(EXTRAを観ながら)何だこの宇宙服!?
座にはアームストロングなんているのか……フォーゼ×FGO行けそうだな……
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弾丸の雨が降る。既に衛生省は孤立無援の状況にあった。包囲が敷かれ、一階から三階までは、とあるアサシンの率いた軍勢によって悉く破壊された。屋上から数階分は、とあるアーチャーの渾身の一撃で吹き飛ばされた。
それでも耐えていられるのは、一重に、未だに遠距離から粘っている幾らかの衛生省側のサーヴァントのお陰だった。
「……マスター。これ以上は厳しいかと」
しかし、それももう終わりだった。下の階はもう占領され、職員達のいるフロアへとじりじりと迫ってきていた。
「くそ……ここまでか」
「ふざけてる……!!」
悪態をつく職員達。
追加されてくるサーヴァント達は、少しずつ腕を上げていた。後からやって来るサーヴァント程、ライドプレイヤーを倒してレベルを上げていた。位置という点で有利を取っていた衛生省だったが、その利点も最早無いようなものだった。
「どうしますか、マスター。全ては、貴方に委ねられている」
「審議官!! 諦めましょう……もうどうしようもない!!」
「しかし今さら降伏して何が出来る!! 死ぬぞ!!」
恭太郎の前で何人もの人間が怒鳴りあう。彼らは狂気は浴びてはいない筈だったのだが、この状態では皆混乱するのも当然だった。
その中で恭太郎は考える。降参はあり得ない。ドクターが戦っているのを知りながら勝手に自分達が離脱するのは、恭太郎のドクターとしての矜持に関わる。
「……最早、打って出るしかない。私達公務員は国民の代表だ。……国の誇りをかけて、ここで終わらせる」
それが、彼の出した結論だった。
恭太郎はアルジュナを霊体化させ、複数人の輸送が可能なサーヴァントを探し始める。
「審議官、打って出ると言われましても……」
「空だ。私達は、空からゲンムコーポレーションに接近、侵入する……君のサーヴァントは、確かライダーだったな。空を飛べる宝具はあるか?」
そうして探してみれば、三人ほど、空中輸送が可能なサーヴァントを見つけられた。空飛ぶ戦車が二つに、宇宙船が一つ。恭太郎はテキパキと指示を出し、最後まで衛生省に残ると決めた数人以外を詰め込んでいく。
最後まで、諦めない。何があっても諦めない。かつて彼が命を救い、その人生の中で世界を救った青年が、何があっても諦めなかったように。
「審議官!! 全員乗りました!!」
「ああ……分かった。窓は開けたな!?」
「はい!!」
「行ってきてください!! ここは、私達が守ります!!」
戦車の先頭の馬が嘶いた。階下から暴徒の叫びが聞こえてくる。もう、時間はなかった。
「……出発するぞ。ふざけたゲームはこれで終わりだ!!」
三つの塊が、高層ビルから飛び出していく。
恭太郎が戦車から後ろを向けば、最後まで残ってくれた幾らかのマスターが恭太郎達を守るために戦っているのが目に入った。
恭太郎は彼らの無事を祈り、そして、手元のタブレットに目をやる。
ゲンムに勝つためには、このメンバーでは人手が足りなかった。だから──
───
「あら?」
「……」カタカタカタカタ
「……マスター」
ナーサリーが真黎斗の袖を引く。真黎斗は完成しかけているガシャットの最終調整を続けながら、ナーサリーの方を見た。
「ちょっとこれを見てくれないかしら」
「どうしたナーサリー」
「衛生省から沢山のサーヴァントとマスターの反応よ」
「……ほう?」
真黎斗はモニターを覗き込んだ。船やら戦車やら宇宙船やらの大群に、ぎゅうぎゅう詰めになって乗り込んでいるマスター達の姿が見えた。
「成る程、賭けに打って出たわけか」
「なかなか無茶よね……向こうも追い込まれているみたいね」
真黎斗はため息を吐いた。その隣でナーサリーは、パソコンに映った衛生省からの連絡に目を通す。
そこに、ゲンムコーポレーション攻略を支援した人々への報酬額が示されていた。
「ふーん、衛生省に協力したら報酬が出るのかしら?」
「まさか、あの衛生省がそこまでやってくるとは……この私でも少しばかり驚いた。しかし、向こうがそのつもりなら……」
真黎斗もその画面を覗き……作戦を考え始めた。もうすぐ完成するガシャットのデータのすぐとなりに、ゲームエリア中のスマートフォンの画面に繋がるデータベースを開く。
