Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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タイトルを変える事になるのは第七回戦辺りになりそう。クライマックスも近づいてくる。 感想待ってるぞい!


第六回戦 四日目

 

「これは……すごいわ…!」

「よせやい!照れるじゃねーか」

 

 ライダーは俺の身体をぺたぺた触りながら驚嘆する―――まあ、それもそのはず。何せ、この俺の魔術――集大成を見たのだから!

 

「マスターにそっくり!これなら――ってマスター?」

 

 ライダーの言葉通り、ライダーの目の前には俺がいる―――等身大、俺人形そのものが。

 ふはははは!出来は上々!かの()()()もかくやと言う―――いや、言い過ぎた。あの人形師にはどうあがこうが届くまい―――精々、あの作品に比べれば、でくの坊も良いところだった。

 

「突然テンション上げて、いきなりテンションを落としたわね……。えっと、話を戻すけど――これなら、彼奴らだって騙せるでしょう」

「そうだと助かる―――まあ、動揺くらいは狙えるだろうしな。しかし、毎度のことだが触覚の感覚がないってのが違和感がすげえ」

 

 奴等――アサシン陣営はマスターを殺して勝利してきたと考えられる。俺を殺そうとしたのだって慣れたものだった。サーヴァントとマスターを分離し、マスターをアサシンで殺す。今回こそライダーを挑発しての罠だったわけだが、他のサーヴァントはそうでなかった。わざわざ馬を狙っていたのだから。他の英雄までほいほいと馬を乗っているわけでもあるまいし。

 だが―――こうして俺はアサシンの――ハサン・サッバーハの毒で死にかけた訳だがこうして立っている。そう誤認すれば、やつらは動揺するに違いない。

 保健室を出る前にいくつかカレンに聞いておいた。聞いた質問は唯一つ。『アサシンの毒について聞いてきたマスターに――ジョージ・トレイセンはいたか?』だ。

 対して彼女は『ええ――そうですね。あの黒ずくめ山羊のことでしたら――アサシンの毒をわざわざ調べに来て、解毒するならどの薬を使うのか。どう言った効能か。そう言ったことを聞いてきました』

 黒ずくめ山羊――的を得すぎである上、センスがよかったので笑ってしまった。しかし―――ビンゴだ。ジョージは、あのアサシンに襲わせ、その上で勝利する算段を整えたのだ。ジョージは、前回のような失敗がどうたらと言っていた気がする。だとするならば―――。

 

「マスター……思考に沈むのもいいけど、そろそろ時間みたい」

 

 ライダーの声で至高の中から現に這い出る。

 懐からは、無機質な音が鳴り響いている。それは目覚ましのアラームだ―――戦争を、非日常を告げるものだった。

 

 

 

 

――――――アリーナ

 

 

「―――どうやら彼奴ら来てないみたい。先手をとるチャンスだけど……どうするの、マスター?」

「当然先手を取る」

 

 

 ついでに鍵を奪って、今日相手に鍵を取らせなければ―――次の機会も現れる。ならば――先手を打つしかあるまい。

 

 

「ライダー馬はどうだ?」

「ええ、昨日もいったけど大丈夫――この通り!」

「ぶるるっ」

 

 そう言ってライダーは俺に馬の元気なさまを見せてくれる。まるであの程度で俺がくたばるか!と言っているようにさえ思うほどだ。

 前回、馬は無残に惨殺された。しかし、ライダーは特に問題ないと言っていた。ライダーも忘れていたらしいが、ライダーの召喚する馬は――どこぞかにある存在の分け御霊として召喚しているらしい。噂に聞く『座』から直接召喚しているのかも知れない……知れないだらけだな――今更ながら、自分がライダーの事をあまり知らないと言う事実に気づいた。終わったら、ライダーと話してみるか。

 

「ん?どうかした、マスター?」

「いや、何でもない。……そろそろか。やっこさんが来る前に鍵――第一暗号鍵を手に入れるぞ!」

 

 やられたらやり返す、何倍にもだ!

 

 

 

 

「なんだこれは……!」

 

―――異質。

 

 アリーナに入った瞬間、身体が、脳が、警鐘を響かせる。ここに居てはまずい―――!

 

 身体を直感のままに――転がる様に後退させる。すれば直後――上から光弾――アーチャーの言っていたライダー――かのチンギス・ハンの弓によっての狙撃か!ウチのアーチャーもまともに受ければ即死すると注意してくる程の一撃…!

