「人間は怖いです。本当に怖い……人間がいるから、幸せは壊される」
アナは、黒く泥にまみれたアナはそう言いながらシールダーと打ち合う。鎖鎌が彼女のライフを削っていく。
「そんなことは……そんなことは、ありません!! 貴女もウルクの人たちを見たでしょう!?」
「無様です……貴女も見ましたよね? 逃げていく人々の中にあった後悔を。『もっと殺したかった』という感情を」
「それは──」
シールダーは抵抗を試みたが逆に黙らされる。疲れからか迷いからか剣閃は鈍り、動きは緩くなっていく。
「人間は、駄目です。殺し尽くさないと……殺られる前に、殺らないといけない」
「黙って……下さい……!!」
『Noble phantasm』
「
ザンッ
「無意味なことを……」
それでもシールダーはそのアナを斬り伏せた。そのままキングゥに目を向けてみる。少しでも、アナの言葉への否定を期待して。
だがそんな言葉がかけられるはずもなく。
「ボクは彼女の意見には納得できる。それはそれとして、今は反抗期だけどね。っ……」
キングゥの方も、痛みを堪えている様子だった。そんな二人に別の所から現れたアナが襲いかかり。
「残酷に殺します。
「っ……」
シールダーは、石化の魔眼の元に晒された。
『Game over』
───
「そちらはどうですかレオニダスさん」
「おお、小太郎殿ですか!! こちらは至極順調ですな」
「ならよかった……今見てきた情報ですが、ティアマトはどうも物理的な破壊力も凄まじいらしく、小さな牙は尽く破壊されてしまうのです」
ナピシュテムの牙前にて、小太郎とレオニダスがそう言葉を交わしていた。迫り来る泥を前にすれば最早兵士の努力は甲斐がない。この牙のみが頼りだった。
「物理的な破壊力、ですか……私の宝具で防げますかな?」
「……恐らく、一度が限度でしょう。あれは凄まじい。やるとするなら、最後の最後までとっておいてください」
「了解しましたぞ」
そう頷くレオニダス。彼に、これから始まる戦いへの恐れはない。
ただ、自分達の後ろにいる人々に危害が加えられないか、それだけが心に引っ掛かっていた。
「……あとそれから、余裕があったらこれも作ってくれと、王から」
「……何ですかな、これは?」
「さあ……黎斗さんが設計したようですが。材料は追って渡されるようですので」
去り際に、小太郎がレオニダスに粘土板を差し出す。そこには、木組みの巨大な何かが書いてあって。
───
「ありがとう、ありがとうございましたノブカツさん……!!」
「じゃあねノブカツお兄ちゃん!!」
「また明日ね!!」
信勝はその頃、預かっていた子供達を親の元に返していた。
彼にも、そして子供達を迎えに来た親にも、今日か明日辺りが自分達の最期になるのではないか、という疑念、いや、むしろ確信に近いそれがあった。
「……また明日、ですか」
最後の子供達まで、親の元に行ってしまった。信勝の手元には、お礼の書かれた粘土板が積まれているのみ。
「……また明日、ですか」
もう一度彼は呟いた。
振り返ってみれば、遠くの方にラフムの影が見え、それを打ち落とすサーヴァントの影が見える。
そしてそのさらに向こうに、段々大きくなり始めたティアマトの影が。
「……皆さん。本当に、ありがとう。楽しい時間を、過ごさせてもらいました」
信勝は呟き、そしてその呟きを適当な粘土板に書き込み、一つのちびノブに託す。
彼は歩き始めた。その口元には笑顔の欠片があった。目元には涙が浮かんでいた。
───
カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ
「あ"ー……あ"ー……」カタカタカタカタ
「楽しいわ楽しいわ楽しいわァァ」カタカタカタカタ
黎斗とナーサリーは、イシュタルとグガランナの幼体からのデータを、ひたすらに弄り回していた。
ひたすらに、だ。飲みもせず食いもせずトイレにも行かずにひたすらにパソコンに向かう二人の目は血走っていて。
元よりナーサリー・ライムとは、マスターによって変化するサーヴァントだ。しかも彼女は黎斗から生まれたバグスターでもある。
つまり、彼女の中の檀黎斗の才能が目覚めたことで、ナーサリー・ライム自身が急速的に黎斗に似ていっていた。
「もう、駄目……マスター、少し休ませて……」
……しかしまあ、すぐに同じ存在になるわけではない。ナーサリーがとうとう音を上げて倒れ伏した。机に顔をつけ寝息を立てようとする彼女を黎斗が叩き起こし肩を揺する。
「寝るなァァ!!」ユサユサ
「あうあうあう……」
「
「あうあうあう……」
バタンッ
「五月蝿い!! もっと静かにせぬか馬鹿者!!」
「「……」」
余りに五月蝿かったせいだろう。ギルガメッシュが額に青筋を立て、直接苦情を言いに来た。その勢いに気圧された二人は黙り混み、静かに互いの顔を見合わせ、そして再びパソコンに向かう。
