Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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コレにて完結。
fgo第二部やったけど―――わくわくがとまらんのじゃが!


未来に続く物語
きっと美しい物語:Epilog


 

 

 ――――目が覚めた。

 

 意識の浮上を確認し、瞼を開ける。目の前の現実を認識しようと――――。

 

 ――目の前を塞ぐ黒いもじゃもじゃ。

 

「なにコレ。なんかくせぇんだけど……」

 

 その目の前の黒いもじゃもじゃは、微細だが振動していた。

 

 少し、視線をずらせばふにゃふにゃと動く、しなりを得た長い棒―――尻尾だな。

 

 ってコトは、目の前にあるのは生き物であり―――それの尻、と言う訳だ。うちに居る生き物(ぺっと)は一匹しか居ない。つまり猫だろう。

 

 そして、それが震えているということは、生物ならではなアレをしようとしているのでは?

 

「何人の顔にクソしようとしてんだ!?この、クソ猫ォォォォ!!」

 

 猫の首根っこを掴み、思いっきり前方へ放り投げる。

 にゃあああ、と悲鳴を挙げながら放物線を描き、部屋の扉の前へ。

 

 にゃあにゃあ、と抗議の鳴き声を上げてくるが、無視する。悪いのお前だからね。

 

 抗議意味なしととらえたのか、黒猫は何処かへ―――飼い主のメイドの所へ向ったのだろう。

 

 むくりと起き上がって、周りを見渡す。

 

 魔術式自動裁断機や、大量に並べられたホルマリン漬けの生物の脳。

 自然霊を観測するための魔術機材。

 そういった、魔術師絡みの代物が所狭し、と並べられている。

 

「……無事に、戻れたか」

 

 人理崩壊――何処の誰かの目論見に則る形で、自身の観測値を大きくぼかし、生と死の境目を曖昧にして、平行世界の分岐点を経由する形での擬似存在投影(レイシフト)

 フィニス・カルデアに油田の権利書と交換する形で得た理論。

 それを、魔神アナウスと協力して使えるようにした。

 

 自分の中にいた内なる神とやらの救いを果たすため。

 自分の救いを実現させるため。

 あの聖杯戦争は、多くの目的を果たすのに実に合理的だった。

 

 こうして、あの聖杯戦争に参加したのだ。ムーンセル・オートマトン。人工的にして、異常識が造り上げた『神の目』。救いを果たせなかったのは残念だが。果たせなくて元々である。

 

 しかし、ふむ。自分の意識が戻ったと言うことは。

 

 そう、考えて居ると。

 

 どたどたと、廊下を走ってくる誰か――。

 

「た、たたたた、大変です!こ、コレ!見てください、コレ!」

「朝っぱらから、うっせぇンだけど。何?」

「いつの間にか、一年たってるんですけど――!」

 

 悲鳴のような声を挙げて訴えてくるのは、うちのメイドである。

 

「……そんな騒ぐことか?」

「騒ぐにきまってます!私、大学生してるんですよ!丸一年の単位どうしろって!」

「俺が知るか!こっちだって一年間、いや、それ以上を無駄にしたんだよ――!」

「――ってことは、前みたいに私を実験体にしたわけじゃない……?」

「ひどいやつだな~、いきなり人を犯人扱いとかマジさいて~」

「ぐ、ぐぬぬ。むかつきますが……でも、どうして」

 

 まさか人理焼却うけて、死においてかれる状況になってたとか思うまい。現在という形が突然として消えたと言うわけにもいかない。

 

「まあ、魔術的なモンなら後々魔術協会から何らかの報告くらいあるだろ」

「まあ、そうですけど。あの、本当に関与してないんですか?」

「いや、まったく」

 

 起こることは知ってたけど、静観しただけだから。それに失敗したらしいし。

 

 ―――そう、人理焼却は失敗した。この先の未来は続くだろう。だが、致命的な見落としが人類にはあった。

 

「腹減った。仕事しろ、メイド」

「……なんでそんなに上から目線なんですか。しますけど」

 

 飯を催促しなんとか、部屋から追っ払った。

 部屋着に着替えながら、思考を加速させる。

 

 ――リリスに意識を封殺され、魂が根源をさまよう羽目になった。

 おかげさまと言うか。全くの偶然だが。

 俺は『第一魔法・無の否定』を得るに至った。その他の魔法は、俺とは魔術回路や起源の干渉か、扱うコトはできない。むしろ使ったら、いや、使おうとした瞬間に死ぬことが()()()()()()()

 なに?それでは、まるで――。

 

 ――未来を見たようじゃないかって?――その通りだ。

 

 ―――白紙になった未来を、俺は見た。この先、一年後に訪れる何かをしった。世界は2018年に正しく無くなる。

 どうしてかは分からない。この世界は正しく、編纂事象だった。

 

 では、何が?

