Fate/Game Master   作:初手降参

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私にも出番下さいよ先輩!?

 

 

 

『デンジャラスゾンビィ……!!』

 

「な……何なんですか、それ……?」

 

 

マシュは小さな声で呟いていた。先程までの、サーヴァントと相対したことによる震えは失せ、恐怖も、これといった感想すらもなく、彼女はひたすらに呆然としていた。

 

白と黒の体。赤と青のオッドアイ。ボディの節々からは瘴気を垂れ流し、その動きはまさしく生ける死体。

先程までの黎斗は、どこにも、面影もなかった。彼女自身そんなことがあるなど考えられなかったが、それ以外に説明のしようが無かった。

 

 

「仮面ライダーゲンム、ゾンビゲーマーレベルX(テン)……性能は、見れば分かるさ」

 

 

黎斗……いや、ゲンムはそうとだけ言って身構えた。拳を握り膝を少しだけ曲げたその立ち姿は、完全にライダーと殺り合うつもりであった。

ただ見ているだけにはいかない、せめて加勢はしなければと、マシュは思ったのだが……

 

 

「……では、いかせてもらおう」タッ

 

 

その前にゲンムは走り出していた。しかも速い。高速なんてものではない。

具体的には、ライダーとの距離は100m位はあったのに、4秒もかからずに彼は距離を詰めていた。当然、デミ・サーヴァントであるはずのマシュより速かった。

 

そして、ゲンムはライダーの眼前で大きく拳を振りかぶり。

 

 

   ズドンッ

 

「ガハッ……!?」

 

 

たった一発。

たった一発のパンチで、ライダーは糸が切れたように崩れ落ちた。彼女の霊基が大きく揺すぶられ、そのショックで短刀も取り落とす。カラン、と軽い音がした。

ライダーは、もはや立つどころか、もがくことも儘ならなくなっていた。

 

 

「コ……コノ力、ハ……?」

 

 

なぜだ。なぜこんなことが起こるのか……この人間の、人間だったもののどこにそんな力があったのか。

パンチの衝撃で思考回路まで掻き乱された彼女が考えてみたところで、その答えは分からない。

その姿を笑いながら、ゲンムはライダーに近づく。

 

 

「覚えておくがいいさぁ……ゲンムのパンチ力は24.1tだぁっ!! ……最もぉ、神話時代の生まれの君に、重さの単位を言ってもピンとこないと思うがねぇ……」

 

「グ……コンナ、トコロデ……!?」

 

「あはぁ……!! じゃあ……終わりだ」

 

 

何も分からない。何も分からないまま、ライダーは死告の電子音声を聞く。

 

 

   ポチッ

 

『クリティカル エンド!!』

 

「……闇に葬ってやる」

 

 

ゲンムは飛び上がり、空中で回転した後に飛び蹴りの姿勢をとった。黒い霧を発生させながらの抉るような一撃が、一片の容赦もなくライダーを襲う。

 

 

「はあああっ……!!」

 

   グシャッ

 

 

足がめり込む。痛い。意識が揺らぐ。痛い。体はズタズタに掻き乱されていく。痛い。さらには力が抜かれていくのも、全て、全てライダーは感じた。痛みが、苦しみが、諦めが彼女を飲み込む。

 

たった一瞬。ゲンムの足が触れただけで……ライダーは、堕ちた。

 

 

「ァ……アアアアアア!!」

 

   ドガァーンッ

 

 

……断末魔を残して炸裂したライダーの、その爆炎に照らされながら、ゲンムは非常に興奮していた。

これは……面白い。

 

 

『ダッシュゥー』

 

 

そして変身を解いた黎斗は、気持ち悪いほど晴れやかな顔を浮かべたまま空を見上げた。取り残されていたマシュとオルガマリーの二人が黎斗に詰め寄る。

 

 

「黎斗さん!! さっきのは何だったんですか黎斗さん!?」

 

「説明しなさい檀黎斗!! 檀黎斗!? 聞いてるのっ!?」

 

 

しかし黎斗は、そんな声を受けても焦りも戸惑いもしなかった。むしろ分かりきっていたのだろう、余裕の含み笑いを絶やさず、彼はマシュの口元に人差し指を当て黙らせる。

 

