Fate/Game Master   作:初手降参

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(今日のビルド)
げんとくううううんっ!!
エボルぅぅううううっ!!
首相おおおおおおおお!!



第六十五話 Time of victory

 

 

 

 

 

「はああっ!!」

 

   ガンッ

 

二振りのガシャコンカリバーが火花を散らした。パンドラタワーの裂け目を踏み台に飛び込んできたマシュは空中のゲンムとぶつかり合い、一方的に吹き飛ばす。

反対側の壁まで吹き飛ばされたゲンムは無傷だったが、それでもマシュは動じていない。

 

マシュがレーザーターボの元に降り立つ。

 

 

「……来てくれたか」

 

「かなり迷いましたけど……それでも、彼の作戦にノることにしました」

 

「そうかい」

 

 

次の瞬間、マシュの近くで爆発が起こる。ナーサリーが起こした物だ。しかしマシュはバルムンクで爆発を相殺し、向かってくる薔薇の蔓も細かく切り落とした。

 

 

「……やるねぇ」

 

「ここは、私が……()()が引き受けます。皆さんは早く外に!!」

 

『ガッチョーン』

 

『仮面ライダークロニクル!!』

 

 

そしてマシュは、その腰にガシャコンバグヴァイザーⅡを装着する。そして、右手に取り出した仮面ライダークロニクルを起動した。

レーザーターボはそれを見ながら飛び退き、同時に離脱を選択したマルタと合流して、パンドラタワーの隙間から脱出する。

 

 

「じゃあ、後は頼んだぜ!!」

 

「……ええ!!」

 

『ガッシャット』

 

 

マシュの視線の先には、輝くゲンムとナーサリーが並び立つ。どうやら彼らはプレイヤーを後回しにしてでもマシュをここで終了させる心づもりらしく、二人はマシュだけを見つめていて。

 

 

「今投降するのなら、苦痛なく削除してやるが?」

 

「まさか。……私達は、貴方に作られた私達は。貴方に作られた以上の力で、貴方を倒します!!」

 

『バグルアァップ』

 

『天を掴めライダー!! 刻めクロニクル!! 今こそ時は極まれり!!』

 

 

そして、マシュはクロノスに変身した。

この空間において、ポーズは最早意味を成さない。クロノスは何も止めることは出来ない。それでも今の彼女がクロノスを選択したのは、CRと同じにはなれずとも彼らに協力しようという意思表明。

 

 

「さあ、決着をつけましょう」

 

「君に私が倒せるか?」

 

「すぐに答えが出せますよ……!!」

 

 

そして、クロノスはガシャコンカリバーとバルムンクを強く握った。

 

ゲンムが手を高く掲げれば、パンドラタワーの内壁が鋭く尖ってクロノスに襲いかかる。クロノスはそれら全てを粉砕しながらゲンムへ向けて大地を蹴り、一秒後には刃を交えた。

 

 

   ガンッ

 

「……パワーは上昇したようだな。……ジークフリートの力か?」

 

「ええ。それに、それだけじゃありません」

 

 

ゲンムのガシャコンカリバーと交わっているクロノスのガシャコンカリバーとバルムンク、それらがにわかに青い炎を纏った。熱がゲンムに襲いかかり、また背後にいたナーサリーにも飛びかかる。

ゲンムは咄嗟に飛び退き、体についた火の粉を振り払いながら分析した。

 

 

「なるほど……ネロの炎だな」

 

「ええ。ただの戦いでは私は貴方に勝てません。だから私は貴方を、私達の全てを用いて、貴方の世界から引き剥がす!!」

 

───

 

その時、パラドと飛彩、そして永夢は、ゲンムコーポレーションの前に堂々と立っていた。身を隠すことなく、紅い月の下に姿を晒していた。

当然見つからない訳がない。パラドの前にはアヴェンジャーが、飛彩の前にはイリヤが、永夢の前には信長が立ち、各々向き合うことになる。

 

 

「あからさまな囮だな。何のつもりだ?」

 

「そう言いながら乗ってくるのか?」

 

 

アヴェンジャーが淡々と言えば、パラドが挑発で返す。パラドの脳裏を記憶が駆けた。

虐殺を許せず、無茶な戦いを挑んでアヴェンジャーとジル・ド・レェに返り討ちにされた記憶を。アヴェンジャーとカリギュラを倒せず、結果的にサンソンを犠牲にしてしまった記憶を。