 

「させない……!」

 

 迫り来る矢を撃ち落とす――黒塗りの短剣。アサシンのものだ。

 

「はぁ、はぁ、入った瞬間に狙撃か…!なるほど……初戦の意趣返しか!」

 

 何故、アサシンの宝具から生還できたのは逃した以上仕方が無い――が、何故ココにこれている!まさかサーヴァントに担がれて――?それこそまさかだ……そんなことをする理由がない。まともに動けないのなら、サーヴァントに狙われる。オマケにこっちにはアサシンがいる。相手には、アーチャーが居ることがばれている。なのにそんなデメリットを押しても来るメリットがない。時間が立てば立つほど、毒が蝕んでいくはずだ。たとえ、解毒剤を飲んだとしても、それは緩やかに崖に向って走るトロッコのようなものだ。激痛は走り続けているはず――。

 

「マスター、どうします――――フンっ!」

「相手がどう出て来るか、分からんがゴール近くからこっちを狙撃しているのだろう。ならばとれる方法は――アーチャー聞こえているか」

『聞こえてるわ、マスター』

 

 近くにアーチャーから預かった石を叩きつけるとそこから魔方陣が広がり、人形(ドール)が出てきた。それもそこらのエネミーとは違う、アーチャーの英霊としての能力を転写されたものだ。これによってアーチャー自体はマイルームにいながら劣化とは言え戦うことが可能となった。アサシンはさっきから飛んでくる矢の迎撃をしている。

 

「マップがないと、流石に私の宝具を使うこともできないし」

 

 アーチャーの宝具を使うには、マッピングが必要で今の状況では使うことは厳しい。使用する隙もさっきから狙い撃ちされるのでは使いようがない。

 

「―――ま、でも――矢を撃ち落とす!くらいは、この身体でもできるから――アサシンと一緒に鍵を取ってくるといいわ!こっから迎撃しておくから!敵マスターには二体目のサーヴァントはいないだろうから!」

「頼んだ、アーチャー!行くぞ、アサシン」

 

 アーチャーの迎撃を信頼し、アサシンと駆け出す。

 こっちの手段の多さが幸をそうしたと考えるか。

 あっちには出来ない事だろうし、こんな策なんて―――。

 

「――食いちぎってやるさ!」

 

 

 

 

「――だって!過ごい剣幕で移動し始めたわよ!マスター!」

「やっとか…想像より、遅かったな」

「言ってる場合!って、こっちもあの人形を釘付けにしておくから―――思う存分やってきなさい!勝算があるのでしょう!」

「ああ―――勿論だ。任しとけ、ライダー!」

 

 

 紙で構成された身体――エーテル素を封入された身体、(データ)の転写で自身として、複製し再構成した魔術――簡単に言えば、ラジコンである。バッテリーを魔力だと置き換え、駆動する身体を車体とすれば、ラジコンその者だろう。そんな身体を目的の場所へ走らせる。俺の目的を意趣返しと感じたのなら―――騙されるはずだ。

 

 

 

 

 

「――ッ、マスター!」

「ぐッ……!なんだコレは――!」

 

 走っていた俺とアサシンの間に突如、紙吹雪――いや、大量の折り鶴の群れが現れ、俺の身体をアサシンとは逆の方向に吹き飛ばす。

 

『驚いてばっかだな、オイ。流石に飽きてきたぜ――テメエの驚嘆面は、よ!』

 

 腹に鋭い痛みが走るのと同時に身体が吹っ飛ばされる。

 突然目の前に現れた人影に腹を蹴飛ばされたのだ。まさか―――!

 

「ま、サーヴァントじゃないだけ、ましだろう?」

「―――ライダーのマスターか!」

「むしろそれ以外ないだろ?アホか、お前」

「あの毒、いや、逃れたのはどうでもいい。あんな邪魔が入るとは思わなかったしな。だが―――何故立てている!?あの解毒薬を飲んだのなら、下半身が弛緩し、まともに歩けなくなるはずだ!」

「ふーん―――で?それが何か問題?」

「ち、答える気は――無い訳か!」

「いきなり、ナイフで斬りつけてくんなよ。当たったら痛いだろうが」

 

 チィッ!咄嗟に懐からナイフを取り出して斬りつけたと言うのに――ヘラヘラと笑って避けやがった!

