Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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嘘吐きは嘘をつくか

「なんだ、その変な者を見る目は? せっかく助けに来てやったていうのに、礼の一つもなしか?」

 

 動揺? あるいは不信か。

 死徒どもを一掃した俺に向けられた目は奇妙なものを見る目だった。

 

「……ひょっとっして、来るの遅すぎたか? それには俺にも言い分があってですね? あのクソサーヴァントが手ぇ抜かなきゃここまで遅くならなかったんだ。……大方、気が変わっただので見逃しやがったんだろうなぁ……立夏君、その忠義系セイバーと交換してくんない?」

「いやです」

「即答かよ」

「じゃあ、そっちのライダーは?」

「生憎、余は裏切りを許せぬ女でな。終始余のマスター、ナツキに付き従う所存よ」

「ああ、やっぱり?」

 

 軽口で和やかな雰囲気を醸しだし、彼らのいる場所へ歩き出すと―――背後から強烈な殺気を感じた。

 

「ウオォォォーー!! この薩摩ヤロォォォウーーーー!!!」

 

 そして体に奔る衝撃。

 どうやら切り裂かれたらしい。それも背中から腹下までばっさりと。

 しかし、期待した血はでない。出る訳が成し。なにぶん、サーヴァントが三機もいるこの状況で生身を晒すなど愚の骨頂だ。ましてサーヴァントも連れず登場するはずがない。

 『折紙』にして『織神』。

 この『折神』の万能さは、俺の持ち得る魔術の中でも最高を誇ると言っても過言ではない。攻守ともに使える―――量が質になる、万能礼装。初見なら相手が悪くない限り必ず騙せる人形にもなる。

 

「誰が薩摩だ、壬生浪士(バーサーカー)――!」

「ちっ! なんだ、その体ァ――!? 」

 

 着られた所を補填するように紙が集まり、再生されていく。

 

「チェストとか言えば―――」

「しゃらくせぇぇ!!」

 

 少しは喋らせて欲しい。

 滅多切りされながら、そんなことを考えた。

 

「一応、俺のリアルタイム消費してせっせと作った代物なんだがなぁ?」

「うわぁっ!? ひ、火々乃さん!?」

「いや、驚きすぎだろカルデアのマスター」

 

 いきなり横に出現したら、そりゃ驚くか。

 

「そこまでしなくてもよくね? ていうか何で薩摩? いや確かにあそこで鍛えられたこともあるけどさ。俺、アイツらみたいに二言目に“首、置いてけ”とか言わねぇから」

「―――この薩摩モンがぁ!!」

「いや話聴けよバーサーカー」

「いや話聴かないでしょバーサーカーなら」

「……良いツッコミだな立夏君。君は大成するぞぅ?」

「ありがとうございます?」

 

 カツカツと優雅に歩いてくる女―――と言うか少女を見た。

 ……最悪もいいところだ。こんな所で知り合いとは。

 

「随分と親しげなのね? 火々乃晃平。あなたにつく時点で程度が知れてる様なものだけど」

 

 鈴の鳴るような透き通った声そう吐く日本人。

 齢は……覚えてねぇが、確か14か15か。

 どろどろとした気味の悪い目つき。何処でねじれたんだか。……俺のせい、か。

 

「貴様、知り合いなのかコーヘイ?」

「―――まあ、そんなとこさ。オイオイ、今は夏期講習機関じゃなかったのか? テメェは学業一つこなせねぇのか?」

「あなたと違ってエリートなんで学業優秀ですの。あなたと違って」

「……テメェ、ンでここにいやがる。炎浄のおっさんがテメェを送り出したとは到底おもえねぇ」

「あなたと一緒のことをしたんですよ?」

「一緒?」

「いやだわ、痴呆症?()()()ですよ。そうやってお家を奪ったんです」

「―――――っ」

 

 誰かが息を飲み込んだのが判る。肌がひりつくような緊張感を感じたからだろう。

 

「……お前に負けるほど炎浄のおっさんは弱くねぇ。そんな度胸もねぇだろ」

「ええ、そんな大それたマネは」

「ふん」

 

 つまり、さっきの言葉は――俺に不信を抱かせるタメか。そりゃそうか。炎浄の小娘からすりゃあ三騎の同盟関係なんて目障りなことこの上ない。

 そして、コイツがわざわざこの聖杯戦争に参加した目的を考えれば―――、

 

「じゃあなんでここにいやがる。その上、聖杯戦争に参加とは面倒なマネを……いやそもそもオッサンが参加を認めるわけがねぇ。お前じゃ実力不足もいいとこ―――」

「…………馬鹿にして……!」

 

 静かに憤ってみせる炎浄。瞳は嫉妬に歪み、その目の奥には強い憎悪を感じる。気は進まねぇが―――そろそろアイツもくるし。

 

 前に歩み出て、彼女の憎悪の炎に薪をくべることになるだろう言葉を投げかける。

 

「……さっさと帰れよ沙友理。テメェにゃ荷が勝ちすぎてらァ。―――お前じゃ兄貴には届かねぇよ」

「その、兄を、……私から奪ったお前が言うことかァァァ!! アイツを殺して、バーサーカー!!」

「オオッ!!」

 

 高速で接近してくるバーサーカー。

 とっさに俺の前に出ようとするライダーを静止させる。

 

 なに、用心棒(サーヴァント)がもう来たんでな。

 

「――――ちぃ!!」

 

