リクエストされたら番外編として加えられるか考えるので、思い付いたら気軽にメッセージください
「……キリがついたな。ナーサリー、暫く席を外す。待っていろ」
マシュと戦った次の日。レイシフトの予定もなく、他にすることも無かったので黎斗の作業に付き合っていたナーサリーは、一人パソコンの前に残されることになった。
目の前には緋色のガシャット……そろそろ完成するらしい。隣には空っぽのガシャットがもう一つある。同じシリーズなのだろうか。
「……ふぁー……暇ねぇ」
……彼女は一つ欠伸をした。こんなときには手慰みにマスターへ紅茶でも入れてみようかとも思うが、生憎そのための道具はロマンに貸し出している。
つまり、彼女はここに来てもすることが無かった。
いや。することが無いというか、することを自粛していた。
彼女自身にはやりたいことがあったのだ。
……黎斗のパソコンのガサ入れである。
「……ちょっとだけ。ちょっとだけなら、良いわよね……?」
ナーサリーは知っている。男は
しかし黎斗の下には埃一つ無かった。棚の隙間、机の裏、どこを見ても見つからない。
……いや、黎斗に
だからこそ、この機会にパソコンを弄っているのだ。
「ちょっとなら許してくれる……許してくれるわ……?」カチカチ
キーボードを叩けば文字が踊る。マウスを動かしてみればカーソルはぐるぐると回転し、秘密のファイルをこじ開ける。
数秒待たされてからファイルが開き、大画面に黎斗の顔のアップが表示された。
『パスワードを入力しろぉっ!!』
「はいはい9610」カチカチ
『アハァ……正解だぁ……』
その声と共に黎斗の顔が遠ざかる。ナーサリーはこの時間を非常に焦れったく思っていた。マウスカーソルが再び回り……そして、画面に土管が写される。
テッテレテッテッテー!!
『もう一つ入力だぁっ!! ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!』
「分かってるわよ……9610っ……と」カチカチ
『フフ……君は水晶のような人だ……君ほど騙しやすい人はいない!! ブァーハハハハ!! ハーハハハハ!!』
「えっ、違うの!?」
惰性で考えもせずに打ち込んだ9610がパスワードでは無かったことに驚愕するナーサリー。まさか、まさか黎斗にそんな工夫をすることがあるなんて。そう思いながら彼女は首を捻る。
「じゃあ……0169?」
『正解だぁ……!!』
……しかしあっさり開いた。恐る恐る試しに打ち込んでみたら開いた。考える時間すらあまりいらなかった。
今度はもう土管は出てこない。ファイルは無抵抗に表示される。チカチカ光る画面に、檀黎斗の大事なデータが写し出された。
「ふふー、何があるのかしら……?」
───
檀黎斗のガシャットデータファイル
マイティアクションNEXT
……仮面ライダーゲンムの最新の変身用ガシャットとして試しに製作したガシャット。基本はマイティオリジンと同型だが、対サーヴァント用の調整や強化が施してある。
ガシャットのサイズは通常と同じだが、右側に少し競りだしたギアを弄ることでレベルの代入が可能。ただし、左側のスロットに入れたら右のスロットにガシャットを入れることが出来なくなってしまう。また、レベルの代入をせずにガシャットの二本差しを行うとバグが発生する。要改善。
レベルN
身長:205cm
体重:97kg
パンチ力:20t
キック力:31t
ジャンプ力:ひと跳び50m
走力:100mを3秒
……何も代入していない状態。所謂、基本フォームにあたる。この状態だと普通のサーヴァントとは渡り合えても、最高級のサーヴァント相手だと手間取ると思われる。
その対応として、ギアを変更してNにレベルを代入することでフォームチェンジが可能。
レベル0
身長:205cm
体重:115.5kg
パンチ力:48t
キック力:51t
ジャンプ力:ひと跳び96.1m
走力:100mを0.961秒
……レベル0は無の力を持つ。武器が触れ合っているだけでの相手の戦闘力(機動力、攻撃力、防御力、思考速度、反射速度)を奪っていくことが出来る。
上記の特殊能力の代わりに、攻撃力は低め。要改善。現状は、頃合いを見てレベルを変更することが望ましい。
レベルⅠ
身長:181cm
体重:137kg
パンチ力:15t
キック力:29t
ジャンプ力:ひと跳び40m
走力:100mを5.2秒
……レベルⅠは分離の力を持つ。第六特異点でオジマンディアスをアモン・ラーから切り離したように、サーヴァントと混ざった異物も一撃で分離させる。
図体が大きくなり機動力、戦闘力が格段に落ちている。代わりに防御力は少し上がったがあまり過信は出来ない。レベルⅠの役目が終わり次第レベルの変更が望ましい。
レベルⅡ
身長:205cm
体重:115.5kg
パンチ力:86t
キック力:96.1t
ジャンプ力:ひと跳び88m
走力:100mを1.6秒
……レベルⅡは基本の力を持つ。体のバランスが最も取れている状態であり、装備なしの殴り合いなら他よりも一段上を行くことが可能。
しかし、レベルⅩもあるため恐らく出番はあまり無い。場合によってはこのデータは消去し、別のシステムを組み込むことも視野に入れるべきか? 要検討。
レベルⅢ
身長:205cm
体重:115.5kg
パンチ力:86t
キック力:96.1t
ジャンプ力:ひと跳び88m
走力:100mを1.6秒
……レベルⅢは発展の力を持つ。攻撃力も防御力も機動力も、基本的にはレベルⅡと変わらないが、マイティアクションNEXTが追加で纏ったゲーマを進化させるため、結果的に大きくパワーアップしている。
マシュ・キリエライトを相手する場合はこの携帯が最も扱いやすいか。要検討。
