Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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赤バ―になっているだと…
皆さんありがとうございます!



第四回戦 七日目 決戦 

 朝が来て決戦の日を迎えた。

 四度目の決戦である。

 

 決戦の相手はロージス・エネルベイ。この世界における聖堂教会の代行者にして破門された者。代行者クラスが破門されるとあらば相当のことをしたのだろうが――。

 

「軽く情報の確認をしましょう」

「――そうだな」

「となれば――サーヴァントのクラスからだな。あのサーヴァントのクラスは唯一つ」

 

 ロージスのサーヴァントは俺のジャミングから逃れる際、マスターの指示を聞いて放った宝具があった。それは――ギャリオットである。それを起用に扱って見せていた。

 ならばそのサーヴァントのクラスは―――。

 

「――ライダーだ」

「へぇ……私のクラスと同じなのね」

 

 好戦的な笑みをこちらにむけるテムジン。

 

「恐らくあの時みせた宝具は一端でしか無い――最も有名な逸話は7000人からなるスペイン艦隊を撃破した事のハズだ」

「ということは、大量の船からの攻撃と考えられるな」

 

 それに――ロージスはテムジンの宝具を知っている。

 

「テムジンの宝具――『全て灼き滅ぼす勝利の剣』(レーヴァテイン)は知られているからあっちも対策してくるだろうな」

「簡単には打たせてくれないってことね……」

 

 近接戦を仕掛けつつ宝具で牽制するとかだろうか。

 

「で、結局敵のライダーの真名は何だったのかしら」

 

 ギャリオットを扱い、スペインの艦隊を撃破した男――ならば該当する英霊は二人。バルバロス兄弟である。

 だが、そのうちのどちらかが分かる情報があったはずだ。

 それは―――銀腕、すなわち義手である。

 義手をしていたということは、たった一人に絞られる。

 

 腕を失ったのは――兄。

 

「あのライダーの真名は――バルバロス・オルチ。ヨーロッパでは『赤髭』バルバロッサで有名な英雄だ」

 

 ピピッと電子音が鳴り、もうじき決戦のステージが用意されるという通達がきた。情報の整理もここまでにして立ち上がる。

 

「そろそろ行くとしよう」

 

 ――ロージスを必ず殺す

 

 

 

 

 暗闇の中を突き進み、エレベーターの中に入る。

 ギギと機械の駆動音。

 エレベーターが動き出す。

 俺の背後にはサーヴァントの二人が立っている。

 

 

 

 中央を不透明な障壁で遮られた部屋の中で対戦者と向き合う。向かい手には当然ロージス・エネルベイの姿が見えた。

 

「ほう、そちらの少女が君の本当のサーヴァントだな」

「………まあ、そうだが?」

「――随分な殺気を立てているな。何かあったのかね?」

「ロージス、アイツお前に怒ってるぜ」

「何故だ?」

「はッ……相手に聞いたらどうだ?多分だが、あの趣味悪いプレゼントだと思うがね」

 

 どうやらロージスは本気で分かっていないらしい。振る舞いからそう見て取れた。

 

「ああ、そう言えばそんなこともしていたか。だとしてもあんな物は所詮はただの戯れに過ぎんだろう」

「あちらさんはそうは思ってねーのさ」

 

 戯れ――死を陵辱し、善を嘲笑う。全くもって醜悪としか言い様がない。

 

「ホント醜悪にすぎるな、俺のマスターは――」

 

 そう言う敵ライダーの顔には嫌悪感はない。それどころか――。

 

「そっちはいいよな。こっちみたいなオッサン二人じゃなくて両手に花と来た。羨ましいね」

「羨まれること自体は悪くないわね……」

「いやお前を羨んだんじゃなくて、お前のマスターに言ってんの俺は!」

「確かにそっちよりはましだな……しかし解せんな」

「何がだ?セイバーのマスター」

「バルバロス・オルチと言えば、無用な殺戮は好まないと聞いたが?」

「ああーなるほど、俺の真名知ってるのか……こいつはイイや。なにげに俺の真名を言い当てられたヤツは初めてだな……いいぜ、答えてやる」

 

 そう言って彼は間を置いて言葉を続けた。

 

