Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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第二回戦 二日目

第二回戦 二日目

 

 

――目が覚めた。

地味に体が重い。昨日何かあったろうか、と思索する。

 

「あっ」

 

はっ、としてライダーがいる方向をみると。

ズーンという効果音が聞こえてきそうな程、落ち込んでいた。いつか見た体育座りである。

昨日、酒に酔ったせいか本音を漏らしてしまった。

 

ライダーはこちらをちらりとも見ない。

完全にいじけている。

絶対に言ってはいけないことをしまった。

ど、どどうすればいいんだ!?

いや、殺されても仕方ない暴言をはいたのだ。死んでない方が不思議だ。

 

ここは――謝るべき!

 

「すいませんッしたッ!!!」

 

瞬間、土下座スタイル。

ライダーはこちらを光のない目で見つめてくる。ひょっとして昨日から?

…怖い。しかし、体格のことはどんな理由があろうとも言ってはいけないことだ。

――ん?

寝起きから少したったせいか、記憶が完全に戻ってきた。

自身の暴言が出たの何故か。――ライダーに問われたからだ。

何を?――女性のタイプを。

 

――ひらめきが俺に奔る。

 

 

「ライダー!聞いてくれ!!」

 

光のない瞳がこちらを見つめる。……一応話は聴いてくれるようだ。

 

「き、昨日!ライダーが俺に聞いたのは好きな女のタイプだったよな。」

 

ライダーは昨日の言葉――情景を思い出したのか涙目になっている。

 

「す、好きな女のタイプってのはつまる所、どこで欲情するかどうかなんだ!」

 

――何言ってるんだ俺は!

 

「たまたま聞かれたのが胸だっただけで、尻や太ももも好きなんだ!」

 

――だから何言ってるんだ俺!!

 

「特にライダーの尻から足にかけて、そのスリットから覗く細いながらも確かな肉付きがあってものすごく好みだ!」

 

――俺は何をぶっちゃけテルンダァ!!

胸さえあれば完璧に俺のタイプにドストライクしているのは事実だが。

 

「ふふっ……ははっ……あはっあはははははっ!」

 

突然ライダーが笑い始めた。……何処か面白いところが在っただろうか。

 

「だって、貴方…ふふっ、か、顔が百面相してるんだもの。」

 

と言って笑っている。

ひとしきり笑い終えるとライダーは口を開き――

 

「――うん。許してあげる。そもそも私が聞いたことだしね。」

 

一応の和解を得た俺たちは、今日の計画を話し合った。

 

 

 

 

――――――アリーナ

 

 

校舎をレスターを探しに歩き回ったが結局見つけることができなかった。よってアリーナにいるだろうと狙いをつけ、ここに来た。

 

「ライダー……どうだ?」

「いるわね。あっちは気づいてるか分からないけど。」

 

バーサーカー――狂化をサーヴァントに施し会話や判断能力を失う代わりに戦闘能力を強化するクラス――ならばこちらのことを気づいてなくてもおかしくはない。

慎重に進んでいくことにしよう。接近に気づかれなければ、有用な情報が得られるかもしれない。

 

迷宮の最奥近くにレスターを見つけた――しゃがんでいる様だが、何をしているのだろうか。

 

「……これで良し。」

 

何かを設置している?

 

そこでキーボードを打ち始めた。するとそこになにかが出て来る。

紫色の……人形?だろうか。使い魔のようにも見える。

 

「マスター、どうする?奇襲仕掛けれると思うけど……。」

 

レスターは用事を終えたのかこちらに歩いてくる。こちらには気づいてないようだ。

ここは――

 

「いや、一旦中腹まで撤退する。そこで奇襲する。」

 

 

 

 

中腹近くまで後退し、道の中心に軽い魔術トラップを仕掛けておく。

通った瞬間に魔力弾が周囲を囲うように飛び、攻撃するという物である。

 

「来たわね。」

 