 バーサーカーの目の前に幾数も突き立つの呪いの朱槍。朱い茨の壁となって現れた。

 それを投合出来たのは、やはりというか一人。

 

「馬鹿げた霊基……! テメェがランサーか!」

「然りだ、狂犬よ。―――アーチャーには逃げられた」

「お前から逃げ失せるとはな。……今度は手を抜かなかったろうな?」

「……そもそもいなかったからな。貴様の指示した場所が間違っていたのではないか?」

『痕跡は?』

『微量の魔力の残り香のみだ』

「ちっ、妖怪クソジジイめ」

 

 かなり早い段階で逃げだしたか。あるいは何かしらの宝具か、スキルか。あの大英雄なら可能だろう。

 まあいい。切られた尻尾の一つは掴んだ。

 今は――目の前の馬鹿に問いただす必要がある。

 人間としての俺ではなく、一人の魔術師(人でなし)として。

 

「―――おい。俺を殺す、そう言ったな。それは―――俺の、火々乃晃平の敵になるってことでいいんだな?」

「……ええそうよ。炎浄家がどうとか、もうどうでもいい。あなたを殺すわ! 私の兄の、仇をとるために」

「そうかい。全く残念だ。また、おっさんを悲しませることになるとは―――悪縁もここに極まった」

 

 空から振ってくる色取り取りの折り鶴。

 既に何十万とおられたその折紙は、大きな波を生み出す。

 

「帰るぞ、お前ら。もうここに要はない」

「――逃げる気!?」

「恥ずかしい勘違いすんな。見逃してやるって言っているんだ。年上の厚意は受け取って置くもんだぜ、炎浄の妹(クソガキ)

「っ―――!」

 

 ……今日は厄日だな。気分が悪い。

 死体処理に、アイツの忘れ型見と敵対か。

 

「じゃあな。次会ったら―――問答無用で殺す。ちゃんと機会を窺え。この首、取れるもんななら取ってみやがれ……!」

 

 折紙で全員を押し流すようにしてその場を離脱する。

 

「……良かったんですか?」

「良いんだよ、これで。死にてぇってんなら、殺してやるさ」

「そんなのって……」

 

 最後の呟きは聞こえないことにした。

 

 

***

 

 

 家に帰ったら、まさかのナツキダウン。クソメイドが倒れてる所とか、季節外れのインフルエンザに掛かって以来だ。アレ、結構最近じゃね?

 

 とまあ、話を聞いてみれば原因はライダーだと発覚した。

 どうやら常軌を逸する魔力消費を行うらしい。すごく燃費が悪いのである。超具体的に言えばフロを沸かすのに核エネルギーが必要なレベル。

 そんなある種の産廃サーヴァントはまさかの全力で動き回りやがって、そのせいで魔力供給が追いつかずぶっ倒れる羽目になったのだ。南無三。

 魂まで削りとられていて、このままだと死にかねなかったため、緊急処置として俺の魔術刻印を移植。何とか息を吹き返させた。

 もっとも、何らかの影響をナツキに与えかねないのだが。

 

 しかし、まあ。こんなにベラベラと語って何が言いたいか、と言うとだ。

 

 魔術回路の移植、とか七文字略してるけどトンデモねぇぐらい精神張って、夜通していうか午前様なのだが、そりゃもう疲れたワケで。

 どこぞのサーヴァントとか、英霊とかいう使い魔とは違って眠気があるわけです。つか、超眠いわ、だるいわ、軽く寝る前にと食べた飯で腹壊すわ、で絶賛トイレ休憩中なのである。

 

 しかし、今俺の目の前にいるヤツは全く俺のことを心配というか気を配らず、開けちゃいけないドアを開けてソイツは開口一番にこう言った。

 

「暇だ―――!」

「…………………………」

「うむ? 聞こえなかった要だな。ではもう一度―――暇だ!!」

「うるせぇ! 聞こえ取るわ!!」

 

 茶髪女――ライダーが五月蠅い。

 というか何を開けて言っているのか。社会の窓どころか、社会の境界こじ開けるヤツがどこにいるんだ。目の前にいるけどさ。

 

「……俺、疲れてんだけど」

「む? 嘘は如何ぞ、コーヘイ。落としたものは健康的ではないか」

「何処見てんの。女がそういうこと言うもんじゃねーよ。つか、どうやって見た。まさか千里眼使ったの? 此処で?」

「と言う訳で、余に付き合え」

「それを言うのはここじゃなきゃダメですかね? 出来れば他の所で言って欲しかった。TPOくらいわきまえろよ、英雄だろ?」

「余の記憶によると――――」

「どうせ四六時中子作りに励んでたとか、そういうオチだろ?」

「おお! よく分かったな!」

「当っちゃったよ、当てちゃったよ」

「褒美に余に付き合う栄誉をくれてやろう」

「さっきから選択肢一つだろうがァ!! ……あーもう分かったよ。俺のソフトクリーム生産が終わったら付き合ってやるよ、チクショウ。だからドアしめろ」

「本当か! 本当だな!?」

「本当だから、速く出てけ」

「玄関で待っているぞ!」

 

 満面の笑みで満足そうに頷いたあと、びゅーんと効果音がつきそうな走りで玄関方面にライダーは走っていった。

 

「―――ああ、クソ。アイツ、苦手だ。くそったれ」

 

 

 




しかし、嫌いとは言わないヒビノ君なのであった。
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