Fate/Game Master   作:初手降参

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Mighty Action NEXT

 

 

 

 

「……運転は覚えましたか、ランスロット?」

 

「ええ。覚えた……もう大丈夫だ。明日は早い、君は休め」

 

「いえ……もう少し、起きています。一人にしたら何をされるか、やっぱり心配ですので」

 

「……これは手厳しい」

 

 

オーニソプターは真夜中の砂漠を進んでいた。当然、オジマンディアスを仲間に引き入れる為だ。

呪腕と静謐のハサンは山の民との連絡に向かった為、ここにはランスロットを含めて九人のサーヴァントが存在していた。

 

そして現在、運転席にはマシュとランスロットがいる。非常に気まずそうなランスロットと飄々としているマシュは、その会話も端的で。

 

 

「……君を何て呼べばいいんだろうな、私は。さっきはマシュ殿って言ったが、個人的にはやはり違和感がある」

 

「私の名前なら好きに呼べばいいじゃないですか」

 

「……そうか」

 

「……ギャラ──」

 

「マシュ・キリエライトです」

 

 

ランスロットの顔は複雑そうだった。隣にいるマシュ(息子)の事が頭にもやのようにひっかかって離れないのだ。マシュ本人は、ランスロットとの繋がりを全力で否定していたが。

 

 

「君は、霊基(ギャラハッド)のことを何か覚えているか?」

 

「全く。ときどき貴方に、何故かワンランク酷い言葉を投げ掛けますが、それだけです」

 

「……すまない。変なことを聞いてしまった」

 

 

しかし隣の彼女に言葉を聞いてみても拒絶されるばかりで。そうしてランスロットは、己の生涯を改めて恥じた。

 

───

 

 

 

 

太陽が登る頃には、マシュ達は神殿に入っていた。外ではランスロットと、彼に後から合流した騎馬部隊がスフィンクス軍団を押し止めている。

 

 

「よくぞこの大神殿を訪れました、マシュ。まず、約束を違えなかったことは称賛に価します」

 

「ニトクリスか……!!」

 

「しかしそれは試練と同じ。貴方たちは力を示す必要があります。ファラオ・オジマンディアスに力なきものの声を届けさせる訳にはいきませんから」

 

 

そしてマシュ達を阻みそう宣言するのはニトクリス。彼女はその杖をマシュ達に向け威嚇し、何時でも戦闘に入れるように体勢を整えた。

……しかし、彼女の元にいの一番に飛び込んできたのはマシュでも誰でもなく……神殿の外から駆け込んできた、スフィンクスの番だった男達の内の一人で。

 

 

「ニトクリス様!! ニトクリス様!!」

 

「どうかしましたか!?」

 

「それが、その……」ゴニョゴニョ

 

「……何ですって!?」

 

 

その男は冷や汗を滝のように流しながらニトクリスに何かを報告する。そしてそれを聞いたニトクリスもまた、冷や汗を流し始めた。

 

 

「うぅ、あぁ、うぅ……もう!! どうしてこんな時に……!!」

 

 

彼女は踞って頭を抱える。その様は目の前の侵入者を忘れているのではないかと思わせる程で。

 

 

「……何があったんですか?」

 

「……円卓の騎士です。円卓の騎士の軍勢が、神殿の死角から特攻をしかけてきて、神殿を破壊している、と連絡がきました……!!」

 

「なっ……!?」

 

 

思わず質問したマシュにニトクリスが答える。そしてマシュ達もその言葉を聞いて顔を見合わせた。

現在残っている敵の円卓の騎士といえば、アグラヴェインしかいない。

 

 

「ど、どうすれば……いや……わ、私は円卓の騎士を止めに向かわなければなりません!!」

 

「ならば、私も行きましょう。円卓の不始末は円卓が片付ける」

 

「ああ……俺も、ついていく」

 

「い、いや……ええと、取りあえずここで待ってて下さい!!」

 

 

そう言い残して神殿を出ていこうとするニトクリス。

……待っていろと言われても、といった様子で困惑する一堂は、何とも言えない顔をしていて。

 

 

「……待て、ニトクリス」

 

「えっ……オジマンディアス様!?」

 

「彼らも連れて行けニトクリス。ただし、幾らかは残っていけ。そしてついてこい……話を聞こう」

 

 

そこに自ら現れたオジマンディアスが、手早くニトクリスに指示を出し、そしてその場に残ったマシュ、ネロ、晴人、エリザベートらを連れて玉座へと向かっていく。

残りの面子はニトクリスと共に外に飛び出していった。予期せぬトラブルで集団が二分された為、実力に訴えるには心もとないメンバーと言える。

しかし、それを無視してオジマンディアスは玉座に座り、マシュに質問した。

 

