Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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久しぶりのカレンさんの出番



第二回戦 四日目

第二回戦 四日目

 

 

――目が覚めた。

この前と違って夢をみることは無かったようだ。

視線を動かせば、ライダーが目に入る。

ライダーと大まかな計画を立て、マイルームから出る。

 

 

 

 

――――――三階廊下

 

 

マイルームから出ると無機質な音が鳴った。

携帯機器からである。どうやら第二暗号鍵が生成されたようだ。

 

しかし先にレスターの情報を集めるとしよう。

最初の頃は緊張感だけっていっちゃ悪いが、今は警戒心も含まれている。

うまく聞き出せるだろうか。

 

A-3教室から手当たり次第に聞くとしよう。

 

 

 

 

ふむ、全くわからなかった。

一般系の参加の方が多いというか、明らかに前に黒いことしてた、従事してたってヤツが少ない。

そのせいか、黒人男性であることとアフリカ・ベルト出身ではないかという推測ぐらいのものだ。ビアフラ連邦出身ではないか、とも推測されていたが、ネットワーク接続を拒否している国家の一つのため考えにくいのだとか。

そのくらいの情報しか手に入らない。

 

そのまま考え込んで進んでいくと声をかけられた。

腹にズルリと入り込んでくる様な声。背後から声をかけないで欲しい。

心臓にわるいし。

 

「火々乃 晃平。」

「…何か?」

「――監督役としての忠告だ。」

 

――忠告?何かしただろうか?

 

「最近NPCを殺戮しているマスターがいるようだ。」

「……それが俺だ、とでも?」

「いや。ただ……気をつけるがいい。それを言って回らなくてはならなくてね。ココを通るものに語りかけている次第だ。」

 

――なるほど。

監督役が言ってまわる(実際は、動いて回って言っているわけではない)ほどの自体とは。

そんなに酷いのだろうか。

気をつけておくことにこしたことはないだろう。

 

そしてアリーナへと向かった。

 

 

 

 

――――――アリーナ 月想海 第二階層

 

 

アリーナに入る。

隣にライダーが出現する。

 

「まだバーサーカーは来てないみたいね。どうするマスター?」

「ま、さっさと探索する。馬なしで。」

「ええ~~。」

 

ライダーは馬を召喚しかけていたが、ぶーたれながらやめた。

探索を開始する。

 

 

 

 

最奥まで来た。

第二暗号鍵を無事手にいれることが出来た。

「ふむ、どうせだからトラップの一つでも仕掛けたいところだが……。」

「レスターとかがやったようなものとかできない?」

「監視カメラのみたいな物ねぇ……。」

 

そう言いながら懐を探る。

ふむ、使い魔に記録させるようにすれば十分か?

エリアの隅に置いとくか。四隅においてと…。

 

そうして仕掛けているうちに、バーサーカーがアリーナに侵入したようで。

 

「マスター!来たわよ!」

「ライダー馬で中腹までいく。」

「わかったわ!」

 

レスターより先に中腹に行き、今ちょうど帰る途中であったという体を装う。

さてうまく行くといいが。元よりダメ元だ。

 

 

 

 

中腹まで来たところでライダーに馬を消してもらう。

ライダーであることはもう突き止められているだろうが。念のためだ。

 

「よう、コーヘイ。ご機嫌いかが?」

「悪くはない、……しかし、やってくれたな。あんな物仕掛けるだなんて。うちのサーヴァントのクラス、分かったんじゃないか?」

「ああ、ライダーらしいな。まあ、もう少し情報を集めれば真名わかると思うぜ。」

 

――マジでか!?分かったらぜひ教えて欲しい。

まあ、決戦場で聞けばいいのだろうが。

 

「ライダー、仕掛けろ!」

 

さっさと仕掛けることにした。

ライダーの持っていた白槍が真紅の剣へと変貌している。

どうやら本気でやるようだ。

 

