Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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第二回戦 五日目

第二回戦 五日目

 

 

――目が覚めた。

いつものようにライダーと今日の計画を立てる。

 

「アリーナに行く次いでに保健室に寄っていく。」

「――ええ、構わないわ。」

 

 

 

 

 

――――――保健室

 

 

カレン・オルテンシアに会うのは、気が滅入るが。助けたのが俺である以上回復するまでは多少の面倒はみるものだろう。

保健室前にくると、ほんの少しの喧噪が聞こえる。

妙に思いながら引き戸をガラリと開ける。

 

「ん?」

 

真っ先に鼻につく刺激臭。それもアンモニアといったものではなく、香辛料の独特の臭いである。むせそう。

 

「あら、駄犬。来たんですね。」

 

俺の侵入に気づき声をかけたのは、カレン。

カレンはその細い腕で白い器を持っていた。中に入っているのは真っ赤な劇物――麻婆豆腐であることがわかる。

 

「ワアォ。」

 

ここまで香ってくる臭いで、そのえげつなさは分かるというもの。――酷ぇ。マグマダイブのほうがよっぽどいいぜ。

食わされるであろう人物に目をやる。

背を起こされその体勢で縛られていた。

エリカはもう涙目である。何をされるかもうわかっているのだろう。

 

「ふふふふっ」

 

カレンは黒い笑顔。レンゲをいれ、エリカに近づいていく。

 

「カレン、それ治療なのか?」

「ええ、立派な治療ですよ。」

 

そう言うと彼女はその煮えたぎった麻婆豆腐の効能の説明を始める。

 

「エリカさんの身体を侵す毒は宝具です。ですので、どうあがいても完全な解毒は無理です。今も、毒が骨子の再構成を邪魔しています。その効力を弱め、歩くくらいにはできるようにします。そのための麻婆です。コレには、口から摂取するタイプの薬が入っています。」

「薬だけでよくね?というかなんで麻婆?」

 

入れるなら果物ジュースにでも入れればいいだろうに。

 

「――趣味です。」

「だろうな。」

 

やっぱり趣味だった。

カレンはこの世の地獄というべきものをエリカに近づけていく。

 

「こ、来ないでください!!」

 

必死の抵抗をするが、縛られてる上にあまり力が入っていないようで無駄に動いているだけである。

 

「た、助けてください!」

「ええ、助けてあげますよ。」

 

ベッドの上にのる形で手にもったレンゲを近づけていく。

いやいや、とエリカは涙目で顔を振る。

こっちを助けてという目で見てくる。

――どうしろと。

 

「助けてやりたいのは山々だがな、かわる事も出来ん。あきらめろ。」

 

なおも堅く口を閉じるエリカの唇にレンゲをぐりぐりするカレン。

 

「――ふう、強情ですね。」

 

一旦エリカから視線を放し俺の方を向く。そして悪辣な笑顔を浮かべる。

 

「――どうやらエリカさんは私を嫌っているようで食べてくれません。ええ、せっかく用意した物を食べていただけないなんて……。私ショックです。」

 

そして俺を見て何か思い出したような仕草をして。

 

「さっき代わってやりたいくらいそう言いましたね?」

 

――おうふ。

この時点でだいたい察した。

そして彼女は俺に器とレンゲを差し出す。

 

「私は疲れたので休みます。まあ、あなたはエリカさんとも友好があるようなので、まさか食べることを拒否するとは――思いませんし。」

 

最後は確認するように、エリカを見て、そのまま中心にある椅子にすわる。

そしてこっちをガン見である。

――こ、こいつ、眺めるつもりか。

カレンの口角はつり上がっている。

 

 

振り返ってエリカのいるベッドへ近づき、隣にたつ。エリカの顔は赤い。照れからだろう。

――パチン

自身の中のスイッチを入れるこれで感情を抑制する。

甘い展開になると思ったら大間違いだ。むしろ拷問である。

 

「ほ、本当にする気なんで―――むぐっ……!!」

 

口を開けたので突っ込む。

流動食を流し込む感覚だ。舌が辛さで焼き切れそうになってようが気にはしない。

身体をタダ作業をしてるだけの機械と化す。

はき出さないよう口を手でふさぐ。

 

「租借して飲み込め……!」

 

無理矢理租借させ飲み込ませる。

口を開かせさらに追加で突っ込む。

これを何度も繰り返す。

エリカの表情など見るまでもない。

 

「――ぷはっ、むぐっ……!!!」

 

コレを三分つづけようやくすべてを食べさせた。

エリカは顔を真っ赤にさせて倒れた。

 

「ふっふふっ、い、いいですよ、ふ、ココまでの鬼畜ぶりを発現させるなんて、口でずぼずぼさせて、気持ちよかったですか?」

 

笑いを堪えるようにカレンは言う。

 

「妙な言い回しはやめろ。」

「あとこれ景品です。」

 

――景品?

