Fate/Game Master   作:初手降参

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手伝って下さいよ先輩!!

 

 

 

 

 

「酷いわよマスター!! 早く服治してよね!!」

 

「別にそのままでも……」

 

「良くないわよ良くないわよ!!」

 

「分かった分かった、ちょっと待て、今イメージを組み立てる」

 

 

黎斗は部屋のベッドで、ナーサリーを嫌々見つめながらイメージを組み換えていた。

昨日の戦闘で彼女の衣装は穴だらけで、所々から地肌が覗いていた。これでは、下手すれば色欲の化身が復活しかねない。

 

 

「ふーむ、えと、こんな感じだったか……?」

 

 

黎斗が考えていけばいく程、ナーサリーの衣服は修復されていった。便利なものである。

 

……そして、それを見つめながら、アヴェンジャーはやはり考えていた。

 

 

「……」

 

 

「うん、治ったわねマスター!!」

 

「神の才能に感謝することだな」

 

 

目の前の黎斗は、人間的な嫉妬を持っている。それは第一の裁きの間攻略後に聞かされた話で理解できた。

黎斗は、人間的な色欲を持ち合わせていない。現に今、彼は見ようと思えばナーサリー・ライムの半裸でも全裸でも見られたろうに、易々と服を着せてしまった。肌に目をしっかりと向ける素振りもなかった。……いや、単に趣味の問題かも知れないが。

そして黎斗は、怠惰に理解は示したが、やはりそれとは遠いのだろう。彼は己の行動は怠惰かもしれないと言ったが、結局はかもしれない、である。

 

 

「……何を見ているアヴェンジャー」

 

「……ああ、ぼんやりしていた。じゃれあいはその辺にしておけ、第四の間に行くぞ」

 

「分かっている」

 

 

黎斗に声をかけられたアヴェンジャーは、曖昧な表情をしながら立ち上がり、黎斗とナーサリーを引き連れて廊下へと出た。

 

 

「……先に言おう。お前が殺すのは、第四の裁きの間にいるのは、憤怒の具現だ」

 

「ほう」

 

 

こうしてアヴェンジャーが切り出すのも、最早いつもの事だった。

 

 

「憤怒。怒り、憤り。それは最も強い感情とオレが定義するもの。自らに起因するものでも、世界に対してのものでも構わない。等しく正当な憤怒は人を惹き付け、時に讃えられる」

 

「最もだ。復讐劇はゲームの良いネタになる。ゲンムのゲームなら、タドルクエストなんかが合っているだろうな」

 

「私は仲良くして欲しいのだけれど……」

 

 

復讐談義に小さな花を咲かせ始める二人の脇でナーサリーが呟いた。皆で仲良く、その文章にアヴェンジャーが反応する。

 

 

「それは無理な相談だな童女。古今東西老若男女、復讐譚を人間は好み、愛おしむのだからな」

 

 

そこまで言って、彼は……アヴェンジャーは、その目を鋭く光らせた。

 

 

「それを……ヤツは認めようとしない!! 怒りを否定する!! 第四の裁きの間に配置されながら平然と赦しと救いを口にする!!」

 

「……」

 

「許されぬ、許されぬ、偽りの救いなどヘドが出る!!」

 

「……その、ヤツとは誰だ?」

 

「……行けば分かる」

 

───

 

「……おはようございます、皆さん……」

 

 

マシュは疲労困憊といった様子で朝を迎えた。何しろ昨日は例の怪生物100体斬りを敢行したのだ、それも当然である。

 

 

「おはようマシュ。気分は?」

 

「やっぱり悪いですね……自称今川さんに酷く斬られたのが効いたのでしょうか」

 

「かもね。まあ体に傷が無いから大丈夫でしょ。自称松平君が勝手に自滅させてくれたのが幸運だったね」

 

 

ベビーカーを弄りながらそう言うダ・ヴィンチ。彼の横では魔人アーチャーが得物である火縄を手入れしていた。

 

 

「どうしましたか魔人アーチャーさん?」

 

「いや何、さっきから何かの足音が聞こえるのじゃ……敵襲かな?」

 

「そうですかね、足音というか地響きというか……」

 

 

桜セイバーがそう言いながら立ち上がり、辺りを見やった。

 