 さっさと令呪でアーチャーを呼ぶか?恐らく場数はそれなりに経験しているようだし――隙がまるで無い。

 

「ま、ここでアンタを殺そうとしたら。サーヴァント呼ばれちまうし――まあ、なんだ。さしでやり合う機会なんてそうはない。なら、一丁聖杯問答と洒落込もうじゃないか」

 

 サーヴァントが呼ばれる可能性もあるのに、この余裕――俺達がやったことの仕返しなら――令呪が届かないような処置を……くっ、予想通りか―――アーチャーとはおろか、アサシンにすら念話が届かない。孤立無援って訳だ。

 ここは―――相手にのっておくか?

 

「しっかし、ギャクス・ホリックがテメエの所属している組織ってのはとうの昔――それも1980年代にたった一人の魔術師に壊滅したって話だったともうが?」

「随分と博識だな…ヒビノ。その通り、一度壊滅に追いやられたが、六年前に再結成された。西欧財閥に反発する魔術組織としてな」

「ハッ……傭兵が良いところだろうが」

 

 そう、吐き捨てられれば、俺とて苛つく。

 

「傭兵風情だが――そう言う貴様こそ、何処の出身だ?」

「――前も言ったと思うがフリーランスの魔術師さ」

「お前も傭兵みたいなものじゃないか」

「ああ――そうかもな」

「で――話は戻るんだが――――――お前は聖杯に何を願う?」

 

 俺の願いか。俺は、たった一つの願いを持って、この聖杯戦争へ参加した。

 

「―――感染症の消滅。唯それだけを望む」

「感染症の消滅?」

「お前も知っているはずだ――!今世界では未知の感染症がはやり人が徐々に死に絶えている事実を!治療法は確立していても―――それを受けるのは、受けられるのは―――限られた、西欧財閥に所属しているヤツだけだ!」

「――ん、ああ、そうか」

「多くの生存圏からはぶれたものは即座に切り捨てられる。管理されることを、人生を設計されることが受け入れられないのなら今の社会構造では―――地獄が増えるだけだ!」

「だから――お前はそれを願うのか」

「ああ―――そうだ」

 

 あの地獄は――俺が変えなくてはならない。誰かが成さねばならぬというなら自分でやるまで!」

「そうかい――よーく、分かった。もうこっちの()()もすんだし、さてどうしたことか――やっぱ、殺すか!」

「問答と言ったくせに――!話さないのか!」

「お前が勝手にベラベラ喋っただけだ!」

 

 

 ち、卑怯なヤツめ!

 

 

 

 

 

「――で?どうだい?騙された気分は」

「……どう、なってるんですか…その身体は、私に触れたら、死ぬはずなのに……」

「あれ?話聴いてます?アサシンさん?」

 

 もはや話を聞かず俺の身体をぺたぺたと触るアサシン。毒の宝具の身体の影響を受けないことが不思議のようだ。ライダーと殆ど似た動作をしている。抓ったりひっかいてみたり。

ちなみに今の俺とアサシンは端から見れば抱き合っている様に見える。まあ、何せアサシンをここで引き留めておくのが今回の目的だからだ。

 だが、人形の身体であることが悔やまれる。もし、人間の身体ならライダーとは違う、この女性的な身体――ハッ、殺気!

 

「―――悪いね」

「え?―――ぐッ」

 

 ズドン。音と共に身体が揺れた。

 

 俺のつぶやきに顔を上げたアサシンの顔が不思議そうな顔から悲痛な面持ちへ変化する。

 それもそのはず。今の俺の身体にはぽっかりと穴が開いている――――勿論、アサシンにも。

 ライダーからの狙撃―――結界ごと射貫かれた。いやー、酷いことするなあ。アサシンの霊核までぶち抜くとは。ライダーの技量様々ってところか。

 

「う……あ…ぐ」

「ネタばれすると―――こう言う事なんだ」

 

 腕を軽くかき、ぺらりと肌だった所をめくり、自身が紙だと言うこと教える。すると目を見開き、合点のいった様子で消えていった。

 

 同時に俺の身体も瓦解する。と言っても下半身と上半身がちぎれて、身体が二部されたのだけなのだが。

 

「悪くおもうなよ、アサシン。君が居ると俺が死ぬんだ……俺にも願いがあるんでな」

 

 ―――アサシンの足止め。

それだけが俺の目的なのだから。あとはライダーの領分だし。身体が塵と化していく。

 

「マスター――の方までとれれば――めっけもんだが――無理そうだなありゃ」

 

 視界端に流星の様に飛んでくる―――恐らくサーヴァント?だろう、いや人形か―――がもう一人の俺の方へ飛んでいった。

 

 

 

「そら――!」

「げえ―――ハンドマシンガンなんざありかよ!?……まあ、効かんがね!」

 

 パララッと迫り来る弾丸は今の俺には意味を成さない。

 身体を幾千の折り鶴へ変化させ避ける――――こらそこ、まるで吸血鬼とか言わない!俺も若干気にしてるんだ!

