Fate/Game Master   作:初手降参

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本拠地への特攻、開始

 

 

 

 

「さて……漸く全員揃ったか」

 

 

既に日はある程度昇っていた。

黎斗はラーマとシータとジェロニモ、そしてジル・ド・レェとファントムと……更に増えた二人組と合流する。

 

 

「……で、何故お前達がいる」

 

 

その更に増えた二人組に向けて、黎斗はそう言った。

彼らは、黎斗にとっては先日倒したばかりのなるべく会いたくなかった存在で。

 

 

「仕方無かったのよ……襲われて怪我して身動きとれなかったのよ」

 

「うむ。仕方無かった」

 

「そんな感じだった彼女らを余が拾った。負傷していたようだったからな」

 

 

ブラヴァツキーとエジソン。先日戦闘した存在。黎斗は当然彼女らを警戒していた。

 

 

「そうか……何故負傷した?」

 

「……例のサーヴァント軍団にやられたのよ」

 

「……ほう。君達は、私達に本当に協力するのか?」

 

「ええ。……そうしなければ、私達のあの戦いは無かったことになる」

 

「成程」

 

 

しかし、ここでは戦力は多い方が良い。黎斗はそう判断し二人を迎え入れる。そして作戦を立て始めた。

 

 

「……さて。ジェロニモ、この特異点の根本を叩くにはどうすればいい?」

 

「……上の人。この特異点を形成した本人に辿り着く必要がある。そしてそこへ行くには魔法少女の落とす宝石が必要だ」

 

 

促され、ジェロニモがそう語る。黎斗は自分の持つ数少ない宝石……メディカル☆メディアのドロップした物と自分の契約する魔法少女達の物、合計して三つのそれを取り出した。

 

 

「現在の宝石は……私達の三つ、そしてお前達が……」

 

「……二十八だ。だがこれだけ使っても、全員が通れる穴を開けられるかどうか」

 

 

ラーマもそう言いながらコナハト☆メイヴ等から奪った宝石を黎斗に差し出す。黎斗はそれらを見て少し俯き、そして再び話を始めた。

 

 

「……なら戦術を変更しよう。全員で突入するのはやめだ」

 

「……?」

 

「二手に分ける。例の上の人とやらの所に襲撃をかければ、地上にいるそいつの配下のサーヴァントが戻ってくるだろう、それを足止めする部隊を設置する」

 

「……なるほど」

 

 

黎斗はそう言って、第二戦術の詳しい説明を開始する。

 

 

「私とナーサリーとネロ、ジル・ド・レェとファントム、ブラヴァツキーとエジソン、そしてジェロニモが宝石で穴を開けて潜入して、残りは地上でサーヴァントの足止め。特に複数のサーヴァントを召喚するタイプのサーヴァントは何としてでも食い止めろ」

 

「何故その面子なんだ?」

 

「……不愉快だが、ナーサリーとネロは私の契約している魔法少女だ」

 

「酷いのだわ!!」

 

「うむ、余は悲しい!!」

 

 

そう言いながら黎斗の隣に移動する二人。黎斗は次にジル・ド・レェとファントムを指差した。

 

 

「ジル・ド・レェとファントムは前にサーヴァントとして扱っていたから動かしやすい」

 

「おお我が主よ、お褒めに預かり恐悦……」

 

「クロスティーヌ、我が主、クロスティーヌ、我が同胞よ。共に戦えて、私は嬉しい……」

 

 

かつて黎斗のサーヴァントとして戦った二人も黎斗の近くに歩いていった。黎斗としても彼らは安心して扱える便利な戦力として捉えていたこともあって、彼らの存在は有り難いものだった。

 

 

「ブラヴァツキーとエジソンは裏切られる事を考慮すれば手元から離すのは些か不安がある」

 

「まあ、それは仕方無いわよね」

 

「うむ。私も不愉快だが、ここは彼についていこう」

 

 

第五特異点で対立したブラヴァツキーとエジソンが、いかにもしぶしぶと言った様子で黎斗に近づいていく。

実際二人は出来ることならアメリカだけでも救いたいとも思っていたが、こうなってしまってはカルデアに助力して人理を救ってもらうしかない、とも考えていた。

 

 

「そしてジェロニモは宝具での撹乱を行ってもらう。全体的に見れば大勢相手の戦闘は苦手なグループ、という事もあるな」

 

「なるほど……」

 

 

最後に、ジェロニモが黎斗の隣に寄る。

こうして、おとも三体、魔法少女三人、変態二人のチームが完成した。そして彼らは立ち上がり、全ての宝石を掲げて敵地への穴をこじ開ける。

 