「確かに俺は殺戮は好まない――だが、陵辱は別だ。アッサリと命を失わせるより、最後まで楽しんだほうがいいだろうが」

「――あのマスターにしてこのサーヴァントだな」

「ハッ……それはお前にも言える事だろうアーチャー。お間抜けなマスター同士お似合いじゃねぇか」

「何だとッ――」

 

 嘲笑と共にライダーからは放たれた不快にさせる笑い声。同時に膨れあがるアーチャーの殺意。

 

「ははははッッ!滑稽な様だったぞ。お前のマスターは」

 

 最後までアーチャーを求め続けていたことを俺は知っている。

 

「――間抜けなのはお前だよ。ロージス・エネルベイ」

 

ガコンと言う音と共に昇降機が止まる。

 

「どちらが間抜けからはここで分かるさ――」

 

そう言ってロージス・エネルベイらは決戦場へと向かいさった。

 

「ハッ、望むところよ。私のマスターは間抜けなんかじゃないわ」

 

とライダーも決戦場へ向う。俺もそれに続こうとするが――。

 

「コーヘイ」

 

 アーチャーから呼び止められた。振り返ることはせず。

 

「なんだ?」

 

とだけ返した。と言うのも彼女が言いたい、いや聞きたいとしている言葉が分かっていたからだ。

 

「――宝具の開帳をしても良いのだな」

「ああ――お前のマスターは決して……間抜けなどではなかった。存分にやって来い!」

 

 

 

 

「随分と長かったな――ヤってたのか?」

「そんなに長くなかっただろーが。女にゃ、色直しってものがあるのさ……俺はそれに付き合っただけだ」

「私、そんな時間なしに出て来ちゃったんだけど……」

「なんで地味に落ち込んでんだ……お前はいいんだよ、十分綺麗だから」

「そ、そう?」

 

と照れてはにかんでみせるライダー。

 彼女自身が俺を選んだ訳じゃないとしても、俺のサーヴァントはこのライダー――テムジンなのだ。

 

「――見せつけてくれるじゃないか」

「ならば……そのサーヴァントをにべもなく殺し、略奪してみせるのも一興よ。相手は多勢だがいけるな――?」

「誰に言ってやがる!多勢相手とか生前じゃいつもことさ。任せておけよ、マスター!」

 

 ライダーが殺気と共に戦闘態勢をとる。

 俺は魔術回路に魔力を奔らせる。

 

「セイバー」

 

 テムジンの顔を、瞳を見る。

 

「アーチャー」

 

 アタランテの顔を、瞳を見る。

 

「手はずどおりだ。俺の援護は期待するな――」

「――私達が負けると思ってるの?」

「ははっ………思ってねぇよ」

「なら、いつものように勝利を願いなさい」

「お前こそ死ぬなよ、コーヘイ」

「――俺達が負けると思ってんのか?」

「「まさか」」

 

 ふっ、と互いに笑ってみせる。

 俺の前に、二人のサーヴァントが立つ。

 

 刃に焼け付く思いが憂いを募らせていく。

 

 鍔の金属音を響かせ、刃を引き抜く。

 

 

 

―――――Sword,orDeasth

 

 

「祈りをココに再現する――」

 

 一手目から魔術――大量の折り鶴を展開する。

 

「穿て――!」

 

 アタランテから放たれた矢がライダーに向っていくが――サーベルによって切り払われる。

 

「そっちがいきなりなら――こうだッ!」

 

 魔力の奔流が吹き荒れ一点に収束をする――宝具を開帳するつもりなのだ。

 

 刹那、ライダーの背後から召喚される――大量の船。百艘はありその全てに亡霊――船の船員だった者がそこにはいた。

 

「はっはあ!これこそ我が死して戦い続ける『恐るべき赤髭の海賊団』(バルバロス・クロォーザン)だ――!」

 

 ライダーの叫び声に合わせて無数の骨がけたたましい声を挙げる。神の元へいけぬ殺戮兵。まさしくスペインの艦隊を沈めた逸話の再現――。

 

「チ、やっかいだな――貴様ら全員この剣で祓ってやる」

 