 

 ――恐らく、現時点においてその余波は観測できないだろう。未来を見た俺が言うのだ。突発的に、地震が観測されずとも起こった津波のがごとく。前人未踏の災害が襲うのだろう。

 それは唯の災害ではない。ムーンセルですら、その先の事象を未来はあるが観測されないという矛盾じみた観測をおこなっていた。それを矛盾ととらえていない。

 

 俺達にできることはない。そも、この先に俺の未来はない。

 

「ご主人様――!食事の用意ができたので降りてきてくださーい!」

 

 下からメイドの呼ぶ声がし、食卓へ急ぐ。

 階下からは、猫の鳴き声が響いてきた。

 

 ―――なにはともあれ、俺は日常に帰ってきた。

 

**

 

 時間は過ぎて、夜になる。俺は、屋敷の屋根で酒を一杯のむ。

 屋根瓦の上は、少し冷たくもあるが太陽光で暖められたのか、そこまでの冷たさは感じない。

 

 冬にしては少し暖かいと感じるのも、身体にアルコールを入れたせいだろう。

 

 空には大きな月が見下ろしてくる。――幽玄麗らかに。そんな言葉の似合いそうな夜。

 漆黒の空に大きな白い穴が空いている。

 

 俺の後ろに、何かがいる。そう直感した。

 音はしなかったが、相手に隠す気はないらしく。その強すぎる存在感。

 

「今日は良い月夜。それこそ、かぐや姫でも降りてきそうな夜だが――――随分と粋な客人を寄越したらしい」

 

 二尺ばかりの距離に歩み寄ってくる。最初こそ、誰からかの刺客かと思いはしたが――刺客にしては殺気がない。

 歩む際の足音は、歩幅の間隔、背丈の程度を類推させる。柔らかな歩行とともなって―――正体は女性。

 

 それなりに刺客を仕向けられたことのある俺にここまで近寄れること。

 突然現れたが、魔術、魔力的なもの感知できなかったこと。

 足腰は、小さいながらもしっかりと踏み込まれており、武術にも長けるコトが窺える。

 

 ――――そして何よりも。

 

 その所作には覚えがあった。

 

「なんで、此処にいるのか……なんて言うには、些細な疑問か」

 

 俺は自分の懐から、ある大切なモノを取り出した。

 

 それは血の様に赤く。結晶体を加工した耳飾り。中にはいくつも色が淡く混ざり合っていて、他の魔術師が卒倒するような神秘が込められていることがわかる。

 

 これは―――ある人との縁。

 

 その人にとって第二の自分と呼べるほど、一緒にあったもの。決して手放すことのなかった人生を象徴する代物。

 

「そうね、些細な疑問。冠位(グランド)を持つ私が現れるようなど、一つだろう?しかし――そなたは、こうなることを知っていたはず。捨てることだってできたわ」

 

 渡してきた人の真意など分かっていた。これは一つのマーク。半身の一品は何処にあろうともう半身には分かるというもの。

 俺がどの世界にいるのかを判定し、そこへ駆けつける。

 ――何故か。そして何者か。

 澄んだ柔らかい――聞き覚えのある声を持つその人確信をもって言う。

 

「――――殺し(とり)にきたんだろう?俺の首を……なぁ、ライダー」

 

 俺の召喚したサーヴァントにしてライダー―――チンギス・ハン。

 

 最初に召喚したときに違和感は覚えていた。俺は性質上その違和感に気づきやすい。

 

 俺は、星の欠片を魂に癒着させてからその膨大な神秘を内包する羽目になり、属性も真エーテル素を現す『空』へ変化した。

 その代償に、人間なら別れている夢と現実のが判別できなくなった。

 具体的に言うなら、夢と現実の境目が曖昧になったのだ。(うつつ)(ゆめ)か分からない俺は、眠る感覚も薄くなり目を閉じ、意識を移動させるだけの作業になった。

 

 だからこそ、彼女の状態の違和感に気づけたのだ。

 

