ルーラー? どうせ天草でしょ……大穴でホームズもアリだけど……
……うん? カール大帝? え?
おっかしいな、シャルルマーニュってカール大帝と同じ人だよな……うん、同じ人だ
うん?
うん?
『スクランブルだ!! 出撃発進バンバンシミュレーションズ!! 発進!!』
「っ大我!?」
「っ──」
「そんな!?」
スナイプの変身音は、当然エミヤとフィン、そしてフォーゼの耳にも届いた。エミヤの弓もフィンの槍もスナイプの方に向く。
「離れるんだマスター!! 私が、貴方を殺してしまう!!」
「逃げて!! 大我!!」
そんな声は無視して、スナイプは全身の砲台からミサイルを解き放つ。それらの殆どは撃ち落とされ斬り伏せられ、しかし確かに命中もして。
「俺の患者に……それ以上、手を出すな」
「マスター……」
その声は悲しげだったが、その弓は勝手に新たな矢をつがえる。スナイプは再び砲門をターゲットに向けた。
その間に、フォーゼはどうにかフィンの元から抜け出すことが出来た。重症のスナイプを一人で戦わせる訳にはいかない、そんな意地が彼女を突き動かした。
「大我!! ……アタシも戦う」
「バッカ……てめぇは逃げろ……!!」
「アンタを、放っておけないから」
フォーゼはそう言いながらバリズンソードを再び握り、右足にペンモジュール、左足にホイールモジュールを展開する。
「マスター……」
パァンッ
エミヤの弓の弦が弾け、その手元から十分に引き絞られた矢が放たれた。
───
「……っ」
その時、騒ぎを聞き付けたマシュは避難する人々に見られないようなルートを取りながら、スナイプ達の戦闘を覗き見していた。
戦況を分析すれば、CRのサーヴァントであった彼らは真黎斗の干渉で狂ってしまったのだろうと言うことは、全く容易に想像できた。
そしてマシュは同時に、視界の端に立ち竦むラーマとシータを捉えていた。
マシュは刀剣伝ガイムガシャットを手に取る。彼女はスナイプの変身者……花家大我には借りがあった。かつて仮面ライダークロニクルを奪ったという借りが。
「……」
だから、今回は……いや、今回もCRの側に立とう。ラーマとシータがあの中に飛び込んで戦うのなら、自分が二人を引き受けよう。マシュはそう考える。彼らとは共に戦おうとは思えないが、彼らの意思は好ましく思っていて。
……その時、マシュは、自らの後方に誰かの気配を感じた。
慌てて振り返る……そこには、前にエリザベートと共にいたキャスターの少女イリヤが、己の杖に持ち上げられるような形で立っていた。
その体は、今スナイプらと交戦している二体のサーヴァントのように、少しずつ黒く蝕まれ始めていた。
「これは……」
「居ましたよイリヤさん!! ちょっと診察して貰いましょう!!」
「う、うん……私、どうしちゃったのかな……何故か、他の人を見ると、体が勝手に動きそうになって……」
マシュは屈んで、その容態を確認していく。
イリヤはマシュを既に信頼しているようだった。彼女はマシュに黒くなり始めた体を見せ、微妙に潤んだ瞳で彼女を見上げる。
彼女は、元々は一般マスターのサーヴァントだった。それが真黎斗の余計な計らいによってアヴェンジャーというサーヴァントのサーヴァントという異常な立ち位置になり、更にそれが令呪の力で単独行動を行っている。
……つまり、彼女もまた、ゲンムコーポレーションから送り出された仮面ライダーを倒すことで、汚染されてしまっていた。汚染の進行が遅いのはきっと偶然だろう。
「まだ、戦っていないんですね?」
「うん……まだ……」
「私が協力しないとダメダメですもんねーイリヤさんは」
「うぅ……」
「……」