 

 身体をジョージの背後で再構成し、殴りかかる。身体が紙で出来ているのも強いメリットがある―――生身の身体と比べて強化しやすいとか。

 

「こんな芸当も出来るのさ―――くらえロケットパーンチ!!」

 

 すぽーんと射出される腕。効果音ださいとか舐めてはいけない。こんなアレな効果音だが二トン車を軽々と吹っ飛ばす威力がある―――まあ、弱点もあるのだが。結構遅く飛ぶから避けられることが多いのだ。

 案の定避けられた。

 

「―――くっ、何でもありか!」

「当たり前だろ――俺たちは魔術師だぜ―――コイツでシメーだ!」

 

 ローリングして避けた所に、魔力ブーストで急接近し殴りかかる――鉄筋コンクリートすら打ち破れるソレが―――。

 

 

 

『そっち行ったわ、マスター!』

 

 

 

 が――背後から迫ってくる矢弾のようなそれを身体を再び、折り鶴へと変え、避ける。目の前に落ちてきたのは――――これは、石?

 

 それは落ちてきた所を基点に魔方陣を展開させ――無機質な人形、それも強力な、まるで英霊の力の一端をコピーしたかのようなモノが現れた。

 

「―――ふん、サーヴァント・アーチャーか?」

『――如何にも、其処のジョージ・トレイセンのサーヴァントであり、貴様の敵だ』

 

 どこかエコーの掛かった声での応答。どこからか通信しているらしい。声色から男か女かは分からない。

 

「助かった、アーチャー」

『無事で何より、と言いたい所だが手ひどくやられたようだな―――アサシンが倒された』

「アサシンが―――そうか!このために分断したのか」

 

 ふむ、流石に気づかれるか。ま、アサシンは始末したし、これで俺の本体も助かる。もう目的は済ました後だから、気づかれようと問題ではない。

 

『サーヴァントの反応があるけど――ていうかアレ撃ったのサーヴァントの方よね?それにしても―――姿が見えないわ』

 

 ライダーの言うアレとはさっき飛んできた石のことだろう。

 

「しかしサーヴァントでは来ないのか、別に間に合わぬ距離ではないだろうに」

『フン、このアリーナを擬似的ながら工房化しといてよく言うな魔術師。ここでは貴様の思い通り、不利にも程がある。無策で突っ込む気はない。アサシンが倒された以上、一端撤退することを提案する』

「ああ――なら、一端撤退しよう――が、リターンクリスタルは使えるのか?」

『さっきの一撃で部屋を覆っていた結界ごとぶち抜いた。使えるだろう』

「フ――それではさらばだ、ヒビノ。覚えておけよ!」

 

 そうジョージは吐き捨てると姿をアリーナから消失させた。

 

「ああ――覚えておくさ」

 

 何気なしに呟いて、思考に沈む。アーチャーの慧眼には驚かされた。異界化させるまでは手を加えていないが、まさか――工房化したことがばれるとは。

 執拗にアリーナ内に折り鶴をばらまいてそこら中を俺の工房化させた。それ故に分断を成功させることが出来たのだが。

 

「アーチャーがアリーナに足を運ぶ気は無いと踏んでいたんだが――ま、アサシンは倒したし」

 

そろそろ到着するだろうライダーを連れて帰路に着くとしよう。もうそろそろバッテリー切れだし。

 

 

 




 聖杯問答とか言いながら、鐚一文願いを告げようとしない主人公ーーくずい。
 卑怯とか言いながら罠を仕掛けたりするジョージ何とかーーくずい。

 つまりーー似たもの同士。

 
 ここぞとばかりに出たアーチャー一体何者なんだ!?(すっと(略

 ライダーの事を知っていて、なおかつ似ている。ライダーの証言からハンを名乗っていない。征服王の証言も合わせればーーーもはや、該当するのは....。

 皆さんはもう気づいたでしょうーーそう、あの英傑です。

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