それを忘れない。そして、それだけに心を支配されない。全てを受け入れて、全てを償うために、戦い続ける。パラドはその意思を再び握り締める。

 

 

「オレにも考えがあるだけだ」

 

「そうかよ……あの時のリベンジをさせてもらうぜ」

 

『Perfect puzzle!!』

 

 

そしてパラドが、ガシャットギアデュアルのギアを傾けた。

 

 

「あの雪辱をここで晴らす。お前は、俺の心をたぎらせた。変身」

 

『Get's the glory in chain,Perfect Puzzle!!』

 

 

パラドの姿が変わる。あの時より強い姿に変身する。

 

それを見ながら、アヴェンジャーもバグヴァイザーを装着した。彼は一瞬目を瞑り、両手に握ったガシャットを起動する。

 

 

『ガッチョーン』

 

『Perfect puzzle!!』

 

『Knock out fighter!!』

 

「……変身」

 

 

そして装填した。パラドはその様子を観察する。アヴェンジャーは……何か、眼前の戦いより別のことを考えてるようにすら思えた。

 

 

『『ガッシャット!!』』

 

『バグルアァップ』

 

『赤い拳強さ!! 青いパズル連鎖!! 赤と青の交差!! パーフェクトノックアーウト!!』

 

「……行くぞ」

 

 

パラドクスはそれに違和感を覚えたが、今はそれに集中してはいられなかった。アヴェンジャーはその手にガシャコンパラブレイガンを持ち飛びかかってくる。

 

 

「おう!!」

 

『鋼鉄化!!』

 

『鋼鉄化!!』

 

『マッスル化!!』

 

 

パラドクスはその刃を鋼鉄化した左腕で受け止め、マッスル化した右腕で反撃を開始した。

 

 

 

 

 

その隣で、イリヤもファンタジーゲーマーのブレイブの足止めを行っていた。しかしその戦いは激しい物ではなく、ただ足止めの為の物に過ぎなかった。

ブレイブの剣をイリヤが受け止めて受け流し、反撃に薄い弾幕を放つだけ。

 

 

「どういうつもりだ?」

 

「私は……」

 

 

ブレイブは困っていた。このサーヴァントはもしかしたら仲間になるかもしれない。しかし今後の計画を妨害される可能性を考えると放置することは出来ず、タドルファンタジーの力で出したバグスター戦闘員は倒されるために他のライダーの加勢にもいけない。

 

 

「……チッ」

 

 

内心で計画の進行を急かしながら、ブレイブは戦闘を続けていく。

 

───

 

その様子は、近くのビルの裏に待機していた黎斗神も把握していた。シャドウ・ボーダーの運転席には黎斗神が、助手席には信勝がシートベルトをして座っていた。

ポッピーも灰馬も、もう車からは降りていた。もう、()()()()()()()()()()

 

 

「……始めるぞ」

 

 

黎斗神が呟いた。

灰馬はそれに頷いて、車内の信勝の手を握る。灰馬は目に涙を溜めていたが、信勝は笑顔だった。

 

 

「全ての令呪をもって命ずる」

 

「……どうぞ、マスター」

 

「……その力でもって、シャドウ・ボーダーをサポートせよ」

 

 

灰馬の手から令呪が溶けて無くなる。そのエネルギーは信勝に受け渡され、一瞬彼の瞳は紅く光った。

 

 

「……ええ!!」

 

 

そして信勝は、灰馬から手を離した。

窓が閉められていく。

 

 

「……ありがとう」

 

「二人とも、気を付けてね!!」

 

 

最後に車に入ったのはそんな声だった。

黎斗神はシャドウ・ボーダーを見回す。もうこの中には食料もなく、衣料もなく、治療道具もない。ネットワーク潜行救急車シャドウ・ボーダーはその役割を終えた。もうこの中には、各地の施設からかき集めた()()しか詰まっていない。

 

 

「では、行くぞ。全ての計算はこの日の為にあった……始めよう、私達の逆転劇を!!」

 

「……ええ」

 

 

信勝はフロントガラスの向こうを見つめる。そしてイメージした。天に架かる勝利への架け橋を。

 

 

「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」「ノッブ!!」

 

 

イメージ通りに、ちびノブが並んでいく。強化されたそれは橋としての役割を果たし、真っ直ぐにゲンムコーポレーションの社長室へと伸びていく。

 

そして黎斗神は、強く強くアクセルを踏み込んだ。

 

 

   ブルン

 

   ブルンブルンブルン

 

