『ぶっ飛ばせ 暴風!! ストームニンジャー!!』
「これが……なるほど、力が増した気がする……!!」
その姿は、やはり忍者だった。
変身した風魔小太郎は、そのライダーで少しだけ体を動かし感覚を掴み、そして背中の忍者刀を引き抜いてティアマトに飛びかかる。
前方では既に、シールダーがティアマトに斬りかかっていた。
「はあああっ!!」
「ふんっ……」
ガキンッ
「ぐっ……効かない……!!」
「活きの良さは見所があるな。だが、まあ……まだ温い」
ズガンッ
「ぐうっ……」
吹き飛ばされるシールダー。どうやら剣では、ティアマトの蛇を思わせる巨体には傷をつけられないらしい。
ならばと彼は飛び上がり、ティアマトの体を駆け上がって顔面を狙う。
「貴様も殺されに来たか……一応問おう。名は何だ?」
「風魔……仮面ライダー風魔!! その眼球、貰い受ける!!」
「ふっ……油断したな!!」
カッ
そしてその瞬間に、彼はティアマトの視線に浴びせられた。……その体は瞬く間に石に変貌していく。
それも恐らく、ティアマトの能力。石化の魔眼だったのだろう。
石は落ちていく。それは地面に突き刺さり……ただの木炭に姿を変えた。
「……何?」
「油断したのはそっちですよ!! 出でよ、不滅の混沌旅団!!」
ティアマトが振り替える。そこには、何人もの部下を従えた風魔が、ドライバーに手をかけていて。
ガシャットが引き抜かれる。腰にある別のスロットに装填される。必殺技の入力が終了する。つまり。
『ストーム クリティカル ストライク!!』
「どうだあっ!!」
ザンッ ザンッザンザンザンザンッ
「ぐっ、あっ……!?」
一瞬で、風魔と彼の従える忍軍がティアマトの顔面を斬りつけた。髪を切り落とした。あえて鱗は避け、柔肌のみを抉った。
スタッ
「今です、マシュさん!!」
『Noble phantasm』
「ええ!!
ズドンッ ズドンッ
それらは確実に、風魔につけられた傷口にめり込み、捩じ込まれ、破壊していた。ティアマトはさらによろめく。よろめき……しかし、すぐに立ち上がった。
……その傷は、既に治り始めていた。
「……なるほど……六つの特異点を攻略してきただけはあるか」
「っ、傷をつけても回復される……まさか、聖杯!?」
「……流石に目利きも出来るか。ああ、魔術王の聖杯とやらは私が預かっている。だが侮るな、この身は魔獣の女神として現界したもの、人間の殲滅などに他所の力を借りるものか……」
そしてティアマトは尾を振り上げ、シールダーの頭上に振り落とす。衝撃波が辺りを揺らした。
「我が力、我が怒り、我が憎しみのみで人間など三度は滅ぼせるわ!!」
「っ……!!」
グシャグシャグシャメキメキメキメキ……
地面にヒビが入る。耐えきれずに彼女の骨身からもミシミシと悲鳴が上がる。シールダーは呻きながらトリガーを引き、腰の一本の矢を引き抜いてティアマトに突き刺した。
「があっ……が……く……」
『Noble phantasm』
「
「今さら何をしても遅いわぁっ!!」
ズシャッ
「っ……」
『Game over』
……そして、彼女は潰れた。死んだ。消滅した。
風魔は尾の下で転がる半分ほど潰れたガシャットを見て愕然とする。
「マシュさん!?」
「愚か、愚か……最後の最後に、我が身に毒を入れたようだが……今の我が身にとっては、せいぜい痺れる程度のもの。無意味……実に愚か。お前も消えよ」
「ぐっ……それでも……!!」
風魔はもう片方の忍者刀を握り締め、部下を従え走り出す。恐れがないとは言わない。だがここで食い止めなければウルクは滅びる。
少し後ろを振り返ってみたが、やはりヒビは入ったままだった。
「無駄、無意味、無価値!! 潰れて死ね!!」
ブゥンッ
「がはっ……!?」
尾を一振り。十の部下が消え失せる。
腕を一振り。二十の部下が消え失せる。
左目を貫かれて油断をしなくなったティアマトは、風魔を確実に追い詰めていく。確実にライフゲージを減らしていく。
「失せろ、羽虫が!!」
ズシャッ
「っ……まだ、まだ……!!」
「いや、終わりだ」
ブゥンッ
そして風魔の頭上に、砂埃と共に影がかかった。
