Fate/Game Master   作:初手降参

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オオメダマとかいう一回しか発動されなかった必殺技



第四十四話 Desir

 

 

 

 

 

『ダイカイガン!! ゴエモン!! オオメダマ!!』

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!!」

 

 

真紅のボディに山吹のパーカーを纏ったゴーストの足元に出現した黄金の超巨大エネルギー弾が、エグゼイドとブレイブへ蹴り出された。

ジャンヌがそれに対して旗を展開し受け止める。周囲の木々が爆風で揺れた。

 

かれこれ一時間は戦闘をしただろう。ゴーストの方は黒い素体のオレ魂から赤い素体の闘魂ブースト魂の姿に変わり、エグゼイド達に対して未だに襲いかかっていた。

 

 

「まだ終わらないのか……!!」

 

「でもなんとしても、ここからは、行かせない!!」

 

「その通りです、マスター!!」

 

 

ナイチンゲールが援護射撃を行っていた。それは全く効いてはいないように見えたが、少なくとも足止めにはなっていた。

彼らの後ろには、大勢の人々がいる。戦いを止め、安全を求めた患者がいる。ドクターは、患者を守らなければならない。

 

 

「……」

 

『ムゲンシンカ!!』

 

 

粘るエグゼイドとブレイブに痺れを切らしたのか、ゴーストが切り札を切った。

 

 

『チョーカイガン!! ムゲン!! Keep on Going!! ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴースト!!』

 

「あれは……」

 

 

仮面ライダーゴースト、ムゲン魂。人間の可能性を信じた男の掴みとった最強の姿。感情を力に変える英雄。

 

 

「……でも、やるしかない!!」

 

「俺に切れない物はない!!」

 

 

それでも、引くわけにはいかない。倒れられない。その思いで、二人は再び走り始める。

 

 

「おい!!」

 

 

……それを呼び止める者がいた。

彼らを無理矢理この国会議事堂に連れてきた、あの役人だった。

 

その後ろに、無数のサーヴァントを引き連れていた。

 

 

「……これは?」

 

「お前達がむやみやたらに人々をかき集めたせいで、サーヴァントの保存できるスペースがなくなったらしい。霊体化、とやらはさせていた筈なのだがな……それで、お前達の所に押し付けることにした。人々からサーヴァントという戦力を永遠に取り上げる試みでもある」

 

「……え?」

 

「……つまり、好きにこのサーヴァントは使い潰せということだ。くれぐれも、私達に危害が及ばないようにしろ」

 

 

役人が顎でゴーストを指し示せば、彼の後ろにいたサーヴァントは真っ直ぐそこへと走っていった。

どうやら、このサーヴァントはゴーストを倒すために差し向けられたらしかった。つまり、エグゼイドの味方だ。

 

 

「……はい!! ありがとうございます!!」

 

「さっさと片付けろ」

 

 

役人は帰っていく。エグゼイドは、ガシャコンブレイカーを握り直した。

 

───

 

 

 

 

 

「器が、満たされていく……」

 

 

ポッピーはスマートフォンに勝手に入ってきたパラドの位置情報アプリの横に表示された聖杯ゲージを眺めていた。朝は90%だったのが、もう93%になっていた。

 

 

「聖杯完成まで、あと少しだな」

 

「そうだな……」

 

 

パラドは適当に返しながら車の後方を見る。

何体ものサーヴァントがジャンヌ・ボーダーを追跡していた。

馬。戦車。それだけではなく、盗んだのだろうバイクや車を魔力で強化して走っていた。逃げられているのは、一重にマルタの騎乗スキルの賜物に他ならない。

 

 

「追っ手多すぎないかしら!?」

 

「そうだな姐さん、もっとスピード出せねぇのか!?」

 

「これがフルスロットルよ!!」

 

「そうかい!! ……チッ、さっきも追い返したのにまた増えたのか?」

 

 

貴利矢は舌打ちした。車内を見渡せば、ポッピーはダウンしていたし、メディア・リリィは黎斗神のパソコンに繋がれていた。

 

 

「仕方無いな……やるか」

 

『爆走 バイク!!』

 

「パラド、援護頼むぞ……0速、変身」

 

『ガッチャーン!! レベルアップ!!』

 