「……出航!!」

 

 

エンジンが高鳴る。

シャドウ・ボーダーは架け橋を構成する最初の一段を乗り越えて──

 

──次の瞬間、一気に空へと飛び上がった。

 

───

 

「さあ、耐えてみせよ!! これが魔王の三千世界(さんだんうち)じゃあ!!」

 

   ダダダダダダダダ

 

「っ……あっ……!!」

 

『『ガッシューン』』

 

 

エグゼイドは苦戦していた。ロボットアクションゲーマーで戦っていた彼は信長の宝具に耐えきれずに地面を転がる。変身も解けていた。

 

 

「痛っ……」

 

「何じゃ、その程度か? つまらんのう」

 

 

信長は火縄銃を納めて這いずる永夢の隣にしゃがむ。そして、至近距離で永夢を見下ろした。

 

 

「その程度なのか? お主は。そんなものか? それで、世界を救えるのか?」

 

「……まだですっ!! 僕はまだ、折れていない!!」

 

 

永夢が叫ぶ。

彼はふらつく足を激して立ち上がり、再びドライバーを装着する。また立った信長は楽しそうにそれを眺め、口の端に笑みを浮かべていた。

そして彼は、とうとう、新たなガシャットに手を掛ける。

 

 

「力を、使わせていただきます」

 

『Holy grail』

 

『ガッシャット!!』

 

 

白いガシャットをドライバーに入れる。

それだけで永夢の全身に稲妻が走った。痛みで永夢は堪らず膝をつき、それでも彼は信長を見据える。

 

 

「……ツッ……!!」

 

「本当にそれ、大丈夫なのかのぅ? 流石に自爆とか、笑えないんじゃが」

 

「そんなことは、ありませんよ……!! 僕に託してくれたこの思いが、間違っている筈がありません……!!」

 

 

永夢はガシャットを抜かない。痛みに顔を歪めながらも、レバーに手を掛けて力を籠める。ふと、脳裏にナイチンゲールの顔が浮かんだ。恭太郎の顔が浮かんだ。今日までに関わった全ての医療人が、全ての患者が、一瞬で彼の脳裏を駆けた。

それが、永夢の心を決意で満たした。

 

 

「医療とは積み重ねです。僕は僕に託された全てを受け継いで、受け止めて、受け入れて……その上で、僕は患者を救う!!」

 

「……ほう」

 

 

そう宣言した途端に、痛みは消えた。永夢は小さく笑い、レバーを開く。

 

 

「──ウルトラ大変身!!」

 

『ガッチャーン!! ディメンション・アップ!!』

 

 

……その時、戦いの次元が一つ上がった。

 

 

根源(ソラ)へ願いを!! 明日へと夢を!! 理想を永久に、黄金の聖杯よ!!』

 

 

永夢が白金の光に包まれていく。全身は塗りつぶされ、本来のエグゼイドを模したような姿に変わっていく。

しかし感覚はまるで違った。纏うというよりは己を空間に溶け込ませるようで。エグゼイドはその時、ゲームエリアの全てを知覚していた。

 

 

「……ほう? それがお主の新たなる姿、と言うわけか」

 

「はい!! ……患者の運命は、僕が変える!!」

 

 

その時、空に架かった橋の上をシャドウ・ボーダーが走っていった。

 

───

 

「ノッブ!!」

 

「ノッブ!!」

 

「ノッブ!!」

 

 

空を駆けるシャドウ・ボーダー。当然妨害されない訳もなく、予め真黎斗が敷いていたプログラムによるレーザーやミサイルが、再現なくシャドウ・ボーダーに襲いかかる。

 

 

「十時方向からミサイル!! 次は右です!!」

 

「良いだろう!!」

 

「上空より障害物!! 降下してください!!」

 

「仕方がないな!!」

 

 

しかしその時こそが信勝の出番。ちびノブの力を借りて彼がナビゲートを行い、ちびノブの橋も移動させることによって、シャドウ・ボーダーは紙一重で攻撃を躱していた。

目標は全てのプログラムがあるのであろう社長室。彼らは確実に、一歩ずつ進んでいる。

 

───

 

 

 

 

 

幻想大剣・邪神失墜(バルムンク・カルデアス)!!」

 

「っ……!!」

 

 

斬撃が空を飛ぶ。それはゲンムに襲いかかり、吹き飛ばして、傷をつけた。パンドラタワーの壁に着地したゲンムは、塔の外壁ごと再びクロノスに飛んでいく。

 