そして、気づいた。

 

 

「あ、何か来てます」

 

   ドドドドドドドドド

 

「!?」

 

 

跳ね起きるマシュ。寝ぼけ眼は足音で既に覚まされていた。

 

 

   ドドドドドドドドド

 

「向こう側に……ライダーかバーサーカーらしきサーヴァントと前に冬木で会ったライダーを確認!!」

 

「うん、どう見ても敵襲だね!!」

 

 

報告するマシュ、迎撃体制を取る桜セイバーと魔人アーチャー。

ダ・ヴィンチは戦いを避けるためベビーカーを牽いて離れていく。

 

 

「■■■■■■!!」

 

「ついに決着をつける時が来たな、尾張のうつけ、とお館様は申しております」

 

「■■■!!」

 

「我が武田騎馬軍団の前に屍を晒せ、と申しております」

 

 

真っ黒の肌に見上げる程の体躯、マシュは数歩後ずさりながらその騎馬を見ようとする。

 

見ようとした。……馬ではなくて象だった。

 

 

「……あれ?」

 

「貴様が乗ってるの、どう見ても象なんじゃが……」

 

 

思わずそう魔人アーチャーが呟く。自称武田はその言葉に怒ったのだろう、手にもったよく分からない武器を威嚇するように掲げる。

 

 

「■■■■!!」

 

「細かいことを気にするな、禿げるぞ、と申しております」

 

「こっちの台詞じゃ!!」

 

 

騎馬軍団改め騎象軍団がこちらに声高に吼えた。今にも踏み潰しにかかってきそうな勢いである。

 

 

「とにかく戦闘に入りましょう!! 変身!!」

 

『Transform Shielder』

 

 

変身して武田に突撃していくシールダー。

応戦してきた相手の攻撃を受け止めて、はたと察する。

 

 

   ガツンッ

 

「くぅっ……重い……!!」

 

『Buster chain』

 

「はあああああっ!!」

 

 

一撃が重いのだ。ベルトで強化して、漸く受け流せる程度には。

これでは、他に気を配りながらの戦闘なんて到底無理だろう。

 

こんな時黎斗ならどうするか。シールダーは一瞬考え、即座に口に出す。

 

 

「私は武田を抑えます!! 皆さんは宝具でもなんでも使って他を何とかしてください!!」

 

「了解した、三千世界に屍を晒すがよい……」

 

 

魔人アーチャーはその声を聞いて、シールダーを包囲する象達に銃口を向ける。

彼女の周囲には何万もの火縄が呼び出されていて。

 

 

「分かりました。秘剣の煌めきを見せてあげます!!」

 

 

そして桜セイバーは、武田の側近ポジションにいたライダーに斬りかかる。刀を上段に構えると……その場からかき消えた。

 

 

「天魔轟臨!! これが魔王の三千世界(さんだんうち)じゃあ!!」

 

「一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀!! 無明三段突き!!」

 

 

   ズドンッ

   スパッ

 

 

二人の宝具は、全く同時に発動した。

魔人アーチャーの弾丸は戦場を打ち払い、桜セイバーは一瞬でライダーを貫き無力化する。

 

 

「……!?」ガクッ

 

「■■■■■■■!?」

 

 

一瞬で形勢は逆転した。三体一は卑怯かも知れないが、確実に有効な手段である。

いくら相手が巨大な豪傑であろうと、数の力には敵わない。

 

 

   ガツンッ

   スパスパッ

   バァンッ

 

「■■■……」

 

 

暫く攻撃され続け、武田は力なく膝をついた。虫の息の側近が彼に近づいていく。

 

 

「■■、■……」

 

「ペルシアに旗を立てよ……と、申しております。……あ、出番終わりですね。やったー……」

 

 

そうして、自称武田とお付きのライダーは消滅した。粒子の一片まで消え去るのを確認してから、黎斗のベビーカーを避難して守っていたダ・ヴィンチが呟く。

 

 

「うん、割と何とかなったよね。流石私の発明」

 

「ダ・ヴィンチちゃんが戦ってたら楽だったんですけどね。というか黎斗さんが起きれば良いんですよ」

 

「なはは……そればっかりはどうしようもないかな……」

 

 

「いいなー、わしもその腰巻き使いたいなー」

 

