェンジャーはその問いに答えられず空を仰ぐ。咄嗟に彼女を助けてしまったが、自分が彼女をどうしたいのかはさっぱり分からなかった。

 

───

 

「あら? もしかしてあれ……」

 

 

ナーサリーは作業の合間に窓から下を見下ろしていたのだが、アヴェンジャーが一人の少女と会話していることに気がついた。

しかも見覚えがある気がする。ナーサリーは記憶を辿り、その少女がかつて魔法少女の特異点でアヴェンジャーと共に行動していた者だと察した。

 

 

「どうした?」

 

「ほら、見てよマスター」

 

「……?」

 

 

ナーサリーに誘われて、真黎斗もまたアヴェンジャーを見る。そして、ニヤリと笑った。

 

 

「丁度いい。システムのチェックも兼ねて、マスター権をアヴェンジャーに植え付けてやろう」

 

 

その言葉は、純粋な好意から出た物だった。

 

───

 

「……っ」

 

 

暫く無言でイリヤと向かい合っていたアヴェンジャーは、手に走った痛みで手の甲を見た。令呪が刻まれていた。

 

 

「どういうことだ檀黎斗……!?」

 

 

アヴェンジャーが社長室を仰ぎ見る。その背後で、イリヤは自分の手のステッキに話しかけた。

 

 

「……ねぇ、ルビー。私、どうなっちゃったの?」

 

「あー、これはー、彼がマスターになっちゃった感じですかねー」

 

「……」

 

「わたしは割と良かったと思いますよ? アヴェンジャーさんは悪いようにはしないですよ」

 

 

ルビーは先程までは過度な疲労で黙っていたが、しかしアヴェンジャーとの会話はしっかり聞いていた。そしてまた、アヴェンジャーがかつて会った時と変わっていないことも確認していた。

 

 

「ルビー? 知ってる、の?」

 

「ええ!! ……というか、イリヤさんも知ってる筈なんですが……ああ、私が記憶を処理してたんでしたね」

 

 

ルビーは、かつて檀黎斗と出会ったときに、Fate/Grand Orderガシャットの存在を察していた。そして、自分達がゲームキャラだと悟ればイリヤがショックを受けると考え、彼女の記憶を封印した。

しかしこのような状況になってしまえば、そんな心配は無用のものだ。ルビーは、彼女の記憶処理を解除し始める。

 

───

 

 

 

 

 

いつの間にか、日は沈んでいた。聖都大学附属病院はこの極限状況下において、避難所としての役割を果たそうとそのドアを解放していた。

また、それと同時に、幾らかの戦えるサーヴァントを引き当てたマスターが交代して、警備も行っていた。

 

 

「今、戻りました……!!」

 

 

その内の一人が作だった。

少し前にシャドウ・ボーダーから下ろされた彼は、病院に戻って暫くしたらいつの間にかサーヴァントを引き当てていた。

 

 

「おお、作さん!! 無事でよかった!!」

 

「ええ……ちょっと、体力はきついですが。で、頼んでおいたあれは?」

 

「ええ、用意しましたよ」

 

 

灰馬が作を出迎える。その手に、頼まれたものを……()()()()()()1()()()()を抱えながら。灰馬はそれらの袋を作に差し出し、そして作は、己のサーヴァントにそれを受け渡した。

 

黒い鎧、金髪に金色の目。作の引き当てたサーヴァントの名は。

 

 

「はい、お納めください」

 

「私はサーヴァント、貴様がマスターだ。私に媚びても意味はないぞ。──にしても、これはなかなか旨いな。ジャンクフードの王様のようなパンケーキだ」モッキュモッキュ

 

 

アルトリア・ペンドラゴン・オルタ。黒い騎士王が、作のサーヴァントだった。アルトリア・オルタはハンバーガーを咀嚼しながら剣の調子を確認する。その姿が、何故かバガモンと重なった。

 

 

「お疲れさまですマスター」

 

「おおアサシン君、病院の復旧はどうなっている?」

 

「順調ですよ、任せてください」

 

 

そして、灰馬の元にも当然サーヴァントは現れていた。彼が引き当てたのはアサシン。しかもとても都合が良いことに、ローコストで小さな労働力を大量に召喚できる便利なサーヴァントだった。

 

 

「ノブノブー!!」

 

「ノッブー!!」

 

 

アサシン、織田信勝。灰馬の元には現れた彼もまた、聖都大学附属病院を守っていた。

 

───

 

 

 

 

 

とうとう永夢に飛彩、そしてパラドとサーヴァント達は車で国会議事堂まで連れてこられてしまった。相手に傷をつけられない以上抵抗を試みることも出来なかった。

 