紙袋を渡される。中に入っているのは、エリカに頼んだもの。

 

「き、きたら、ふ、渡してくれって、ふっ。」

 

その言葉を最後に保健室を後にした。

 

 

 

 

――――――アリーナ

 

 

保健室を後にして、アリーナに来ていた。

 

「マスター、奴ら来てるみたいよ。」

 

どうする?とライダーの目が問うてくる。

 

「当然、奇襲をかける。ライダー、馬を使って奇襲するぞ!」

 

ライダーは馬を出現させ飛び乗る。同時に俺も乗る。

 

「じゃあ、行くわよ!!」

 

ライダーは馬を操り、走らせる。バーサーカーの気配がする場所に。

 

 

 

少しすれば、大柄コンビが見えてくる。

ライダーは速度そのままにマスターごと切りつけにかかる。

バーサーカーはマスターを槍撃から守る。

 

辺りが赤く染まる――セラフの警告だ。

宙へ翻すようにライダーは降り、地面に立つ。

俺もついでに降りる。

ライダーの白槍は、既に真紅の水晶剣となっている。

 

「その首切り落としに来た。」

 

ライダーは低い声で宣言した。

 

「ここでくたばりたいのか。なら――バーサーカーァ!!!こいつらを殺せ!!」

「■■■■■――――!!」

 

前回の戦いのせいか、自分が絶対的な優勢にたてると確信している。

――わざと手を抜かせていたことにも気づかずに。

 

バーサーカーが切りつけにかかってくる。

それをライダーは軽くいなし、バーサーカーの腹にソバットを決める。ズドッと思い音。

バーサーカーはレスターの前まで飛ばされる。

前回、バーサーカーの剣を奪おうとしたのは俺の指示である。

宝具であろうそれだ。仕掛ければ何らかのアクションは取るだろうと予測していた。

肩の上に乗った時点で剣を振れば、首を取っている。

あの後上機嫌になったお前は、感動そのままに情報を口ばしっていることだろう。

――うまく行きすぎて笑いそうになる。

 

ライダーはバーサーカー相手に優勢に戦っている。

さすがと言うべきか。

 

「ライダー。スキルの使用を許可する。」

「いいのか!?」

 

ライダーの声は歓喜。あれだけボコボコにされたのだ。意趣返しも当然したいだろう。

 

「吠え滾れ――『焼き尽くす我が憤怒』!!」

 

奔る炎熱。確かな質量を持ってバーサーカーに直撃する。

 

「――ッ■■、■■■――――!」

 

これには、バーサーカーもたまったものではないといった感じ。

ライダーも手応えを感じているようだ。にやり、と笑っている。

 

セラフの強制介入を受け、戦闘は終了した。

 

「……なんでっ!お前のライダーは明らかに、バーサーカーより――っ!!ああ、そういうことか!」

 

 

どうやら気づいたらしい。明らかにライダーが弱かったのは何故かが。

しかし、取り乱す様子がない。

 

「妙って顔してんな。俺の想像通りなら、お前は俺を興奮させて何か喋らそうとでも思ったんだろう?だが、残念だったな!!お前の仕掛けたものは全部破壊させてもらった。」

「――ちっ、さすがに気づかれたか。…四つは少なかったか。」

「俺はもう用事はねえし、このまま帰らせてもらう。」

 

そう言うと、アリーナから退出したようで、姿が消えた。

四つという言葉に反応しなかった辺り四隅全部、破壊したようだ。

 

「――ふう。コーヘイ、どうするの?全部破壊されちゃったみたいだけど。」

「一応最奥までいこう。ちなみにだが、俺が仕掛けたのは、全部で五つだ。」

 

 

 

 

最奥に到着する。

 

「で?その五つ目って何処にあるの。」

 

