Fate/Game Master   作:初手降参

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母親にEXCITEのミュージックビデオを見せたら、三浦大知ガチ勢になってバックダンサーの暗記とかミュージックビデオ集DVDの購入とか始めた


第四十五話 Anything Goes

 

 

 

 

 

「……困ったな」

 

 

太陽は沈んでいく。月は昇っていく。恭太郎はそれを見届けながら溜め息を吐いた。

彼はこの状況を憂えていた。人々が避難できていることは良いが、今度はいよいよ食料の問題が発生してきた。備蓄は尽き、支援は無く、周囲にも店舗はない。

 

当然のことだった。この数日、ろくにインフラというものは手がつけられていない。小売店の類いは全てシャッターを下ろし、上水道は監視するものがいなくなり、発電所にはエネルギーが運び込まれなくなった。

 

まさか大都会東京で、こうも大規模な飢えの問題と直面する日が来るとは。恭太郎は考える。

 

 

「当然、ハンバーガーなんて無いしなぁ……」

 

「……大丈夫ですかマスター」

 

「あ、ああ……何とかな」

 

 

全員で移動するという最終手段もあるにはあるが、突然それをするのもトラブルを招くだろう。それに、真黎斗に危険視されるのも良くない。

彼はそこまで考えて……ふと、視界の端に見たくない物を見てしまった。

 

 

「あれは……まさか、そんな……あの、仮面ライダーなのか!?」

 

 

ゲンムのキャスター、ジル・ド・レェの変身する仮面ライダー、仮面ライダークトゥルー。それが、堂々と聖都大学附属病院の正門から侵入してきていた。

恭太郎は慌てて近くの窓を開け、隣に控えていたアルジュナに宝具を発動させる。

 

 

炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)!!」

 

 

そうして放たれた炎の矢は、確かにクトゥルーを捉えていたが……直前まで至った所で、突然現れた触手に叩き落とされた。

しかしクトゥルーは反撃をするでもなく、悠々とこちらに歩き続ける。

 

 

「全く動じないか。不味いな……目的は何だ、いや、それは分かりきっているか」

 

「……受け止めましょう、マスター」

 

「ああ。既にゲームオーバーにされた者の為にも、この勝負は負けられない」

 

 

きっと、あのサーヴァントの目的は病院の破壊だろう。恭太郎は深い推測すらせずそう考える。そしてそれは概ね当たっていて。

 

恭太郎は通信機を手に取り、声を張り上げた。

 

 

「侵入者です。作戦を開始しましょう。総員、位置について下さい」

 

───

 

「……どうぞ、マスター」

 

 

その時飛彩は、議事堂内の奥まったスペースにて夕食を食べていた。献立はご飯と味噌汁、そして焼き魚だったのだが、飛彩はナイフとフォークで食べていた。

ジャンヌが彼にコーヒーを差し出せば、彼はそれを煽るように飲み干す。

 

 

「……」モッキュモッキュ

 

「……マスター? あの、私の知識だと、それは箸で食べるものかと」

 

「イメージトレーニングだ」モッキュモッキュ

 

「……ふふっ」

 

 

ジャンヌは、そんな飛彩を見て小さく笑った。飛彩はやや不機嫌そうにジャンヌの顔を仰ぐ。

 

 

「……どうした」

 

「いや……素敵な志だ、と」

 

「──」

 

 

そう言うジャンヌの姿が、また早姫と重なった。飛彩は眉間を抑えて俯き、直ぐに食事に戻ろうとする。

 

そのタイミングで……唐突に、電話が鳴った。

鏡灰馬からだった。飛彩は食事を中断し、慌ててそれに出る。

 

 

「……親父? どういうことだ?」

 

『ひひひ飛彩!! 病院に、また仮面ライダーが!!』

 

「何だって!?」

 

 

聞こえてきた声は、どこまでも切羽詰まっていた。また仮面ライダー。何が来たのだろうか。フォーゼか、鎧武か、それともゲンムの傘下のサーヴァントか……考えれば考えるほど焦りが募る。

 

 

「っ!! すぐ向かう!!」

 

   ガチャン

 

 

そう言って飛彩は電話を切った。

既にカイガンゴーストはここの職員に渡してある。国会議事堂の心配はいらない。飛彩は永夢を見つけ、連れていこうとその襟元に手をかけた。

 

───

 

 

 

 

 

恭太郎は一人、玄関から外に出てきていた。荷物は持たず、スーツも脱いで。その代わりに、白衣を羽織っていた。

 

そして彼は、攻撃もせず立っていたクトゥルーの前に立つ。

 

 

「おや、貴方は……」

 

「悪いが、貴方にはここで倒れてもらう。私はドクターで、ここは病院だ」

 

 