「余の剣技、受けてみるがいい!!」

「■■■■■――――――!」

 

瞬間、ブオン、と大気のさける音。ギン、と鍔競り合う。

あたりが赤く染まる。セラフの警告だ。

 

「ふんッ!」

 

と、ライダーはバーサーカーに胴を決めにいく。

 

「■■■■■――――!」

 

当然ふせぐ。しかし、それはライダーも想定済み。バーサーカーの剣――妙に長い柄をつかみ、身体をスルッとあげてバーサーカーの顔面に膝蹴り。

これはバーサーカーも防げない。

 

「これで借りは返したわよ。」

 

そしてそのまま高い身長を持つバーサーカーの両肩に足をつき立つように力をいれる。もちろん柄は持ったままだ。

バーサーカーも持ってかれまいと必死に粘っているが。

硬直する。援護を試みるが―――

 

「■■■■■――――!」

 

突然、バーサーカーは剣を放した。

そして動揺したライダーの足を掴み、地面に叩きつける。

動揺からか大して抵抗が出来ないライダー。

 

「――――っ」

 

叩きつけられたライダーの躯は大きくバウンドし、浮いた躯をバーサーカーに殴りつけられる。その拍子にバーサーカーの白い剣は飛んでいく。

ライダーは体勢を立て直すが、目の前にはバーサーカーの拳。

そのまま殴られ、ライダーの小さな躯が吹き飛んだ。

二回地面にバウンドして俺の前で静止した。

 

「生憎だがな、うちのバーサーカーは格闘が得意なんだ。王国最強は伊達じゃない。」

 

――王国最強?

ライダーにコードキャストを奔らせながら、バーサーカーとレスターに注意をむける。

バーサーカーはまるで武術家のような格好をとっている。

 

「ライダー、まだいけそうか?」

「ああ、まだなんとかな。」

 

俺の前に吹き飛ばされた時点で、ライダーの霊基は半壊していた。とっさに立ち上がれないほど消耗していたのだ。

あと何回か攻撃を受けたら殺されていただろう。

 

「■■■■■――――!」

 

バンッ、と地面を蹴る音。瞬間移動したかのようにライダーの前に現れ、バーサーカーの腰を入れた一撃が飛んでくる。

ライダーは剣先をバーサーカーに向けるだけ。

 

「焼け死ね。」

 

剣先から炎が、紅い燐光が奔る。バーサーカーは為す術もなく炎に包まれた。

が、バーサーカーは凄まじい勢いで後退し、白い剣もついでに拾った。

 

そしてセラフからの強制介入が行われ、戦闘が終了した。

 

思わず息をつく。

 

「炎と関わりのある英霊ってのは、確かみたいだな。ま、その様じゃ決戦を待つまでもないかもな!」

 

レスターは上機嫌だ。バーサーカーは殆どダメージを受けておらず、ライダーは満身創痍。そうならない方がおかしいと言うものか。

しかし、こちらは情報を得れた。まさか王国出身、しかも最強。

かなり英霊を絞れるだろう。

 

そのままレスターは第二暗号鍵を手に入れるため、去って行った。

 

「うまくかかるといいが。」

 

使い魔だけではなく、嫌がらせに魔力弾を射出する刻印をつけておいた。

ちなみにアイテムを取った瞬間に背後から飛んでくる。

バーサーカーに防がれるだろうが。

 

「マスター、もう帰りましょう?疲れたわ。」

「そうだな、帰ろうか。」

 

 

 

 

――――――二階廊下

 

 

アリーナを出た俺は、マイルームに帰ろうと廊下を歩いていた。

すると、前方に見覚えのある背中――エリカである。

しかし、いつもの元気の良さそうな背中ではない。

身体は壁に寄りかかり、今にも倒れそうである。

――あっ倒れた。

 

思わず駆け寄ってしまう。

 

「おい!どうした!!大丈夫か!?」

「……はあっ……はあっ」

 