「あーあ、怒られちゃった」
と、コードに繋がれたイシュタルが呟いた。
───
『Noble phantasm』
「はぁ、はぁ……
シールダーは自分のライフゲージが警告を告げるのと共に、自分の最大出力で周囲のラフムを凪ぎ払う。
ガガガガガガガガ
「キキキキキキキ!?」
「アガカガガガガ!?」
「っ……無駄なことを」
ラフム達は弾け飛んでいく。焦土に崩れていく。
しかしそれらはすぐに補われ。
「っ……」
そしてシールダーの変身は解けた。彼女は焦土に膝をつき、キングゥにガシャットを押し付ける。
「お願い、しますね」
『Game over』
「っ……また消えたのかい、彼女は。ボクがこれを持っていなくちゃいけないのが地味に辛いんだけど」
と言いながらもキングゥはラフムからガシャットを守る。
既に手慣れた動きだった。既に何度もマシュはゲームオーバーになっていたから、キングゥにガシャットを預けることに抵抗がなくなるのも、キングゥがそれを守ることに慣れるのもある意味当然だった。
「しかし、まあ……ボクがここまで母さんに逆らっても、母さんにとっては些細なことなんだろうな」
「その通りです、キングゥ。貴方は無駄です、余分です……死に絶えればいい」
キングゥにそう素っ気なく返すのは、再び地面から湧き出てきたアナ。キングゥは彼女の言葉に目を細め、大きく後ろに飛び退く。
遠くの方からまた数体のラフムが飛んできた。
キングゥには分からぬことだったが、彼とマシュは、ウルクに向かうラフムの半分を処理することに成功していた。
「でも……ボクももう危ないかな。そろそろ自壊が近い」
「……そこまでして、何故抗うのですか」
「……
「……愚かな」
しかしキングゥにも限界はあった。既に彼の体からは作り物の血が流れ落ち、既に彼の体には傷がいくつも刻まれていて。
「……優しく殺す、なんてしません。私たちの敵は、惨たらしく失せて下さい……」
「っ……」
そしてキングゥの眼前に鎌を突きつけたアナは、それを力の限りキングゥに押し込んだ。
押し込もうとした。
「
「っ!?」
それを阻んだのが、ラーマの投げつけた剣だった。キングゥを殺そうとしていたアナは蒸発し、こちらにやってこようとしていたラフムの群れは打ち落とされる。
ラーマとシータが、キングゥを助けていた。彼らは既にキングゥがマシュと協力関係にあると確信していた。
「……ラフムは、これで全てか。君達がカルデアのサーヴァントかい?」
「ああ、余達はカルデアのサーヴァントだ」
キングゥはその言葉を聞くと同時に両手を上げる。そして、魔力の吹き荒れる空を見上げた。
彼は悔やんでいるように見えた。
「……じゃあ、今からボクは鎖になろう。君はこの鎖の端を持っていればいい」
そう言ってキングゥはラーマに向き直り、手から鎖を垂らしラーマに持たせる。
「重さはボクが出来るだけ負担する。大体半分ほどにはなるだろう、それでも重いけどね。きっと、投げられないことはない」
「……その前に、一つ良いだろうか?」
巻き付いた鎖が重さを軽減する……物理学的にはかなり怪しい挙動だが、神代だからあり得る。ラーマはそれについては納得した。
しかしそれでも、ラーマには気になることがあった。
キングゥは余りに此方に協力的すぎる。もう、何人もウルクの人々を殺し、何人も悲しませているのに。
それなのに今はラフムを倒し、マシュのガシャットを守ってくれた。
「……何故お前は余に、カルデアに協力してくれた?」
「……ボクは知っている。もうティアマトはソロモンに乗っ取られたと。彼女はもう彼女ではないのだと。だから……ボクが、彼女を止めなければならない。彼女の進軍は、彼女の意思で行われるべきだったから」
「……そうか」
ラーマはその返答に妙に納得した。
彼に彼自身の倫理があって行っているのなら、最初から疑ってかからなくてもいい……そう思った。
キングゥはその体を十分に生かし、マルドゥークの斧に纏わりつく。
「残りライフ、29……」
……そこに、マシュが戻ってきた。彼女はガシャットを回収し、鎖が巻き付き軽くなったマルドゥークの斧を見る。そして彼女もラーマから鎖の一部を受け取った。
───
「ピョエー!!」
「おつかれガルちゃん」
太陽が上りきり下がり始めた頃、晴人はジグラット内に飛び込んできたガルーダからメモ書き受け取り、それを読んだ。
どうやらマルドゥークの斧自体は持ってこられるらしい。それはいい、それはいいのだが……
「……あと一日だってさ。動かすのにかかる時間」
「っ、それだとエリドゥが先に泥に飲み込まれてしまいます!!」
時間が少しかかりすぎる。
エリドゥが泥に飲み込まれるまで、予測ではあと十二時間。間に合わない。しかし恐らく向こうも、全力で運んで丸一日は掛かるのだろう。
「シドゥリ、堤防の状況は!!」
「現在第三堤防まで決壊!!