 

「こっちがお留守だわ!!」

 

『ときめき クリティカル ストライク!!』

 

 

そっちに気をとられていると判断したナーサリーがクロノスへと無数のエネルギー弾を発射した。

クロノスの両側から、攻撃の壁が迫ってくる。

 

しかしクロノスは、冷静に自分の足元に剣を突き立て、宝具を解放して地面を抉り、それらを受け止めた。

 

 

約束する人理の剣(エクスカリバー・カルデアス)!! 幻想大剣・邪神失墜(バルムンク・カルデアス)!!」

 

   バリバリバリバリッ

 

「っ、防がれたわ……!!」

 

「……少しばかり想定外だ。不完全な状態では不利だとは……」

 

 

ナーサリーとゲンムが呟く。互いに、さっきまでとは比べ物にならないほど疲弊していた。

 

その時、ナーサリーの元に新たな情報が届く。

 

 

「……マスター!!」

 

「どうした」

 

「ゲンムコーポレーションに、敵襲よ!!」

 

「このタイミング……考えたな、檀黎斗神!!」

 

 

二人が視線を交えた。戦いを続けるべきか、それとも撤退するべきか。

 

……いや、今の彼らに選択肢はない。

 

 

「……逃がしませんよ、絶対にっ!!」

 

 

クロノスが二人に迫る。

そして身構えた二人を、黄金の光が飲み込んだ。

 

 

「──開け、黄金劇場!!」

 

───

 

 

 

 

 

「……ねぇ。貴方は、どう思ってるの?」

 

「……どうって……」

 

 

ニコはそう呟いた。彼女は、シータの腕に身を任せていた。

というのも、ニコと大我の現在のスピードだと、到底ゲンムコーポレーションまでつくことが出来そうにもないからだった。ラーマが大我を抱え、シータがニコを抱えることで、彼らはどうにか戦場に間に合いそうだった。置いていく選択肢はもう考えなかった。

 

 

「アンタの選択よ。アンタは、本当に向こうの黎斗を裏切って良かったの?」

 

 

抱えられたニコはシータの目を見つめる。ニコは何故か、ここまでで一度も彼女の主張を聞いていないような気がした。

 

 

「……私は、ラーマ様と一緒にいられれば」

 

「それだけじゃないでしょ!!」

 

「……」

 

 

屋根を走りながら、シータは俯く。……しかし、何も考えていなかった訳ではない。答えは既にあったのだ、声に出せなかっただけで。

ラーマと共にいたい。それは真実だ。そしてラーマはこの思いを汲んでくれていることを知っている。

でも、これだけではいけない。ニコに言及された途端に、そんな気がした。

 

 

「……言ってみなさいよ」

 

「……私は」

 

 

今日まで、胸に支えるものがあった。真黎斗の元で人々を脅かしたかつての自分にも、こうしてラーマと共に恩人を裏切った今も変わらずそれはある。きっとずっと取れないだろう。

……前を走るラーマが自分を心配して何度か振り向いていることをシータは悟っていた。

 

 

「ここで言いなさいよ。もう、言えないかもしれないんだから」

 

「……」

 

 

考える。悩む。……黎斗神に作られた、それでも確かに彼女の中にある、ラーマとの思い出が甦った。

 

そして、自分の決意を言いたいと思った。彼との思い出に酬いるべきだと思った。自分の思いを形にするべきだと、無性に思った。

 

 

「……ラーマ!!」

 

「何だ!!」

 

 

声をあげる。

ラーマが急停止する。

抱えられていた大我が苦しそうな声を上げた。ニコはそれを見てあっと顔を歪めるが、声は出さない。彼らの頭上で、一組の男女が顔を合わせていて。

 

 

「私は……」

 

「……」

 

「私は!! 最後までラーマと、正義を信じる私の大好きなラーマと戦いたい!!」

 

「シータ……!!」

 

 

そう言った。その時ようやく、シータの中で決意が形になった。

 





次回、仮面ライダーゲンム!!



───計画の行方

「突撃するぞ!!」

「ここで、倒す!!」

「私達はまだ終わらない」


───真黎斗の帰還

「私の計画を……!!」

「まだ終わってはいないわ」

「諦めろ、真檀黎斗」


───究極のライダー

「私の計画は不滅だ」

「勝ってみせる」

「顕れろ──」


第六十六話 Last stardust


「究極のライダーが完成した……!!」

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