Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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やっとクライマックスだー(白目)
なお、戦闘はしない模様。


Sword,or Death

 山道を降って、しばらく歩けば、とある校舎が見えてくる。

 

 閑静な町並みからほんの少し離れた、喧噪が通う彼ら専用のものだった場所。

 

 深夜とあれば、その喧噪は見る影もない場所である。

 

 ──懐かしい。

 

 そう思うのは、火々乃晃平。着物を夜風に揺らす男の名。

 

 着物姿をした男は深夜の夜道、静寂を足音で裂きながら歩いて行く。

 彼の後ろからは、体にぴったりとはりつく黒い戦闘装束を纏った女が背を追うように歩いている。

 

 最初の方こそ彼女──スカサハは暇つぶしに愚痴を言っていたが、今となっては全ての愚痴を言い終わり、結果として二人には沈黙が訪れた。

 奇妙なことに、今まで彼女が何か言えば食らいついてきた男は、愚痴にただ頷いたり、同調したりしていた。

 まるでごっそりと人格が入れ替わったような印象すら受ける。

 

 その揺れる背が、どこか空虚で、つかみ所の無いものに見えて仕方がない。死んだ幽鬼のようだ。

 

 ──へんな男だ。

 

 そう彼女が思うのも仕方ない。彼女が勇猛果敢だったり、筋骨隆々だったり、使命に燃えていたりと、基本的に戦士の背ぐらいだ。人でないのなら、やはり幽鬼そのものだとか神もどきとか、怨霊とかである。

 故に喩えようのない、そう見た事の無い背だった。

 

 ──鍛えがたりんな。しかもピークは2、3年前とみた。

 

 どうやら自分と戦う気らしい男の体付きからして、彼女はそう判断する。おそらく利き足なのだろう右足と左足では筋肉の付き方に差がある。良く右で無茶な回避でもしていたのだろう。筋肉の付き方にムラがある。基礎こそちゃんと身につけていたようだが……技術のほうはもはや比べるまでもない。

 実際に戦う姿を見てはいないが、男が腰につけ揺らす刀から察しはつく。

 魔術を男が得意としているのはスカサハとて分かっているが、戦いというのは基礎の出来具合がものを言う。火々乃が得意とした剣術は、本人は気づいていないが既に示唆している。

 その完成系、あのバーサーカーだ。あの太い太刀筋、その戦術性、どれも男は真っ当に伸ばしきっていないだろうとスカサハが察するのも無理からぬことである。

 

 ──はて。その無様さでどう戦う気があるのか。そも、勝つ気があるのだろうか。

 

 と考察するのだが、どれも男の至らなさ、不安定さに行き着いて……どう考えても真っ当に戦う気がないのは見え見え。

 結果、端から勝負を捨てている、という結論に行き着く。

 では、その意味は? と考えれば、全く分からない。自分と戦う結果を誰かに見せつけたいようだが……それで得をする相手はいないし、損と言えば男が命を失うくらいか。こんな事態を起こしている黒幕が、たった一人のためにココロをさくとは思えない。

 

 ──いや逆に、ヒ(・)ビ(・)ノ(・)コ(・)ウ(・)ヘ(・)イ(・)が(・)命(・)を(・)落(・)と(・)す(・)こ(・)と(・)が(・)黒(・)幕(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)の(・)誤(・)算(・)な(・)の(・)か(・)……?

 

 その発想を得たは良いが、どういう誤算かは思いつきようがない上、自分が死ぬことを前提で動く人間の気が知れなかった。自分のように死にたがりというわけでは在るまいし。

 

───と、スカサハがたいそうまじめに考察する一方。

 

 ヒビノはと言えば。

 

 

 ──あー。久しぶりに揚げパン食いてぇー。

 

 

 と、かなりどうでもいいことを考えていた。

 スカサハといえども阿呆の考えは追えない。というか追えるはずがない。一体どこの誰が、死ぬかもしれないような戦いに望む相手が、『揚げパン食べたい』と考えると言えようか。

 

 

 しかし、校舎が近づいてきたことで、スカサハも向っていた場所に察しがつく。

 

「コーヘイ。そっから先は、学び舎だぞ? まさか、ここで殺し合いに興じる気か? だとしたら笑えんな」

「いや、ここであってる。此処なら邪魔も入りにくい。ちゃんと学校閉鎖させて明後日まで近寄るやつはいない。人払いも完璧だし、なにより……ここには思い入れがある。」

「思い入れだと…? ほう、ここはお前が育った場所と言うわけだ。」

「ああ、そうだ。いろんなことがここから始まって、終わっていった。ああ、本当に懐かしい。大切な時期を、俺はここですごせた。ままならないことは山ほどあったが、大凡、幸せな時間を過ごせた場所だ。」