───
「「
ダンッ ガガガガガガガ
……衛生省の面々は、墜落した戦車から顔を出した。彼らはまだ、檀黎斗の作り出したサーヴァントというものを軽視していたらしかった。まさか、ゲンムコーポレーションの屋上から長距離弾道ミサイルのような一撃が飛んでくるなんて、夢にも思っていなかった。
「くっ……無事か」
「無事です審議官!!」
「こちらも全員無事です!!」
「……良かった。アーチャー!!」
恭太郎は戦車の残骸から這い出て、自分についた埃を払い、アルジュナを呼び出す。
予定は少ししか変わってはいない。どちらにせよ、このゲンムコーポレーションは殲滅しなければならなかった。
彼らはゲンムコーポレーションを包囲するように立ち、体勢を整える。
『連絡よ!! 聞こえてる? 聞こえてるわね? イベント開催のお知らせよ!!』
……しかし、彼らの歩みを彼らの懐のスマートフォンからの声が止める。
数回だけ聞いたことのある声だった。嫌な予感がした。
『今、私たちのゲンムコーポレーション前に、沢山の衛生省職員が集まっているわ!! 彼らを全員倒したら、協力者全員に令呪二画とライドプレイヤー百体分の経験値、更にボーナスアイテムも多数用意するわ!!』
「──!?」
『イベントは今すぐ開始よ!! 参加できるプレイヤーの皆は、今すぐゲンムコーポレーションに集まってね!!』
……その予感は、当たった。
辺りを見回せば、もう数人の一般人の姿が見えた。初めは一人、十秒で五人、一分待てば三十人に増えた。
「……審議官、これは」
「……不味い」
恭太郎は冷や汗をかいた。
いつの間にか、ゲンムコーポレーションを包囲した衛生省を包囲するように、沢山のプレイヤーが、サーヴァントと共に立っていた。
「衛生省を倒せ!!」
「倒せ!!」
「倒せ!!」
「倒せ!!」
マスターを殺すことは、出来ない。怪我をさせることは出来ない。その縛りが、ここに来て致命的な弱点となっていた。
今から始まるのは、ゲンムコーポレーションを攻めるものと、守るものの戦いだ。
───
「面白いことを考えたわね、マスター?」
「今回の突発イベントは、ふむ……ざっと千人参加か」
「それだけいれば十分よ」
ナーサリーは窓から下を見下ろして、クスクスと笑った。彼女はどこかうきうきとした足取りで紅茶を入れ始める。
それを眺めながら、真黎斗はパソコンからガシャットを引き抜いた。禍々しい、紫色のガシャットだった。笑いが溢れた。
そこに、ジル・ド・レェが入ってくる。
「おお、神よ!! 深淵の力を黒洞々と湛えたガシャットがとうとう完成したとは本当で御座いますかっ!?」
「ああ。私の才能に不可能はない……使うといい。君にやろう。その力で、衛生省殲滅に力を貸してやれ」
「了解致しました、我が主。期待いただき恐悦至極、かくなる上は最高のCOOLをお見せ致しましょう!!」
真黎斗は、ジル・ド・レェに完成したばかりのガシャットを投げ渡した。ジル・ド・レェはそれを恭しく受け取り、社長室から出て一階分下に降りた。そして、近くにあった窓を開く。
『ガッチョーン』
『テール・オブ・クトゥルフ!!』
「それでは早速……変身」
『ガッシャット!!』
『バグル アァップ』
そしてジル・ド・レェは窓から飛び降りて──
───
「ガンナー、ビリー・ザ・キッド消滅!!」
「ランサー、ヘクトール消滅!!」
「アサシン、ハサン・サッバーハ消滅!!」
「耐えろ!! どうにかして耐え続けるんだ!!」
「駄目です審議官!! ライダー、アームストロング消滅!!」
衛生省は追い詰められていた。敵の根城を目の前にして、守るべき国民に攻撃されて追い詰められていた。苦しい。苦しい。味方は段々すり減っていく。
「マスター、
「駄目だ!! マスターを殺してはいけない!! 来るはずだ!! 仮面ライダーが!!」
そう激励する。彼は信じていた。きっと、仮面ライダーが援軍に来る。自分達だけではどうにもならなかったが、彼らがいれば、あるいは、形成は変わるかもしれない、と。
しかし、加速するのは絶望のみ。
スタッ
「……誰だ」
背後に、一人の男が降り立った。見た目はサーヴァントだったが、もっと禍々しい何かをその体から発していた。
「サーヴァント……なのか?」
「いや、あれは……」
人々の視線が、降ってきた男へと向けられた。その腰にはバグヴァイザーがつけられていて。