 

「それじゃあ、行くか」

 

「そうだな……そっちも、足止めを頼むぞ」

 

 

見送られ、穴へと一歩足を踏み出す。振り返ってみれば、残されたカルデアのサーヴァント達は既に地上のサーヴァントとの戦いに備えていて。

 

そして、ミッションは開始される。

 

───

 

「ここは……城か?」

 

 

敵地へと舞い込んだ黎斗は、最初に見つけた日本風の城を見て絶句したように目を開けた。

何故日本風なのか、何があったんだ……そうは思うが、ここで考えていても仕方がない。

 

 

「……とにかく、探索を開始する。適当な入り口か、なければ侵入できそうな城壁を探すことにしよう」

 

 

黎斗はそう言って歩き始めた。

 

 

「随分と豪勢な御一行だな。宝石を見せてもらおう」

 

「……やはりお前は門番をやっているのか」

 

 

目の前に立ちはだかった赤い服の門番。黎斗は最初の特異点で出会ったアーチャーを思い出しそう言った。門番には当然心当たりは無く、不思議そうに首を傾げる。

 

 

「……やはり、とは何かは知らないが。……魔法少女二組、入ってよし」

 

「分かりました。行きましょうぞ我が主よ」

 

「……残念だが、ここより先は魔法少女とそのおともの間。部外者は帰って貰おうか」

 

 

門番は道を開けこそしたが、ジル・ド・レェとファントムの通行は認めないらしかった。黎斗は門番を睨み……一つ指示を出す。

 

 

「……やれ!!」

 

螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)!!」

 

 

その声一つで、触手が門番へと伸びた。それは縦横無尽に動き回り、敵の頭へと狙いを定めていて。

 

 

「甘い!! 赤原猟犬(フルンディング)!!」

 

 

しかし、打ち出された深紅の矢に、全ての触手は切り落とされた。

門番、真田エミ村は更に矢をつがえ、黎斗達に狙いをつける。

 

 

「……残念だったな。不意討ちは構わないが、私は門番なのでね……弓をとる大義名分が出来上がった。灰燼と帰すがいい!!」

 

「ファントム、宝具!! 暫く持たせろ!!」

 

地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ)!!」

 

 

黎斗は門番の言葉を聞くこともなく、ファントムに宝具の発動を指示した。

死体のパイプオルガンが形成され、怨嗟の声を放ち始める。否応にも、門番の意識はそれに注がれた。黎斗はそのタイミングでナーサリーを取り込み、オルガンの後ろにブラヴァツキーを連れ込んで。

 

 

「ちょっと、何するの!?」

 

「さて……特攻して貰おうか」

 

『爆走バイク!!』

 

「えっ!? えっ!?」

 

 

爆走バイクの電源を入れ……彼女の胸元に無理矢理突き刺した。

魔法導師マハトマ♀エレナの姿が書き換えられていく。彼女の魔法少女の時間は終わった。

 

 

「さあ……レースを始めよう」

 

「これは……?」

 

 

何故かスクール水着を着たブラヴァツキー。傍らにはホイール状の近未来的なバイクがあって。

黎斗はそれにブラヴァツキーとエジソンを無理矢理乗せ、自分も乗り込んだ。

 

 

「クロスティーヌ、宝具の限界はもう近い……」

 

「もう少し持たせろ!!」

 

 

パイプオルガンの向こうでは何本もの矢が飛び交っている。黎斗はブラヴァツキーにアクセルを踏ませ……

 

 

「……よし!! 宝具解除!! 発進せよ、金星神・白銀円環(サナト・クマラ・ホイール)!!」

 

 

彼らは一筋の光となった。

 

───

 

「……ハッ!! 姉上がピンチ!!」

 

「……どうした」

 

 

カルデアのサーヴァントを相手に交戦していた信勝が突然叫んだ。隣にいた土方が鬱陶しそうに彼に問う。

 

 

「何があった」

 

「ファースト・マスターの通信を傍受したところ、どうやら門番が敵性勢力に突破されたようです!! 一旦退きましょう!!」

 

「ノッブ!!」

 

「ノブノブ」

 

 

ちびノブを先に穴を通じてファースト・マスターの居城に送り込みながら信勝はそう言った。土方は少しだけ迷ったが、彼に背を向けて前方の敵へ目を向ける。

 

 

「俺達は退かない。斬れ、進め、俺達は新撰組だ」

 

「……そうですか。では、お先に失礼します!!」

 

「ノッブ!!」

 