 

 遂には校門の前まで二人はきた。

 夜の校舎は、昼と違い重々しく、かつ恐ろしさを感じる。白は明るい色でもある反面、冷たい色でもあるからだろうか。

 

 火々乃が門に触れれば、ギギギと重い鉄が一人でに動き、開く。

 

「さあ、行こうか」

 

 白霧山中学校と書かれた敷地に、足を踏み入れる。

 

「────っ」

 

 それだけで、異質な世界に踏み込んだと分かった。

 

 ねっとりと粘り着くような、生暖かな空気。外の冷たさとは明確に違う。

 魔力がこれでもかと詰め込まれ、逃げ場を失っている。

 

 スカサハが閉じようと勝手に動く門を睨めば、そこには奇妙な白いチョークで書かれた線が張付いている。

 

「地脈から魔力を、吸い上げて囲っているのか」

「流石だな。やはり気づくか。そうでなくてはならんが……いやしかし。ふむ」

 

 火々乃口調がまた変わっている。

 彼が振り返ってスカサハに問うた。

 

「どうだ、少しは魔力が充足したか? 三日三晩貯めた。マスターがいない以上満足とはいかないだろうが、多少はマシになったろう」

 

 ──また奇妙なことをこの男は言う。

 

 何故敵に塩を送っているのか。これから戦う相手にそこまでする意味が判らない。本気に勝つ気がないのか、そもそも戦う気がないのか、それともコレすら第三者に対しての策なのか。

 さすがのスカサハとて焦れてきた。いつもの遠回しなそのやり方がむず痒い。ここまでくれば説明の一つも欲しいというか、少しはしておくものだろうと。

 

「……貴様は本当に何がしたい。そろそろ話すべきだ。私が信頼に値しないというのはわかる。貴様が何者かに備えておるのも分かる。だが……決定的に、お前の狙いが読めない」

「ははは、お前が? まぁじぃでぇ? ──よかった。そうなら、このやり口に成果はあるってことか」

 

 火々乃の笑いの入った言い方にスカサハはむっとしたが、その苛つきを拭いさるような穏やかな笑みを火々乃は浮かべた。

 

 校庭に向って歩く。そこにたどり着くまで、火々乃はスカサハにちょっとした話をすることにした。

 

「──百万回生きた猫って知ってるか?」

「この国の物語か? なら私が知るはずもないが……どんな話だ」

「では、ほんの少し語り部をば」

 

 百万回生きた猫、というのは子供ようの絵本だ。

 内容は以下の通り。

 

 あるところに、生きては死んでを繰り返し、百万回生を受けた猫がいた。

 生き返っては死んで、そのたびに飼い主に変われていた。

 猫が死ねば、飼い主は決まって涙を流しわんわん泣いていた。

 しかし、猫は泣いたことはなかった。

 

 ある日、その猫に見向きもしないものがいた。それは白い、美しい猫だった。猫は腹が立った。

 

 ──何故か? 言及はされてない。まあ、たぶん。その白猫が……つまらない顔してたんだろうさ。……続けるぞ。

 

 それからというもの毎日毎日、その白猫に「俺はすごいんだぜ、何たって百万回生きたんだから」と自慢話をしにいった。

 

 白猫は気のない相打ちを討つばかりでした。猫は今日も、「俺はすごいんだぜ」と言いかけてやめた。

 そして、「側にいていいか?」と猫は言う。白猫は、「ええ」とだけ言った。

 

 二匹はいつも寄りそうようになり、一緒にいることがなによりも大切に感じるようになった。

 それからかわいい子猫がたくさん生まれ、猫はもう得意の台詞、「俺はすごいんだぜ」を言わなくなっていた。いつのまにか自分よりも、白猫や子猫たちのことを大切に思うようになっていた。

 

 やがて子猫達は巣立って行き、白猫は少し年を取った。猫は、白猫と一緒にいつまでも生きていたいと思っていた。

 ある日、白猫は猫の隣で、静かに動かなくなっていた。

 猫は白猫の亡骸を抱いて、生まれて初めて泣いた。わんわん泣いた。

 100万回泣いた。そして、ぴたりと泣きやんだ。

 

 猫は、白猫の隣で静かに動かなくなっていた。

 それから猫は、もう決して生き返らなかった。

 

