Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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ふふっ、結末までもうすぐ。




第七回戦  :『決着』

 

 

 

 

 金属がぶつかり合う音が響き、足場がゆっくりと静止した。

 

 

 耳に響いた残響がいつもよりも重く、長く感じたのは気のせいか。

 

 

 まあ、その理由の一つには目の前の男――火々乃晃平の魔術講義に頭を悩ませることになったからだと思うが。なんど早く終われと願ったか。

 

 いずれにしても、ついにたどり着いてしまったのだ。

 

 彼と交差する、最後の戦場に。

 

「……ついたか。少し喋りすぎたように思うが―――これで、知識の差は多少は埋まりを見せただろう。対等程度の戦いはできるだろうよ」

 

 彼は自らの敗北を一切考えていない用だった。

 

「お前にも譲れない願いがあるんだろう?――では、決着と行こうか。七人目のマスターよ」

 

 そういって彼は決戦場へ降り立った。私達もそれに続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは太陽の檻。右側には朝日か夕日かは知れないが太陽がある。決戦条はまるでコロッセオのような舞台。奥には太陽の光で黄金に彩られた湖。

 

 

 湖の真ん中に闘技場がある、という形の決戦場。皮肉にも、殺し合いの場に似つかわしくないほど美しい。

 

 

「いよいよだな、エリカ。お前とはやたらと縁があった。いつかの階層で、それこそ五回戦はこえられないと思っていたが、お前は勝ち抜いて見せた。……どこか名残惜しいという感情すらある。聖杯にあの願いを懸けないとは言ったが、それでも―――譲る気も、ましてや死んでやる気もない!」

 

 

 最後は彼にしては感情を込めて。全力で自分たちと対峙する。そんな意気を感じ取る。

 

 

「最後だ、テムジン。全力で、一切の慈悲なく、焼き払え。俺に勝利の杯を!」

 

 

 そんな彼に対し、彼のサーヴァントであるライダーは。

 

 

「……魔術について説明し始めたときはどうしてそんなことをするのか分からなかったけど。なるほど、全力をつくすためね。最後が簡単に終わっては面白くないもの」

 

 

 そう納得してライダーは続けた。

 

 

「誰にものを言っている、マスター!余はそなたの至高にして最強のサーヴァント!そなたとならば敗北などあり得ない!

―――その証明を。この勝利をもって証明せん!!」

 

 

 真紅の剣を構え、剣先をこちらに向ける。

 

 

「―――魔神戦では世話になったが、それとこれとは別だ。最強のサーヴァント、なんて名乗れるのは今日までだぞ、侵略王。

 オレはアーサー王の騎士にして叛逆の騎士。王を殺してこそのオレだ。テメェなんぞに負けてたまるかってンだ!

 第一―――テメェのマスターは気に入らねェ!なーにが俺には聖杯に懸ける願いがない、だ!」

 

 

 なんかしらねぇけど腹立つ、と言いたいようだ。何という反骨心たっぷり精神。中学生の反抗期か。

 

 

 だが、彼女らしいと言えば、彼女らしい。

 

 

「懸ける願いがねぇってンなら勝利の杯は俺達に譲れ。ウチのマスターの願いの方が百倍ましだね」

 

 

 セイバーは吐き捨てるように言いながら剣を構えた。

 

 

「あーそう言えば、聞いていなかったな。君のマスターの、エリカの願いを。―――ならばこの場で聞くとしよう。

 ――君の願いは、なんだ?」

 

 問われ、自分の願いを思い浮かべる。激戦の中で、出した結論を。

 

「私の願いは――――ムーンセルの完全な封印です」

 

 この戦争は歪んだものだ。たった一つの願いを叶えるために戦争をさせている。争いを持ってでしか人は成長できない、とでも言うかのよう。

 

 それを、私は否定する。

 

 

「―――ムーンセル・オートマトンの完全封印……なるほど、聖杯戦争の終焉がお前の願いか。………ふむ、確かにその願いは美しい。セイバーがましと言うのもわかる。よくぞ―――たどり着いた」

 

 

 讃辞が込められていた。自分では思い至らなかった願いだと。迷いに沈んでいた自分がこんな答えにたどり着いた事を素直に賞賛していた。

 