 

「……して、何用だ異邦のサーヴァントよ。まさか世界を見聞して牙を抜かれた訳ではあるまい?」

 

「言ったはずです。私達と共に聖都と戦って下さい」

 

「……なんと、あの戯れ言は本気であったか!! はは、はははははははは!! あんなもの腹を抱えて笑った挙げ句焼き捨てたわ!! ……しかし」

 

「しかし?」

 

「よもや本当に騎士がまた攻めてくるとはな。相互不干渉はどこにいったのやら」

 

 

一頻り笑ってから嘆息するオジマンディアス。少しだけ聖都に失望の色を覗かせていて。そして彼はこう切り出す。

 

 

「……察しているかは知らないが、余には民を守る方法がある。この神殿に民を入れれば、それは人理焼却の炎にも耐える盾となる。……それでも、わざわざ獅子王と戦う意味が余にあるか?」

 

 

問いかけるファラオ。その目は試すようで、マシュの奥底まで見抜こうとしているようで……しかし諦めたのか、少しだけ目をそらした。

そしてそれを皮切りに、マシュは早口で捲し立てる。

 

 

「当然あるでしょう。人々の幸せは、当たり前の日々を生きることです。例え苦しくとも日々の生活に感謝し、喜ぶときには好きに笑い悲しいときには遠慮なく泣いて。正しいもの正しくないもの全てに、自由な未来が約束されていて、初めて人は幸せを得られるんです」

 

「ああ……強制的に人々をここに閉じ込めるなんて、それは生きていても死んでいるのと同じだ」

 

「人間には職業の自由も学問の自由も引っ越しの自由も結婚の自由も信仰の自由も全て全て認められているべきなのです、善も悪も保証されていなければ、人は幸せにはなれないのです!! ……王なら民のあらゆる自由を保証すべきではないのですか?引きこもるならファラオなんて名乗らなければいいんではないんですか? いえ……諦めるなら王なんて辞めてください、この、先輩(黎斗)擬き!!」

 

 

失礼な言葉を連呼し、あろうことか彼女の中での最大の罵倒(黎斗呼ばわり)まで使った上で、盾を構えて玉座への階段に足までかけるマシュ。

そんな彼女をオジマンディアスは視線で制止し、ゆっくりと、しかし力強く口を開いた。

 

 

「余を獣と同類と呼ぶか、愚か者め!! どうやらとち狂ったようだな貴様も!! そもそも、余が守るのは神々の法!! その結果臣民を庇護しているに過ぎん!!」

 

 

青筋を立てていた。知らず知らずのうちに震える拳を握りしめながら、彼は一段一段マシュ達の元に降りていく。

 

 

「……だが。お前達の言葉は間違っていない。その考えは、余の思惑の外にあった」

 

「だったら……!!」

 

「だが忘れるな!! お前達はまだその力を証明していない!! 余の助力を望むなら……さあ、余に力を示してみよ!! 貴様らが世界を救うに足るものか否か、その証明を今こそ成し遂げてみよ!!」

 

 

そう怒鳴り、彼は胸元から聖杯を取り出して己の血を注ぐ。その上で彼は己の血を飲み干し、金色の眼をマシュに向けた。

 

 

「聖杯……!!」

 

「聖杯に宿りし魔神の陰よ、魔神アモンなる偽の神、是に、正しき名を与える!!」

 

 

その体は瞬時に変貌していく。肉は隆起し目は大きくなり胴体は捻れる柱となって。

 

 

「七十二柱の魔神が一柱、魔神アモン……いや、違う。我が神殿にて祀る正しき神が一柱!! 其の名、大神アモン・ラーである!!」

 

───

 

「邪魔をするな、ベディヴィエール!!」

 

「貴方こそ止まるべきだ、アグラヴェイン!!」

 

 

互いに剣を抜き斬りあうのは円卓の騎士。スフィンクスとアグラヴェインの騎士とランスロットの騎士が入り乱れる結果になった戦場の中で、彼らの戦いが最も激しく。

 

 

「何をするつもりですか!! ここの民は聖都に危害を加えていない!!」

 

「我々は聖杯を望むのだよ!! 神殿を破壊すればオジマンディアスの宝具は意味を成さなくなる、そうすれば聖杯を奪える、その上で……その上で、我々はお前達を完封できる、絶対の成功を王に献上できるのだ!!」

 

 

 

「宝具は止めてください姉上!! 死んでしまいます!!」

 