 ──そういう話だ。

 

「良い話だ。お前が何を言うのかと試しに耳を傾ければ、あまりにも真っ当だったから驚いたくらいだ」

「この話からは、それこそ色んなテーマが見て取れる。……猫が、生き返らなかった理由。お前に分かるかい?」

「ふ。馬鹿にするな───雌猫に合えないからだろう?」

「そうだ。だが、俺は……ちょっと違う解釈をしてしまった」

 

 火々乃は、寂しそうに、あるいは嘲笑するように言う。そんな考えしか出来なかった自分を愚かと嗤うように。

 

「猫は生き返った。しかし、雌猫はそこにはいない。故に、目を閉じた。そして夢に微睡み続ける───幸せな夢を見続けたとな」

 

 原点は胡蝶の夢。自分が蝶の夢を見ていたのか、あるいは蝶が自分のを夢で見ているのか。

 

「なんて、ばからしい。決して、生き返ることはなかった。そう文面にあるのに、俺は作者の言葉を信じることが出来なかった、いやしようとしなかった」

 

 

「──俺ってヤツはね。君が思っている以上に、たいそう卑屈で腹黒い」

「知っている。薄々感づいていたさ。情けない上にみみっちいヤツだと。演技のソレだとは、私は思わなかった」

「……そりゃそうさ。演技してないし」

 

 男は自分の記録を縛って、あえてその側面が強くなるよう仕向けたのだから。

 なればこそ、それは神の目をもってしても見抜けまい。精神までは観測出来ないのだから。

 

 ───火々乃は、今更本性を見せようとしている。自分で悪性と罵る、愚かさを。身勝手な祈りを。

 

「俺には一つ、願いがある。それは――全ての人々の幸福だ」

「全ての、とは大きく出たな。お前のような矮小さでは、精々両手程度だろうに」

「ははは。まったく。でも実際、良いところまでいったんだ。まあ、勇気ある少女達のおかげで見事に押し負けたんだが」

 

 『月』の聖杯戦争。彼が倒された、最後の舞台。

 

 人を理解出来なかった獣に、彼は叱咤し、諭していた。

 

『俺には、確かに悔いがある。お前が俺に憐憫を抱くような結末が待っているだろう。

 

 だがな。俺はその生涯に。今まで生きてきたが、悔いはあっても後悔はない。それだけはできない。

 

 彼女らの死がなくては、俺は、今の俺は生きていない。

 人間ってのは、一人では生きていけない不完全なものだ。されど。そこに無駄はない。

 数多ある出会いがあり、それによって人生未来が創られていくならば。人はその生を真っ当するだけで、尊さがあるのだ。命そのものには、意味が無くとも。無駄はなく。ただ価値はないが、尊さはある』

 

『意味をつくるのも、価値を創るのも、人間よ。だが、神は尊さを創れなかった。

 

 その尊さこそが、人間が誇れる有一無二の宝。未来を築く大いなる一なのだ。

 

 俺は、その美しさを人間に見た。お前が自我を持つ。生まれるずっと前にな。人間に思わず羨望の念を抱いてしまうほどに。

 ああ、きっと。俺はあの日―――人を愛したのだろう』

 

 愛という尊いもの。それを火々乃は見たのだ。どうしようもないほど、醜い悪性をもつ人間もいるなか。ただ、簡単な。それでいて美しく感じた―――あの笑顔を。幸福を。

 

 人間を信じられぬ。自分すらも信じられぬ彼ではあるが。

 

 その、誰かの笑顔を、尊い在り方を信じている。だからこそ、火々乃は善人も悪人も、救いたいと思うのだ。

 たとえ、望まぬ生を強いられた者であろうと。

 強い悔恨に人生を閉じることになった者であろうと。

 

 そこに例外はない。

 

 そんな彼の在り方は───人類愛と呼ぶに相応しい。

 

 しかし。

 

 彼の根底にあった祈りこそそれだが、『月』のセイバー、モードレッドに見せたものはそれとは別のものだ。決定的な彼のエゴ。

 

「でも俺は、そんなたいそうな理想なんぞより────俺は、何処にでもいる誰かの笑顔が見たかったんだ」

 

 その先。始まりの願いに、結びつけられた。たった一つ、彼が叶えられなかった欲。自分では―――たどり着けなかったもの。成(・)れ(・)な(・)い(・)と悟らざるを得なかったもの。きっとそれが彼女――モードレッドだった。あるいは英(・)雄(・)と(・)呼(・)ば(・)れ(・)た(・)誰(・)か(・)。

