Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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ライダーちゃんによる説明回。
突っ込みどころが冠位レベルだ――気をつけろ!



逆転の目

 

「私がそんなに生きていたことが不思議?」

 

 セイバーが、驚きに顔を歪めたのも当然のことである。彼女―――ライダーこと、チンギス・ハンは熾天の玉座の前で火々乃晃平の手で自害を命じられ死んだはずなのだ。

 

「んー、何故生きてるかって言われると―――死んだのは私であって私じゃないと言うか?」

「……どういうことだ」

「死んだのは私の夢そのもの。貴方の知っているサーヴァントとしての私。大本には何の影響もない。まあ、ちょっと夢見が悪いって感じ?」

 

 ライダーはからからと笑いながら、難しいことではない様に言う。英霊、サーヴァントは英霊の座から召喚され戦うが、そこでの出来事が大本には全く影響がない、ということがライダーは言いたかったのだ。

 

 ―――つまり、彼女は

 

「そもそも、死んでないしね。私。歴史だと死んだことになってるみたいだけど」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()と言うことだ。それこそ神霊クラスの存在であるといったような物だ。実際彼女は神に讃えられているわけだが。陣で死んだとされた後も、

 

「ま、ちょっとはっちゃけ過ぎたせいで、実の息子に罠にはめられちゃったのよ。お前が死なないと俺が皇帝になれないから~的な理由で此処に閉じ込められちゃった。うん、私にしては注意を怠り過ぎた」

 

 ま、私裏切りは赦さないから、一切の功績を剥奪させて貰ったけど。とも言いながら、大して気にしてないように言った。こえーよ、と逆にセイバーは背が冷えるのを感じる。

 

「地上と隔離されたからどうする事も出来ないし。で、ちょっと暇つぶしに夢を見ることにした。そこで―――運命の出会いがあった」

 

 と、顔をほころばせて言う。

 

「これはもう、私色に染め上げるしかないって。ちょうど、上からも介入指示があったし」

「介入指示?上司でもいんのかよ」

「――抑止力。なんやかんやで過去の一点に永在する私に“はたらけ”って言ってきた人類の生存意志。ま、それに暇だからって答えた私にも問題はあったわけだけど。やたらこき使ってくるから流石にいらっときたから、冠位投げ捨てようかなって」

「軽いな、オイ!」

 

 冠位投げ捨てようかなとか、本人は軽い調子で言っているがそう言う簡単なものではない。冠位(グランド)は世界の命運を託されるべき存在に与えられる物。人類全体を救うためのクラスなのだ。

 だが、それはライダーの桁違いの強さの証明でもあった。冠位を与えられた英霊は霊基が強力なものばかりである。

 通常のサーヴァントが「個人に対する兵器」ならば、冠位持ちのサーヴァントは「世界に対する英霊」。世界の命運を託される物としての称号。

 それは、そんな簡単にポイ捨てされていいものではないはずである。

 

「あの人に一目惚れして召喚に横やりする形で応じたのはいいんだけど、同時にチート行為?と受け取られて、ムーンセルに制限をかけられちゃってかなり弱くなっちゃたし」

「……あれで弱いのかよ、お前」

 

 セイバーはもはや引いていた。頭に痛みすら覚えていた。

 

「ま、それはともかく。今の貴方の状況についてよ、セイバー。貴方、今自分がどこにいるか分かってる?」

「いいや、さっぱり」

「早いわね、答えるの。……ここは、世界の最果て。文字通り端よ。あの人らしい策ね。こちらから観測できないほど、それこそ無限遠の先に飛ばせば邪魔されることもないってね。まあ、今回ばかりは運がなかったわ」

 

 上下に長い棒があるする。上下は時間の流れを指し、棒の断面が一瞬の世界の見取り図と考える。その断面の端っこが文字通りの世界の端。そこにリリスは夢の檻と共にセイバーを飛ばしたのだ。たとえ目覚めたとして、帰る手段を発生させないように。

 

 セイバーとライダーは今そこに居るのだ。

 

「で?どうやったらマスターの元までいけるんだ?知ってんだろ?」

「行くのは良いけど、貴方じゃ勝てないわよ?たとえ聖剣をぶっさしても」

「あ?」

 

 ライダーの言葉にセイバーは違和感を覚えた。まるで自分は方法はあるが行かないと言っているように感じたのだ。

 

「リリスは、文字通り人類史全てを束ねて一点で剪断させているわ。不連続点を作って、他の介入、それも抑止力の介入を防いでいる。それは特異点と呼ぶものだけど、例外的に他の誰にも観測できない。当然、抑止力として冠位を持つ私はね」

 

 幾多とある平行世界諸共、一点で集束させ救う大偉業。

 もう誰にも止められない。だが、とライダーは続けた。

 

「逆説的に言えば、あの一瞬に存在した命は抗える。まだ――貴方のマスターは死んでない。万人を救う。その思想が徒になった。サーヴァントである貴方も、貴方のマスターを殺すことはしなかった。それが逆転の目。

 悔しいけど、今の私じゃ間接的にしか介入できない。リリス、アルテミット・ワンと化したマスターを倒せるのは、貴方――セイバーだけなの」

 

 しかし、セイバーの今の力では倒せない。たとえ、聖剣を限定とはいえ使用できるとしても、権能を振りかざすリリスには勝てない。格違いなのだから大凡の英霊では太刀打ちできない。

 