 

「シーッ……静かに」

 

「っぐ……」

 

「……はやくここから離れましょう。またサーヴァントが来るかもしれませんから」

 

 

いつの間にか、テンションは元に戻っていた。

 

───

 

……そして、暫くして。

 

 

「……ふう、ここまで来ればまあ安心でしょう」

 

 

黎斗達はかなり歩いて、先程の場所から離れた地下空洞にやって来ていた。

ここも他同様に寂れてはいたが、焼けてはいない。柳洞寺という看板が見えていたので、恐らく誰かが儀式にでも使っていたのだろうか。

 

 

「説明して貰うわよ檀黎斗!! さっきのあれは一体何なの!?」

 

「そうですよ!! あんなの……サーヴァントに勝つなんて……」

 

 

ここならそうサーヴァントも来るまい。そう考えた二人は、改めて黎斗に詰め寄る。しかし黎斗はまだ二人を焦らし、意味深な笑みを浮かべるのみ。

 

そして。

 

 

「早く説明して!! 所長と──」

 

   シュパァンッ

 

「ひえええっ!?」

 

 

突然、オルガマリーの足元に剣が突き立った……いや、撃ち込まれた。溢々と殺意が込められていた。予想もしていなかった出来事にオルガマリーは目を回し、意識を失う。

マシュは直ぐ様盾を構え、辺りの警戒を開始した。

 

 

「一体何が……」

 

「……答えなんて決まりきっているだろう? ……サーヴァントだ」

 

 

「……ここより先は立ち入り禁止だ。迷い込んだなら……いや、もう一般人などとうに消えていたか」

 

 

黎斗が目をやる先でそう静かに呟くのは、先程のライダーと同じ、ヒトガタの何か。

 

黎斗はその歯を好戦的にしいっと剥き、ガシャコンバクヴァイザーを腰に装着する。

 

 

『ガッチョーン』

 

「黎斗さん、あれは……?」

 

「……門番のようだなぁ……アーチャーかぁ……」

 

「……やはり、大聖杯を探しに来たか。ここで倒れてもらう……」

 

「大聖杯? 一体それは?」

 

 

聞きなれない単語に戸惑いを見せるマシュ。

だがそんなの黎斗は気にしない。もう戦いの火蓋は切られている。

 

 

「おそらくぅ……そこへ行けば、この異常も解決できるんだろう……?」

 

「ああ……かの聖剣の王が、大聖杯を守っている。そこへ行けば、目的も叶うだろうさ」

 

「ならば、いかせてもらおうか……!! 変身……!!」

 

『バグル アァップ』

 

『デンジャラス ゾンビィ……!!』

 

 

再び姿を変えるゲンム。アーチャーは彼を警戒し、その黒弓に更に矢を……いや、剣をつがえる。

 

 

「悪いが、私は君の言う通り門番だ。消えてもらう」

 

   シュパァンッ

 

「おっと……ほう、やはりアーチャー、弓を使うかぁ……」

 

「近接戦でのお前の相手は、何だか疲れそうだからな」

 

   シュパァンッ

 

   グサッ

 

「ぐっ……フフフ……!!」

 

 

非常に細い魔剣やら、固くなったレイピアやら、反りの無い日本刀やらが大地に突き刺さっていく。

ゲンムはそれらを躱しながら……時々その身に受けながら、されど怯まず、笑いながら相手の動きを見ていた。

 

 

   シュパァンッ

 

「……なぜだ? なぜ全く弱らない?」

 

 

流石のアーチャーも、全身に10もの剣の刺さった、それでも平気で笑える男に疑問を抱く。何かの能力なのだろうか、そんな思考を展開した。

そして、その間に、ゲンムは……

 

黒いガシャット(ギリギリチャンバラ)を取り出した。

 

 

「弓の撃ち合いを望むかぁ……!! ハハハハハハハハ!! いいだろう、合わせてやろうじゃないかぁ……!!」

 

『ガシャコン スパロー!!』

 

 