『爆走 激走 独走 暴走!! 爆走バイク!!』

 

『ガシャコン スパロー!!』

 

 

貴利矢は、苛立たしげに立ち上がって変身した。そして強引にシャドウ・ボーダーの窓から半身を乗りだし、後ろの方に弓を向ける。

パラドもそれに続いて変身し、エナジーアイテムでパズルを組み始めた。

もう、そうするのも四度目だった。

 

 

『掌の上の栄光 Perfect puzzle!!』

 

「レーザー、受けとれ!!」

 

『鋼鉄化!!』

 

『高速化!!』

 

 

パラドクスが、レーザーターボの持つガシャコンスパローにアイテムを押し付けていく。そうすることによって、それから放たれる矢は鋼鉄にして高速の一撃に進化した。

射る。当てる。射る。当てる。それらの繰り返しで、少しずつ敵を減らしていく。……それでも、しつこいサーヴァントも存在した。

 

これ以上のスピードは出せない。マルタはアクセルを深く深く踏み込んでいた。レーザーターボは敵を見ながら小さく舌打ちする。逃げ切るには、もう少しかかりそうだった。

 

───

 

黄金衝撃(ゴールデンスパーク)!!」

 

「■■■■■■■!!」

 

狂想閃影(ザバーニーヤ)!!」

 

黄の死(クロケア・モース)!!」

 

虹霓剣(カラドボルグ)!!」

 

 

サーヴァントが大量に追加されて暫くして、議事堂前の戦いはリンチに変貌していた。ゴーストは幾ら強いとは言えども所詮は人間サイズ、数多の暴力に晒されれば陥落する。初めの内は機動力を生かして飛び回り抵抗したゴーストだったが、最終的には拘束されてもがくのみになってしまった。

真黎斗の誤算は、このゴーストは必殺技を使えないということだった。本来のムゲン魂は感情を力に変えるのに、このゴーストにはそれがない。それどころか、燃やすべき命すらない。

 

 

「……凄い、皆、押している……」

 

「後先考えない突撃なんだろうな。そういう命令なのだろう、あいつらのやりそうなことだ」

 

 

ブレイブはそう分析した。ゴーストに攻撃するサーヴァントの殆どが、捨て身にも見える特攻を繰り返していた。今となっては彼らは安全圏にいるが、最初の方ではゴーストに吹き飛ばされていたのに。

 

 

「ええ、ここにいるサーヴァントの皆さんは、令呪のエネルギーを上乗せされています」

 

 

戦いの中から一旦戻ってきたジャンヌは、それが令呪のせいだと見抜いた。令呪でゴーストを倒す為だけにブーストをかけられているのだと。それら故の勝利なのだと。

 

 

「……そうですか」

 

 

エグゼイドは、倒され行くゴーストを複雑な心情で眺めていた。かつて共に戦った仮面ライダーの姿だけが奪われて、このような事になっていることは悲しかった。そうさせた真檀黎斗は、酷いと思った。これ以上好き勝手はさせられないと思った。

 

 

「……」

 

「マスター、ゴーストの動きが鈍くなりました!!」

 

「これなら……!!」

 

 

そして、終わりは訪れる。英雄を模した傀儡に崩壊が訪れる。

ここで、天空寺タケルへの侮辱を終わらせる。エグゼイドはその拳に力を込めた。

 

 

「……あと少しだ。行くぞ」

 

「……はい!!」

 

『ドレミファ クリティカル ストライク!!』

 

『ゲキトツ クリティカル ストライク!!』

 

「「はあああああっ!!」」

 

   ダンッ

 

 

エグゼイドがその巨大な拳を、サーヴァント達の向こう側で震えるゴーストへと撃ち込んだ。そしてそれから一秒もしないうちに、ブレイブが飛び蹴りを叩き込む。

 

 

「……っっ、っ」

 

   バァンッ

 

 

それが止めとなった。ゴーストは、弾けとんだ。空に黒いガシャットが打ち上がり、エグゼイドに掴み取られた。

 

 

「……カイガンゴーストガシャット、回収!!」

 

 

国会議事堂のサーヴァントの4分の3を犠牲にしての、勝利だった。

 

───

 

 

 

 

 