そして彼は、胸元から一つのガシャットロフィーを取り出した。それを恭太郎は一度睨み、そして、端子の横にある電源を入れる。

 

 

『ジャングル オーズ!!』

 

「……変身!!」

 

『タトバ ガタキリバ シャウタ サゴーゾ!! ラトラタ プトティラ タジャドル オーズ!!』

 

 

ガシャットロフィーから飛び出した赤い光が、恭太郎を包み込む。それと同時に恭太郎の回りを七種類のオーズの顔が飛び回り、彼は真紅のオーズの姿を選択した。

 

それだけで、恭太郎はオーズに変身する。真紅のオーズ、タジャドルコンボ。自由自在に空を飛ぶ、炎のオーズ。

 

 

「……これが、仮面ライダーか」

 

 

オーズが軽く地を蹴るだけで、何メートルも飛び上がることが出来た。そして同時に、彼は半ば本能的に操作方法を理解していた。

これなら、もしかすればいけるかもしれない。オーズはそう考えながら、病院内で弓を引くアルジュナを見る。

 

 

「……行くぞ」

 

 

交わる視線。それを合図に、周囲からの一斉掃射が始まった。

 

───

 

「大我!! 安静にしてて!!」

 

「煩せぇ!!」

 

 

クトゥルーの侵入。その知らせは、大我の元にも届いていた。衛生省を壊滅させた危険な仮面ライダーともなれば、少しでも味方は多い方がいい。大我はそう考えて戦場に向かおうとする。それを、ニコが押し止めていた。

 

 

「俺を止めるな!!」

 

「やだ、止める!! アンタが死んだらアタシが困るの!!」

 

「俺は、行かなくちゃいけねぇんだ!!」

 

「そんな体で!?」

 

「そうだ!!」

 

 

ニコには、大我を止めることはできない。それはニコが一番察していた。それでも彼女は、このまま彼が戦えばきっと死ぬと信じていた。

 

───

 

「……難儀なものだな」

 

 

アヴェンジャーは一人部屋に籠って、パソコンを弄っていた。便利なもので、そうするだけで現在の日本の情勢も、岩窟王の故郷(フランス)の現状も理解することが出来た。

少なくとも日本には今、暗い情報しかなかった。人によってはそれは愉しい攻略情報なのだろうが、多くの敗者にとってはそれは後悔の記録でもあった。

 

アヴェンジャーは溜め息を吐く。妙に、イリヤのことが気にかかった。

……そして彼は、ふとドアの外に誰かが立っていることに気がついた。

 

 

「──誰だ」

 

   コンコン

 

「入るぞ?」

 

 

入ってきたのは信長だった。右手にFate/Grand Orderガシャットを、左手に日本酒の瓶を持った彼女は何の躊躇いもなくアヴェンジャーの部屋に上がり込み、適当なテーブルにそれらを置いて堂々と座る。

 

 

「……何の用だ」

 

「いやなに、一人で飲むのも寂しいからのぅ。丁度面白いつまみもあるから、お主もどうじゃ?」

 

 

アヴェンジャーは訝しげに信長を見つめていたが、態々追い返すような気もせず、彼女を受け入れる。

信長はそれ幸いとガシャットをアヴェンジャーのパソコンに接続し、ガシャットの中から二つの杯を取り出す。

 

 

「いやぁこれ便利じゃのう!! 気前よく貸してくれるから有り難い有り難い」

 

「……まあ、そうだな」

 

 

そして信長は杯に並々と酒を注いだ。二つの内の一つをアヴェンジャーに押し付け、もう一つを信長が手に取る。

アヴェンジャーはその杯を傾けながら、物憂げに呟いた。

 

 

「それにしても、お前はよくこのガシャットから酒を出すようになったな。前はこっちで安い酒を探そうとか言っていただろう?」

 

「まあ好みじゃ。こっちの方が飲み慣れていたしのう、それに無料(タダ)じゃ」

 

 

信長はニヤリと悪戯っぽく笑った。アヴェンジャーは何処か彼女が底知れない何かの様に思えて、柄でもなく身震いした。

……そして、ふと思い出す。彼女は面白いつまみがあると言っていた筈だが、と。

 

 

「で、つまみは何だ」

 

 

だから、そう何気無く聞いた。

信長はその言葉には直ぐに返事をせず、ガシャットを接続したパソコンを操作する。

 

 

「……これじゃ」

 

 

そして、パソコンのモニターに聖都大学附属病院が写し出された。アヴェンジャーは目を剥く。その隣で、信長は楽しそうに笑った。

 

───

 

『スキャニングチャージ!!』

 

 

その時オーズは、全身緑の虫の形態、ガタキリバコンボを使用していた。ガタキリバの最も特徴的な能力は分身能力。オーズはそれを生かして十数人に分裂し、四方八方からクトゥルーを攻撃しようとする。