そんな物が仕掛けられているとは露も知らないだろうレスターはそのままトラップを踏む。

瞬間、複数の壁の魔術式から魔力弾が放出される。

すべて着弾する。

 

「今だ、ライダー!」

 

ライダーが突撃する。

あたりがセラフからのメッセージで赤く染まっていく。

 

「……なっ」

 

その声から奇襲は失敗したと判断する。退がるようにライダー指示し魔力弾を再発射する。黒い装束、褐色の肌からバーサーカーが防いだようだ。

バーサーカーに魔力弾が向かっていく。

着弾した。

 

が――

 

「――んな!?」

 

今度は俺が驚く番だった。なんとバーサーカーの直前で魔力弾が弾かれたのだ。

 

「――ッ対魔力!!」

 

ライダーが叫んだことで納得がいった。対魔力――一工程程度の魔術を弾くスキル――を持っているバーサーカーだと!?

 

「―――やってくれるじゃないか。コーヘイ!」

「■■■■■――――!」

 

レスターの怒りに同調するようにバーサーカーが声をあげる。

バーサーカーの形相は凄まじ怒りを向きだしにしている。

 

「ここいらで痛い目をみせるのもありだろ!ヤレェ!!バーサーカー!!!」

 

バーサーカーの躯が弾けるように飛び、突きを繰り出す。

ライダーはなんとか槍で逸らし避けるが、バーサーカーは剣の鍔のようなところに引っ掛けるようにして、躯を回し、膝を頭に突きいれる。

さすがに、スピードもあるだろうがバーサーカーの攻撃が意外すぎたのかライダーはまともに食らってしまった。小さな躯体が転がる。

なんとか体勢を直そうとするがふらつき、バーサーカーが刺し殺そうと迫る。

 

「――奔れ白狐。」

 

小さく折られた白い狐型の折り紙がバーサーカーの片足に噛みつくようにつく。

 

「炎ッ!!」

 

そして爆破。バーサーカーは勢いそのままにすっころんだ。

やはり呪術は効くようだ。

 

「何でだ!?俺のバーサーカーに魔術はきかないハズだろ!?」

 

そんな声を最後にセラフの強制介入が行われた。

ライダーのもとへ走る。

 

「大丈夫か、ライダー。」

「助かったわ、マスター。……まだ頭がぐらつくわ。ちょっと危なかったかも。」

 

ライダーは、まだふらついているようだ。

バーサーカーがなんともないのをたしかめたのか、レスターが口を開いた。

 

「コーヘイ、一体バーサーカーにどうやって攻撃を当てたんだ?」

「答えると思うか?」

 

「ちぇ、そりゃ残念。しかし、バーサーカーの無敵性に穴があったなんてな……。」

 

――無敵性?

失言をしたと気づいたのか。

 

「この辺で失礼させて貰うぜ。いくぞバーサーカー!」

 

と歩いて出口まで行った。

何故リターンクリスタルを使わないのか気になったがたまたまだろうとその日は流した。

 

コードキャストでライダーを癒やす。

そう言えば、最奥に何か人型のエネミーを配置していたことを思い出す。

 

「ライダー行けそうか?」

「ええ、私は問題ないわ。彼らもいなくなったみたいだし、いきましょうか。」

 

そしてライダーは馬を出現させる。

ライダーと共に騎乗する。何度も乗ったせいかなれたものである。

馬が駆け出す。

 

少しすれば最奥がみえる。

 

「このまま奇襲するわ、マスター!」

 

許可を出す。

 

「――せい!!」

 

ライダーの一振りが決まる。そのまま通り過ぎて一緒に降りる。

エネミーはぼっ立ちである。

 

「なんなのかしら、これ。」

 

何度も攻撃するがかなり耐久が高く設定されていたようだ。

おそらく戦闘データを取るためだろう。

 

ライダーにしては珍しく五分以上かけて倒した。

ふむ、どうやらデータは回収型のようだった。

なので、アッサリと破壊した。

 

………なにも起こらない。

ここまで露骨だったのだ。

何かしらのトラップが仕掛けられてもおかしくないと思っていたが。

どうやら杞憂のようだ。

何故こんなものを設置したのだろうか?

