Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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あけおめ!ことよろ!

ライダーちゃん「私の出番は?」
作者?「しかして、待て。そして希望せよ!!」

慈悲もなし。


最後の救済:Saver

 ―――叶うことのないモノを見せられている。

 

 

 日本風の縁側に二人の男が腰を下ろしている。

 

 一人は、若々しく在りながらも確かに年月を重ね、あごに無精髭を生やしている男。

 

 一人は、その男の息子。生まれた頃から感情持つことができず。ただ、人という物体を観測し続けてきた少年。まあ、このときの彼の結論は“よく分からない”だったが。

 

 そんな二人の男が和服の着流しを着て、話している。他愛のない話だ。

 寝静まった夏の夜。毎日ではないが一週間ごとの日曜の夜にこうして父と話すのが少年の習慣だった。

 

「……学校はどうだ?少しは、友達はできたか?」

「学校は、煩わしさをのぞけば概ね良好。提示される問題を解くのに支障は無い。友達というのは未だできていない。友達になろうと誘ってはいるのだが、気味が悪いと避けられてしまう」

「あーもう、かたっくるしいなぁ!もうちょっと、砕けたしゃべり方してみろよ……気味悪がられてるのは、たぶんそのせいだ。あと笑顔もセットでな」

「笑顔とは、口角の端を上げることと前教わったが、本当にトモダチというのはできるのか?こんな、異常な顔が?変顔の一つではないのか?じつは、俺を騙しているのでは」

「できるできる。割と普通な」

「何という投げやりか……親は子に親身になるから、親というらしい。お父さん、あなたは親失格では?」

「失格って言葉よくしってんな。こりゃ、うちの息子は天才ってやつなのかねぇ?まあ、天才でなくとも自慢の息子だと思うのだがね」

「露骨な話題そらしだ。――――それに、いまいちあの生態は理解しがたい。学校とは学び舎であるはず、あんなにはしゃげるのか?」

「……楽しいってヤツだなそれは。人には、そう言う感情があるんだ」

「……あんな変顔が楽しいのか」

 

 少年は困惑顔。感情が欠落した彼には、とてもではないが理解できるものではない。理解を得るならば、自らも感情を持っていることが前提条件となるからである。論理、だけでは理解できるモノではなかった。

 少年の名は後に火々乃晃平となる男である。彼はいずれ前の家の名を忘れてしまうが、この一瞬(ひととき)だけは忘れなかった。

 

 話は進み、別の話題へ切り替わる。

 父である男は、寝そべって肘を立てている。いちいち愚痴に近いそれを聞く

 

「お父さん。一昨日、先生が議題を提示した」

「あー、はいはい。今度は、どんなことが聞きたいんだ?アレか?愛とかとか勇気とかか?」

 

 父からすれば、眠い上に仕事で疲れた身体、オマケに縁側ほどよく涼しく、眠るには持ってこいである。もはや、抗うのは難しい。

 

「――――――夢ってなんだ?」

 

 父は、じっと少年の目をまっすぐ見た。

 それは少年からすれば酷く不思議にみえることだった。今の今まで、父がこんな真剣な顔をすることは少年が知る限り初めてだったからだ。

 父は身体を起こしてこう言った。努めて穏やかに。真理を告げた。

 

「―――夢とは、楽しむものだ」

「楽しむ?」

 

 これに少年は首を傾げる。楽しい、愉悦。それが分からぬ少年には、難しい教えだった。しかし、その事実をしる父が、全く言い方を変えなかった所に違和感を覚えた。

 父は続けてこうもいった。

 

「―――そして、現実は利用するものだ」

「利用?」

 

 少年の疑問符の増加は激しくなる一方だ。楽しいと呼ばれる感覚たる夢と現実が結びつくイメージがわかなかったともいえる。

 

「悪い、イメージがわかないよな。例えるなら……、俺は昔どんな夢を持っていたと思う?」

「夢は、楽しむもの。なら、ゲームになりたいとか?」

「……その、発想は予想外デス」

 

 なにやらCMで見たことあるような口ぶりで父はいった。少年はといえば、やはり首を傾げている。傾げすぎて、90度近く回り始めた。普通に怖い。――彼は、人間らしい仕草を観測し、真似ているだけなのだが。

 