「―――でも、何処にだって例外はある。それこそ、トランプゲームにはジョーカーがつきものってね」

「まどろっこしい!さっさと言え!こちとらマスターの命が懸かってんだ!」

「――神話礼装。サーヴァントが持つ魂の原初の力。ゼロモデル。ま、簡単に言うと超パワーアップってやつね。少なくとも、完封負けはないわ」

「そりゃどうすれば手に入るんだ?真竜でも倒せば良いのか?」

「なんと!なんと――!もう、使えるようにしときました――!」

 

 ぱっぱかぱ~ん、と効果音がどこからか聞こえてきそうな声の調子だった。

 セイバーが倒れている間に、ごそごそとナニをしていたのである。

 

「む、拍手がない」

「――で、どうやったら使えるんだ?」

「す、するーだなんて何百年ぶりかしら。ちゃんとマスターは乗ってくれたのに!」

 

 なにやらショックをうけたようだが、セイバーは構うつもりはない。

 

「こほん。使い方は―――思い起こせば、たぶん使えるんじゃない?解放はしているわけだし。あっ、でも使うととんでもない負担が掛かって―――」

「おおおおおお―――!すっげぇ――!」

「――それこそ、一戦しかできないって……ま、いっか」

 

 神話礼装を解放し、有頂天になるセイバー。エリカがみたら、新しい玩具を与えられた子供みたいといつものような感想をこぼすだろう。

 白銀と黒、そして真紅。その三色によって作られた過剰装飾鎧(ゴシックバトルドレス)はセイバーの趣味に合ったようだ。おもにかっこいい的な意味で。

 

「こほん!……で、問題は貴方がどうやってあっちにたどり着くか、ってとこなんだけど。―――デュー・ダイネ!!」

 

 そう何かにライダーは呼びかけた。すると―――。

 

 ゴゴゴ、と地面が震動し唸り始める。

 岩盤はきしみ、上下に揺れ始めた。

 

「お、オイ!今度はなんだ!」

「――上、見てみなさい」

「あん?――――て、うおっ」

 

 セイバーがライダーに言われるままに上を見上げればそこには―――馬鹿みたいにでかいトカゲじみた顔。

 いや、セイバーはその存在自体は知っている。誰もが一度は耳にする、最強の幻想種。

 

「ドラゴン……!」

『■■■■■――――!!』

 

 セイバーの呟きに反応するように、それ――ドラゴンは雄叫びを上げた。

 その叫び一つで空間そのものが振動し軋みをあげる。

 

「おはよう、デュー」

「超―寝たわー。む、何日ぶりだコレ。かなり久方に目を覚ましたのだが」

「こっちに日にちって概念があるかは怪しいところだけど、千日は超えているわ」

 

 おはよう、とライダーが竜に話しかけると親しげに抱きつき、話し始めた。ここは何処かの岩盤の上だとセイバーは思っていたが、視線を竜になぞるように見てみれば自分達は竜の背の上なのだと気づいた。

 

「………もう、なにがあっても驚かねぇ。つーか驚くだけ無駄な気がしてきた」

 

 もはや現実感が追いつかないらしく、セイバーは突っ込みを捨てた。

 

「――紹介するわ、セイバー。この子はデュー。生前から一緒にいる友達よ」

「おう、よろしくな!」

 

 完全に目の前の出来事に対して考えると言うことをやめ、ライダーにならって話しかけることにしたセイバーであった。

 

「無限遠の果てだろうと、私にはマスターの居場所がわかるのよ。ある事情でね。それに言ったでしょう?私、裏切り者には厳しいの。ってことで力を貸してデュー。あいつ消し墨にするわ」

「お、おう。これまた久方ぶりにみる、激おこぷんぷんファイナルえくすとりーむぶり。……ここまで怒らせるとか、何者…?ま、一発撃てばいいんじゃな、テムジン――!」

「ええ、きついの一発頼むわ」

 

 ゴォーーーと一気にデューと呼ばれた竜は空気を吸い上げていく。

 

 そして――

 

「カァ―――っ、ぺ――!」

 

 妙な効果音と共に極大の魔力が放たれた。

 

 凄まじい熱量と魔力が込められ、辺りの水分を光が照らすだけで根こそぎ奪うほどのもの。

 

 放たれた一撃は、たやすく空間をねじ切って()()させていく。

 やがて、火の玉となった魔力の塊が彼方にまで跳んでいったからか、こちらからは見えなくなった。

 消滅した空間はぽっかりと穴が開いたまま。

 ――火球はおそらく飛んでいった方向はリリスのもとである。だが、あの威力が込められた一撃をみて、セイバーはある懸念をもった。

 

「……これ、マスターにはあたらねぇよな」

「…………………たぶん、リリスなら防げるわよ。なんたって、アルテミット・ワンって名乗ったくらいだし」

「その間はなんだ」

「うるさいわね―――ふんっ」

「おわっ―――てめッ」

 

 げしっと背を蹴られ、セイバーはつんのめり、竜の背から落っこちる。

 

「例えば、お風呂に桶を底が付いてる方を下にして沈めて行くと、ふちの高さが水面より下回ったら、水が流れるでしょう?」

「それが、オレを蹴落とすのと、なんの関係があるんだ――!!」

「――世界の修正力を利用して流れ込むように移動するのよ。他のサーヴァントなら木っ端微塵になるでしょうけど、今の神話礼装を着た貴方ならたえられるわ。たぶん」

 

 セイバーの身体は空間に引きずりこまれていく。

 

「うちのマスターによろしく言っといて?」

「ふ、ふざけんな―――!!!」

 

 モーさん怒りの叫びだった。

 




ライダーちゃん「え?なんで竜が喋ってんだって?―――何百年も人間と生活してたら言葉くらい覚えるわよ」

幻想種を自在に乗りこなすやべーサーヴァント。
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