 

魔人アーチャーは火縄を片付けると、シールダーのベルトをまじまじと見つめながら非常に物欲しそうな顔をしていた。

 

 

「一応サーヴァントなら誰でも使えるよそれ」

 

「マジで!?」

 

 

ダ・ヴィンチの言葉に、バグヴァイザーをペタペタ触っていた魔人アーチャーは更に興奮を露にした。

そして触られていたシールダーはというと……未だに辺りの警戒を続けている。

 

 

「……待って下さい。まだ誰か来るように見えますが?」

 

───

 

裁きの間の扉が開く。油でも差してあったのだろうか、今回の扉は簡単に、無抵抗に開いた。

 

 

「……アヴェンジャー。会いに来ました」

 

「ああ、ああ!! 忌まわしきジャンヌ・ダルク!! 自らシャトー・ディフに飛び込んだ憎き女!!」

 

 

そう叫ぶアヴェンジャー。まさしくその姿は憤怒そのもの。

彼に相対するは旗を掲げた金髪の女。アヴェンジャーがジャンヌ・ダルクと言っていた。

 

 

「……成程、こっちが本物、という訳か。それもそうだな」

 

 

黎斗は納得したように頷いた。彼はこれまで全速力で人理を修復していた為、英霊の知識にはかなり不安な所があったのだ。

彼の知るジャンヌ・ダルクは竜の魔女しかいなかったから、ちゃんとした聖女も存在していて、彼は安心した様子を見せていた。

 

 

「指示を出せマスター!! あの女を潰す!!」

 

「分かっている。行け、アヴェンジャー!!」

 

───

 

「……待って下さい。まだ誰か来るように見えますが?」

 

 

シールダーが強化された視力で、向こうの山から駆けてくる軍勢を発見した。

しかもそれらはみるみるうちに大きくなり、いつの間にか一行の前に並んでいる。

大将らしき人が名乗りを上げた。

 

 

「やあやあ、我こそは軍神、上杉アルトリア!! 武田ダレイオス、いざ宿命の対決ですとも!! ……あれ?」

 

 

現れたのは金髪に青い鎧の女。シールダーはその姿に微妙な見覚えを感じ首を傾げ……かつて冬木で見たセイバーの色違いだと気づいた。

 

 

「あれ、宿命のライバルらしい武田ダレイオスは? どこです?」

 

「先程消滅したぞ。というかあの越後の龍が女なわけあるか!! 出直せ出直せ!!」

 

「多分だけど、君達も人のこと言えないんじゃないかなー」

 

 

ぼやく魔人アーチャーをジト目で見やるダ・ヴィンチ。その向こうでは、自称上杉がショックで崩れていた。

 

 

「そんな、春日山くんだりから頑張ってここまで出陣してきたのにまさかの無駄足……甲斐の兵糧根こそぎ奪って美味しいご飯食べたかった……」

 

「うわあ、血も涙もない戦国経済だね」

 

 

ダ・ヴィンチちゃんが呟くのを余所に、上杉アルトリアは帯刀していた聖剣を引き抜く。軽く金属音が弾けた。

 

 

「こうなっては仕方ありません……!! 我がご飯……いや領民のため!! あなた達の兵糧をいただきます!!」

 

「もう滅茶苦茶ですね!!」

 

「是非も無いよネ!!」

 

 

それに対応するかのように刀を引き抜く桜セイバー、火縄を召喚する魔人アーチャー。シールダーは再び盾を構える。

そしてダ・ヴィンチは黎斗を乗せたベビーカーを持ってまた何処かに避難した。

 

上杉アルトリアが聖剣を振りかざすと、その回りに三体のサーヴァントが現れる。

 

 

「来なさい、直江ランスロット!! 鮎川ガウェイン!! 山吉トリスタン!!」

 

「Yeeeeeaaaaaaaar!!」

 

「年貢を払うのです!!」

 

「ああ、私は悲しい……」ポロロン

 

 

黒い霧を纏う直江ランスロットが雄叫びと共に何処からか銃を取りだし狙いを定める。

何故か年貢を求める鮎川ガウェインがその筋肉に力を籠める。

そして山吉トリスタンは弓を掻き鳴らした。

 

 