ザンッ
「……?」
──それは、新たに入ってきた乱入者によって食い止められた。風魔はその乱入者の顔を見つめ、その名前を思い出す。
「っ……? あ、貴女は……あの、工房の麦酒を勝手に飲んだと噂の……エリザベート、さん?」
「……そ、それは良いのよ……とにかく、エリザベート・バートリー、助けに来たわよ」
「また羽虫が増えて……鬱陶しい」
ティアマトがエリザベートを睨み付けた。エリザベートは瞬時に縮み上がるが、ガシャットを握り締めて睨み返す。
「わわ、私を羽虫で収まる器と思わない方が良いわよ蛇女? そ、そんな図体じゃあ、アイドルの動きにはついてこれないでしょう?」
『ガッチョーン』
「タドルクエスト!!」
「マジックザ ウィザード!!」
エリザベートは震えていた。それでも逃げはしなかった。それは抑止か何かの意向なのか、それとも彼女自身が持つ最後の良心か。
「ふふ、蛮勇とはこのことか。貴様の脚は震えているぞ?」
「む、武者震いよ!! ……変身!!」
『チューン タドルクエスト』
『チューン マジックザウィザード』
『バグル アァップ』
仮面ライダーランサー。その体は
今のエリザベートの全てが、そこに出来上がる。
『辿る巡る辿る巡るタドルクエスト!!』
『アガッチャ!! ド ド ドラゴラーラララーイズ!! フレイム!! ウォーター!! ハリケーンランドー!! オールドラゴン!!』
「さあ……ショータイムよ……!!」
───
「
ウルク内で魔獣を殲滅していた方のサーヴァント達も、殺せど殺せど止まぬ進軍に苦言を呈していた。流石に、いくらサーヴァントと言えど休息は必要だ。クールタイムがなければ万全な状態では戦えない。
「ちっ……ちっとも減らないな。壁はまだ塞げないのか!?」
「ぐずぐず言うな!! 魔獣の女神めが暴れているから塞いでも塞いでもまた穴が空くのだ!!」
そう言うのはギルガメッシュ。彼は財宝を駆使して壁を塞ごうとしているが、塞ぐ側から別の穴が空くためキリがないのだった。
「ノッブ!!」
「ノッブ!!」
「皆さんはこちら側に避難してください!! ほら姉上も!!」
「むう……しかし守りがお主一人なのが不安じゃなあ信勝?」
そして市の反対側では、信勝が多くのちびノブと共に人々を安全な場所に避難させていた。ちびノブ十体でかかれば、魔獣の一体位なら相手取れる。そして信勝自身も決して弱くはない。
「大丈夫かー?」
「だ、大丈夫ですって……」
「本当にござるかー?」
「姉上……僕だって少しはやりますよっ……
そして彼は、こちらに迫ってきた、サーヴァントの包囲網から漏れてきたのであろう魔獣をまた一匹吹き飛ばした。一匹ずつ一匹ずつ処理できているが、それでも信勝は疲れ始めていた。
「にしても……それにしても数が多い……これ以上増えられたら、いかんともし難いのですが……!!」
「ノブぅ……」
「ノブノノブ……」
しかし、弱気が漏れることは、延々と続く侵攻を鑑みれば当然の事だった。
───
『タドル マジックザ クリティカル ストライク!!』
「はあああっ!!」
ランサーの胸から飛び出した竜が火を吹く。翼からは雷を、尻尾からは冷気を、爪からは岩を……そんな波状攻撃を浴びせる。
しかし、それでもティアマトについた傷はすぐに治っていく。
「……それなりにはやるな。バシュム辺りの母体程度にはなるか?」
「何よそれ気持ち悪い……!!」
「一向に構わん。ふん」
バリバリッ
「っ……!?」
ランサーに余裕は無かった。流石に、女神を相手取れる程の強さは彼女には存在していなかった。
ティアマトの爪で翼を抉られ、彼女は墜落する。それを風魔が受け止めた。
「ぐっ……やっぱり、無理かぁ……!!」
「……エリザベートさんは退いてください。僕がもう少しだけ、食い止めます……!!」
ボロボロの体で風魔が呟く。黎斗が加えた新機能なのか何なのかは不明だが、彼がストームニンジャーガシャットを握り締めれば、少しだけ体の痛みは抑えられた。
しかしそれも気休め。目の前の絶望には敵うべくもなく。
「終わり、だな。中々粘ったが、それだけだ。……峰打ちすら面倒だ、もろともに死ね。貴様らの努力は無意味だった」