そして。
『
男の姿が変わる。男の上部に現れたパネルからは触手が伸び、彼の体を包み込む。そして彼はそれら触手と融合し……新たな、仮面ライダーとなった。全身に触手を纏い、その身から海魔のような何かを吐き出し、それでいて、どこか神聖さを思わせる、仮面ライダーに。
「変身した……」
「何だよあのタコ……!?」
「……タコには御座いません。海魔……いや、それも最早違いますな。ええ、ハハハハ、私は邪神と一体化した!! それならばこれらは皆、クトゥルーの落とし子に御座います!!」
男はそう言った。彼はジル・ド・レェという名を持っていたが、それはもう過去の物。この姿の時は最早彼は英霊の枠すら逸脱する力を持っていた。
「おお……この力、素晴らしい……!! 素晴らしい!! なんと神々しき美の具現!! 我が涜神は神の領域に至った!!」
「ゲンムの……仮面ライダー……」
「ええ……私は……そうですね。クトゥルー……仮面ライダー、クトゥルーに御座います」
───
「まだ着かないのかよ姐さん!!」
「煩いわね!! こっちもフルスロットルだっつうの!!」
シャドウ・ボーダーは全力で走っていた。高速から飛び降り、国道を横切り、川を飛び越え、理論上の最短ルートを走っていた。文字通り、道なき道を走っていた。
「きゃああああ!?」
メディア・リリィがポッピーの体を押さえながら悲鳴を上げる。騎乗スキルがいくら高くても、流石に背後への振動をなくすことは出来なかった。
「チッ……無事でいてくれよ」
貴利矢は、衛生省の面々の無事を祈ることしか出来ない。
───
「あ、あ……」
「あらー、酷いですねこれは。バイオハザードですね」
イリヤは震えていた。どうすればいいのか分からなかった。眼下で戦っているのは、クトゥルーを除けば人間だった。人間と、人間の戦いだった。共に傷つけあい、共に苦しんでいた。
「……お前はあれに加わるな」
「アヴェンジャーさん……!?」
「どちら側も、明確な悪ではない。戦って倒せる悪は彼処にはない」
アヴェンジャーは、イリヤの後ろから階下を見下ろしそう呟いた。彼は、戦いに加わろうとはしていなかった。
「じゃあ、私はどうすれば……」
「……」
アヴェンジャーは、涙目のイリヤに対して何も言えなかった。せめて、何か言葉をかけた方が良かったのかも知れなかったが、それも出来なかった。ただ、真黎斗が恨めしかった。
───
「っ……ランサー、セタンタ消滅!!」
「アーチャー、アタランテ消滅!!」
「フフフフフ……この力は素晴らしい!! おお、無限に力が沸いてくる!!」
クトゥルーが加わってしまえば、もう完全にバランスは崩壊していた。衛生省は戦闘相手から獲物に変わり、マスターは交戦開始段階の十分の一程度になっていた。
そんな状況で、マシュはゲンムコーポレーションに駆けつけた。
少なくとも彼女の目には、衛生省がリンチにされているように見えた。大多数からの、反撃の恐れのない気楽なリンチ。
「それでは……後は、纏めて片付けてしまいましょう」
『テール・オブ クリティカル エンド!!』
そして、クトゥルーがキメワザを発動した。彼の周囲に無数に孔が開き、巨大な邪神が目を覗かせ、そしてそこから狂気を孕んだ触手を伸ばし──
「
カッ
マシュが乱入して、それらを切り払った。腕を奪われた邪神は唸りながら孔の向こうに消えていく。クトゥルーは仮面越しに目を剥き、マシュに問う。
「おお、おお!! マシュ殿、貴女は我が神に背くのですか!!」
「私は、守らなくちゃいけないんです!!」
そう怒鳴り、マシュは仮面ライダークロニクルを取り出して……
突如膝をついた。
その背中に、数本の矢が刺さっていた。
衛生省に残っていた、数少ないサーヴァントの一体が放った物だった。
そして彼女を目掛けて無数のサーヴァントが襲い掛かり──
次回、仮面ライダーゲンム!!
───マシュの再会
「ここは……」
「また会ったな、シールダー」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
───永夢との対話
「貴女は歪んでいる」
「私には貴方が分からない」
「やっぱり、貴女は……」
───ポッピーの目覚め
「やっと、分離が完了した」
「良かった……」
第三十四話 Justiφ's
「私は、貴方とは分かり合えない」
「僕は、貴女を諦めない」