Fate/Game Master   作:初手降参

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どうしても二話同時に出したかった
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Game Clear

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……」

 

 

黎斗は起き上がった。布団から起き上がった。頭からコードの繋がれたヘルメットを外す彼の体には異常は全くない。つまりそれは、彼がまだバグスターではなく人間だったということを示していた。

 

 

「……ようやく戻ったか、ゲンム」

「ああ、今終わらせてきた。今何時だ?」

 

「ゲームスタートから五日。なあ、それより早く仮面ライダークロニクルを作ってくれよ」

 

 

デバッグ作業を終えてゲーム『Fate/Grand Order』の世界から戻ってきた黎斗は、久しぶりに見たパラドに何時ものように仮面ライダークロニクル作成をせがまれる。

 

 

「まあ待て。この五日間で多くのデータが取れた。完成は遠くない。君もこれで暇を潰しても構わないが?」

 

『ガッシューン』

 

 

そう言いながらガシャットを引き抜く黎斗。バグは数多く残っているが、暇潰しには悪くない。彼の中ではそんな評価のガシャットだったが……

 

 

「いいや、俺は仮面ライダークロニクルが来るまで他の新作はやらないぜ?」

 

「……そうか」

 

 

どうやらパラドの意志は固いらしかった。黎斗はFate/Grand Orderを見つめ、どうしようかと思い悩む。

本音を言えば、見つけたバグを片っ端から直したい衝動に駆られていた。あの意味不明な魔法少女の特異点も何となく原因は理解できたし、察しが良かったカルデア勢の意識を調整しなければならないし、マーリンのこともある。

 

───

──

 

『檀黎斗。君は……神なんだろう?』

 

『分かりきった話だ』

 

 

マーリン。彼はあのウルクでの夜、彼を街道まで連れ出した。そしてそう黎斗に告げた。

当然黎斗は悪い気はしない。そんなことを言うキャラクターだっただろうかとも思ったが、自由意思を得た結果何かを守ることだけに固執したマシュの例もある。その時の黎斗は楽観的だった。

 

 

『違う。そうだけど、そうじゃない。檀黎斗、君は──この世界の創造神そのものだ』

 

 

しかしその言葉で、彼の心は冷や水をかけられたように冷えきった。

今の言葉は核心を捉えていた。核心を言われてしまった。これ以上何も言われないように、カルデアに属するの勢力には黎斗の正体にある程度近づいたら記憶がリセットされるようにしておいたのだが。まさか彼に見破られるとは。

 

 

『──何故分かった?』

 

『私の能力を設定したのは君だろう? この現在の全てを見渡す力は君が私に与えたものだ。君がキャスパリーグを倒すときに、君はこのゲームの外のパソコンにアクセスし、ガンバライジングガシャットの中身をインストールした。その時に微妙に、このガシャットの世界は広がったんだ』

 

 

……かつて、自分の思うままに動いていたら、キャスパリーグ(ビーストⅣ)を呼び起こしてしまったことがあった。

キャスパリーグ、霊長の殺戮者。人間に対する絶対殺人権をもつ獣。黎斗はそれに挑む際、体内のバグスターを通じてゲームの根幹にアクセス、ガシャット外部のパソコンから勝つための手を引き抜いた。

その時にはまだデバッグ作業の途中だったため、正体をバラす訳にはいかなかったのだ。

 

デバッグ作業といっても、態々本来のシナリオを辿る必要はない。エネミーの挙動は大丈夫か、建物のグラフィックは確かか、キャラクターの中身がずれていないか……一度特異点に入り、一度確認すれば、もしくは一度も確認せずとも、デバッグ作業自体は行える。

 

 

『だからこそ、この世界の外の世界まで見ることができた。君がこの空間で多くのガシャットを試しに作り試行錯誤する様を、私は冷静に見つめられた』

 

 

マーリンは語り続けていた。そこには別に得意の色も焦燥の汗も浮かんではいない。バグが無いことは十二分に理解できた。

 

 

『……なるほど』

 

『この前もそうだった。君は試しに、外の世界のパソコンから没データを取りだし、試しにこの仮想世界に新作ガシャットを産み出した。ここなら多少は融通が効くからね。まあ、無限に己を強化するなんてシステムは、この世界の大本(ガシャット)が耐えられないから時間制限があるんだけれど』

 

 