 

 つまりは。

 

「──俺は、誇(・)れ(・)る(・)人(・)間(・)になりたかったんだ。俺の父のように。尊い人(・)間(・)に。いずれ怪物に成り果てると分かっていたからこそ、俺は祈りを抱きそれで満足していた。そもそも、悪であることを否定出来ぬ俺だ。その愚鈍な、悪意ある有り様で何を誇れという」

 

 そんな自嘲。されど。そんな彼に―――かの少女は”側にいたい”と言ってくれたのだ。だというのに。そこで目を閉じて、何も誇りがないとほざけば、あの子は悲しむだろう。

 

 すこし、彼は瞳に色を出した。

 

「……お前の、せいだぞランサー。お前のせいで、俺は、誇りってヤツが欲しくなって。酔いたくなった────意地が、顔を出しちまったんだ」

 

 語気を強める。スカサハはその男の独白に、まじめに付き合っている。

 聖者、賢者のような穏やかな顔は何処へやら。

 

 誠実な、人間の顔が前に出ている。

 

 ──スカサハが最初に見た気質。それが輪郭を確かにした。

 

 火々乃に否定的だったのは、それを隠していたからだ。しかし、それはもはや払われた。

 思わずにやりと、口が弧を描いた。

 彼女は気づく。もしかして、彼は自分の性格を、在り方を正しく見た上で隠していたのだろうか。非常におかしな話だが……胡散臭い火々乃を信じようとする自分がいる。

 

 ──ああ、まずい。そんな顔を見せられたなら、応えぬワケにはいかなくなる。

 

「ほう。では、その誇りとやらを、どうやって得る気だ」

 

 スカサハ知らず、期待する。

 しかし、むしろここまで言われたなら、期待せぬ筈ない。

 目の前の男は、愚かにも人を幸せにしたいと言っている。どういう父親だったかをスカサハは知る由はない。

 されど。彼にとって大切な人間だったとは見て取れる。

 その男から学んだ、誇り。火々乃晃平の謳う尊さ。

 

 ──男というのは、誇りに酔える時ほど幸福な生き物はいない。

 

 グラウンドにたどり着き、彼らはそこで向き合った。

 

「─────スカサハ、俺は君を倒す。君に勝って、お前を心のそこから笑わせる」

 

 それを聞いて、女は思う。

 

 ──ああ、言ってしまった。この男は言ってしまった。もし、その男らしくへたれて、言葉を継げなかったら。その傲慢さを正す程度(半殺し)で済ましてやろうと思っていたのに。

 

「ふふふふ……ふはははは──ハーッハッハッハッハ!! ふふ―――正気か、貴様?」

 

 正気を問う。当たり前と言えば当たり前だ。

 男はなんだ? ───人間だ。

 女はなんだ? ───英霊だ。

 

 言うまでも無いが、スペックが違いすぎる。

 しかし、そこらの凡百の英霊にそれを言ったのではない。

 人類の到達点の一人にそれを言っているのだ。笑わないはずがない。

 

「すまない。俺は君に全力を出して欲しかったんだが……予想通り、君は他の誰かと契約を結ばなかった」

「ん? 全力を出せ、だと? お前に、あはは、ハハハっ、よ、よせ、腹筋がねじれるっ」

「でも、それは俺も全力を出せないってことでおあいこにしといてくれ」

 

 その言い方ではまるで、自分を殺せる力があるようではないか。ありきたりな線では───魔眼を変質させて、バロールのソレにでもするか。とスカサハは思うが、火々乃が謳う力はそんなモノではない。

 

「いやはやしょうもない者じゃない。信じれないだろうから……限定的に、断片をお見せしよう」

 

 そう告げ、仰々しい仕草でその言葉を放つ。

 

「『救いは遍く此処に在り──“紅華水月摩天楼(こうかすいげつまてんろう)”』

 

 

 世界が、一変した。

 

 大地には赤く花が咲き乱れている。赤い大地。咲いているのは────彼岸花。

 空は暗く夜のよう。闇は深く、星々が煌めいている。

 

 中でも目を引くのが──半分だけ光が反射している、青い星。対して完全に丸く色づく白い貌。すなわち───地球と月。

 

 しかし、その世界は……、

 

「ぁグ───」

 

 と苦悶の声と共に消え去った。

 

 

 もとの施設に戻ってくる。

 

 グラウンドには、先ほどの世界の影響か、彼岸花がそこらに生えている。

 しかし、時間とともに。それらは消え去っていく。

 