「―――俺はね、正義の味方になりたかったんだ」

 

 そう穏やかに、かつてを懐かしむように男は言った。

 少年は、初めて目を見開くような衝撃を受けた。なんと言うか、この父という存在がそんな夢を抱いているとはついぞ思わなかったのだ。もっと現実的で、より論理的な夢を持っていると思っていた。自分に理解を及ぼしたのは、きっと自分に似たものだと思っていたのだが、全く違い非現実的な夢を持っていたことに驚いたのだ。少年に、生まれて始めての驚愕だった。

 

「諦めたのか?」

「はい、ここで問題です!俺の、今の職業は何でしょうか?」

「……記憶が間違っていなければ、刑事だったと思うけど」

「その通り!刑事だ!」

 

 よくできましたと言わんばかりに少年の頭を撫でつけた。

 乱雑で、無神経で、乱暴ななで方に腹を立てて、少年は父を見るが―――見た瞬間に、怒りが消えた。

 今までに見たことのない顔だったのだ。口角が上がっていることから笑顔と呼ばれる物の一種だと判断が着いたが、それは決して楽しいだとか面白いとかではない。

 そんな低俗なものではなく。もっと見ていたくなるような。

 

 父は続ける。それはもう楽しそうに。感情の分からぬ少年すら察せる程だ。

 

「はじまりは、あれだな。今日も朝やってただろう?」

「…特撮のこと?」

「おうよ!俺、アレの大ファンでさ!――変身!なんてお前と同じ年頃にはよくやってたなぁ」

「……そんなことをしても、ヒーローにはなれないのに?」

「いや、なれたよ」

「うっそだぁ」

「ホントさ。だから、今――俺は刑事になった」

 

 父が言うには。

 その正義の味方に憧れたから、自分は人を助けることを選べるようになった。初めて人を助けたとき、自分が満たされる瞬間を知った。

 助けれたと言う事実に興奮したのではない。助けなくてはならない、と強迫観念に突き動かされたのではない。助けたいと思って助けた。それが今の妻だとのろけられた。

 

「なんていうかさ。合理的か、といえば不合理なんだけどな。助けたってろくったお礼が貰えるわけでも、期待したわけでもない。でも―――」

「――でも?」

「助けて良かったって思えたんだ。『助けてくれてありがとう』なんてすてきな笑顔を見せられて」

 

 きっとそれは、母が美人だったとかそう言うわけではなく。助けた誰かの笑顔が綺麗だったのだ。

 父は、気恥ずかしそうに。かといって、誇りがないわけでもなく。ほかの諸々の感情が込められた顔をしていたのだと思う。いくつもの顔に変化していたから。

 

 ―――――その、なんとも言えない顔に少年はある言葉を思い浮かべた。それこそが、少年の願いの起源。

 

 見開いた眼が、美しいものを見る。

 

「――――幸せか?」

 

 少年の声は呟きにも似て。

 

「ああ、幸せだ」

 

 間髪入れずに、とびっきりの――笑顔というヤツをして、父は答えた。同時に、何よりもお前が生まれてきてからなおさらな、と付け足して。

 

「――――そうか」

 

 人知れず、呟いた声には――いくつもの意味を重ねる。納得であり、あるいは理解。他人から気味の悪いと言われる俺を――投げ捨てないのは、■ある故なのだと。

 

 ―――――こんな人になりたい。

 

 刑事であるくせにちゃらんぽらんで、帰ってくる度に母にがみがみと怒られ。文字通り尻に敷かれ、時々情けないとすら思う男だが。

 

 ―――その時だけは、誰よりもかっこよく見えたのだ。

 

 少年の目の先には、彼岸花が大量に咲き誇っている。

 

 

 星を心に刻むことになる何年も前の話だ。未だに消えぬ。失わぬ(少年)の始りの一。

 

 

***

 

 

「ぐ―――、グゥッ……!」

 

 リリスは、もはや死にかけていた。

 

 モードレッドより放たれた極光は、獣の身体を撃ち抜いた。

 

 燦然の輝きを、彼女が至るべき究極の一を受けたのだ。

 滅びは必定である。抗う術は、何処にもない。

 

 だが。

 

 ―――――滅べぬ。終われぬ。終わってはならない。

 