「ノブァ!!」

 

 

信勝は説得はさくっと諦めて、ノッブUFOに引かれて空に未だ空いた穴に戻っていった。

 

───

 

「やられた!! ちびノブを出すサーヴァントが逃げていったぞ!!」

 

追想せし無双弓(ハラダヌ・ジャナカ)!! ……駄目です、避けられました!!」

 

「……せめて羽織の軍団の主は逃がさないようにするぞ」

 

 

地上部隊は、既にかなりのサーヴァントを葬っていたが、それ故に疲弊もしていた。

特にイリヤの疲れが顕著だった。彼女は転身が不可能な為、黎斗に渡されたガシャコンマグナムを扱っていたが、しかしそれは小学五年生が安定して使えるほど優しい設計にはなっていなかったからだ。

 

 

「うっ……」

 

「……大丈夫かイリヤスフィール」

 

 

変身したアヴェンジャーがイリヤを庇いながら戦闘する。下手に放置しておけば羽織の軍団がいつ人質に取るかもしくは殺すか分かったものでは無い。

 

 

「くっ……こいつら、何人いるのよ……!!」

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!! ……本当にキリがないな」

 

 

エリザベートとジークフリートも、尽きぬ軍団に疲れを露にする。

それでも、とエリザベートがフォークを振り上げた、その時だった。

 

 

「一歩音越え、二歩無間……三歩絶刀!!」

 

「っ!! エリザベート、伏せろ!!」

 

「えっ!?」

 

無明三段突き(むみょうさんだんづき)!!」

 

───

 

黎斗達は廊下を全力で走っていた。

 

 

「もっとアクセルを踏め!! 敵は撥ね飛ばして構わない!!」

 

「分かったわ!!」

 

「待て、それでは壁にぶつからないのか!?」

 

「自動で操縦の補助は行われるようにしてある!! ついでに言えばこのバイクは交流だ!!」

 

「貴様ァッ!?」

 

 

黎斗はブラヴァツキーに運転の指示を飛ばし。

 

 

「ひぃ、ひぃ……!?」チャリンチャリン

 

 

ネロは一人スポーツゲーマを駆り。

 

 

「しっかり捕まっておけ!!」

 

「あの、私、咥えられているのですがっ!!」

 

 

ジェロニモはコヨーテにジル・ド・レェを咥えさせ、ファントムと共にコヨーテの背に乗って駆けていた。

 

───

 

「……そうですか、はい」

 

 

そしてファースト・マスターは、スポンサーの遠見の魔術によって、侵入者の動向を確認していた。

彼らは、三人が謎のバイク、一人が自転車、三人がコヨーテを利用して城をひたすらに駆け抜けている。遠くない内にこの部屋まで来るだろう。

 

 

「何とかしないといけませんね……サーヴァントは今から呼び戻しますが、恐らく暫くは私一人で……」

 

 

「ファースト・マスター!!」

 

「……信勝ですか」

 

 

信勝がノッブUFOを利用してファースト・マスターの隣に舞い降りた。

 

 

「……どうしてここに?」

 

「姉上が危ないようだったので」

 

「……もしかして、盗聴、していたんですか?」

 

「勿論」

 

「……」

 

 

信勝はそう言いながら日本刀を引き抜き、やって来るであろう敵に備えて風を纏う。

 

 

「……貴女が姉上の安全を確約すると言うのなら、僕は何をしてでも姉上を守るために貴女に協力して見せましょう」

 

「……そうですか」

 

 

ファースト・マスターもそう言って両手に白黒の夫婦剣を呼び出す。

確実に足音は近づいていた。

 

───

 

「さーて、レコーディングの準備は整った!! 演奏開始じゃあ!!」

 

 

……信長はと言えば、例の城の壁の薄いところにて、三人で合奏を開始しようとしていた。

 

 

「……破壊は出来ないと結論付けられただろう?」

 

「うむ、『破壊』は出来ぬな」

 

「じゃあ、どうして……」

 

「……わしらが行うのは破壊ではない。『合奏』じゃ。この固い壁に向かって『合奏』で振動を流し込み、その末に壊れたとしても、それは『合奏』の結果であってわしらが行ったのは破壊ではない……という訳じゃ」

 

 

これぞ正しくうつけ殺法!! と言いながら壁に勢いよくギターを突き刺す信長。オルタは納得行かない顔をしながらスティックで壁を叩き始め、リリィは丁度良いきょりを探しながらトランペットを吹き始める。

 

 

「それでは!! ミュージックスタート、じゃあ!!」


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