キャスター謎料理事件から数日が過ぎた。
やれ緑茶の罠に翻弄されたり。
やれジナコがだらしない胸を揺らしながら、大きな胸を揺らして走るリップに追いかけられたり。
やれその揺れる胸を凝視し続けるあまり助けるのが遅れる男がいたり。
そんな事が矢継ぎ早に起こりながら岸波は己が道を走っていき遂には最後のレリーフ前に到達していた。
―――流石にあの選択で『性欲を持てあます』とかないと思うんじゃよ。
おかげでガウェインと話が盛り上がる羽目になった。あらゆる議題を紳士のように整然とメリットとデメリットを並べ立て“やっぱロリ巨乳が最高って事で”という結論を落としたが、今思えば酷い論争だった。だって内容が下品なのにくそまじめに論争するってどうよ。
あとその一件から生徒会女性メンバーからの目線が非難めいている。まあ、彼女らからすればただのセクハラだし。
そのせいで、ラニと遠坂の告訴を受け生徒会主導学級裁判が始まった上、まさかのオレが被告。ガウェインはレオ会長特権で逃れやがって、オレだけを対象にした裁判になった。
岸波がえっさほいさと迷宮探索をしていると言うのに、此奴らは片手間で裁判を始めやがった。オレからすれば、別にお前らの胸についてナニカ思っているだとかそんなことは言っていないと言う趣旨で我がキャスターに弁護を求めたが、『無理です』というプラカードを上げられて終わった。
何でプラカード? とツッコミたかったが――その時はそれが許されない現状。結局弁護側がいないまま始り―――やはり結果としてオレが敗けた。
賠償金として、遠坂からは有り金を全部取られ、ラニからは『アトラスの砂塵』という礼装を持ってかれた。密かにオレが迷宮から持ち帰っていたのがバレていたらしい。
いろんな意味ですかんぴんにされたオレは、某鋼の兄弟みたいな『も、持ってかれたァ……!!』状態だった。
そして数日をFXで有り金溶かした顔をして過ごした。
だと言うのに、奴等には血の一つも通っていないらしく、オレから奪った者を返す気はなかった。岸波の憐れんだ目線だけが腹立った。
で、そんなオレに哀れみの目を向けた岸波は今レリーフの前に立っているわけだが――オレは言わねばならない事があった。
「―――岸波」
オレの声に気づいて振り返る。
至って、心を落ち着け意識を切り替える。いつもの
「お前は、パッションリップの心に飛び込むわけだが――、その前にちょいと言って置かねばならない」
オレはそう言って折り鶴を地面に叩きつけた。
これで結界が張られ外部からの観測は行方知れずとなった。邪魔は入らない。
「その力――五停心観。それ、そのものは酷く暴力的なものだと分かっているか?」
その言葉に、岸波は強く頷いて返した。当然だ、とでも言うように。やけに男らしい即答ぶりに少し動揺してしまう。
分かっているならば、もはやオレの言葉は余計なお世話になってしまう。
「……ならいい。本来、心の澱ってのは本人が向き合っていくことで改めて解消されるものだ。決して直接心の中に踏み込んで他人がほどくものではない。心を暴く、と言うことはかなり、踏み入る者も、踏み込まれるものもお互いに危険が生じる。
――結局、その力は真っ当なものではないのだと改めて知っておけ」
岸波の意志の強そうな目を見ていると、少し安心感がある。
だからだろう。少し、助言というヤツがしたくなる。
「………とかく、本質を見誤るな。お前が思ったことを信じろ。成したいと思ったことを成せ。決して、欲望を満たすためではなく。――一握りの、お前の見定めた事実を持って向き合うのだ。
さすれば、必ず。道は開かれよう」
「……フン。そのような事、我が奏者は言われるでもなくそうあってきた。今更貴様に助言されることでもない」
オレの言葉に応えたのは、彼のサーヴァント―――赤いセイバー。
「―――
息を呑む音が聞こえた。岸波が息を呑んだのだ。
―――口が滑ったな。
つい真名を暴きかけてしまった。
「パッションリップは文字通り生まれたばかりの存在だ。確かにAIではあるが、
それを簡単に摘み取って欲しくないと思うのは――これはオレのエゴか。
「暴走して、盲目的になってはしまっていたが。どうか、あの子に答えてやってくれ。それが拒絶であれ、肯定であれ。