 俺は彼女の夢をやたら見やすかったのも理由に挙げられる。夢のなかで夢を見ることはできない。にも関わらず、彼女の夢を見やすかった。なにせお互い夢が形作った存在同士。

 共鳴しやすかったのだろう。霊的回路(パス)が繋がっていれば当然である。

 きっと彼女が、あの世界線に来たのは単純に獣になる誰かの討伐のために来たのだ。彼女はそれができるのだろう。

 無理矢理、俺の召喚に割り込んだことでセラフから干渉を受けたのだ。違法行為による霊基縮小をもろにくらって、ちんちくりんな姿で召喚されたのだ。

 まあ、彼女からすれば仕事上、あの聖杯戦争は都合がいいもの。このまま、俺のサーヴァントとして勝ち抜き、獣の理を持つモノを始末する予定だったのだろう。

 

 そして、彼女がここまで来る理由など一つ。

 

 ―――裏切った俺を殺すことだ。

 

 裏切りは彼女にとって禁忌である。

 家族に裏切られ、隣人に裏切られた。同時に――裏切り者には凄惨な死を送った。

 そして、俺は人類悪になる可能性を保持している。抑止力は俺という存在を赦さないだろう。

 

「―――その通り。そなたを殺しに来た。……答えなさい、我が主人。何故、捨てなかった。殺しに来ることを予期しながら……どうして!」

 

 せめて、捨ててくれたのなら。自分が殺しに行くこともなかったのに。

 

 言葉の裏に、そう言う嘆きがある感じさせる声。

 

「俺としても不思議なんだが、たぶん――――逢えなくなるからかな、お前に。―――俺の未練はお前に謝れなかったことだけだ。お前に自害を命じて悪かった」

「――――」

 

 振り返って久方に見るライダーをみれば――顔に似合わぬ、泣きはらした顔があった。

 

 十数年前から計画した、人類救済計画は頓挫した。

 予想より内なる神は手が余り懸からないと思っていたのだが、まあ、生まれたばかりだし身体を動かすのも初めてだろうが、予想より弱かった。セイバーもあそこまでボコらなくてもいいだろうに。

 

 どれだけ手を尽そうと死ぬ可能性はあった。故に殺されることは問題は無い。ちゃんと遺書も書いたし。いつ死んでもいいように手を尽すことはできたのだから。

 

「さあ、殺せ。できれば痛くせず、一瞬でな。――未練はもうない。だが、そうだな。そう、哀しい顔をしないでほしい。やっぱり君には笑顔が似合う」

 

 瞼を閉じる。もはや、話すことはない。

 

 悔いは無い。恥の多い人生を生きてきたが、俺にしてはなかなかの旅路だった。

 

「―――楽しかった?」

「ああ、とっても。俺には、過ぎたものだったが。君がサーヴァントでよかった。君のおかげで、俺も人として生きれた。――ありがとう」

 

 とん、と足音が響く。静寂な夜に似合う静かな音。甓に染みいるなんとやらか。

 

 彼女が目の前に立っている。

 

「―――――――――――――――赦さないわ」

 

 激情を静かに込めてライダーはその言葉を放った。

 

「そなたは私に裏切りを働きました。私は自爆コマンドを打たれたことにそれはもう激おこです!」

 

 後半からいきなり、空気が弛緩したような気がする。思わず目を開いて、抗議の目線を送ってしまう。

 

「あれ、おかしいな。けっこうシリアスだったと思うんじゃけど、どうすんのこの空気?俺殺される大事なシーンなんだけど」

「だまらっしゃい―――!そなた程度の命で私が満足するなんて思うだなんてなんて傲慢な考えかしら!」

 

 お前がどうこうと言うより、抑止の仕事だろう?人類を間接的に破滅させるんだから。このまま生きてたらやりますよ、俺。

 ―――それに満たされぬというなら、どうしろと?

