Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

121 / 149
真名暴き回。


黒い影?

 

 カチャカチャと片付ける店員にもきゅもきゅとデザートを次々平らげるライダーを見て――どん引きした。どこにそんなに詰めているのか。非常に気になる。というか、質量の保存知ってる? え? 人間の体は小宇宙だから関係無い? 別腹は宇宙サイズだった…?(困惑)。

 

 既に最後の注文した食べ物がテーブルに並べられる。

 ここまで大食らいとは店員も引くどころか、もはや崇拝の域に至っている。何処に信仰を寄せているんだ。

 というか、ここまで付き合ってくれてありがとう店員さん。チップ払うくらい色は付けておかなくては。

 

 美味しいものを食べて気分を戻したのか、ライダーが唐突に話しかけてきた。

 

「今夜決着を付ける気なのだろう? なら、当然真名は暴いていような? んん?」

 

 前言撤回。全ったく機嫌を治していない。こっちの荒さがしをして、不備があるならやめさせようという魂胆が丸見えだ。

 あと、スプーンでこっちを指すのはやめなさい。行儀が悪いでしょ!

 

「そりゃあな。じゃあ、アサシンから真名を暴いてみようか」

 

 アサシン。あの英雄は伝承を考えれば、バーサーカー、あるいはセイバー近いと思う。今回召喚されたセイバーともっとも深い縁がある。

 彼を特定する情報を整理すれば、自ずと回答は現れる。まず、アサシンの戦闘スタイルだが、拳を使った戦闘を好んでいる。さらに、あのランサーの間合いを余裕をもって捌ききるある意味では規格外の英霊だ。アサシンの忍ばないのはいかがなものか、とも思うがそれはさておき。

 最初に出会ったとき、彼は人形と俺の違いを初見で見抜いていた。だからこそ、俺は逃げ切れたのだ。俺を初見で見抜けるヤツは―――例外を除けば一つの能力を持っている。それは『気』を読む能力である。

 どう足掻いても人形でしかない以上、気を読まれれば違和感に気づかれる。人形師の作るそれとは違い、魂そのものを乗せているわけではないためより違和感は顕著なものとなっている。

 ランサーの戦闘においては気を操って戦闘していた。そして、その戦いを俺は―――月で目撃している。自分のサーヴァントのことは思い出せないのに、出来事だけは色濃く覚えている。

 

「アサシンの戦闘方法。それは、シラットと呼ばれる武術だ」

 

 東南アジアにて発祥した武術。合気道や空手に似た戦闘スタイルであり、そして殺人に

特化した武術でもある。恐らく、アサシンの切り札はシラットを究極の形で完成させた一撃だろう。

 そして、最後に彼が持っている短剣―――それは、セイバーの持つ短剣の色違い、そして月で倒したバーサーカーが保有していた短剣と同一だった。

 

「アサシンの真名は―――ハン・ジュバット。セイバー、ハン・トゥアの兄弟子にして、その武芸に匹敵するものなしと讃えられた英雄。弟弟子のために、王を、国すら敵に回した善性の反逆者だ」

「ふーん。では、アーチャーはどうだ?」

 

 ふーんって、お前……。

 つまらなそうに聞き流すライダー。まあ、ライダーは接敵したことがないから、実感がわかないのかもしれない。

 

 アーチャー。このサーヴァントは昨日の一線でその正体を明かした。合えて明かした感も凄まじいが、彼の場合対した死因もないため、ギリシャ神話の英霊にしては珍しく弱点がない。

 

 その正体だが―――あの宝具が英霊の名を騙ったも同然だった。大庭園一つ覆うほど巨大な木馬。それは彼の逸話に他ならない。

 トロイアの木馬と言えば判りやすい。神々が介入したギリシャとトロイアの戦争において使われた作戦。

 どんな将だろうとトロイアの堅い防壁の前に足踏みをせざるを得ず、ただいたずらに兵を削るだけの結果であったが、この作戦で大局が決した。ギリシャに彼の者アリと知らしめた有名な逸話である。

 つまり、

 

「アーチャーは有名なアキレウスと一緒の時代を生きたギリシャの謀将―――オデュッセウスに他ならない」

「ほう。欧州では有名な英雄というわけだ」

「世界中で有名だ。彼の生き様はオデュッセイアという叙事詩で語られているが、これがまた面白い。古代文学の傑作だな」

「……随分と褒めるのだな」

 