逆に、マシュだけは汚染されていなかった。仮面ライダー鎧武を倒した彼女だけは、既に真黎斗の知らない存在となっていた為に、汚染の影響を逃れていた。
「とにかく、一刻も早くこの状況を治さないと……」
「まあそうですよねー、私が耐えられるのも何時までか分かりませんし」
マシュは様子を見るのを止めて再び立ち上がり、スナイプらの方を見た。どうにか二人はサーヴァント二体の攻撃を堪えていたが、勝てるとは思えなかった。
しかし、このままイリヤを放置も出来ない。クロノスに変身して時を止めることも考えたが、真黎斗が干渉している以上ポーズが効くとも思えない。
そもそも、治療の手立てが無い。薬はエリザベートと共に消滅してしまった。
「治療が出来るとすれば……」
治療の心当たりは、一つだけあった。
仮面ライダーの助けをする作戦も一つはあった。
『刀剣伝 ガイム!!』
「……変身」
『オレンジイチゴにパイナポー!! バナナ!! ブドウ!! メロン!! ソイヤ!! ガイム!!』
───
マシュの観察の通り、フォーゼとスナイプはどうにかこうにかエミヤとフィンの攻撃を凌いでいた。
エミヤの狙撃はフォーゼがペンモジュールの力で作成した壁によって勢いを減衰させて回避する時間を稼ぎ、フィンの攻撃はフォーゼがホイールモジュールで一気に近づいて先に攻撃を仕掛けることでターゲットを自分に絞らせることでスナイプを守った。
言ってしまえば、フォーゼがスナイプを介護するような戦いだった。そんなことを出来る程度には、フォーゼはスナイプを信頼していた。
『コズミック ペン ホイール リミットブレイク!!』
『バンバン クリティカル ファイヤー!!』
そして、二人は相手に生じた僅な隙を見逃さずに、各々の場所で必殺技を放つ。
「っ……
しかし、それらはエミヤの投影した盾に防がれて。
ミサイルが殺到する。花弁が一枚剥がれた。砲弾の雨が降る。もう一枚剥がれた──それだけだった。
ニコの攻撃も、フィンの水が作り上げた壁によって、難なく押し流されていた。
「全部、防がれてる……」
「……っ!! 避けろ!!」
そして、愕然としていたフォーゼはフィンの一撃を諸に受けて、スナイプの隣に転がる。変身は解けていた。スナイプはもう体の自由が効かず、彼女を庇うことも出来なかった。
「……」
エミヤは俯いていた。彼はもう、二人は逃げられないと確信していた。望まずとも、勝手に手が必殺の一撃を弓につがえる。
「──
フィンの方はどうやら体はもう戦闘は必要ないと判断したようで、槍を構えるのも止めていた。
「こんな形で別れるとは思わなかったけれど……さようならだ、マスター。君との戦いは楽しかった。学ぶことも沢山あったさ」
「こっちの気分はサイテーよ」
もう諦めてしまったフィンが心からの悲しみを述べれば、ニコはそう言って唾を吐いた。エミヤは口をつぐんだまま弓を引き続ける。
スナイプはこの状況でも諦めようとは思っておらず、再びキメワザを放とうとドライバーに手を伸ばした。
「ミッションはまだ、終わっちゃいねぇ……」
『キメワザ!!』
狙いが定まらない。スナイプの意思は折れずとも、胸の内の輝きは消えずとも、体がもうそれに答えられない。
そして、必殺の矢が、チャージされる。
ダダダダダダダダ
「……っ!?」
その瞬間に、エミヤの上空から何発もの銃弾が降り注いだ。エミヤは
その空の向こうには。
ダダダダダダダダ
「……成功です!!」
「あ、あわわ……大丈夫ですかぁ……?」
宙を舞うバイク、ダンデライナーに跨がった鎧武と、その後ろに乗ったイリヤがいた。