 

「――さっきのデータを手にいれるためじゃないの?」

 

――考えすぎか。

 

 

 

 

 

―――――――マイルーム

 

 

何事もなくマイル―ムへと帰還する。外は相当の緊張感が溢れているせいか、マイルームに入ると身体が落ち着く。

ほっとするのだ。

この時点で死者は935名である。前回で半分の死者がでたのだ。その気でなかったものも、否応なしに事実に気づかされる。

――自分たち人を殺し、そして殺されるかもしれないと言うことを。

 

「マスター。今日得た情報を整理しましょう。」

 

長考を見かねたのか声をかけてきた。

また長考に走っていたらしい。

 

情報を整理しよう。

 

 

 

 

今回得た情報は、やはりバーサーカーの無敵性である。

 

「にしても……バーサーカーに無敵性か……。」

 

おそらく―――

 

「――宝具、でしょうね。バーサーカーのクラス補正には、そんなものないし、対魔力すらないわ。」

「ああ、宝具と考えたほうが妥当だな。」

 

だとするとかなり絞れそうだが。

 

「まさかヘラクレスとか?」

「どうかしら?神に召し上げられた人だけど、神から貰ったのは不死性よ。無敵性ではないわ。」

「どう違うんだ?」

 

だいたい同じだと思うが。

 

「違うわよ。不死性は死ににくいだけ、無敵性はそもそも攻撃がきかないのよ。」

「なるほどな……あいつはバーサーカーに魔術が効いたことにかなり動揺していた。」

「初戦がキャスターだったんじゃない?――ひょっとしたらかなり対魔力が高いのかも。完封でもしなきゃ無敵性とまで言わないんじゃない?」

 

ふむ、確かに。

 

 

 

 

敵サーヴァントの情報を整理し終え、話題はライダーのことに変わった。

 

――ライダーのことがサッパリ分からん。

正直にいってお手上げである。

なので、こんな質問をしてみた。

「ライダーは馬や剣以外の宝具は何個もってるの?」

「後は一つね。」

「その武器の種類は何なんだ?」

 

「う~ん。ちょっと答えられないわ?真名に直結するもの。」

「真名に直結?武器の種類で?」

 

と言うことは武器で有名な英雄なのか。武器で有名な英雄は例えば、ゲイ・ボルグで有名なクー・フーリンだろう。

――レーヴァテインを扱っている時点でかなり有名だろうが。まだ見つけてないだけか?

 

それにしてもこの英霊は、分からないことが多い。

真名やら武器やらもそうだが、それ以上に気になるのは妙な精神性というか。

普通、英雄とも呼ばれるものが馬を禁止しただけで泣きそうになったりするものだろうか。

今朝のこともそうだが、問うたのはライダーではあるが、かなり礼節の欠いた発言をしたハズだ。怒りを買ってそのままこの世とさよならバイバイでもおかしくない。

だが、ライダーはかなり落ち込むだけだった。

前には、嫌うか嫌わないかという話もあった。

――ひょっとするとライダーには、トラウマがあるのかもしれない。

 

英雄の生涯は華々しいものと同時に残酷な結末が用意されているものである。

時々みせる残酷、冷酷な眼差しも関係しているかもしれない。

 

「な、なに?人の顔じっとみて。」

 

「いや、可愛いなと思って。」

 

 

 

 

 

――眠りにつく。

――不安は易々と消えてはくれない。

――誰だってそうなのかもしれないが。

――そう言えば

――ライダーの願いは何なのだろうか。

――明日聞いてみるのもいいかもしれない。

 

 

 

――中途半端な願い、記憶。

――こんな俺が生き残ってもいいのだろうか。

――やめよう。

 

――ライダーが死ぬ姿は見たくない。

――俺を助けてくれた、たった一人のサーヴァントなのだから。

 

 





EXTRAらしさを出せてるだろうか


【キーワード】無敵性


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