 なんでそこで不満げな顔をするのだろうか。ツッコミ待ちかい? イリアスやオデュッセイアは男のロマンが詰められた傑作だぞ。読まないのは損だ。

 

「余はあまり本は読まぬ主義でな」

「それはもったいない! オデュッセイア、ていうかギリシャ文学を読まないのは―――」

「ええい! もうよいわ! 次、バーサーカーの真名を聞かせるが良い!」

 

 それ以上聞きたくなかったのか、遮って催促をしてくる。文学を余り好まないのか?

 ギリシャ文学、面白いのになぁ。

 

「そんな残念そうな顔をするな! なんか余が悪い感じになるではないか!」

 

 全然。いや全く。残念とか、思ってないし。

 

 で、お次はバーサーカーか。

 バーサーカーは日本系サーヴァントってのは見りゃあわかる。

 黒軍服に、日本刀。謎の薩長への殺意―――それは正体を知れば頷けるものはあるが。

 なら時代を特定すればより絞りやすい。軍服を考えれば明治初期が浮かぶが、日本刀は鎌倉から江戸に駆けて広く使われている。これだけでは特定には至らない。

 だが、俺にしか判らなかっただろうが、ヒントが戦闘中にあった。

 ――あの太刀筋には見覚えがあった。と言うかやんちゃ小僧のような暴れた剣筋でありながら、何よりも一対多の戦場を意識して型を作ったもの。一人一人を確実に倒すという理念を感じる剣。

 それは、天然理心流剣術。より戦場を意識した、何度か手習いしたこともある剣術だ。ただ剣だけを極めるというよりは、実践における勘や相手の武器の間合いなんかを経験して型を積み上げて武芸を磨くという方法だった。その師からはめちゃめちゃ叩かれトラウマめいた記憶があるが、その動きにそっくりだった。

 正直、最初に一撃をよけれたのは、あの動きを知っていたからだ。

 

 ……江戸末期にバーサーカーは活躍したと考えられる。

 あの技量だ。天然理心流剣術が盛り上がった時代はちょうどその頃でもある。

 幕末の英霊であるというなら、肝心なのはどちらの陣営だったかだ。

 幕末から明治に駆けてまで二大勢力が日本の運命を奪い合っていた。

 つまりは、幕府側か明治政府側か、ということである。

 バーサーカーは恐らく幕府側にたった英雄であろう事は言動から判る。では彼は一体何者なのか。

 壬生浪士と俺が呼んだとき、バーサーカーは反応した。

 何故なら、彼こそがその壬生浪士―――新撰組と呼ばれる組織を引っ張った頭、局長だからだ。

 

「バーサーカーの真名は―――近藤勇。新撰組を率いた局長。日本じゃ知らない人間がいない英雄だ」

 

 その生き様は多くの人間に影響を与え、多くの創作作品の題材となった。

 知名度が何処まで影響するかは判らないが、それでも破格の英雄だ。

 局中法度。つまりは、

 

 一、士道ニ背キ間敷事

(武士道に背く行為をしてはならない)

一、局ヲ脱スルヲ不許

(新撰組からの脱退は許されない)

一、勝手ニ金策致不可

(無断で借金をしてはならない)

一、勝手ニ訴訟取扱不可

(無断で訴訟に関係してはならない)

一、私ノ闘争ヲ不許

(個人的な争いをしてはならない)

右条々相背候者切腹申付ベク候也

(以上いずれかに違反した者には切腹を申し渡す)

 

 という厳しい(ルール)の中で新撰組は成り立っていた。「誠」の文字が記された旗を隊旗としており、その旗が現れただけで敵は震え上がったと言われている。

 

「て、わけだ。お前の戦ったバーサーカーは日本が誇る侍ってわけだ。って聞いてる?」

「もぐもぐ―――あ、終わった?」

「終わった?、じゃねぇだろ! 聞いてきたのお前だろ?」

「ふーんだっ」

「餓鬼かテメェは!? つーか、それで最後のパフェだろ。さっさと食って帰るぞ。もうおやつの時間過ぎてんだよ」

「あ、すみません。このジャンボスペシャルバナナパフェください」

「追加!? まだ食うの、お前!?」

「ふ。余は決断したのだ……お主が破産するまで甘味を食ってやるとな!」

「何という嫌がらせ……! さっき全部頼んだお前の分はちゃんと払ったんだぞ! 」

 

 ちゃんと払うんだろうな?という目に催促されて、金は払ったと言うのにさらに追加で頼みやがった。うちのエンゲル係数ヤバいことになってるんだぞ!?