抱えてわかるその身体の熱さ。

身体を構築している骨子がボロボロになっている。

その基点となっているのは――肩か。視線を向ければ一閃の傷。

予想されるのは毒。それも――普通の毒じゃない、宝具による物だろう。

疑問はあるが、それは置いといてさっさとこいつを運ばなくては。手遅れになってしまう前に。

エリカの身体を肩に担ぎ、保健室へ向かった。

 

 

 

 

――――――保健室

 

 

部屋に入ると銀髪金目の少女――カレン・オルテンシアがいた。

彼女はこちらを一瞥すると事情を察したのか、ベッドへ誘導する。

――ココに寝かせろということか。

エリカをベッドに寝かせる。彼女の額からは、多量の汗が流れている。

 

カレンはエリカに何か呑ませる。

 

「これで安静にしていれば、少しは落ち着くでしょう。」

 

数分もすれば、エリカの表情も和らいできた。

しかし、こんな形で保健室を訪れることになるとは……。

できるだけ、この健康管理AIには会いたくなかったのだが。

 

するとカレンは俺の前に立ち、何かを顔の前に突き出す――紙だ。

俺はその紙を取る。何か書かれている。

なになに?ええっと……香辛料?

目に入ってきたのは、数々の香辛料の名前。

――これは一体何に使うのだろうか。

 

「それ、買ってきなさい。この駄犬。」

「――なんで俺が?あとコレ何につかうの?あと俺の名前はコーヘイだ。前、自己紹介したよな?」

 

リストに目を滑らせる。

 

「治療に使うために決まってます。何を聞いてるんですか、駄犬のくせに。」

「俺の話聴いてた?俺名前言ったよね。地味に忘れてるんじゃないかと思って気をきかせて言ったのに。」

「AIが物忘れするわけないでしょう?お馬鹿さんですね。ああ、駄犬でしたね。」

「直す気がないのは十分わかった。あとリスト見てたら豆腐入ってんだけど、売ってんの?ていうかコレ麻婆豆腐作る気だよね?麻婆でどうやって治療すんだよ。」

「――うざったい。さっさと買ってきなさい。この駄犬!!」

 

げしっ、と蹴りをくらって保健室から追い出された。

ホントに何をする気なんだろうか。

一様購買に足を向けた。

 

 

 

 

意外や意外。

購買で買うことに成功した。――何故だ、分からん。

普通買えないものが買えてしまった。いや、俺が買えることを知らなかっただけかもしれない。

 

保健室に出向く。

 

 

 

 

保健室に入室するし、カレンに材料をわたす。

 

「これでいいか?」

「驚きました。まさか貴方に漏らさず買ってくる程の知能があったなんて!」

「なに?俺、お前に何かした?」

 

なぜここまで言われなくてはならないのか。

 

「貴方の存在が気持ち悪いからです。そんなことも分からないなんて、さすがは駄犬ですね。」

「生憎、罵倒される趣味はない。―――殴っていい?」

「きゃーー、男に襲われるーーー。」

 

見事な棒読み。

 

「だって貴方、ヘタレでしょう?」

「うるせい。」

 

そんなやりとりをしていると、突然現れる人影。

白銀の鎧――彼女の、エリカのサーヴァントだ。

 

「おい、オマエ。」

 

そのサーヴァントが話しかけてくる。

 

「俺であってる?」

「そうだ、オマエだ。」

 

どこか不機嫌そうなサーヴァントに呼ばれて近づく。

すると、なにか手渡された。――クナイ?投げナイフのような形状。刃には僅かに毒の跡。

この毒は――

 

「その毒、トリカブトですよ。」

 

そう言ったのは、カレン。何やら作業をしながら答えた。

しかし、トリカブトねぇ。

 

「これがマスターに向かって投げつけられた。」

 

そうサーヴァントは言う。

 