 

「命じます――――私と一緒に生きなさい。私を満たし続けなさい。妥協は許しません。ええ、赦しませんとも。……せいばーとあんなことして、私としないのはおかしいわ!」

 

 ――その理屈はおかしい。

 

 てか、殺し合っただけだと思うんですけど。

 

「――俺と殺し合いたいってことか?」

「そりゃそうよ、武の競い合いとあれば誰だって高揚するもの。でも、あそこまでの死闘は今のそなたには厳しい。でしょう?」

 

 今の俺の身体は、人間としての肉体だ。固有結界を張れば、大きくスケールダウンするものの、アルテミット・ワンになれるが―――厳しいのは確かだ。彼女の見立て通り、セイバーに倒され、大きなダメージは残っている。完全に戻るには三日は休息が必要。

 

「……そなたは私と一緒に生き続ける。その命が果てるまで。抑止はそなたを見逃した。そなたを生かすことが今は霊長の抑止に都合が良いと判断したみたい。

 前提条件として、私が冠位を離れないかわりにそなたの側にいること――要は監視ね」

 

 それは――。

 

「そなたの元にいた方が抑止は私を扱いやすいと判断した。ていうかさせた。そなたが死ぬことになれば、私は冠位を放棄、そなたは人類悪へ果て、人類を結果的に破滅させる。

 でも、そなたの側にいさせれば私は冠位をやめず、そなたへのより速いカウンターとなる。

 ええ、実に合理的」

「……つくづく規格外だとは思っていたが、これほどか。しかし、――お前は良いのか?俺の元にい続けて」

「そう、そういうこと。鈍感な人じゃないし………てことは、私に言わせるのね!むしろ、言わせたいのね!」

 

 ん?普通に真意を聞いただけなんだが。なんか勘違いしてないか?

 少し、不思議なことを言い始めたので眉をひそめてしまう。

「耳をかっぽじって聞きなさい!難聴系なんて今時逸らないんだからね!

 なんか……いざ、言うとなると緊張するわね……。モンゴル(勇気あるモノ)である私に恐れを抱かせるなんて―――」

 

 コホン、と咳をして息を整えるライダー。表情は、赤く今にも火を噴きそうである。

 

「――――好きです。一緒に、私と生きてください」

 

 ―――――――――――。

 ―――――――――――。

 

 絶句。思考の停止。

 今理解した。さっきからやたら生きるだの満たせだのってそういう―――!?

 てっきり玩具になれ的な意味だと――。

 

 ――――答えれない。

 顔が火を噴きそうなほど、熱い。

 なんだこれ。なんだこれ!なんだコレ!?

 

 混乱と恥ずかしさで頭がいっぱいになる。

 

 こ、告白だと――――!?

 

 これは予想できない!好意があるだろうことは知っていたが、面白い人間的な意味かと思っていた。

 

「えっと、だめ、なの?」

「おおおお、待て、泣きそうになるな。まだ、答えてない!まだ、俺は答えてないんだから――!

 えっとですね、ライダーさん。その俺の答えとしては…だな。

 

 ―――俺も、お前のことが好きだった―――ぐぇっ」

 

 どん、と腹に衝撃。懐かしいミゾオチヘッド。

 

 答えた瞬間に、腹に突撃してきた。完全なタックル。防御するすることができず、押し倒された。

 

「ふへ、ふへへへへへ」

 

 不気味な笑い声を出しながら、俺にマウントをとるライダー。しかし、顔は真っ赤であり、瞳は潤んでいる。

 

「―――完全に大・勝・利!………………ましょう。すぐにシましょう。今すぐに!愛してるわ、コーヘイ!」

「えっ、ちょ、なにをっ――て、おまっ」

 

 いきなりズボンのチャックに手をかけ始めた。

 

「ふふふ、見てるー?『いや、お前みたいな地雷女娶るヤツなんていないから』とか言いやがったジャムカ!―――ついに、旦那をゲットしたわ!しかも私好みの!」

「取り敢えず、チャックから手を離せ―――脱げちゃう!脱げたちゃうから!」

 

 

 俺の明日はどっちだ――!

 

 

***

 

 

 ―――これからも、彼らの物語は続いていくだろう。

 

 

 しかし、それは同時に無くなるはずだった困難に立ち向かわなくてはならない。

 

 白紙化された未来を奪い取る戦い。

 

 彼は必ず、それに立ち向かう一人になる。

 

 なぜなら―――彼は認めないからだ!滅びは容認しても、物語の剪断は容認しない!

 

 ただ、愛したモノの未来を共に行くために喜んで悪になるだろう。

 

 ―――しかし、それは今とは別の物語だ。

 

 今は、彼らの幸福の猶予時間(モラトリアム)

 

 彼らには来たる日がくるまで美しい人間の生活を楽しんでもらうとしよう。

 

 





次の物語の舞台は、もちろん―――月の裏である。

出して欲しいサーヴァントがおったら、活動報告コメントにでも書いてくれれば(出すとは言ってない)
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