 

「いくぞ、魔術師。金の貯蔵は十分か―――!」

「何格好いい、セリフ言ってんの? いいから、早く出るぞ!」

「やだ!」

「……わかった、そのパフェ頼んで良いから、ソレ食ったら帰ろうぜ? ……気に入ったなら明日、一緒に来てやるから!」

「ふむ、仕方ない。それで許してやろう」

 

 何で、ここで折れなきゃいけないのだろうか。

 金の不備はない。だが、店員の目が怖い。

 そろそろお暇しないと、とライダーを目端で睨みつつ、ふと、外の景色をガラス窓から見たとき―――

 

「―――あ?」

 

 窓にへばりつくようにして、黒い影がいた。

 それを見た瞬間、頭の奥で冷たいものが這う感覚に襲われた。

 

 ―――まずい。

 

 警笛、警報、警鐘が頭の中で騒ぎ立つ。

 目の前に存在があり得ない。ここにいてはいけない。

 

 余りにもおかしいものが、そこにいるのに誰も反応しない。

 

「む? どうしたのだ。そこに何かいるのか?」

「……サーヴァントは、サーヴァントが近くにいることが判る、よな」

「そうだな。アサシンの気配遮断以外は―――」

 

 急激に周りの音が遠くなった気さえした。

 コイツは、サーヴァントじゃない? なら、これは一体――――、

 

 

 黒い影は人型だ。顔は認識出来ない、男か女かも分からない。だが、人である。

 おかしな話だが、姿が判らないのに人だと俺は認識していた。

 

「――――――――――――Mariii――――――!!」

 

 聞き間違えでなければ―――まりー、とコイツは言っている。そして、影の奥にある目がライダーを見つめていた。

 まるで、ソイツのことを知っているかのようで、その目からは、しかし異常な感情が読み取れた。恋情、愛情、苦悩、絶望、憎悪。それらが一緒くたになった狂気。

 愛しいものを見つけたように、あるいは仇でも見つけたかごとき歓喜。

 

 黒い影、その腰から一つの影、尻尾のような、あるいは触手が伸びて―――、

 

「ふぇ?」

 

 考えるよりはやく、ライダーの手首を取って「強化」した腕力で窓から引き離す。

 黒い影の尻尾が高速で放たれ―――窓ガラスは粉々に砕けた。

 

 飛び散ったガラス片を受けつつ、机を蹴り上げ、即席の壁を造り視界を塞ぐ。

 

 窓ガラスが割れる瞬間をみたのかスイッチの切り替わったがごとく戦闘態勢に入るライダー。

 事後処理が面倒そうだが、そんなことを言っている場合ではない。

 ライダーの手を引いて、厨房を抜けスタッフ専用と書かれた裏口から出る。

 

 『折紙』を瞬時に展開し、状況把握と最適最短な逃走経路を確認する。

 

 謎の黒い影は喫茶の中を荒らしながら途轍もないスピードでこちらにむかっていた。こんな衆目ありきの所で戦うわけにはいかない!

 

 ライダーと走って裏路地を抜ける。

 そしてその先に―――バイクがあった。

 

「お前の騎乗スキルの使い所だ」

「む? まあ、乗れなくはないが――」

「ハイ、解除! そら、早く運転しろ! アレを引き離す!」

「よくわからんが、合い分かった!」

 

 ぐん、と引かれる体をバランスをとっりながら、後方から迫る黒い影を視認する。

 

「オイ! ライダー、お前はサーヴァントを感知しなかったんだな?」

「ああ!全く! そなたには見えておるのか?」

「真っ黒な、虚の底のような、闇の塊ってやつがな!」

「なんだ、それは!」

「俺が聞きたい」

 

 俺だけしか、視認できない。思い当たる節はある。

 例えば、反射的に起動した、この魔眼とか。

『妖精眼』という名前がつけられていながら実質できるのは、神秘を目を追うことだけ。ならあれは、相応の神秘とも捉えられるのだが。

 

「―――見てるだけで気持ち悪い!」

 

 複数の人間を生きたままくっつけばあんなモノになるのではないだろうか。

 

 今は、ライダーに頼ってアレを郊外まで引き離さなくてはならない。

 超速で迫り来る黒い影。

 人というか、トカゲのように体を低くして走ってくる―――アイツは一体何なんだ!?