仮面ライダーから手に入れたガシャットロフィーの力は、変身だけには留まらない。かつてそれらが解き放たれた時にゲンムコーポレーションからの移動に使用したときのように、ガシャットロフィーの所持者もその仮面ライダーに合わせたビークルも呼び出すことが出来る。マシュは……鎧武はそれを使用した。
そして鎧武は一気に降下してエミヤを撥ね飛ばし、さらにその上で方向を切り換えて、スナイプ達とは反対側に飛んでいく。
「っ……どうやら私は、彼女らの追跡に切り替えたようだ。どうか生き延びてくれ、マスター」
そしてエミヤの足は、ひとりでにダンデライナーを追跡し始めていた。
フィンの方は鎧武を追おうとは思考しなかったらしく、去っていくエミヤを見送ることもなくその槍をスナイプに向ける。
「……私だって、君を殺したくはないのだが」
「っ……!!」
『バンバン クリティカル ファイヤー!!』
スナイプは渾身の力を振り絞り、反動で後ろに吹き飛ばされながら最後のキメワザを放った。しかしそれらは、動きの速いものは斬り落とされ、遅いものは槍からの水流によって纏めて吹き飛ばされる。
「っ……」
『ガッシューン』
「大我!!」
そして、とうとうスナイプの変身も解けた。
今度こそ、絶体絶命。ニコは大我の元に這い寄り、更に彼を引き摺って逃げようとする。
だが、逃げられる筈もなく。
フィンが歩きながら呟く。
「今日までの戦いに、敬意を示そう。ありがとう」
その槍が、振り上げられて。
「
ガンッ
その槍が、奥から投げ込まれた剣によって吹き飛ばされた。
───
『マッスル化!!』
『マッスル化!!』
『マッスル化!!』
「やれ、ブレイブ!!」
「俺に斬れない、物はない!!」
『タドル クリティカル スラッシュ!!』
その時ブレイブは、パラドクスパズルゲーマーに援護されながらジャンヌと斬りあっていた。剣と旗が線香花火のように火花を撒き散らしながら交差し、ブレイブは歯を食い縛る。
ジャンヌは強かった。ブレイブがタドルファンタジーの力で呼び出したバグスターの雑兵は悉く切り捨てられ、ブレイブ自身の攻撃だって、ジャンヌの宝具によって防がれてしまう。
「っ……!!」
ガンッ
また、倒せなかった。ジャンヌによってまたキメワザを防がれたブレイブは反動で二、三回コンクリートの上を転がる。
そして、一回地面を殴ってからまた立ち上がった。
そこに、もう一人の来客が現れる。
「これは──」
「永夢!!」
エグゼイドだった。事情も分からずにナイチンゲールとの戦闘を離脱して逃亡してきた彼は、ここでも繰り広げられていたマスターとサーヴァントとの戦いに目を見開く。
「……飛彩さん、どういうことなんですか、これは……!!」
「──永夢」
エグゼイドは、ブレイブの肩に手を置いていた。ジャンヌとの戦いを引き留めようと、無意識の内に出した手だった。
ブレイブはエグゼイドの目を一瞬見つめ、そのすぐ後に、エグゼイドの手を下ろさせる。
「……彼女は敵だ」
「でも……」
「切除する」
「そんなの、間違ってます……」
「──それが、彼女の望みでもあるんだっ……!!」
そしてブレイブは、再びジャンヌの元に走り出した。マントを伸ばしてジャンヌの旗を牽制し、一気に間合いに滑り込む。
エグゼイドはそれを、立ち尽くして眺めていて。
次回、仮面ライダーゲンム!!
───進んでいく聖杯戦争
「東京都23区での戦争が、もうすぐ終結する」
「どうなっちまうんだよ……」
「次のステージが、始まる……」
───マシュの賭け
「……私はここまでです」
「君は、その未来を作るのか」
「私は、貴方に恥じない私でありたい」
───本当の別れ
「今度こそ、終わりですね」
「本当に……済まなかった」
「貴方は間違っていません」
第五十八話 Fragment hope
「貴方に会えて、本当に良かった」