「っ、やはりか!!」
ギルガメッシュは舌を打った。
今回のティアマトは只者ではない。彼にティアマトがどうなっているかを見ることは敵わないが、千里眼など使わなくてもティアマトが本来の在り方から剥離していることは何となく理解できた。
「ええい、どうすれば時間を稼げる!! グガランナが出来る当てが怪しい以上マルドゥークの斧は必須!!」
「っ……ククルン辺りがいればまだしも、ねぇ……」
ここに来て、三女神同盟を壊しすぎたと一同は察した。ティアマトに攻撃するに足る人材がいない、そう思われた。
あんな図体の大きな怪物を相手できると思えるほうがおかしい、そう考えられるほどに絶望的だった。
「……分かりました。
……そこに現れたのが、信勝だった。
時間を稼ぐ……彼はそう言った。彼は自分が何を言っているのかはもう重々理解していた。
ギルガメッシュは何も言わなかった。ただ、試すように信勝の目を覗き込み、そして口元を緩めるだけだった。
「一足先に暇をいただきます。皆さん……ありがとうございました」
彼は部屋にいた一同に頭を下げてジグラットから出ていく。
そして外に出た彼は、ギルガメッシュから渡されたあの杖を強く握り、そして空へと放り上げる。
「……ちびノブ」
「「「「「ノッブ!!」」」」」
「「「「「「「「「「ノッブ!!」」」」」」」」」」
呼び出された沢山のちびノブが、杖を核にして新しい何かに変貌していく。金の光が漏れて信勝を照らした。
変貌していくそれを見上げ、信勝は小さく笑った。何となく気分が高揚してくる。
「──我が愛しき姉上よ。あらゆる意思、親愛、希望を握った輝ける人よ。僕の心を、僕の考えを、僕が成しうることをご照覧あれ……なんて、ね」
そんな台詞が口から漏れた。普通なら余りの恥ずかしさに赤くなるだろうが、信勝にそれを気にするだけの明日はなかった。
ラフムを狩り終えて一先ずジグラットに戻ってきた信長が、信勝の前に立ち尽くしていた。
「……何だ、これは? 信勝、お主何を……」
「
「なっ……お主、まさか……」
信勝は信長に微笑み、出来上がり行くちびノブの山、いいや、GGGメカノッブに飛び乗る。信長は呆然として彼を見上げた。何が何だか分からないが、彼が死地に赴こうとしていることは理解できた。
「姉上。僕は……やっと、貴女の思いを、少しだけ理解できました」
「……」
「人間の価値とはただ存在しているだけではなく、どう動きどう生きるかにあり。あらゆる困難にぶつかろうと諦めず、進み続けることにあり」
彼の中に、短くも濃かった特異点での旅がフラッシュバックする。思い出が溢れて止まらない。今まで出会ったサーヴァントの、人々の言葉が信勝の中に溶け込んでいく。
『……わしの生きざま、とくと見せてやる』
『ああ!! それで皆の笑顔が守れるなら、何度でも死んでやる。……まあ一度きりしか機会は無いけどな』
『精々励めよ? 雑種』
『ノブカツお兄ちゃんありがとー!!』
『ありがとう……ございました……!!』
『また明日ね!!』
『ありがとう!!』
『ありがとう!!』
『ありがとう!!』
「やっと分かりました。ようやっと分かりました。ああ、本当に……人間とは楽しかった。だから──僕は、皆を守るために、あれを止めてきます」
GGGメカノッブはその瞬間に完成した。
ちびノブで構成された体はより細くかつ力強くなり、頭部に飛び乗った信勝は出来に感心する。
足の部分では、信長がGGGメカノッブをよじ登っていた。
「……姉上?」
「待った。弟だけ差し向けて笑っていられる姉がいるか。わしもついていく」
「……仕方ありませんね」
信勝は少し考えてからそう笑い、信長も頭部に乗せてやる。そしてメカノッブは、禍々しく染まった空へと飛び出した。
───
「
『タドル クリティカル スラッシュ!!』
「はあっ!!」