「いいえ、無意味などではありません。時間を稼いでくれましたからね。……
「何っ!?」
ザンッ ガガガガガガガガガガガガ
「が、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?」
ティアマトの脳天に、白銀の刃が突き立てられた。
それは首を両断し背を両断し蛇の尾までを斬り開く。
頭から先まで背中を切り開かれた蛇は、その目を見開き。
「貴様……貴様ァ……!! 何故、何故そんな……このような事が出来る……!!」
「……私は人理の守護者です。貴女に殺された事によって、私は神殺しの側面を強化されました。ありがとう
「我が忌名まで口にするか……!!」
マシュの背後では、二人が呆然としていた。
どうやらコンティニューが可能なのは黎斗だけではなかったらしい。
……マシュの前方に、エルキドゥがどこからともなく現れる。
スタッ
「エルキドゥ……!!」
「そこまでにしておきましょう母上。これ以上は他の女神を刺激しすぎてしまいます。人間なぞ何時でも容易く捻り潰せるもの、今は他の女神との戦闘に備え神殿に戻ってください!!」
「っ……そうか。そうか……」
エルキドゥがマシュを牽制しながらティアマトにそう進言した。背中を切り開かれ苦しむティアマトは憎々しげに去っていく。
マシュはエルキドゥにガンド銃を向けた。
「……ボクは初めからウルク攻めには乗り気ではなかったんだがね」
「エルキドゥ……臆病風に吹かれましたか」
「思い上がるな。これは準備だ。あと七日で魔獣の第二世代が誕生するんだ、今回はちょっかいを出しただけさ」
エルキドゥは戦うつもりは全くないようで、マシュの攻撃をやはり警戒しながら大きく後方に飛び退く。
そして最後にこう言い残し、彼はどこかに消えた。
「ああ、ついでに、ボクの真名も教えておこう。ボクは原初の女神、偉大なるティアマトに作られた新人類。その真名を、キングゥと言う」
シュッ
───
「……なるほど、ご苦労だった。で、七日後にティアマト神の権能を持った魔獣の女神、ゴルゴーンが侵攻してくるとは本当だな?」
「ええ、確かに」
何とか魔獣を倒し、壁を塞いだウルクに戻ったマシュは、ティアマトを撃退したことを伝えてエリザベートと小太郎をマーリンに引き渡した。恐らく回復させてくれることだろう。
そして彼女はギルガメッシュの元に報告に戻る。
「それにしても……全く。羽虫、羽虫と吠えながらその羽虫に背中を開かれるとは実に愉快。我が壁の外にいたなら、そのまま蛇の干物を夕駒とする所だったのだが」
「それは悪趣味が過ぎます、王よ……人々とて、人間のようにしか見えない手やら胴やらを食べたら気絶物です……」
「分かっておるシドゥリ。英雄王ジョークだ……まあ、どちらにせよ最終的には女神は倒さねばならないのだがな」
ギルガメッシュはそう笑う。壁も治され危機は去り、それ故のちょっとした安堵だった。
しかし安心するには早すぎる。まだ、女神は誰も倒せてはいないのだから。
「……で、女神どもは同盟を築きながらも敵対しているのだな、マシュ?」
「ええ。こうなれば、何とかして誰かを味方に引き入れるのが得策かと」
「……分かっているではないか。我もそう思っていた。……故に、明日にでもイシュタルの所に行って貰おう」
「……イシュタルとは、もしかしてあの、変な船に乗った、あれですか?」
「ん? それ以外にあるまい」
マシュは項垂れた。
「我は奴自身に期待はせぬが、あれの従属である
「うぅ……自信、無くなってきました……」
「何、気に病むな。我は貴様に期待していないこともない。……財宝の一つ程度はくれてやる」
「あ、ありがとうございます……」
そう言ってギルガメッシュは、マシュに何かの入った小袋を投げ渡した。マシュはそれを受け取り、そして理解する。
これ、もう断れない奴だな、と。物を貰った以上、断れないな、と。
久し振りに黎斗についてきて貰いたいと、彼女はそうぼんやり思った。
仮面ライダーランサー マジックザクエストゲーマー
ランサーとセイバーとキャスターが合わさって最強に見える