「ええい止めるな信勝!! ここで騎士を食い止めなければエジプトの民を守れぬじゃろう!?」

 

 

そして反対側の戦線では、宝具を解き放とうとする信長を信勝が引き留めていた。

単独行動スキルだけで動いている信長は、一発宝具を撃てばそれだけで消滅してしまう。それが信勝には悲しくて。

 

 

「よいか信勝、わしらはもう死んだ身、ならば生者を守るは道理じゃろう!?」

 

「……それでも、もう誰かが死ぬのは悲しすぎます。しかもそれが姉上だったら……!!」

 

───

 

神殿内部でも、混線状態になっていた。戦況はアモン・ラーを取り囲んだマシュとネロ、少し離れてつついていくエリザベート、そして遠くから援護する晴人、といった所だ。

 

 

「はあっ!!」ガンッ

 

「これでどうだ!!」ザンッ

 

「温い!!」

 

 

マシュとネロが己の得物でアモン・ラーを切りつける。確実にそれは魔神柱を切り裂くが、ノータイムで回復されて。

 

 

『ガルーダ プリーズ!!』

 

『ユニコーン プリーズ!!』

 

『クラーケン プリーズ!!』

 

「「「キエー!!」」」

 

「羽虫にも劣る!!」

 

 

エリザベートの魔力を回復させる必要がある以上変身が出来ない晴人がプラモンスター三体を呼び出し、合体させて突撃させるも容易く打ち落とされる。

 

 

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)……やっぱり出来ない……!!」

 

 

そして厄介なことに、この神殿内部ではサーヴァントは宝具を使うことが出来ない。サーヴァントではないネロは使うことが出来るが、この神殿の内部に劇場を召喚することは困難を極めるのでどちらにせよ宝具は使えないようなものだった。

 

 

「メェェリアァァン!!」

 

   ズドンズドンズドン

 

「くっ……!!」

 

 

そしてマシュは吹き飛ばされた。先程は啖呵を切ったが、デミ・サーヴァントの彼女には神はあまりにも強大すぎた。

彼女の上空で魔力が練り上げられる。マシュは思わず盾を上に向けて踞り……

 

 

 

 

 

「……随分と楽しそうじゃないか、マシュ・キリエライトォ……ゲームマスターの私を差し置いて!!」

 

「えっ……黎斗、さん?」

 

「ん……余の、幻覚か?」

 

 

その体制のまま、思わずマシュは振り向いた。

 

いるはずのない者の声が聞こえる。だって、その声の主はもう殺された筈だったから。

しかし見てみれば、その声の主は確かにそこに立っていて。

 

 

「私も混ぜて貰おう……」

 

『マイティ アクション NEXT!!』

 

『ガッシャット!!』

 

 

彼が取り出したのは見覚えのない黒と金のガシャット。そしてそれらを、かつてマシュ自身を叩きのめしたゲーマドライバーに装填した彼は、愉しそうにレバーを展開した。

 

 

「グレードN、変身」

 

『ガッチャーン!! レベルセッティング!!』

 

『マイティジャンプ!! マイティキック!! マーイティーアクショーン!! NEXT!!』

 

 

……その男は、檀黎斗は、かつてプロトマイティアクションXで変身していたときと殆ど同じ……いや、紫色が塗り替えられ、黒地に金色のラインが入った姿に変身した。

オジマンディアスの方も興味深げにゲンムを見つめている。ゲンムは彼と無理矢理目を合わせながら、ガシャットについていたギアを回した。

 

 

「グレードN、代入」

 

   ガコンッ

 

『N=Ⅰ!!』

 

 

重めの音が響くと同時に、ゲンムの周囲に白い装甲が呼び出されて彼に装着される。その姿はかつてマシュを叩きのめしたそれと酷似していて。

 

 

「さあ、行くぞ」

 

「来るが良い……精々、余を楽しませよ!!」

 

 

そしてゲンムは駆け出した。アモン・ラーの発生させる攻撃の全てを物ともせずに接近した彼は、次の瞬間には短い足で魔神柱の重心を捉える。

 

 

   ゲシッ

 

「かはあっ……!! 良いぞ、多少はやるか」

 

「多少? ……自分の体を良く見てみろ」

 

 

多少よろけながら笑うオジマンディアスに、ゲンムはそう指摘した。

少しだけ不思議そうなオジマンディアス。彼は己の手足を見つめ……

 

 

「……何時もと変わらぬファラオの玉体だが、何か──何だと!?」

 

 

そう。手足。

先程まで魔神柱アモン、いやアモン・ラーだったはずの彼には手足などあるはずが無いのに。

 