 

「……貴方を倒して、聖杯戦争を――――この回で終わらせます!」

 

「ならばマスター、指示をしろ!こいつらを斬りはらって押し進むぞ!」

 

 

 サーヴァント間に殺気が溢れていく。空気が微細にびりびりと振動するのがわかる。

 

「セイバー、貴方を信じる」

「―――任せろ、マスター。その信頼に答えよう。モードレッドの名において、必ずやライダーに勝利する」

 

「――吠えたな、セイバー。余に勝利しようとは大きく出たものだ!」

「徹底的に、一切の温情すらなく―――敗北を刻み込むとしよう、ライダー」

 

 

 

 

 ――――――Sword,or Death

 

 

 

 

 戦場の中心でけたたましい轟音が起こる――――サーヴァントがぶつかり合ったのだ。

 

 

 

 超速の剣戟。攻守が綺麗に入れ替わりながら剣技を競っている。

 

 

 

 髄力は互角。いや、僅かにだがライダーが勝っている。筋力のパラメーターではセイバーがB+だった。それに張り合うどころか打ち勝っているとなると―――ライダーはAランク値以上の筋力をもっているコトになる。

 

 

 だが、セイバーの剣技はライダーに劣っていない。離れれば詰め寄り、近づいてくれば距離を取る。完全に、ライダーの得意な間合いを読んでいる。

 

 

 

 ――ライダーは後退し、馬を出現させ空高く駆け抜けていく。

 

 

「ハッ、一方的になぶるとしようかッ!簡単に死んでくれるなよ、セイバー!」

 

 

 言うやいなや、弓を構えこちらを狙い撃ってくる。セイバーは超速の反応でそれをいなす。一発一発がかなりの威力を保持している。

 

 

 しかし、防御に手をこまねいている訳にもいかない。距離を詰まねば―――宝具を撃たれ負けるのは自分たちの方だ。

 

 

「セイバー!!」

「おう!」

 

 すかさず、壁を作り上げライダーへの道とする。魔人戦で使った手段だ。

 

 

「……考えたな」

 

 

 逃げようとも、壁を幾多も作り上げ、セイバーは壁を蹴って加速して接近する。魔力放出も駆使し、遂にはライダーに攻撃を届かせた。

 

 

 連鎖的に作り上げられていく壁は、空中の自由を狭めていく。

 

 

「チぃ!」

「……空で追いつかれるなら絶対的なアドバンテージ(有利)とは言えないか。なら、地上で決着を付けたほうが良さそうだ。ライダー!」

 

 馬を消し、地上へと降り立った。セイバーはライダーへ飛び降りる形で切りかかる。

 

「フンっ、その程度ではなぁ……!」

 

 防御され、カウンターをもらい吹っ飛ばされる。

 

 単純な筋力勝負では勝てないと悟り、一旦後ろへとセイバーは退く。

 

「『円卓の刻印』――コイツで防御は万全だ!」

 

 『円卓の刻印』――モードレッドの能力(スキル)である。効果は防御に補正をかけ、なおかつ自分の攻撃が相手に当たれば相手の能力(スキル)を一時的に封印できるのだ。

 

「『この祈りを獣神に捧げる』」

「えげつない……全力にして本気、みせてやれライダー」

 

 セイバーに距離を取らせたのはわざと。ライダーの能力(スキル)を使うためか!

 

「スキルの威力アップ―――てなわけで、距離を取ったのが運の尽きだ。消し炭になるがいい!『焼き尽くす我が憤怒(フレア・オブ・ラース)』!!」

 

 剣先をこちらに向け、赤い燐光を一点に収縮させ―――

 

 

 

「『add_invalid();』!!」

 

 

 

 ―――放たれた。

 

 極光と共にセイバーに暴力となって迫るが、それにもかかわらずセイバーは一気にライダーに向っ()()()()()()()

 

「なっ!?」

「―――っ、コードキャスト!それも攻撃無効の類いだ!」

 

 火々乃晃平がすかさずライダーに知らせるが―――遅い!

 

 既に、セイバーとライダーの間合いは十分。さらにだめ押しとばかりに、セイバーの剣には魔力が収縮し始めている――!