 

「降りろ。お前達はここの向こうにいる軍団を排除しろ」

 

「嫌です……!!」

 

「俺達はドクターだ。それ以外の何者でもない」

 

 

しかしだからといって、受け入れるつもりは毛頭なかった。永夢も飛彩も降りることはせず、戦いを拒む。兵器としては欠陥品だった。

役人は不満を隠そうともせずに舌打ちをした。そうしたところで、誰も彼には従わなかった。

 

 

「オレはやってやるよ。でも条件がある」

 

 

……いや、一人は従った。パラドだった。

 

 

「おいパラド……!!」

 

「どういうつもりだ!!」

 

 

永夢も飛彩も困惑する。パラドは患者のことを考えていると思っていたのに。

しかし、その疑念はパラドの続けた言葉で自ずと晴れる。

 

 

「──その代わりだ、ここを避難所兼診療所として、人々を受け入れさせろ」

 

「な……」

 

「そうしてくれるなら、俺は戦ってやるよ。サーヴァントなら倒してやる」

 

 

提案だった。サーヴァントを倒したなら、必然としてマスターだけが残される。そのマスターを保護させろ、と彼は提案したのだった。

 

 

「そんなことをしたら……」

 

 

その言葉に、役人達の顔が曇った。

人々を受け入れる? そんなことをしたなら、ここの防備はあってないような物になる。人々を受け入れる、それはいつまた牙を剥くか知れない反乱者を迎え入れるのと同義だ。

 

 

「そうしたなら、また中で暴れるかもしれない。犠牲者が増えるかもしれないぞ?」

 

「そんなミスはしないさ。俺はともかく、こいつらはドクターだからな……誰かを傷つけさせることは出来ない」

 

「パラド……!!」

 

 

永夢の顔は晴れていた。信じていた、と言わんばかりに頷き、役人に告げる。

 

 

「……パラドの条件を飲んでくれるなら、僕らは協力します。マスターは倒しません。敵対するサーヴァントだけを倒して、平和を望む人々は引き入れます」

 

「なら俺も乗ろう。当然だが、裏切ったならその時点で俺達も敵に回ると思え」

 

「……っ」

 

 

役人はまた舌打ちした。そして、近くにいた数人と話し合って結論を出す。

 

 

「……分かった。その条件は飲んでやろう。だから早く行け。その道をいくらか進んで右に曲がれば、現在敵の侵入を押し止めているエリアに辿り着く」

 

 

それは同意。パラドの出した提案に、政府側が折れたのだ。これによって、三人の方針は確定した。命は壊さない。そのサーヴァントだけを粉砕する。

 

 

「なら……行ってやるよ」

 

 

パラドが車を降りた。永夢も飛彩も続いて降り、ナイチンゲールもBBもそれに追従する。

パラドは車を振り替えることもなく、現場へ歩きながらゲーマドライバーを装備した。そして、黎斗神から手に入れたガシャットを起動する。

 

 

『Perfect puzzle pocket!!』

 

「……変身」

 

 

装填した。もう、戦場は見えていた。

 

 

『ガッシャット!! ガッチャーン!!』

 

『掌の上の栄光 Perfect puzzle!!』

 

───

 

『■■■■■ クリティカル フィニッシュ!!』

 

「……はあっ!!」

 

 

ニコは、未だにライドプレイヤーとして戦っていた。呼び出したガシャコンマグナムにクロニクルガシャットを装填しサーヴァントを撃ち抜くのも、これで八回目だった。

 

 

「流石だねマスター!! 調子はどうだい!?」

 

「つべこべ言わずに戦いなさいよ!!」

 

「ははは、優雅さが足りないなぁ」

 

 

フィンにもまだ余裕があった。彼がサーヴァントを槍で押さえ込み、ニコが遠距離から狙い撃つ。二人は口頭では相性が悪かったが、そんな状態でも協力プレイは成立していた。

 

 

「……大丈夫か」

 

「ああ、大我。私は大丈夫、そっちは?」

 

「問題ない。暴動もある程度落ち着いてきた」

 

 

そこにスナイプも戻ってくる。彼のライフゲージは幾らか磨り減ってはいたが、まだ大丈夫そうだった。

 

 

「……にしても。そのガシャット、どこで手に入れた」

 

「ああ、届いてたの。檀黎斗から」

 

 

そしてスナイプは、ニコが現在使っているガシャットについて言及する。ニコは、大我にまだ現在彼女が使っているガシャットを見せたことがなかった。だからこそ彼女はそれを見せようとガシャコンマグナムからガシャットを引き抜き──