レベルⅤ
身長:205cm
体重:115.5kg
パンチ力:96t
キック力:98t
ジャンプ力:ひと跳び98m
走力:100mを0.961秒
……レベルⅤは暴走の力を持つ。プロトドラゴナイトハンターZを使用し、飛行能力や炎を吐くことが可能。容量に余裕があれば協力プレイ機能も加えたかったが断念した。
場合によってはレベルⅩすら凌ぐパワーを発揮することもあるが、時折操作系統にバグが起こることがある。要改善。
レベルⅩ
身長:205cm
体重:115.5kg
パンチ力:96.1t
キック力:96.1t
ジャンプ力:ひと跳び96.1m
走力:100mを0.961秒
……デンジャラスゾンビを使用した姿。防御面で無敵になり、ライフの減少という現象が起こらなくなる。理論としては、ゲームオーバー時の一時的な無敵を永遠に引き伸ばしている。
この防御を打ち破れるのはマシュ・キリエライト、そして恐らく山の翁とビースト位だろう。今後どう展開するかは要検討。場合によってはそのままか? これ以上の機能を望む場合は、容量に空きを作るために何かを切り捨てなければならない。
レベル∞ (無敵モード)
……理論上相手の攻撃のダメージを無限に減少させていき、己の攻撃のダメージを無限に増加させていくため、強さに上限はない。恐らく宝具でも傷は負わない。ただし容量の都合上5秒しか持たない。マシュ・キリエライトがこの能力に対抗手段を得るかは不明。得た場合は対策を急務とする。
一度の変身につき一度しか使えない、使うと性能が少し落ちる、使う度にガシャットを調整しなければならない、等の欠点もある。要改善。
正直やり過ぎたと思っている。この状況ならまだしも、ゲームバランスの崩壊はゲームにとってはあまり良くない。今後に応用が効くように、要改善。
ブリテンウォーリアーズ
……マシュ・キリエライト用に、ブリテンの英霊を自動で回収するように調整したガシャット。ナイツゲーマーとキャノンゲーマーの二面が存在する。収容する英霊の数、そして彼らが使い手に協力するかどうかで変身時の強さに変動あり。
ガシャットに自由意思が生まれてしまった失敗例。このせいで、マシュ以外はこのガシャットを使えない。
A面 Millions of cannon
レベル50
身長 160cm
体重 56㎏
パンチ力 未設定
キック力 56t
100メートル走 2秒 (車輪使用時)
……両腕、両肩に大砲を装備し、足元の車輪や全身から吹き出す蒸気で移動することが出来る。早い話が動く砲台。大人数を相手取る乱戦に強いように設定した。
中のサーヴァントの影響か、腰に矢やピストルもあるが、手が大砲であるため持つことが出来ない。要改善。
B面 Knight among knights
レベル50
身長 160cm
体重 51㎏
パンチ力 43t
キック力 58t
100メートル走 4秒
……ガシャコンカリバーを得物とする、肩のマントや腰のナイフが特徴的な姿。こちらはA面に対して、一対一での少人数の戦闘で強いようにしてある。
ガシャコンカリバーを介して宝具の使用が可能。元々ガシャコンカリバーの存在は予定していなかったため、ガシャット内のサーヴァントがガシャットに介入したと思われる。
レベル100
身長:166cm
体重:58kg
パンチ力:96.1t
キック力:96.1t
ジャンプ力:ひと跳び96.1m
走力:100mを0.961秒 (車輪使用時)
……ブリテンウォーリアーズをギアを回さずにバグヴァイザーL・D・Vに装填して変身した姿。両面のゲームの特性を併せ持つ。ガシャコンカリバーを介してガシャット内の英霊の全宝具が恐らく使用可能。
サーヴァントが影響しているのだろう、ゲンムのスペックに追い付いてきている。しかしそれらも常に捨て身で戦うからこそという危ういバランスの上に成り立っているため、実際の戦力としてはもう少し下げた性能で戦うと思われる。
コンティニューが可能。また、自分を倒した相手への強みを復活する度に得て限界すると思われる。
ガシャコンバグヴァイザーL・D・V
身長 不定
体重 不定
パンチ力 20t
キック力 20t
100メートル走 6秒
※使用者による変動あり
……レオナルド・ダ・ヴィンチが勝手に製造したバグヴァイザーの改造版。ガシャットの二本差しや、三色のボタンによる多彩な攻撃が可能。ほぼ全てのサーヴァントが扱えるという汎用性もある。
ただしラーマとシータが使えない。ダブルドライバーのデータを使って新作を作ってみるのはどうだろうか。要検討。
現在の新作候補
ニンニン忍者(仮)
……ずっと前にアイデアと設計プログラムだけ書いて封印していた物を取り出してみる案。特殊機能として分──
───
「……ふむふむ」カチカチ
「……何をしている、ナーサリー・ライムゥ……」
「きゃあっ!? ま、マスター!! べ、べべ別に私は何も……」
画面に夢中になっていたナーサリーが気配に気づいて振り向いた時には、黎斗が距離僅か1cmのところまで顔を近づけてきていた。慌てたナーサリーは椅子から転げ落ち、頭を机の角にぶつけて呻く。
ゴチン
「うぅ……」
「無粋な真似は止めた方がいい。いや、君のキャラクターには価値があるが、それはそれとして神のデータを覗くのはネタバレになるぞ?」
「……はーい」
黎斗はまたパソコンを何度か叩いてから、緋色のガシャットを引き抜いた。『タドルファンタジー』と表示してある。
「ようやく完成した……未完成のデータしか無かったが、一先ず安心だな……」
「次は、隣のガシャット?」
「ああ。……『バンバンシミュレーションズ』だ。何、私の才能をもってすれば、どちらもそう時間はかかるまい……!!」
やはり社長は神