その時ティアマトから送り出されるラフム達を食い止めていたのはアヴェンジャーとセイバーだった。彼らは倒せど倒せど湧いてくるラフムをひたすらに切り捨てながら、きりがないことに舌打ちをしていた。
「キキキキ……!!」
「キキキキキキキキ!!」
「ノッブノッブノッブ!!」
「キキキキキキキキ!!」
「……すまない、ライフゲージが減ってきた。あれを頼む」
「ったく……本当にキリがないな。
二人は体力を回復しながら何度もラフムに向かっていく。
「キキキキ!! キキキキ!!」
「ノノノノ!! ブブブブ!!」
「キキキキキキキキ!!」
……そして気がついた。
何故か、ラフムの中にちびノブが飛び込んでいって、しかも倒している、と。
「……どういうことだ?」
「っ、アヴェンジャー!! 上だ!!」
「あれは……メカノッブ!?」
天を仰いでみれば、GGGメカノッブが飛び抜けていった。真っ直ぐティアマトに突進しながら、黄金のオーラを纏ったちびノブを投下していく。
「不味い、あのペースだと」
「ああ……いくら大気にマナがあろうと、あれだけちびノブを振り撒けば自壊する!!」
───
「LAAAAaAAAAAAAAAaaaa……?」
「……ついたな」
「ええ……行きます。っ、刮目せよ原初の母よ!! 第六天魔王織田信長の弟、織田信勝がその玉体を食い止める!!」
ティアマトの前まで辿り着いたGGGメカノッブは名乗りを上げ、豪腕で飛んでくる翼の生えたラフムを凪ぎ払い、胸元のキャノンを露出させた。
「GGG尾張砲!!」
カッ
その声と共に黒い世界に広がるパノラマに差し込んだ金色の光が、ティアマトの足元の黒い泥を焼き払った。ティアマトの体も焦げ付き、女神は呻きを上げる。
しかし、無意味だった。乾燥した泥の上にティアマトから溢れ出した泥が溢れ、ティアマトの体の傷も瞬く間に治っていく。
「AaaAAAAaAaa……AaaAAAAaAaa……!!」
「……やっぱり駄目ですか。分かっていましたけど」
「信勝……」
ティアマトは巨大だった。そして無尽蔵に泥を抱えていた。
ビーストⅡ-Ⅰとなった彼女は、腕となったなった魔神柱を振り回し、メカノッブに攻撃を行う。
信長が信勝の顔を覗き込んだ。信勝は攻撃を防ぎながら笑っていた。丁度、
「改めて、今までありがとうございました。貴女の生きざまは、しっかりと見せてもらいました」
「……」
「……さようなら、姉上。僕は今でも、姉上のことが大好きです。ええ──大好きです」
「おい、信勝──」
ボフッ
信勝はその言葉と共にGGGメカノッブの一部……信長が乗っていた部分だけを切り離し、ジグラットの方向へ飛ばした。少なくとも泥に飲まれる心配は要らないだろう。
信勝はそう確信し、満足を得る。
「さあ……僕の最後の晴れ舞台だ。この場には僕と貴女、それだけでいい」
黒泥の迫る大地に立つGGGメカノッブ。そしてその上の信勝。彼は、信勝はやはり笑っていた。毒気はなく、怒りもなく、ただ愉しくて笑っていた。その目は鋭かったが、しかし確かに笑っていた。
「……本当に。こういうときになると、自然と高揚してくるものです。それこそ、一つ舞でもやりたい位に……でもそれは止しましょう。でも、ああ……人間五十年。下天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり。僕の第二の生は、五十年どころか一年もありませんでしたが、楽しかった。本当に。だからこそ……ここで、
彼の目的は時間稼ぎだ。その為に、彼は再びキャノンにエネルギーを充填する。
───
「急ぎましょうラーマさん、シータさん!! 泥はあと少しでここまで来るんですよね!?」
「その通りだ!!」
「……でも、泥の進行は本来のペースより落ちているみたいです」
マシュとラーマとシータは、全力でマルドゥークの斧を引っ張りながらウルクへと走っていた。近くの木々が折れていくのも気にせず三人は、ただただ泥に怯えていて。
しかしその泥は、彼女達を飲み込めない。
出てくる先から、GGGメカノッブに焼かれているから。