「……さて、パラド。結局、君はその聖杯に何を望む?」

 

「……ゲンム」

 

 

右往左往の末にどうにか追っ手を巻いたシャドウ・ボーダーは山奥のに停車し、一休みしていた。

車の上には相変わらず矢印は浮かんでいるが、山奥にはそうそう敵は来そうになかった。

 

 

「この状況下で、君はどの望みを叶えるのが最適解だと考える?」

 

 

聖杯のゲージは、98%を越えようとしていた。国会議事堂のサーヴァントが大量に消滅した影響だった。

パラドは黎斗神からの暫く唸っていたが、対して悩んではいなかった。

 

 

「……BBの望みは、お前が叶えられる。寧ろ、ハッピーエンドを作る余地がある分、聖杯で彼女の願いを叶えるよりゲンム、お前が新作を作る方が良い」

 

「……ま、私はそれでも良いですよ。で? マスターさんは私の願いを差し置いてどんな望みを叶えるんですか? ありんこみたいにちっちゃな我欲でも満たすんです?」

 

 

BBは笑いながらそう茶々を入れた。彼女はそうは言っていたが、決してパラドが自分のためだけに願いを消費はしないだろうとも考えていた。

パラドはBBに対してニヤリと笑い、自分の考えを車内に伝える。

 

 

「俺の望みは──」

 

 

……聖杯のゲージが、98%に到達した。

 

───

 

「ゴーストが倒されたな」

 

「そうね……千代田区のルーラー、大丈夫なのかしら? 彼女は仮面ライダーに対しては不干渉を貫くべき立場なのだけれど」

 

「まあ良いさ。彼女もマスターがいない以外は他のサーヴァントと変わらない」

 

 

真黎斗は修復されていく国会議事堂の様子を観察しながら呟いた。既に、彼が仮面ライダーを放った本当の目的は果たされつつあった。

ナーサリーは紅茶を飲みながらパソコンを叩いていた。彼女には彼女の仕事が存在した。

……そして彼女は、あることに気づく。

 

 

「それもそうね。ところで、これを見てくれないマスター? これ、どう思う?」

 

「これは……」

 

 

……彼女が真黎斗に見せたのは、サーヴァントを失って何処かしらに避難しているマスターの場所と数を示した図だった。それはつまり、真黎斗の用意したゲームから勝手にリタイアした人間だった。東京で言うならば、聖都大学附属病院に集中していた。

 

 

「凄く……不愉快だ。元々存在は知っていたが、こうして示されると黙っていられない」

 

「ゆゆしき事態、って奴ね、マスター?」

 

「……ある意味ではな」

 

 

真黎斗は溜め息を吐いた。ナーサリーが彼に紅茶を差し出すと、彼はそれを躊躇いなく一気のみした。

そして彼は再びパソコンに手をつけながら配下のサーヴァントを呼びつける。

 

 

「だが、対策は……簡単だ。ジル・ド・レェ、いるな?」

 

「こちらにおりまする、我が主」

 

 

ジル・ド・レェが、真黎斗の傍らに現れた。恭しく礼をする彼を見ることもなく、真黎斗は彼に指示を飛ばしていた。

 

 

「……聖都大学附属病院……いや、そこからでなくても構わない。とにかくゲームを放棄した人々の多く避難している場所を襲え。根こそぎゲームオーバーにしろ。私のゲームを拒否するなど許さない」

 

「了解しました、我が主」

 

 

そしてジル・ド・レェは立ち去った。

真黎斗はそれをちらりと見送り、そして自分のパソコンの画面に視線を戻す。

そこに、彼の今産み出そうとしているライダーの設計図が写し出されていた。

 





次回、仮面ライダーゲンム!!


───再び訪れる混乱

「あれは……あの仮面ライダーか!!」

「受け止めましょう」

「作戦を開始する」


───徹底抗戦

『ジャングル オーズ!!』

「……変身!!」

『タトバ ガタキリバ シャウタ サゴーゾ!! ラトラタ プトティラ タジャドル オーズ!!』


───巻き起こる乱闘

「ゲリラライブよ!!」

「おお、神に背くとは!!」

「……あれを、どう思う?」


第四十五話 Anything Goes


「これが、仮面ライダーか」


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