慌ててオジマンディアスが顔を上げれば、そこには中心に穴を開けて不自然な挙動を行うアモン・ラー。そしてそれに立ち向かうマシュやネロやエリザベート。

オジマンディアスは理解した。ゲンムは、己とアモン・ラーを引き剥がしたのだ、と。

 

 

「レベル1とは分離の力、あるべき姿に戻す力!! 故に!!」

 

「な……アモン・ラーと引き剥がされた、のか……!!」

 

 

流石に動揺するオジマンディアス。直ぐ様彼は杖を呼び出してゲンムに構える。

しかしゲンムは動くことなく、更にガシャットのギアを切り替えた。

 

 

「グレードN、代入」

 

   ガコンッ

 

『N=0!!』

 

 

その音と共に、装甲はパージされる。吹き飛ばされた白いパーツを全て叩き落としたオジマンディアス、その向こうに再び最初の姿に戻ったゲンムを見た。

 

そして彼は飛び上がり、ゲンムに杖を降り下ろす。対するゲンムもガシャコンブレイカーを剣にして構え、それを受け止めた。

 

───

 

一閃せよ、銀色の腕(デッドエンド・アガートラム)!!」

 

「鉄の戒め!!」

 

 

迫り来る鎖を両断するベディヴィエール。彼はそのままアグラヴェインに接近するが、しかし痛い一撃を与えることは叶わない。

 

 

   ミシッ

 

「ぐぁっ……!!」

 

 

彼の体はかなり限界に近づいていた。元より彼の体は布切れのようなものだったが、今この場において、彼は一歩歩くごとに顔をしかめていて。

 

 

「終わりだベディヴィエール、眠れ!!」

 

 

その隙は到底見逃される物ではなく。

 

 

   ザンッ

 

───

 

   カキンカキン カキンカキンカキン 

 

「……さて、オジマンディアス。君はそろそろ、体に違和感を覚えている筈だ」

 

「どういう事だ?」

 

 

互いに武器を振り回すゲンムとオジマンディアス。暫く続いた戦闘の間は戦況は互角だったが、徐々にオジマンディアスが押され始めていた。

……オジマンディアスの方のパワーが落ちはじめているのだ。

 

 

「余に何をした、獣!!」

 

「それもまた簡単な話。レベル0とは無の力、触れているだけ相手のあらゆるレベルを奪う!!」

 

 

そして知らされた衝撃の能力。レベル0の力はレベルドレインだったのだ。

それによって本来の力の半分ほどしか出せなくなってしまったオジマンディアスは、一つ舌打ちをして飛び退き、その背後に船を呼び出す。

 

 

「くっ……ならば触れなければ良い!! 闇夜の太陽船(メセケテット)!!」

 

   ズドン ズドン ズドン

 

「まだまだだ……代入!!」

 

   ガコンッ

 

『N=Ⅲ!!』

 

 

そしてその船から光線を発射するオジマンディアスに笑いながら、ゲンムはギアを操作した。

今度の数字は3。その意味は、勝手に浮かび上がった黒いガシャットが告げていて。

 

 

『ジェット コンバット!!』

 

「レベル3とは発展の力。追加された能力を大幅に強化する」

 

『ガッチャーン!! レベルアップ!!』

 

『マーイティーアクショーン NEXT!!』

 

『ぶっ飛び ジェット トゥ ザ スカイ!! フライ!! ハイ!! スカイ!! ジェットコーンバーット!!』

 

 

そうしてゲンムは、コンバットアクションゲーマーに進化した。しかし体についたコンバットゲーマには金色のラインが入っていて。

そして彼は高速で飛び回り、メセケテットの死角から何発もマシンガンを操作した。

 

 

   ダダダダダダダダ

 

「っ……ファラオの玉体に傷を……!!」

 

「そうか、それは結構だ。……さて、君にこのガシャットの真髄を見せてあげよう」

 

 

その上で、だめ押しと言わんばかりにゲンムはギアを回転させる。……その体の金のラインが、一瞬輝きを増したように見えた。

 

 

   ガコンッガコンッ カンッ

 

『N=∞!! 無敵モード!!』

 

 

刹那黄金に輝くゲンム。彼は集中砲火を浴びながらもびくともせずにメセケテットを蹴り破り、オジマンディアスに銃口を突きつける。

 

 

   ジャキッ

 

「何……だと……!!」

 

「……勝負あったな、太陽王」

 

 

その間は、僅か五秒だった。

 




X(未知数)の上位互換はN(任意の数)だと思ってる

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