それを知らない三人はひた走る。それが人理を救うことだと知っていた。
「まだまだ道のりは遠いですが……諦めるわけにはいきません!!」
「分かっておる!! シータ、行けるな!?」
「はいっ!!」
───
「……っ」
ガコッ ガコガコッ
「……そろそろ限界ですか」
GGGメカノッブは、悲鳴を上げ始めていた。一時間……一時間しか持たせられなかった。信勝はそれを辛く思ったが、しかし絶望はしていない。
彼はティアマトを見据え、その目を睨み、そして背中の剣を引き抜いた。
それは、今の今まで決して使ってこなかった聖剣。織田信勝という英霊のなり損ないが扱うには余りにも過ぎた得物。使ったなら彼自身が確実に弾け飛ぶ代物。
「AAAAAa、AAAAAAAAAAaaa……LAAAAaaaa……?」
「僕は……姉上を、そして、こんな僕と共にいてくれた全てを守りたい!! だから──」
聖剣カリバーン。元々アーサー王の物であり、あの魔法少女の特異点で信勝の手に渡り、彼の背にあり続けた剣。
それは今や、信勝の手元で光を纏い。
GGGメカノッブが走り出す。溝に塞き止められた黒泥を飛び越え、その機体に割れんばかりの熱を封じ込め、そしてその頭上では信勝が飛び上がり。
「聖剣の力、お借りします!!
「AAaAAAAAa……AAAaaAaa……」
それを、ティアマトの脳天に、振り下ろした。
「──
カッ ガガガガガガガガガ
───
「……漸く、辿り着いたな」
「ええ……」
ティアマト襲来まであと一日。冥界整備完了まであと二日半。太陽が再び登り南の端まで辿り着いた頃に、マルドゥークの斧を牽いたラーマとシータ、そしてマシュがウルクまで辿り着いた。
既にエリドゥは泥に呑まれている。しかし斧は、何とか無事だった。
「良くやった……本当に、良くやったのう」
信長はそう笑った。
南を見てみれば、再び動き始めた、しかし何処か痛みを引きずっているようなティアマト。
誰も知りはしないことだが、ティアマトの額にはカリバーンが突き刺さっていた。命あるかぎり傷つけられないティアマトだが、カリバーンが突き刺さった状態で傷が治ってしまった為、常時頭に剣が刺さった状態になってしまっていた。
相変わらず、空には黒い粒が舞い上がっているように見える。
決戦は近い。
───
「……君が、ギルガメッシュか」
「……随分と傷だらけだな」
「彼女達が乱暴に扱ったからさ……」
キングゥは鎖の役目を終え、ボロキレのような体になりながら、行く宛もなく歩いていたところでギルガメッシュと遭遇した。
中途半端に寝返ったせいか、もう戦うつもりもしない。
「……好きにすればいい」
「まあ、貴様の心がどうあろうと知ったことではない。が……貴様の体は世に一つの天の鎖だ。つまり、貴様も我が友愛の対象だ」
ギルガメッシュはそう言い、倉を開き、キングゥの中に盃と何かの塊を埋め込んだ。
無防備だったキングゥは予想外のことに慌てて立ち上がる。
「なな、何をした!?」
「ほう、良い具合になったな。流石はウルクの大盃。……もう一つは薬の原典だ。そういえばイシュタルめの元に行かせる時にマシュにもくれてやった筈なのだが、全く使っていないな」
「……何でだ?」
キングゥには分からなかった。何故ギルガメッシュが自分に親身にしてくれるのかと。確かに自棄になってマシュを手伝いはしたが、それだけで許す人物だっただろうか、と。
「簡単なことだ。貴様はエルキドゥの体を持っている。つまり後継機のような物だ、贔屓にして何が悪い……まあ、我は貴様を強制せぬ。好きにすれば良い。自棄になっても構わない、貴様には自由がある」
そこまで言って、ギルガメッシュは立ち去った。
キングゥは空を見上げた。やはり禍々しく染まった空には魔力が吹き荒れていて。
明日の昼には、ティアマトはウルクに到達する。
一日半どう持たせるか……それが、ウルクの課題だった。
僕の考えた最高のカッツ