 

 

「……っ……!?」

 

 

突然倒れ伏した。

 

 

「……おい、どうした、おい!!」

 

「っ、ちょっ、無理……!!」

 

 

スナイプが彼女を慌てて支える。ニコの息は、先程からは想像できないほど荒くなっていた。

……いつの間にか、ニコはライドプレイヤーから生身に戻っていた。まともに立っていることすら出来ず、彼女はスナイプに身を預ける。

 

それと共に、彼女の懐からクロニクルガシャットが溢れ出た。ニコは朦朧とする意識の中でそれを掴む。すると、そのガシャットの分身が勝手に現れて、複数に分裂して飛んでいった。

 

 

『グランドオーダークロニクル!!』

 

 

そんな音声を漏らしていた。

 

 

「何なんだ……一先ず避難を……!!」

 

『ジェット コンバット!!』

 

「アーチャー!! ランサーを頼む」

 

「……了解した」

 

 

スナイプはそれを見ながらも、ジェットコンバットを使用してニコを抱えたまま空へと飛び上がる。ずっとスナイプの側にいたエミヤもニコのことは気にかかったが、未だ戦っているフィンのサポートに徹することにした。

 

───

 

『アップデートのお知らせよ!!』

 

「おいおいおい今度は何だ!?」

 

 

貴利矢はその声を聞いて目を見開いた。

現在シャドウ・ボーダーはようやくサーヴァントを撒き、人気のない港に停まっていた。ポッピーは未だ目覚めず、貴利矢はかなり疲弊していた。

 

 

『皆、楽しくゲームはやってるかしら? 相手のサーヴァントは何体倒した? 今一番聖杯の完成に近いのは渋谷区、24%!! 他の皆も頑張ってね!!』

 

「どうやらかなり進んだようだな」カタカタカタカタ

 

「不味いんじゃねえのか神?」

 

「それはそうだが、私達は干渉できないぞ」カタカタカタカタ

 

 

黎斗神は未だにパソコンを叩いていた。一度も休んでいなかった彼もまた疲れていた。

 

 

『で、今回のお知らせはね? 経験値システムの導入についてなのよ!!』

 

「経験値?」

 

 

経験値……そう言われれば、貴利矢にもそのシステムがどんなものかは想像できた。経験値というのだから、何かをすることで強くなるのだろう。でも、何を?

 

 

 

『皆は、各エリアに現れたライドプレイヤーに気づいたかしら?』

 

「え?」

 

「……あれか」

 

 

シャドウ・ボーダーから見回せば、ギリギリ視界の端にライドプレイヤーのようなシルエットが見えた。今は何もせず、放浪しているだけのようだった。

 

 

『そのライドプレイヤーは、各地の聖杯と融合したFate/Grand Orderの端末、グランドオーダークロニクルガシャットが呼び出したNPCよ!!』

 

───

 

『それを倒すと、自分のサーヴァントのステータスが少しずつアップするの!! 百体倒せば素早さ二倍、五百体倒せばパワーが五倍!! あまり戦闘に向いていないサーヴァント程早いペースで強くなれるわ!!』

 

「何それ、超、ムカつく……!! 痛たたたた」

 

「おい、無理はするな」

 

 

ニコは、花家医院のベッドに寝かせられていた。誰かの忘れていった携帯からは、ナーサリーの声が垂れ流されていた。

ニコは苛立っていた。どうやら自分はまんまと利用されていて、しかも自分のデータが雑魚敵扱いされるとなれば、苛立つのも当然だった。

 

 

『さらに!! ライドプレイヤーを倒すと低確率でアイテムをドロップするの!! マスターの武器や礼装、パワーアップアイテム、既に使っていた場合は極々稀に令呪だって追加されるわ!!』

 

「真檀黎斗……絶対ぶっ飛ばす」

 

「そうだな。分かったから休め」

 

『それじゃあ、これからも頑張ってね!! ヒーローになるのは、貴女よ!!』

 

 

……そこで放送は終了した。分かったことは、これからますます状況は悪くなりそうだ、ということだけだった。

 





次回、仮面ライダーゲンム!!


───議事堂防衛戦

「令呪をもって僕の傀儡に命じる」

我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)!!」

「戦いは終わりだ!!」


───マシュの意思

「私は戦う」

「わしは、否定はせぬ」

「私は人を救います」


───イリヤの動揺

「私は、どうすれば」

「オレは……」

「君がマスターだ。好きにすればいい」


第三十二話 Let's try together


「これよりここは絶対停戦圏となる!!」
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