 

 

「『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』!!!」

 

 剣の切っ先から直線上の赤雷を放つ。辺り一帯を赤黒い血の様な色が染め上げ、セイバーの周りを包んでいた炎を払い押し返し、ライダーへ殺到し―――

 

 ―――確実に直撃する。

 

「『防壁一つ、備えあれ』!」

 

 一直線に伸びる光線は――ライダーに直撃した。

 

 

 ――――直撃したはずだった。

 

 突如、ライダーのいた場所の前に紙で編み上げられた壁が出現する。火々乃晃平の魔術によるものか!

 

セイバーの一撃――それも宝具の一撃に耐えられる故などない。が、数瞬ぐらいは稼がれる!―――それこそ、宝具を撃つ時間ぐらいは!

 

 これは攻勢一転、窮地に立たされた。今の状況においてセイバーの位置がまずい!コードキャストは既に効力を失っているうえ、『add_invalid();』は一定時間攻撃を無効化できるが、そう何発も使用できるものじゃない!

 

 直撃するはずだったライダーのいたところから紅く輝く燐光が天を貫くようそびえ立っ

た。

 

「――――天を貫き、地を祓う……!」

 

尋常ではない魔力。今までの相手とは桁外れ。―――最大の敵を打ち払った暴力。

 それが、こちらを打ち砕かんとして剣一点に圧縮される。

 

「灰燼に帰すがいい――!『全て灼き滅ぼす勝利の剣(レーヴァテイン)』!!」

 

 極限にまで圧縮され、極光と共に圧倒的な炎の嵐となってセイバーへと放たれた。

 

 セイバーの赤雷が紅の燐光を押しとどめたのは一瞬で、それからは徐々に押し返される。そこまでになって事態に気づいたセイバーが動揺した。

 

「ま、ず―――ッ」

 

 避ける手段などない、対界宝具。こちらにも絶対の守りも、コードキャスト(状況をかえるズル)もない。

 

 勝利の確信を得たのか、火々乃晃平の口角は上がり、笑みを見せている。

 

 セイバーも出力を上げているが、少しずつ紅い燐光が侵食し、赤雷を飲み込んでいく。

 

 

 

 

 ―――諦めが自身の中でよぎる。

 

 

 

 

 

 勝てっこない。圧倒的に過ぎる。自身にはそれを退けられるものが何一つとしてない。

 

 

 

 

 

 コードキャストも、打開できる宝具もない。

 

 

 

 

 

 

 このままでは―――押し巻けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だと言うのに――――セイバーの瞳には、諦めなど微塵も浮かんでいなかった。

 

 

 

 

 ああ――彼女は言っていたではないか。私の信頼に応えると。

 

 

 

「このっ……、アァァァ――ッ!!」

 

 

 

 自分のサーヴァント(相棒)がまだ諦めていないのにどうして自分だけ諦められようか。

 

 

 ―――諦めるわけにはいかない!

 

 

 必死に自分に出来る手段を考える。これは最後の戦いだ。苛烈を極めるは当然。こんな所で諦めるわけにはいかない―――勝ってみせる!

 

 思考を巡らせろ――――

 

 

 

 稲妻が頭の中を駆け抜ける。

 

 

 

 ―――そうだ!

 

 逆転の目はある!切り札は―――

 

 

 視線を己の右手の甲に向ける。そこには紅く刻まれた二画の令呪(参加者の証)

 

「第二の令呪をもって命じます―――セイバー押し勝って――!!」

 

 右手の甲に刻まれた証が一画になる。同時にセイバーの身体が軽く発光した。

 

「ああ!!任せろ、マスター!!」

 

 セイバーから放たれる赤雷の光量が格段に増えた。

 

 

 光が鍔競り合うどころか―――セイバーの赤雷が押し勝ち始めた。

 

「ウオォォォォォ!!!」

 

 セイバーの叫びが大きくなる。

 

「―――このままじゃ押し返される!マスター!ありったけの魔力回して頂戴!!」

「……ライダーの規格外の一撃を押し返すか………いいだろう!持って行け!」

 

 ライダーの要求に答え、火々乃晃平は魔力を回す―――。

 

 