「なんで防げなかったんだ?サーヴァントだろう、お前。」

 

暗に守れなかったことを非難する。サーヴァントは苦い顔をしていることがうかがえる声色で。

 

「……二本同時に投げつけられたンだよ。俺に飛んできたブンは防げたが、隠すように二本目が投げられてた。ちっ、あのアサシン、俺のマスターをこんな目に遭わせやがって!!」

 

話ているうちに、サーヴァントは怒りを思い出したようだ。

――少しなだめて話をきくか。

 

「落ち着け!……お前のマスターは、今安静にしないと駄目なんだから。起こしたらどうする!」

「――っ」

「………取り敢えず、そのサーヴァントの情報教えてみ?乗りかかった船だ。力になってやるよ。」

 

彼女のサーヴァントから話をきく。

 

「…ふーん。幻術ねぇ。」

「ああ、ここだって切りつけたら霧みたいに消えちまう。それだけじゃない。蛇や狼にだって化けやがった。まあ……実体はなかったンだけどよ。」

 

ちらりとクナイを見やる。

 

「あと何か言ってなかったか?マスターの方でもいい。」

「ああン?……そうだな。確か、マスターのほうがトビ――ああ、鳥のほうの鳶な。アサシン異名に関係あるらしいぜ?」

「――なるほどね。分かったぞ、相手のサーヴァントの真名。」

「本当か?」

「ああ。」

 

あの英雄しか思いつかない。

 

「だが、タダで教えるわけにはいかないな。」

「ああ゛?」

「おまえのクラス名でどうだ?正直、呼びづらい。」

「……セイバーだ。」

「おう、そうか。」

 

なるほど、セイバーか。まあ、確かに騎士の格好してるしな。

 

「早く、話せよ!」

「ま、慌てんな。アサシンの真名は――加藤 段蔵。日本じゃかなり有名な英雄、忍者だ。」

「忍者?」

「日本で言うアサシンみたいなものだ。」

 

そう。アサシンの真名は加藤段蔵。

日本、武田信玄の配下であり『鳶段蔵』の異名を持っている忍者である。

彼の伝説、伝承ではよく幻術を使っていたエピソードが多くある。鳶段蔵の異名は、城の堀を軽々と飛び越えたなどその優れた飛翔術から名付けられた物である。

 

「だからエリカが起きたら、図書室なりで調べるように言っとけ。」

 

 

 

 

――――――マイルーム

 

 

あの後、保健室を出てそのまままっすぐに帰ってきた。

地味にエリカを抱えて走ったせいか、いつもより疲れを感じる。

 

「ねぇ、コーヘイ?」

「…ん、なんだ?」

 

いつものように、どっかりと座ったライダーがどこか不機嫌そうに訪ねてくる。

 

「貴方、少しあの子に世話をやきすぎじゃない?」

「そうか?」

「そうよ、いくら死にそうでも敵マスターを助けてどうするのよ。お・ま・け・に!アサシンの真名まで教えるし!これを、気を向けすぎって言わずになんて言うのよ!」

「対価にクラス名教えて貰ったろ。」

「でも、あのままほっとけば死んでたわ。」

「死んだら材料貰えないし。」

「―――辛いわよ。殺すときになったら。」

 

ライダーの心配してることもわかる。

親しくなりすぎて、手を抜くことを恐れているのだろう。

 

「――大丈夫だ。俺は殺す覚悟、出来てるから。」

「…そう。ならこれ以上きくのは野暮ね。」

 

 

 

 

 

――眠りにつく

 

――今日は無駄に多くのことがあった。

 

――おそらく明日、アリーナに仕掛けたのがうまく行ったなら。

 

――突き止めれるはずだ、バーサーカーの真名を。

 

 




バーサーカーの真名、この時点で当てれたらすごい。

前回で、ライダーの真名を察した人も居るはず。



勘のいい餓鬼は嫌いだよ(ハガレン感

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