 テムジンに襲いかかる無数の亡霊達を次々に切り捨てていく。

 アタランテはテムジンに襲いかかる砲弾を落としていく。

 

 

 そんな激しい攻防の中を――突っ切っていく無数の折り鶴達。

 

 それはやがてロージスへと向っていく。そして――中から出て来る一つの刃。

 

「――なッ」

「さっさと死ね――!」

 

 ギンッと金属音。防がれたようだ。

 

「チ――」

「一応コレでも――代行者なのでね。甘い――!」

 

 俺の突き出した刃を魔術強化を施したカソックの袖で防ぎ、瞬時に底裳突きで返してくる。

 

「――うおッ」

 

 すんでの所で交わすが、交わすため転がったがその起き上がりに、ロージスが距離を詰めてきて貫手突きを放ってくる。

 なんとか防ぎ攻撃を受けながし、距離をとり体勢を整える。

 

「はッ、腐っても代行者ってわけだ」

 

 完全に意表を突いたと思ったのだが。防ぐ所かやり返されてしまった。

 

「ふむ?疑問はあるが――ハッキングコードでも奔らせたか」

「ご想像にお任せする――」

 

 俺は再び斬りつけにかかった――――。

 

 

 

 

 ウオオオ―――と押し寄せる亡霊骸骨兵の群れ。

 ライダーは先陣を切るように――船を奔らせてくる。

 船体からは絶えず砲撃を飛ばしながら突っ込んでくるのだ。

 それが百船を超える量で、船にも多くの船員を乗せてくる威圧感は凄まじいもの。

 

 先にテムジンを囲む様に兵を配置し足止めをしながら主力による攻撃――これには流石のテムジンとは言え苦渋の顔をせざるをえない。

 

「フンッ――敵が多、過ぎッ!」

 

 幾多の敵を葬り去ろうとも、次から次に襲ってくるのだ。うっとうしいことこの上ない。

 

「コレでは――まずい」

 

 船はアタランテとテムジンの周りを囲むように運転され砲弾が飛んでくる。

 骸骨兵を踏み台にしながら、矢を砲弾や敵に射かけるが――このままではまずいとも直感していた。

 

『焼き尽くす我が憤怒』(フレア・オブ・ラース)!!」

 

 剣先から吐き出された炎熱は骸骨兵を飲み込み焼き尽くすが――わらわらとまた群がってくる。

 

「いい加減しつこいわよ――!なんかいい手はない?アーチャー」

「あるにはあるが――セイバー、この包囲網を抜けられるか?」

「抜けられれるけど――まさか!宝具を使うつもり?」

「――その通りだ。止めてくれるなよ、セイバー」

 

 傷ついた霊基で宝具を撃つと言うことは―――。

 

「……アーチャー。其方のことは嫌いではなかった――」

 

 テムジンは馬を召喚しながら『焼き尽くす我が憤怒』を放つ。そこから脱出をはかったのだ。空すら駆けるものを撃ち落とそうとするが―――彼らの敵は彼女だけではない。

 その直下、空に向って射かける構えを取る彼女こそ本命。宝具を撃つ瞬間に身体の構造体の剥離を感じるが―――。

 

「勝てよ……『訴状の矢文』(ポイボス・カタストロフェ)!!」

 

 彼らがそれに気づく頃には遅かった――空を覆い尽くす矢の嵐が吹き荒れる。数には数を持って。対軍宝具であるその一撃はことごとくの骸骨兵を砕き、骸骨兵に留まらず船体にもダメージが入る。

 

「チ、いいもん貰っちまったか」

 

 いち早くライダーの扱うがギャリオットは離脱をしたが、間に合わず少なくない損傷を受けた。が、まだいくつかの船舶が残っている。

 ライダーの宝具はガレー船が全て破壊されぬ限り兵が生み出されるというもの。残っている以上問題はない――。

 

「……そういうことね――ありがとう、アーチャー。貴方のおかげで勝ち目が見えたわ」

 

 上空から見下ろすテムジンがその仕組みに気づかないハズもなく――。

 

 

 

 

幾度か合わせた剣戟。此奴は怒りにまかせて戦うだけでは勝てない。

 