 獣は、その憎悪とも似ても似つかぬ妄執をもってそこに立っていた。

 

 ―――恐ろしい。

 

 リリスには、走馬燈が奔っている。

 

 だが、その記憶のどれもが死という概念を想起(ピックアップ)させた。

 火々乃晃平の内なる物となってから、この世の悪徳を見続けた。

 自分が見続けるおぞましいものを見た。

 壊れゆく命。不合理。不条理。理不尽。

 そんなものがこの世を地獄たらしめていた。

 人間はそれを超えることができず。超えようともしない。間違いであると気づける能力を持っていながら見ないふりをする。

 

 いやだ。あんな物になるのは。くだらない、あのような生命体になるのは。知っていながら何もせず、ただのうのうと生き続けるだけの。価値のない――あの生命体なんぞと同じ末路だけは、いやだ。

 

 

 ――それは死の逃避。生まれ落ちた物なら必ず抱える不合理。

 

「わたしは、終われない」

 

 やり残している。自分の存在命題として、あの男。―――火々乃晃平を自分こそが救うのだ。

 死んでは、何もかもが。無意味。無価値。虚無。

 なんの目的のないまま繁栄し、路傍の花のように散るだけの未来()などッ……!断じて認められないッ!

 

 ――ここで、死ぬなら、私はなんのために。

 

 リリスは、火々乃晃平という存在を認めていた。魔術に秀、徳も持つ。誠実な人間だった。いつでも鼻をほじってはヘラヘラし、つかみ所の無いちゃらんぽらんではあったが――誰よりも誠実だった。彼が、人を見誤ることは得てしてなかった。

 だからこそ、リリスは、彼が死にかけるような、苦しみを受け続けるような魔術式を使う認めれず、自分が代わったのだ。

 彼を救いたいと思ったのだ。

 

 ――しかし、分からなかったことが一つだけある。

 

だからこそ分からなかった。彼ならば、人間のおぞましさを知っていたはずだ。悪徳を、邪気を、この世の悪を煮詰めたがごとき腐臭を知っているはずだ。

 

 なのに、どうしてあの男は人間に献身的だったのか。そんな価値などないはずだ。彼も言っていた。命そのものには価値などないと。

 

 しかし、リリスは思考を切り上げ、憎悪を引き出した。

 モードレッドの撃ち込んだ宝具が関係しているのか、心象世界は崩壊の兆しを見せている。ミシミシ、と抑止力による排除が始まっているのだ。

 まあ、展開元となっているリリスが滅びようとしているのだから当然か。

 

 怨嗟を込めて、獣は呪詛を吐く。

 

「終わらない……!終わってたまるものかァ――!たかがッ、一撃で!それも、人にすら至ることのできない、出来損ないに負けるなど!」

「―――うるせんだよ、お前。構えれんなら構えろ。息の根止めてやる。もはやお前に遅れをとることなんざねぇ。むしろ、お前でよかったかもな。アイツ、火々乃なら、いくら王剣が力を貸してくれたって苦戦したかもしれねぇし」

「――――――――きさ」

 

 お前など、既に眼中にない。

 リリスがモードレッドの挑発に、さらなる呪詛を吐こうと―――

 

 

 ―――した時だった。

 

『うるせぇ!ぼちぼち寝れねぇじゃねぇか!つーかいい加減俺の身体返しやがれェェ――!』

 

 とどこからか声が響きわたり。

 

 ふんっ、と目の前のリリスの身体から光りと共にもやもやしたもの―――エーテル体が飛び出した。

 同時に、槍が飛び出してエーテル体に突き刺さり、そのまま地面にささった。

 

「まったく。お前は負けた。もう、二度目はない。たった一時間ばかりの生だが、鮮烈な価値ある物だったろう?それで満足しとけ」

 

 口調がかわる。優しく、落ち着きがありながら、どこか信頼性の低い男の口調。

 

「―――まさか」

「おっ!モーさんにエリカ!なんつーか、久しぶり?元気にしてた?――――へぶぁっ!?」

 

 瞬時に駆け寄るモードレッドだが、額には青筋が浮かんでおり、完全に怒っていた。

 故に、へらへら笑いながら近づいた火々乃晃平はブン殴られることになる。ある意味当然といえば当然なのだが。

 