ゲンムがその手でガシャットの電源を入れると、その手元に黄色い弓(ガシャコンスパロー)が呼び出された。トリガーを引くだけで無限に矢を放つことができる優れものだ。

 

そしてゲンムはそれでアーチャーに狙いを定め、数発放つ。

 

 

   ズバッ ズバズバッ

 

「ふっ、猿真似などに負ける私ではな──」

 

   ズバッ

 

「ぐはぁっ!?」

 

 

アーチャーは素早くそれを回避したが、その回避した先にも矢が飛んできていた。

その手に矢を受け、顔を引きつらせるアーチャー。恐るべき精度。恐るべき威力。並の敵ではない……アーチャーは察する。だがそれは遅すぎた。

 

 

「私をぉ……甘く見ない方がいい……。私は既に、君の行動パターンを分析し終えている」

 

「何だと……!?」

 

 

ゲンムの宣言に目を剥くアーチャー。まさか、もう動きが見切られているだと? あり得ない、こんな早くに……

そんな困惑は、大きな隙となっていた。

 

 

「早いところ終わりにしようかぁ……」

 

『ガッシャット!!』

 

 

余裕ある動きでガシャコンスパローにギリギリチャンバラを装填するゲンム。

ワンテンポ遅れて、アーチャーもその弓にとっておきをつがえる。

 

 

I am the bone of my sword(我が骨子は捻れ狂う)

 

 

弓を引き絞る……その動作を行ったとき。

ピシリと、アーチャーに痛みが走った。

先程の一撃のせいで、剣を引く手がひび割れていた。これでは力なんて出せるわけがない。

 

 

「ぐうっ……!!」

 

 

だが、ここで力を抜いたら、それこそ完敗になってしまう。

せめて道連れに。アーチャーはその指に無理を聞かせ、強引に力を溜めた。

 

 

「……偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」

 

『ギリギリ クリティカル フィニッシュ!!』

 

 

双方から矢が放たれる。

片方は大気を巻き込むドリルのような一撃。

もう片方は、無限に分散して敵へと襲い掛かる雨のような一撃。

 

それらは干渉し合う事無く、互いの標的へと突き刺さる。

 

 

   シュパァンッ

 

   ズバッ

 

「はぁっ……はぁっ……くっ……!!」

 

   ドガァーンッ

 

 

そうして、アーチャーは倒された。その体は派手に吹き飛び、最早大聖杯への道を阻むものはいない。

 

 

「はあ、はあ……アーチャーめ……!!」

 

 

……その一方で、ゲンムの体には大きく抉り取られたような風穴が開いていた。当たり前だが、アーチャーの攻撃のせいである。

彼が最後に放った一撃は空気を巻き込んで威力を強め、ゲンムを確実に殺すことが出来ていた。このままなら一分も持つまい。

 

たまらずゲンムに駆け寄るマシュ。

 

 

「黎斗さん!? 黎斗さん!?」

 

「が……あがっ……」バタッ

 

 

倒れ伏すゲンム。

彼は……確実に死んでいた。

 

即死だった。

 

清々しいほどに、ゲンムの体は貫かれていた。

 

 

……問題は、()()()()()()()()()()ということである。

 

 

「ハーハハハハハハハハ!!」

 

 

倒れていた状態から突然高笑いをして起き上がるゲンム。空いていたはずの穴はいつの間にか消え、ゲンムは健康体そのものだった。

 

完全にマシュの理解を超えた出来事だった。口を開けたまま彼女は愕然とする。オルガマリーは未だに気絶していた。

 

 

「黎斗……さん……!?」

 

「見誤ったな……アーチャー……!! 私は……不滅だあああああああああああああああ!!」

 

 

高らかに勝ち誇るゲンム。その姿には、『最強』の二文字がよく似合う。

 

マシュは後ろから、ゲンムに声をかけた。

 

「あのっ!! ……私の、出番は……?」

 

「……今は君の出番ではない」

 

 

ゲンムに出番をほぼ奪われたので当然だが、ここまででマシュがやったことは、骸骨を殴り潰すだけであった。




テッテレテッテッテー(幻聴)

チート(原作準拠)。エグゼイド勢はオーバースペックも甚だしいよね

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