「――ガッ」

「どうした――身体が遅れているぞ」

 

 身体の構造体に――腹の部分に亀裂がはいる。まとも入ったようだ。噴き出る(データ)を治療魔術で治す。

 

「――ぐッ」

「あららそっちこそ――手、どうしちゃったの?」

 

 ロージスの手の平に大きく切れ込みが入っている。底裳を受けた際に斬りつけておいたのだ。

 ――ッ。

 突然の殺気。直感に従って身体を地面を転がり、飛んできた飛来物を避ける。

 

「黒鍵……使えたのかよ…」

「むしろ何故使えないと思ったのかね?」

 

 一瞬で距離を詰め、黒鍵を三本ずつ指に挟み振るってくる。剣圧もまた強く凌ぐので精一杯だ。ギリギリと音を立てて、さらに詰め寄ってくる。

 

「慈悲だ――死ねぇ!」

「慈悲などいらぬ――つーか顔、ちけ―ンだよッ!!!」

 

 腹を蹴飛ばす。縦横無尽に斬りつけるが黒鍵で全て防がれる。が――俺とて馬鹿ではない。

 

「ぐガッ――背後ッ!?そうか――あの折り鶴はッ」

 

 そうソレこそ本命。崩れた体勢をのがさず斬りつける。

 飛んでいく腕。

 ロージスは距離を取り、無くなった腕を見る。

 

「左腕――利き腕なんだろう?」

「やってくれるものだな――咄嗟にかばったとは言え、右腕を奪われるとは」

 

 チ、左腕を貰う予定だったのだが右腕にかばわれてしまった。

 

「ふははッ、流石といっておこう。だが―――」

 

 そう言って、拳を放ってくる。左腕を奪ったというのに勢いは衰えずむしろ加速している。

 

「速度を、手数を増やせばことたりるッ――!」

 

 激しい剣戟。想定外の攻撃は腰から素早く鞘を抜き対処した。ステージ端に鞘が飛んでくる。

押し切られるとまずいと思い、一気に距離をとって辺りに舞う折り鶴の渦に飛び込む。

 

「そうきました――かッ」

 

 後ろから斬りかかったのになんで反応できるんですかねェ!

 斬りつけては、離れる辻斬りスタイル。

 

 パターンをある程度作っては変え、変速的に攻撃する。数手も擦れば――ロージスは傷だらけになる。

 ついに黒鍵を取りこぼした。その隙を突き攻撃を仕掛ける―――。

 

「――ぐぁ」

「甘いといったはずだァァア!!」

 

 顔面を掴まれて地面に叩きつけられる。そして放り投げられた。

 ロージスは三本の黒鍵を懐から引き出し――投げつけてくる。身体は燃えるように熱いのに頭の中はすっきりとしている。アドレナリンの分泌が激しいのだろう。

 

 考えるより早く、地面に刀を突き立てひっくり返る様にして体勢を直し飛んでくる黒鍵を切り払う。

 

「はあ……はあ……お互いボロボロだな」

 

 ちらりと己のサーヴァントをみれば、あと少しで決着がつきそうだ。

 

「はあ…なるほど、サーヴァントの援護をさせないために私を狙い、全力で殺しに来たと。はっ、お前のほうが外道じゃないか」

「まあ……その通りさ。テメェは畜生だけどな」

 

 お互いの身体の構造が悲鳴を主人に伝えている。今晩は安静まったなしだ。

 

「そろそろ」

「決着を」

 

 ――身体を前倒させながら。

 

「つけるッ!!!」

 

 同時に相手に向って斬りつけにあるいは拳の一撃を入れようと走り出す。余計な雑念を廃棄して――この一刀に懸ける。

 

「この―――クソ畜生野郎が――!死にやがれ!!」

「この―――クソ外道野郎が――!死に晒すがいい!!」

 

 

 ―――一閃。

 

 

 

 ドサリと倒れる音。勝利したのは―――。

 

 

 

 

 

 

 

「俺の勝ちだ――ロージス・エネルベイ」

 

 最後に立っていたのは俺だ。

 向こうに視線を移せばサーヴァント達の決着も着いていた。どうやら同時に決着がついたらしい。

 