 両者中央で激突する光線。

 

 凄まじい轟音。大気を、空間を揺らし、軋ませる。

 

 

 ステージの中央、光線の張り合っている箇所が余りの威力の余波を受けて抉られていく。

 

 

 中央の競り合いの激しさが増していき―――

 

 

 直後、視界が白に染まった。

 

 

 

 

 光が収まって、視界も戻り始めた。

 

 セイバーを確認する。

 

 ぼろぼろになり、白銀の鎧は損傷が激しく、もはや鎧の体を成していなかった。

 

「――はぁ、はぁ……」

 

 セイバーの息は荒い。全力をとした攻防だった。サーヴァントの規格をこえた一撃を吐き出すために、出力を上げたのだ。セイバーの身体には激痛に苛まれているだろう。表情も芳しくない。

 

 そうだ。ライダーは――!?

 

 

「ふははッ、やるじゃないか――!セイバーよ、余の一撃に耐えるどころか匹敵させるなど、並の英雄が、はは、できるコトではない!」

 

 ライダーは健在だった。しかし無傷ではなく、身体の裂傷は激しい。纏っていた褐色の衣服が焼け付き、ぼろぼろだ。

 

 

「では―――決着といこうか――セイバー」

「上等だ……ライダー」

 

 

 互いに中央へ歩み寄り、向かい合う。

 

 

 出来ることなら手助けしたいところだが――今の自分は、治癒のコードキャストを放てる余裕がない。

 

 火々乃晃平もまた、何もしようとしなかった。何故かと目線で問えば。

 

「あん?令呪バフに対抗する、なんて簡単にできるわけねぇだろ。諸事情で令呪は最後まで取っておきたいし。おかげで、今の俺の魔力はみそっかす以下だ、このヤロー」

 

 わりと辛そうな顔でそう言ってきた。魔力がないから治癒魔術を施せないらしい。

 

 

 

 セイバーとライダーは剣を構える。

 

 

()、叛逆って言葉は嫌いだけど――貴方は嫌いじゃないわ、可愛いから」

「喧嘩売ってんのか―――オレは嫌いだったぜ、うるさいから」

 

 

 かたや世界の大王。かたや叛逆の騎士。

 

 

 かつてを駆け抜けた英雄らしく、剣に誇りをのせる。

 

 お互いに、フ、と笑って。

 

「テメェはここで死んで逝け!俺達の道を塞ぐんじゃねェ――!」

「それはこっちのセリフよ―――!セイバー!」

 

 

 

 互いの全てが込められた一撃は―――一瞬の閃光、一筋の光となって。

 

 

 ――――交差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅い障壁が降りてきて、決着が視界に情報が刻まれる。

 

 

 

 勝敗は――――

 

 

「見事―――――」

 

 賞賛の声を出したのはライダー。

 

 

 だが、

 

「――あと、一手足りなかったな」

 

 

 崩れ落ちたのは―――()()()()だった。

 

 

 

 それが示す事実は唯一つ。

 

 

 私は―――負けたのだ。

 

「すま……ねぇ、マスター………」

 

 どしゃりとセイバーの身体が倒れる。思わず駆け寄よろうとするが――

 

 

 

「――ッい゛」

 

 

 

 激痛。

 

 足に力を込めると凄まじい激痛が身体に奔った。既に自分のいる場所(空間)は消滅が始まっている。

 

 歩き出せば、より痛みは激しさを増す。

 

 

 

 

 

 消えていく。消えていく。自分の存在が。失われたものとして確定していく。怖い。痛い。消えていくのが、無意味になるのが恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

しかし―――それでも。

 

 

 

 

 

 歩みを止めなず、セイバーの元へ向う。

 

 

 

 身体は、欠けに欠け―――足は既に痛みを訴えなくなった。感覚は不明。

 

 

 

 それでも、歩く。

 

 

 

 こんな自分と、戦ってくれたセイバーに。

 

 

 

 

 たった一言、礼を言わねば――――それすら出来ずに、消えるコトなど許される訳がない。

 

 

 

 

「マスター……わりぃ、しくじっちまった。ははっ、三流つっても円卓の騎士だってのに、護るって誓ったのによ―――くそッ」

「ありがとう、セイバー。こんな自分と戦ってくれて」

 