「上杉の家臣が三人……!! 来るぞマシュ!!」

 

「はい!!」

 

───

 

「ちいっ!!」

 

「……取り逃がしたか」

 

 

アヴェンジャーが舌打ちをした。第四の間から聖女はまんまと逃げおおせ、黎斗も苦々しい顔をしている。

 

 

「……帰るぞ、マスター。最早ここに用は無い」

 

「その通りだな」

 

 

そうして二人は少し強く足音を立てながら部屋を出ていく。ナーサリーはその後をひょこひょこと着いていった。

 

───

 

「この剣は太陽の映し身。かつ年貢を徴収するもの……」

 

「くうっ、受けます!!」

 

『Noble phantasm』

 

 

鮎川ガウェインと火花を散らしていたシールダーは、相手がジョーカーを切ったので仕方無く宝具を解き放った。

 

 

転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン!!)

 

人工宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)

 

 

炎が辺りを炙る。陽炎が辺りに揺らめく。

しかしシールダーが展開した盾はバグヴァイザーによって強化されていた為、本来は無かった、辺りに水を放散する機能がついていた。

 

 

   ジュワッ

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」

 

「……成程、やりますね。ですが、その宝具を加工するのは、私にして見れば、大変……」

 

 

辺りの気温が下がる。シールダーは相手の攻撃を防ぎきり、攻勢に転じようとする。

ガウェインの顔には、微妙に怒りも見てとれた。

 

 

『Buster brave chain』

 

「はあっ!!」

 

   ガキンッ

 

 

それと同時刻、二人のすぐ隣では。

 

 

「Arrrrrrrrthurrrrrrrrrrrr!!」

 

   ババババババババババババババババ

 

「おのれ、その凄い火縄は何じゃ!! わしも使いたい!!」パンッ パンッ

 

 

直江ランスロットもガウェインに合わせて宝具を解放する。それは機関銃の乱射であり、この場においては、魔人アーチャーの宝具の上位互換であった。

なんとかして弾の雨を躱す魔人アーチャーだが、このままだとじり貧である。しかも、彼女の敵は彼だけではない。

 

 

「切り刻む!!」

 

   スパッ

 

「くうっ……それアーチャーとしてどうなのじゃ!?」

 

 

山吉トリスタンの援護によって、魔人アーチャーのマントが切り裂かれた。

そう。彼女は、割りと絶体絶命な状況に陥っていた。

 

 

「おーい!! おき……桜セイバー!! まだ終わらんのか!!」

 

 

そう声をかける。そしてその桜セイバーはと言うと。

 

 

「風よ、舞い上がれ!!」

 

「くはぁっ……!!」

 

 

上杉アルトリアに吹き飛ばされていた。既に傷だらけである。何故そうなったか……

 

……口元を見ればよく分かる。彼女は既に、何度も吐血していた。

 

 

「まだ、まだ……コフッ!?」

 

「……決着を着けましょう。束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流……」

 

 

その姿がいたたまれなくなったのだろう、アルトリアが剣を構え直し、言葉を紡ぐ。宝具だ。

シールダーはガウェインに圧されながら不安に駆られる。出来れば彼女の盾になりたいが、今は無理なのだ。

 

ああ、誰かもう一人いてくれれば!!

 

 

 

 

 

「空腹なる竜は失墜し、世界は今飯時に至る」

 

「……この声は!?」

 

 

声が響いた。

シールダーは声のした方を……天を仰いだ。微妙にカルデアの匂いがする。

 

もしかしたら、誰か援軍が来たのだろうか、いや、そんな人……

 

 

「あっ」

 

 

シールダーは、ここに来て召喚途中で放置してしまったサーヴァントの存在を思い出した。

つまりこの声は、その放置していたサーヴァントの物なのだ。

 

シールダーは刮目する。空から降ってくる英雄を……!!