「固有結界……それも侵食性の代物……、なるほど。お主──」

「わかって、貰えた、かな」

 

 激しい動悸を押さえる。月では、ARCHETYPEになれたから使いこなせた。ここで使えば───バカみたいな速度で終りが来てしまう。

 

 しかしこれで。

 

 火々乃の外敵に対する策は全て行使された。覗いていた全ての目は切断した。

 

「ここは特異点。修正力の少ないここで、もし、アレを町中に広げてしまうと───取り返しがつかなくなる。だから、使えない」

「お前の心象というには、如何にも異星そのものだったぞ?」

 

 深呼吸し、心を整えた彼は、言葉をスカサハに返す。

 

「その通り、俺は原初の一。Type:Lilithと呼ばれるものに成り果てる未来を保持している」

「……ほう。それが、お前の出し得る全力というヤツか。それなら私を殺せるやもしれんな」

「いや、殺せた。でも───それは俺が、欲しいものじゃなかったんだ」

 

 スカサハは知らぬ。いや彼は教える気が無いのだから当然か。

 彼は、もうこの時点で休息に死んでいる。

 

 固有結界を一度でも解放すれば、そうなってしまう。余りにも高い出力に体が先に燃え尽きる。

 

「勘違い、していた。お前は、どんな形であれ、死ねれば幸せになるだって──」

「間違ってなどいないさ。お前の思うとおり……」

「うっとうしいまでに天邪鬼だな、君は。そうじゃなかったんだ。ただの死じゃ、アンタは幸せな顔なんてしない!」

 

 断言。男は見たからだ。実践したからだ。故に知っている。

 

「さぁ……槍を取れ、ランサー!」

 

 ばちり、と空間が歪む。そ(・)れ(・)ま(・)で(・)顕現させてしまったら。彼の死はさらに急速に近づく。

 歪みから、一本の白い茨水晶の槍が現れる。

 

「ぁ───────────────あ、」

 

 瞬間、意識が数千死んだ。

 

 瞬間、スカサハは目を見開く。その槍の名を知っている故に。

 

「『大神宣言(グングニル)』だと……、何故、お前が───?」

 

 奇しくも、彼女の声で、火々乃は軋み割れた思考から戻ってくる。

 

「ははっ、なに、昔、つっても一年前くらいかな。パチってきた」

「は? 冗談はよせ。そんな適当で得られるそれではないだろう!」

「ホントさ。ま、意味の無い戦利品、というか、なんでか知らんが俺の中に返ってきていた。というか、こんなの些細な話だろ?」

 

 腰に差したままの日本刀が邪魔なので校舎裏まで放り投げる。

 

 かるく、表層をなで、白銀の両刃剣へ返る。

 

「発想はあったけど本当に出来るとは思わなかった。質感も自由ってのはいいな。流石は“勝利の剣”と同一視されるだけはある、有名な神話兵装だ」

「──死ぬ気か、貴様」

「……命懸けて、アンタとやり合うっていってんだよ。一切の余裕無し。愛した女にすら見せてねぇとっておきだ───全身全霊で、倒してやるよ」

「退く気は、無いと言う訳か……ならば、これを告げねばならぬ」

 

 火蓋は、今に切られそうになっている。

 

「力を見せるがよい、勇士よ。出来なければ、お前の命を貰うまで」

「力を示そう、影の女王よ。我が全てを持ってアナタの夢を切り裂こう」

 

 

 ───Sword,or Death

 

 

 かたや死にたがりの女にして、誇りある戦士。

 かたや生かしたがりの男にして、誇れなかった聖者。

 

 いざや、いざ。

 

 尋常に、勝負。

 

 




誇れなかった彼に、誇って欲しかった彼女。

「なんです、あれ。聞いてないんですけど」
「...(目逸らし)」
「こっち見なさい、ロット王」
「はい、すみません。ついやっちゃいました」
「――本当にバカですね。貴方という人は...」
「え、今日は生存判定? やっ――」
「シャラップ。後で釜ゆでにしますよ?」

*

誇りを真っ当に彼が抱いていたら、まあスカサハに時間がないのに根っから鍛え治されていたり。

・時空の果て

通りすがりのライダー「あー、デュー? なんかすごくイラッときたからそこら変にブレス吐いて?」
通りすがりのドラゴン「えっ...まさか彼奴何かやらかした? 我が友人よ」
通りすがりのライダー「ええ、たぶん。また知らず口説いてるわ。絶対。しかも私よりおっぱい大きいヤツに」
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