 倒れたセイバーの近くに座り、抱き寄せる。

 

 身体の崩壊が激しくなる。あと一分も持ちそうにない。

 

「それはこっちのセリフだ、馬鹿マスターっ。なあ………オレはちゃんとお前の騎士に―――」

 

 

 

 

 セイバーが二の句を告げようとしたとき。

 

 

 

 

 

「いいシーンの所悪いが、テメェらに死んでもらっちゃ俺が困る。てなわけで―――ライダー!」

「はいはーい!任せなさい、マスター!私の真価、その目に焼き付けなさい!」

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 文字通り蚊帳のそとから響いてきた声に思わず、セイバーと二人目が点になる。

 

 

 

 赤い障壁の向こう側では、ライダーがこちらに向けて、弓を構えている。

 

 その弓には真紅の槍?が(つが)えられ、引き絞られていく。込められた魔力は先程の対界宝具に劣らぬ―――て、ああ――!魔力供給もとのコーヘイさんの顔が悲痛に歪んで!

 

「―――ぐほっ……ら、ライダー、第二の令呪を持って、命ず。障壁をぶち抜けッ―――!ごぶはっ」

「ええ、任せて頂戴!!吹き飛ばせ―――『暁刻む一矢(マニ・ラ・レーヴェ)』――!!」

 

 (つが)えられた真紅の矢を中心に空間が歪曲して見える。

 

 それはライダーの宣言と共に放たれた。通りがけに空間を粉砕し、ねじ切って一矢は進む。

 

 

 まっすぐに飛んで障壁の中央に命中し、爆発音と共にぶち抜いた。

 

 

「ッ―――!」

 

 

 近くにいた自分たちには突風が吹き荒れる。

 

 

「うまく起動してくれよ――ほいな!」

 

 

 風に飛ばされぬよう耐えていると――

 

 ―――首に何かが絡まった。それに触れるとそれは皮で出来ていることが分かる。

 

 え?これ、ひょっとして、ひょっとしなくても―――――――――()()では?

 

「な、何だこれ」

 

 セイバーは困惑に満ちた表情。

 

 瞬間、

 

「「ぐえっ」」

 

 首輪が引っ張られ身体ごと持って行かれる。勝者(生存者)しかいられぬエリアへ。

 

 完全に身体が引き込まれた所で、首輪を引っ張る力は弱まる。

 

「はいっ一本釣り成功!正直成功するか半信半疑だったけど……流石は俺だな!みごと大成―――」

「何しやがんだテメェッ!!」

「――ぶべらっ!」

 

 セイバーの見事なアッパーカットが決まった。

 

 火々乃晃平の身体は吹っ飛び、頭から地面に落ちた。

 

 ―――あー、アレは痛い。

 

「いってェェェェェ!!!お、おまっ!俺が助けてやったってのに、何アッパーしてくれてんの!?死ぬかと思ったんですけどッ!?」

「助けなんざこうた気はねェよ!!むしろ謝れ!!」

「確かに言ってなかったな……なんかすんませんした………アレ?なんで俺が謝ってんの?言葉のマジック?」

 

 ぎゃーぎゃーとセイバーとコーヘイは言い争って、遂には頬の引っ張り合いをし始めた。子供か。

 

 己の首輪を掴んでみる。どうやら外れはしないようだ。皮の首輪って。

 

 あのー趣味出てますよ?と言いたい気分だった。というか一体何が起きているのか。全く思考がまとまらない。何故自分は生きているのか。まあ、十中八九この首輪に何かあるのかも知れないが。

 

 赤い障壁はどうなったのか、気になって見ると、完全に修復されていた。

 

 

 そして、消えていく。もう、敗者は消したとばかりに。

 

 

 

 どういうことなのかは、コーヘイにセイバーとのやり取りが落ち着いたら聞いてみることに―――

 

 視線を向けるとコーヘイはライダーに襟首をしめられ白目になって泡を吹いていた。

 

 

 コーヘイさんの明日はどっちなんだろう?

 

 

 




あのナイフ使ってなくね?

まあ、ちゃんと使わなかった理由もあるんですがね。


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