「テメェ!よくも、オレたちを利用しやがったなぁ!こっちがどんな思いしたと思ってんだ!」

「いやー、悪かったって。俺だって苦しかったってホント」

「鼻ほじりながら言われても全く説得力ねぇんだよ!馬鹿にしてんのか!」

「そうだよ!」

 

 ばきィ、と殴られる男。情けなさが上がって帰還。

 

「ばかな、何故!きさまがここに!」

 

 霊体(こころ)を吐き出されたリリスは、驚愕と憤怒を突きつける。彼が表面にいる間、どう足掻いても火々乃晃平の意識は浮上し得なかった。

 完全に封殺していたのだから。

 

「ばかめ、封殺してやられてやったの間違いだ。お前に罠を張ってな。まあ、おかげさまで?根源の先っちょあたりでうろちょろするは目になったけどな」

 

 封殺されてやった、というのは嘘である。根源近くに突っ込まれてそれどころでなく。自我が崩壊仕掛けていたので。

 

 モードレッドのぐわんぐわんと揺らす攻撃を退け、火々乃晃平はたってリリスへ詰め寄る。

 そして、エリカとモードレッドに振り返ってこういった。雰囲気は軽い調子から魔術師のものへと代わっている。

 

「――全ての種明かしをしようか。まず最初にだが、コイツ―――リリスを罠にはめたのは事実だが、お前達は致命的な勘違いをしている」

「致命的な勘違い?」

 

 その言葉に眉をひそめ、疑問を口にしたのはモードレッドである。

 

「そうだ。リリスは、罠にははめられたことを、聖杯戦争に参加した理由を、自分を始末するためだとかほざいていたが、それは大きな語弊があると言おう」

「……つまり?」

「俺が聖杯戦争に参加したのは、やはり俺の願いを叶えるためだ。ちゃんとそれは言ったが…」

「全ての人々の幸福、ですよね?」

「そう。それが俺の願い。そこに何一つ嘘はない。同時にそれを聖杯に懸ける願いではないともな」

「だからなんだ!」

 

 とどのつまり。

 彼が聖杯戦争に参加した理由とは。

 

「――――俺は、そいつを。リリスを救うためだけにこの聖杯戦争に参加した」

「―――なっ」

 

 いの一番に驚いたのはリリス。

 

 何せ自分を救いに来たと宣ったのだから。

 

「―――救い、だと?」

「俺は、救うこと自体は、結局この魔術式に結論されるものだ。幸福の観点も何一つ変えていない。しかし、俺というのは、自分で言うのも何だが救いたいと思ってしまうと、考えもせず、走ってしまう愚か者でね」

 

 そして、その男は続けた。

 

「お前は俺と価値観を共有していると思っているようだが大きな勘違いだ。その証拠に魔術式が起動できなかったろう?そういう前提条件を設定していたからね。俺と同じ思想と価値観を持つ物ならだれでも使える」

 

 確かに、そう言っていた。誰もが、人間が使える技術で救わねば意味が無いとも。

 

「――――人間というのをついぞ、お前は知るコトはなかった。それこそが救い手たる前提の条件なのだから。そのくせして、俺を救おうなどおこがましい。俺すら理解出来ぬお前が、何を救うと言うのだ。

 俺には、確かに悔いがある。お前が俺に憐憫を抱くような結末が待っているだろう。

 

 だがな。俺はその生涯に。今まで生きてきたが、悔いはあっても後悔はない。それだけはできない。

 

 彼女らの死がなくては、俺は、今の俺は生きていない。

 人間ってのは、一人では生きていけない不完全なものだ。されど。そこに無駄はない。

 数多ある出会いがあり、それによって人生(未来)が創られていくならば。人はその生を真っ当するだけで、尊さがあるのだ。命そのものには、意味が無くとも。無駄はなく。ただ価値はないが、尊さはある。

 

 人を知らぬ以上幸福も知るまい。いくら、思想を洗煉させようと根底にある願いにたどり着けにないならば、意味は無い。だからお前の幸福は物に基点した。形あるモノでなければ信じられなかったのだ」

 

 ―――ああ、確かにこの人は完成している。

 

 エリカはそう思わずにはいられなかった。

 

 悟りの境地に等しい。仏門か、協会の使徒のような人。あるいはその原点の様な視点(救世主)