 

 

 




なんか教えて!キャスターさん!

「…どうも。私こと前作のヒロイン、キャスターです」
「案の定またいる俺で~す」
「また鼻をほじって…出血しないんですか? ダメ人間さん?」
「誰が、ダメ人間だ!」
「…年中だらけたいとか、楽して金稼ぎしたいとか思っている人です」
「俺のことか…」

「と言う訳でこんなコーナーが始まったワケですが…そこにお題が入ったボックスがあるので」
「取れってか、俺に取れってか!」
「…そんなのも取れない、情けない、仕事できない人なんですか? キャスターショックです」
「後で覚えてろよ…! えっと、一個目のお題は『キャスターの伝説的なあれが難しくて判りません! 教えてください!』だってよ」
「ふふ…私はわかりずらい女…」
「はい、なんか色ボケ馬鹿が傷ついたので、俺が回答しまーす。まず確認だが、キャスターの真名はモルガン・ル・フェ。アーサー王伝説に登場する悪女で~す」
「ふふ、どうせ私なんて悪女、2番目の女…」
「とか言ってますが、アーサー王伝説が書かれる前、要は伝承の時点では悪女属性は持っていませんでした。あれ、後世の後付なんですね。
 元々は、アーサー王をアヴァロンへ招く、妖精の長女的なポジションだったんですね。
 この時点でなんと姉妹は彼女ふくめ9人です。
 で、中世ころにキリスト信仰意外悪、という世界感の押しつけとついでにちょうど良い悪役として悪女に改変されたんですね。おかげで、アーサー王と敵対しているくせに、最後は王をアヴァロンへ導くという意味の分からない娘となったわけです。
 しかし、ここで終わらないのが人類史。
 欧州でアーサー王ブームが起こっちゃうんですね。
 で、イギリスを知るにはアーサー王からとか、キリスト教と文字の勉強にうってつけ的な感じでさらに多く親しまれるワケです。
 ヨーロッパ、つまりはイギリスからフランス、ドイツ、イタリア、スペインと物語が幅広く親しまれるわけで。逆に言えば多くの翻訳がされたり、判りやすいよう例えられたりしたんですね。何せ家畜の声の捕らえかたすら違うのだから、さあ大変です。
 そしてさらに翻訳されたものがイギリスに還ってきて再翻訳されてエクスカリバーが出来るワケです。日本で言えば、『鎖国』言葉とかそうです。あれ、オランダ語を再翻訳して当てはめた言葉だったりします。
 まあ、そんなこともあって色んな解釈が生まれ、今日に至るわけです。
しかし、もっとも(作者)苦しめたのは、fate原作者きのこ、改めタイプムーンwikiをです。モルガン・ル・フェの項をみると判るように大幅な改編を喰らっているわけです。婚約者とか、その他もろもろ。とくにヤバかったのはその婚約者、ロット王との話です。
 伝承ではロット王の結婚相手はモルガンではなく、モルゴースという彼女の姉です。まぁ変身能力でにゃんにゃんした思っていただければつじつまは合います。しかし、フランス製アーサー王伝説が受けたせいか、エレインに改編されたり、されなかったり。
 おかげで(作者)の認識はロット王=女神ハンターになったしまったのです。あと、基本敵にブリテンの女事情は略奪合いが殆どなので彼らの勘違いにもその色が入っていたり。ヤベェ、アーサー王周りカオスすぎ、と思ったそこのあなた!
 調べれば調べるほど味が深く、意味が分からなくなっていく。それがアーサー王伝説だ!
 アレ?これもう俺が説明してね?」
「……これが放置プレイですか、そうですか。今回の教えは『自分の仕事を他人に任せてはいけない。自分主体でやり通そう』でした」
「お後がよろしいようで」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。