 

 

約束された(エクス)───」

 

「撃ち落とす!! 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

 

   ズシャッ

 

「──勝利のぉ(カリバ)ああああああああああ!?」

 

 

死角からの一閃が、上杉アルトリアを切り裂いた。背中に大きく線を書かれた彼女は、振り上げた聖剣を取り落とし倒れ込む。

 

 

「……すまない。不意討ちに走って本当にすまない」

 

「いやいや、不意討ち上等ですから。助けてくれてありがとうございます、あっ、私は桜セイバーです」

 

 

現れたのは白髪のイケメンだった。というか、黎斗をベビーカーで連れてきてくれた人だった。

桜セイバーが彼をフォローする横で、上杉アルトリアは空に溶けていく。

 

 

「くっ……この私が負けるとは……ご飯が足りなかったせいでしょう、か……?」

 

「ああっ!! 我が殿が死んだ!!」

 

 

彼女が死んで真っ先に叫んだのは、ほんの先程までシールダーと打ち合っていた鮎川ガウェイン。直ぐ様彼は飛び退き王の隣に正座すると、腹筋が目立つ腹を露にする。そして叫んだ。

 

 

「こうなっては最早ハラキリも避けられぬ!! 私は殿と共に誇り高くグプゥッ!?」

 

 

しかし、言い終わらない内に彼は蹴り飛ばされる。蹴り飛ばしたのは……直江ランスロット。

 

 

Aaaa!?(あ!?) turaaaaaaa!!(殿の仇も討たずにハラキリとか逃げだろ!!) Tatakawanaaaaaaaa!!(武士なら戦えよゴリラ!!)

 

「生き恥を晒せと言うのか!? あとゴリラって何だゴリラって!!」

 

 

何故か普通に会話した上で取っ組み合いを始める二人。

そして、直江ランスロットと共に魔人アーチャーと交戦していたはずの山吉トリスタンはと言うと。

 

 

「仲間アホ 殿はすぐ死ぬ マジ悲し 竪琴弾いても 幸運引けず」ポロロン

 

「うん、辞世の句擬きですね」

 

 

二人から一歩引いて、静かに弓を奏でていた。

見るに堪えないのか何なのか、桜セイバーがその刀を再び宝具の体勢で構え、そして。

 

 

「どうせなら纏めて倒しちゃいましょう。全体宝具、無限三段突き!!」

 

   スパスパスパッ

 

 

一瞬彼女の姿が消えたかと思うと、上杉家臣三体は粒子へと還っていった。

後には血に濡れた刀を腰に戻してピースし、何処と無く黎斗を彷彿とさせるどや顔をする桜セイバー。

 

 

「やったー、おきコフゥッ!?」

 

「無理するでない……」

 

 

そしてまた吐血する。既に貧血の症状が出ていた。

シールダーは変身を解き、ダ・ヴィンチに話しかけた。

 

 

「にしても、ダ・ヴィンチちゃん……サーヴァントの皆さん、多分おかしいと思うんですけど。それとも、本当に彼らはあんなにエキセントリックなんですか?」

 

「いや、流石に……いや、あり得るねマシュ」

 

 

考え込むダ・ヴィンチ。ここまでで得られた英霊のデータが少ないため、彼女としても彼ら彼女らが何者かによっておかしくさせられているのか、それとも元からこうなのかは度しがたい。

 

口元の血を拭きながら、不満げに桜セイバーは抗議した。

 

 

「いやいやいやいや、有り得ませんから。少なくとも私はまともです、ノッブはおかしいですけどねー」

 

「なんじゃと!? ……まあ、わしの敵、と思っていた武将の因子が加わっているようには思えるな」

 

「まーたあなたのせいですか……」

 

「その理屈だと日本の武将が皆エキセントリックだった事になるんですがそれは」

 

 

マシュは冷や汗をかきながら魔人アーチャーを見やる。何なんだろうコイツ。

 

そんな思考を断ち切って、カルデアから連絡が入った。

 

 

『大変だ、マシュ!! ジークフリート!! ダ・ヴィンチちゃん!! 今すぐその空間から離れろ!!』

 

「どうしたんですかドクター!?」

 

「何かあったのかい?」

 

『いや、なに、機械が直せたから寝る前にその辺りの構成を調べたんだけど……そこにはとある粒子が蔓延してると明らかになった』

 

「……」

 

「とある、粒子?」

 

『サーヴァントの霊核に感染し悪影響を及ぼす特殊かつ面白い粒子……ステータス弱体化、記憶の改竄、霊核の摩耗、そして……』

 

「そして……?」

 

『 残 念 に な る !! 』

 




直江、鮎川、山吉……上杉謙信の家臣

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