 

「意味をつくるのも、価値を創るのも、人間よ。だが、神は尊さを創れなかった。

 

 その尊さこそが、人間が誇れる有一無二の宝。未来を築く大いなる一なのだ。

 

 俺は、その美しさを人間に見た。お前が自我を持つ。生まれるずっと前にな。人間に思わず羨望の念を抱いてしまうほどに。

 ああ、きっと。俺はあの日―――人を愛したのだろう」

 

 愛という尊いもの。彼は見たのだ。どうしようもないほど、醜い悪性をもつ人間もいるなか。ただ、簡単な。それでいて美しく感じた―――あの笑顔。幸福を。

 

 人間を信じれぬ。自分すらも信じれぬ彼ではあるが。

 

 その、誰かの笑顔を、尊い在り方を信じているのだ。だからこそ、彼は善人も悪人も、救いたいと思うのだ。

 たとえ、望まぬ生を強いられたものでも。

 強い悔恨に人生を閉じることになったものも。

 

「――では、お前は何をもって、救いと謳うのだ」

「―――生きて欲しい。生きてて良かったと思って欲しい。それは、俺の過ぎたエゴではあるが。同時に君たち人間の救いと見定めた」

「その一生が、無意味なものだったとしても?誰の記憶にも残らぬ終りだったとしても?」

「―――その一生は、お前が紡いだものだ、無くならない。良くも悪くも、したことはなくならない。誰かと関わったことが意味になる。全ては輪廻する。美しいものは誰もが持つ。

 そう、お前でさえも」

 

 リリスにそう告げた後、モードレッドの居る場所まで歩き出す。

 

「きっと今のお前は、人間を理解できまい。そしてそのまま死なれては、俺の労苦だけが残る。そんなふざけた話はない。モードレッド、ちょいと付き合ってくれ」

「火々乃晃平!おまえは、何をする気だ!」

 

 リリスが吠えようと気にすることはない。いや、何をするかは想像できる。だからこそ余計理解できなかった。

 

「死ぬ気かッ!私に生を説いていながら―――!」

「―――死は、決して絶望ではない。

 

 ――――リリス。見当違いではあったが、お前の生きた瞬間、『献身』に答えよう。

 

 お前の知らぬ、人間というものを、度しがたく、愚かで―――どうしようもなく、美しい生き物を、教えよう。

 

 それをもって貴様の救いとする!」

 

 モードレッドをまっすぐみて、彼は手にどこからともなく日本刀を出現させた。

 

「我が名は、火々乃家二十三代目当主!――火々乃晃平である!晃平とは、太陽、日輪をさし、万里全てを照らし出すもの!」

 

 地平線から、輝かんばかりの日輪が昇ってくる。

 

 青き地球は、沈もうとすでに大きく移動していた。宙は青く美しく染め上げられる。

 

 大地たる彼岸花はより輝きを増した。

 

「この()は始りの一にたどり着いた。即ち、始りの魔法。第一魔法『無の否定』。

 

 そして、この身体はARCHETYPE。アルテミット・ワン。

 

 我が全てを持って、果たし合おうぞ。

 

 ―――受けてくれるな?モードレッド」

 

 

 人々の日輪たる男がそこに居る。

 モードレッドはエリカに指示を仰ぎ、エリカは承諾する。

 

「―――いいぜ、興が乗った」

「すまねぇな。まきこんで」

「遅ぇよ、謝罪が。ま、俺も物足りねぇとは思ってたんだ」

 

 モードレッドは、王剣を構える。

 

 火々乃晃平の身体はもはや、満身創痍である。

 

 目に付くような傷は塞いだとはいえ、ダメージは抜けていないだろう。むしろ、そのダメージで動いている方がおかしいのだ。

 

 

「「じゃあ、殺し合おうか!!」」

 

 同時に、獲物を屠らんと欠けだした。

 

 

「モォォドッッ―――、レッドォォォォ!!」

「ヒビノォォォォォ―――!!」

 

 殺意の込められた銀と銀が交錯する。

 

 こよりは意地と意地。

 

 ―――人間の闘争。武術。武技の競り合い。

 

 

 己が掲げる愛を示す戦いである。

 




ヒロインとは一体。

理想の王を殺すのは、やはり彼女でなくてはならないので。
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