彼の言葉は正しかった。本来ならこのウルクの特異点では、さっさと聖杯を回収してサクッと海に潜りティアマトを再封印すれば事が済むようになっていたが、黎斗はこの際だからとこれまでの没データ等を引っ張りだし、どうなるのかを確認していた。

ここは黎斗の産み出した仮想世界。無理のあるシステムも受け入れられた。

 

 

『流石、私だな。私の敵は私の才能と言うわけか。で? マーリン……真実を知ってどうするつもりだ?』

 

『……いいや? 別に私は、真実を知ったからどうしようというつもりはない。そんな感情は設定されていないし、他の(キャラクター)を困らせるのも本意ではないからね。でも……』

 

 

そしてマーリンは、設定された通りの軽い態度で伸びをして、大使館の方に振り向きながら言った。

 

 

『君の息子である私が言うのも何だけれど、君の在り方は、君自身を滅ぼすよ』

 

──

───

 

「……難儀だな」

 

 

Fate/Grand Order。黎斗が仮面ライダークロニクルと共に考案した、クロニクルと対になるゲーム。

現実世界をフィールドとして、現実の他のプレイヤーと競いあうクロニクルに対して、時間の流れすらも違う異世界をフィールドとして、一人で仲間を増やしてラスボスへと至るゲーム。どちらもリアリティに差はない。無いが……クロニクルの方がもっと刺激的なような、そんな気がした。

 

 

「ある意味当然だが、デンジャラスゾンビのレベルは当然(テン)のまま。向こうで作ったガシャットはデータしか残っておらず、バグスターとしてサーヴァントを呼び出すにはこのガシャットは些か特殊すぎる」

 

 

そう言いながら黎斗はFate/Grand Orderを梱包し、適当な棚の奥に入れておく。

このゲームはそもそも、黎斗の作った時間軸すら違う異世界に接続してその中で世界を救うゲームだ。こちら側に呼び出しても確実におかしなことになる。勿論黎斗の才能をもってすれば調整は容易いが……

 

 

「勿体無いかもしれないが、やはりここは封印が得策か」

 

 

そこまで呟いて、彼はガシャットをしまって。そして顔を上げた。もうその目には後悔は消え失せ、身の毛もよだつような笑顔だけがあり。

 

 

「さて、仮面ライダークロニクル。私のもう一つの究極のゲーム。私の神の才能が、疼いて仕方がないな……!!」

 

 

彼のゲームに終わりはない。終わりなきゲームの中、彼は思うままに進み続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 














「……フフフフ……ハハ……ハーハハハハ!! ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!」

   テッテレテッテッテー!!


──現実を侵食するFateの世界──


「まさか……かつて私が残したセーブデータが暴走を!?」

「じゃあ、あれは……過去の黎斗?」

「なんてこったい……!!」


──生まれ落ちた真檀黎斗(ビーストⅩ)──


「集え集え集え……私のサーヴァント達よ!! この世界を私の最高傑作で塗り替える!!」

「おお、わが神!! 再び見えるとは……!!」

「クロスティーヌ!! クロスティーヌ!!」

「黎斗さん……」


──そして、始まる聖杯大戦──


「……ええと、僕は宝生永夢です。貴女は?」

「サーヴァント、バーサーカー。ナイチンゲール。召喚に応じ参上しました。私が来たからにはどうかご安心を」


──二十騎から始まる戦闘──


「サーヴァント、キャスター……メディアです」

「君が私のマスターか?」

「お会いできて、本当によかった……!!」


──全てを守り抜け──


「私は……私が守った世界は……」

「病原菌は排除します」

「世界の運命は、僕が変える!!」

「ゲームの命運は、私が決める……!!」


──例え、全てを殺してでも──


「ガシャット・『Hory glare』……」

「サーヴァントを、犠牲にするの?」

「止まっている暇はありません」

「どこまで逃げても掌の上……」


「令呪をもって僕の傀儡に命じる」

「……決断を、マスター」

「……自害せよ、バーサーカー」


──今日を守れ──


「変身……!!」

『Fate/Grand order!!』


──明日を守れ──


「変身!!」

『仮面ライダークロニクル!!』


──世界を守れ──


「……フィニッシュは必殺技で決まりだ!!」

『Glare critical hole!!』


──Fate/Grand order 
   覚醒特異点 名医奔走病棟CR
    デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの理不尽)──

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