 

……しかしそのどれもが、弾かれていた。ガタキリバの分身を上回る数のクトゥルーの落とし子によって。飛び出した触手によって。

 

 

「っ……まだ、駄目なのか」

 

「如何です? 数の戦いならば無限にクトゥルーの落とし子を呼べる私の方が有利。対する貴方は、それ以上分身を増やすとろくに動けないでしょう?」

 

 

オーズは仮面の下で顔を険しくしていた。いくら使っている力が強くても、中身が戦闘初心者では限界があった。

分身が一人、また一人と消えていく。

 

 

「なら……!!」

 

『ライオン!! トラ!! チーター!! ラタラターラトラーター!!』

 

 

オーズは今度は、全身が黄色の猫科動物の形態、熱のオーズ、ラトラーターコンボに変身した。

……別にガシャットロフィーで変身してるからといって、オーズはコンボしか使えない訳ではなかったのだが、今はコンボで出る火力でもなければクトゥルーには全く及ばなかった。

 

 

「また姿を変えましたか。しかしいくら足掻いても同じこと、体は長く持ちますまい」

 

「──うおおおおおおおっ!!」

 

   カッ

 

 

オーズは叫ぶ。その咆哮と共にオーズの頭部から熱が放散し、周囲のクトゥルーの落とし子を吹き飛ばす。

……しかし吹き飛ばすだけ。倒すことは出来ず。それでもオーズは退かず、両手にトラの爪を展開した。クトゥルーはそれが面白いのか、ケタケタと笑う。

 

 

「その精神は認めましょう。ええ、諦めない心は尊い物だ……なればこそ、私は汚さなければならない!!」

 

「っ……まだだ!!」

 

 

この瞬間にも、アルジュナの宝具やちびノブの射撃はクトゥルーへと飛びかかっている。聖都大学附属病院の内部に侵入しようとする落とし子は、全てアルトリア・オルタが叩き斬っている。

しかしそれら全てが、今は意味を為していない。射撃は弾かれ、落とし子は次から次に追加されていく。

 

それでも、諦められない。

 

 

「私は……折れるわけには、いかない!!」

 

『スキャニングチャージ!!』

 

 

オーズの前方に、三つの黄色い輪が現れた。オーズはチーターの足を全力で使い、クトゥルーの触手を交わしながらそれらを一つずつ潜り抜ける。

そして、超高速でクトゥルーに飛びかかり、爪を振るった。

 

 

   スパスパスパッ

 

「っ……!! まだそんな力が残っていましたか、この匹夫めが!!」

 

 

その攻撃は、クトゥルーの周囲の触手を切り落としていた。

 

 

「私は信じている!! 仮面ライダーは、きっと助けに来ると!! ……ドクターはチームであり、ライダーは、助け合いだ!!」

 

 

そして高らかに宣言する。彼の意識は今にも飛びそうだったが、その宣言で彼は彼自身を鼓舞してもいた。

 

そして、助っ人は現れる。

 

 

 

 

 

「アタシを呼んだのね!? 呼んだのね!? 知ってたわよ!! お待たせ子ブタ達!! ゲリラライブのスタートよ!!」

 

 

オーズの知っている仮面ライダーではなかったが。

 

『元』ゲンムのランサー、エリザベート・バートリーと、魔法少女イリヤが、騒ぎを聞き付けて飛び入りで参加しようとしていた。

 

 

「おお、まさか本当に神に背くとは!!」

 

「アタシはアタシを求める子ブタがいれば何時でもライブを開くだけよ!!」

 

『タドルクエスト!!』

 

『マジックザ ウィザード!!』

 

「最後の希望、だから!! 変身!!」

 

───

 

「──」

 

「……あれを、どう思う?」

 

 

アヴェンジャーは、暫く呆気に取られていた。画面の向こうの風景に対してではない。信長が彼自身に何故こんな物を見せたのか、理解が出来なかった。

 

アヴェンジャーは返事はせずに、信長の目を見る。

 

 

「……何が目的だ?」

 

「さて──何じゃろうなぁ?」

 

 

第六天魔王波旬、織田信長。彼女の目的は何なのか、アヴェンジャーはまだ知らない。

 





次回、仮面ライダーゲンム!!


───オーズの決断

「逃げてください」

「それでは審議官、貴方は──」

「私はドクターです!! 誰も、死なせない!!」


───クトゥルーとの対決

「魔法少女の天敵ですよぉ!!」

「触手なんかに、屈したりしない!!」

「輝けるものこそ穢れて落ちるべし!!」


───パラドの選択

「駄目だ、動けねぇ!!」

「早く向かわないと!!」

「奴等の狙いは俺なんだろ?」


第四十六話 Time judged all


「私が命を守ります」
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