ライダーの疑問に俺は手で上を指す。

 

「――あっ。」

「頭上には、気が回らなかったみたいだな。」

 

折り鶴が浮遊していた。それはぱたぱたと羽ばたき俺の手にとまる。

記録を折り鶴から閲覧する。

 

 

『さすがだな、バーサーカー。』

『■■■■■――――。』

『いや、魔力弾が飛んできたのは驚いたが、お前が防いでくれたしな。さっきのライダー戦、お前の魔法の剣が取られそうになったときは、さすがに焦ったけど。このままいけば、決戦も楽勝そうだな。』

 

そんな会話をした後、四隅の使い魔を破壊して回っていた。――頭上の物には気づかずに。

記録はここまでだ。

 

――ふむ、魔法の剣。

これは、かなり絞り込めるかもしれない。

 

ライダーとアリーナから撤収する。

 

 

 

 

――――――マイルーム

 

マイルームに帰ってきて、ライダーと今回入手した情報を整理することにした。

 

「バーサーカーの持っていた剣が魔法の剣だとレスターは言っていた。」

「魔法の剣?」

「ああ、確かにそう言っていた。」

 

レスターは、終始上空の使い魔に気づいた様子はなかった。

魔法の剣が宝具であることは確定だろう。

 

「問題は、どういう魔法の加護がある剣なのかしら。」

「――おそらく、レスターの言っていた無敵性と関係ある。」

 

現時点で言えるのはそれくらいか。

ライダーは疑問を投げかける。

 

「どうしてそう考えられるの?」

「相手はバーサーカー、小細工が得意なタイプじゃない。メイガスのいう魔法を扱えるとは思えないし、アーサー王の持っていたとされる魔法の鞘と、同じニュアンスを感じる。

魔法の鞘と同タイプなら持っているだけで常に効力を発揮してもおかしくない。むしろそれならば無敵性とまで言った説明がつく。常に発動してなければそこまで言わないだろう。」

「確かに。そう考えたほうが妥当かも。やるじゃない!コーヘイ!」

「――て、言ってもまだ真名までたどりつけて無いけどな。」

「明日にでも図書館に調べに行きましょう。」

「ああ。」

 

 

会話をした後で、エリカに渡すトラップを作成する。

作業を始めてから数分くらいたったあと、突然ライダーが口を開いた。

 

「ねえ、コーヘイ。」

「ん?」

 

ライダーは神妙な面持ちでこちらを見つめている。

瞳が、ゆらゆらと揺れている。

 

「マスターは、もう余の真名に気づいておるのではないか?」

 

ほんの少しの空白。

 

「――どうしてそう思った?」

「だって保健室で、セイバーからきいた少ない情報で真名を突き止めて見せたじゃない。確かに、日本の、貴方の故郷の英雄だったのも一理あるかもしれないわね。――でも、一番の根拠は、貴方が調べにいかなかったことよ。余が、あの日、もう一つの宝具があることを明かしたのに、今までは、情報が開示されればすぐにでも調べに行っていたのに、その日に限って調べなかったわ。いままで考えすぎだと思っていたけど。今の貴方ならたどり着いてもおかしくないもの。」

「なるほど。――安心しろ。まだ、真名にはたどり着いちゃいない。かなり絞り込んだけど、まだコレってものがないんだ。確証がない。」

「………そう。分かったわ。」

 

というか男性口調と女性口調が混じり合った話し方はなにげに初めて聞いたかもしれない。

 

話している間に、トラップの作成が完了した。

小さな箱、手に収まるサイズのもの。地面に叩きつけるだけで四方に展開し中心にサーヴァントが通ると自動で発動し、銀の鎖で雁字搦めにする。比島の使ったコードキャストをモチーフにしている。

――ふむ、なかなかいい出来だ。

 

 

 

トラップ制作が終わったところで、明日に備え寝ることにした。

 

 

 

 

――決戦が近づく

 

――明日には、バーサーカーの真名も暴けるだろう。

 

――気にかかるのは、不安に思うのはただ一つ。

 

――はたして俺の願いは

 

――殺す七人に匹敵するほどの価値があるだろうか。

 

――必ずしも価値が必要というわけではないだろうが。

 

――不安に思っているのも事実である。

 

 




  友人A:「ccc編ってやんの?」
  作者:「extra次第」

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