***

 

 

 遠い昔の日々を見ている。

 

 もはや叶うことのないものを。

 

 

 

 

「そんなところでなにしてるんだ……?ロージス」

「ヘイジス兄さん!?突然驚かさないでよ」

「悪い、悪い」

 

 そう言って全く悪びれない顔で自身のたった一人の家族は笑ってみせる。

 ヘイジス・エネルベイ。私の自慢の兄だ。この頃は、貧しい生活でも幸せな毎日だった。

 戦争孤児でしか無かった私も魔術回路があることで養子として兄と一緒に引き取られた。それぞれに適切な教育を受けてそれなりの成績をとって。

 私は聖堂教会に入り代行者として働いていたが、兄は結婚して幸せな生活を送っていたのだ。結婚式は多少の寂しさを憶えたが、それでも兄の幸せな顔を見れた。それだけで十分だった。

 

 

 兄が自殺した。

 

 

 そんな知らせが届いたのはうざったいほどに晴れた日だった。

 そんな、何故。頭には疑問符が浮かび続ける。兄は幸せに生活していたのではないか。彼から届く手紙にはそんな生活が描かれていた。

 私は真相を求め奔走した。

 

 

 

 結果、残酷な真実だけが見つかった。

 

 

 兄は自殺したのではない。婚約した女とその母に殺されたのだ。

 エネルベイ家は言わずと知れた名家である。である故に長男である兄には多額の保険金が掛けられていた。兄は次期当主である。そして妻は子を産んでいた。男の子をだ。

 故に乗っ取りもかねて兄を殺したのだ。

 この真実を知ったときこそこの世界を呪ったことはない。

 

「ああ、何故こんなことに」

 

 気がつけば――辺りは血だらけになっていた。

 

***

 

 

「すまねぇ、ロージス」

 

 ライダーの胸にある切り裂かれた後こそ勝敗を如実に語っている。

 

 障壁、赤い障壁が出現し敗者と勝者を隔てる。

 ロージスの身体はノイズに犯されほどけかかっている。もはやあれでは前をみる事すらままならないだろう。

 

「そこに、そこにいるのか?」

「ああ――ここにいるぞ」

 

 ライダーは霊核が斬られ消失し始める身体のまま、倒れかかる己のマスターを抱き留めてみせる。

 

「ああ――ここにいたのか、にいさん」

 

 その言葉を最後に、この世界からロージス・エネルベイは消失した。

 

「でけぇ、弟が増えちまったな」

 

 ライダーはこちらに振り返って。

 

「なんで此奴を見捨てなかったかなんざ――簡単だろ?俺の弟でもあるからだ。俺が見捨てちまったら誰が此奴を救うのさ。人を救えるのは人間だけでね、俺だけは此奴の味方だ」

 

 ま、いま気づいたんだが。そう言って消失した。

 

 

――――第四回戦はココに終了した。

 

 

「――ぁぐぅ」

「マスター!?」

 

 身体の体勢を崩す。痛みが尋常ではない。自分で痛みをカットしたが。先程感覚を戻したのだ。激痛が四肢に走る。

 

「だ、大丈夫だ……休めば治る」

「こんなに無茶して……!」

 

 

 

 

――――――保健室

 

 

「ここまで身体の構造をボロボロにするだなんて……虚数の海でも突っ切ってきたんですか」

「いやぁ、ちょっとね」

「言う気が無いなら別に構いませんが」

 

 そう言うカレンさんはいつものそれを取り出す。激辛麻婆を取り出す。

 

「病人に喰わせるものじゃねぇだろそれ」

「ちゃんとお薬入れてますよ」

「入れる必要ないだろうが!?直接くれればよ!」

「美少女のアーンですよ?」

「激辛麻婆じゃなければまだしも――むぐッ」

「さっさと食べやがれください。この駄犬。このゴミムシ」

「まさかのランクダウン!?」

「え?自分が虫より上等だと思ったんですか?」

「薄ら寒い笑みを浮かべながら言うな――むぐっ」

 

 こうして良薬いり激辛麻婆を食わされた。

 

「…ホントに辛ぇや」

 


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