……ふう。ガラにもなくしゃべり過ぎたな。悪いなセイバー、結界なんざ張っちまって。変に警戒させちまったがオレに敵対する気はない」
取り敢えず謝って、折紙を回収する。
しかし、セイバーが警戒を解く気はない用だった。
「――――待て! ……一つ、聞きたい事がある。貴様、キャスターを何故連れていないのだ」
二人っきりでマスター同士で会おうって言うのにサーヴァントを連れていないのはおかしい話だ。特にオレのようなマスターがそんな愚行をしたことが気になったのだろう。
「君らを信用した――――それじゃだめか? うんじゃ、またな」
限界の来た結界が、割れる。
すると外界の――生徒会からの通信が溢れんばかりに殺到した。
『ちょっと無事!? いきなり画面がブラックアウトして状況が観測できなくなったんだけど!? またBBになにか干渉された?』
焦った遠坂の声が端末から聞こえる。
「―――問題無い。時限式で展開される結界だ。外部からの干渉を一切立つ術式だったようだが――オレが処理したから」
いけしゃあしゃあと嘯く。
オレはそう報告して、近場の転送装置に向って歩く。
後ろから、呆然とオレを眺めているだろう岸波の視線を感じた。
***
―――――――もう邪魔はさせない。
マイルームに帰ってきた。部屋に入れば―――拘束されたキャスター。顔は苦悶に歪み、額からは脂汗を流している。まるで、
彼女の体の周りには、バチッと音を立てる稲妻。
それに拘束されていることが誰でも一見すればわかるだろう。
「……お前にしては、健気に待っていたな。お前の性格を考慮すれば面倒くさい足掻きを多少なりともするとは思っていたんだが―――クハハハ、いやいいぞ……手が掛からなくて」
「――――――――ッ」
キャスターはこちらの物言いにキッと睨み付けてきた。
彼女は尻を突き出し、両手を頭の上で拘束されている。くっころ、と言うヤツだ。まあ、彼女の逸話からして性格的にはむしろ逆。くっころさせる側だろうが――なんとも皮肉。
唯の魔術なら彼女はさっさと抜け出してしまうだろうが―――そこに一工程加えた。
それは―――
「令呪……までっ、つかって…おいて……ッ!」
そう令呪。
岸波はひょっとしたら気づいていたかも知れない。オレが、二画も令呪を失っていることに。
対魔力の弱いキャスター相手なら一画で十分制御出来る。このマイルームに釘付けにさせて置く為に、令呪を二画消費したのだ。
キャスターの瞳の中を覗けば、無感動な目をした自分の姿が見えた。
何故、オレはキャスターを拘束したのか。
答えは―――ふむ。予想より早い。
後数十分はかかると思っていたのだが。
「な――――――っ、これは……泥!?」
キャスターの足下から黒い泥のようなものが吹き出す。それは彼女を地面中に引き釣り込む怪物の口となった。
「悪いね、キャスター。テメェの邪魔を受けるわけには行かないんだわ。……後で、穴埋めくらいはするからさ」
泥に引きずられ、泥の中に悲痛な顔で沈んでいくキャスターの顔に触れる。
「コイツは、前金だ。先にイっておけキャスター。オレも後で行く」
泥に飲まれていく銀糸に手を掛け、髪飾り差し込む。
赤い彼岸花をかたどった髪飾り。簪だ。
古来の日本は一つの鋭く細い棒に呪力が宿ると信じられていた。その文化と中国から輸入された簪、髪結いの文化が融合し一つのまじないへ変化した。
「オレ特製のプレゼントだ。大切にしろよ―――命懸けて作ったんだ」
髪、という言葉は――多くの言葉にまじないとしての敵性を見せる。髪であり神であり、紙でもあり加美でもある。とかく一つの
オレをせめてとばかりに睨み付けながら―――キャスターは完全に泥の中へ沈みきった。
――――――これで、一つの工程が完遂できた。
『本当にこれでよかったんですかぁ? BBちゃん的には戦力は増えるし、時間稼ぎ担当が増えるので万々歳。だからこそ、わからない。どうして――いえ、何故裏切ること決めたんです?』
BBの声が狭い部屋に響き渡る。
BBに座標を教え、キャスターを飲み込んで貰う所まで誘導した。
――――全て、オレの計画通り。
「裏切った? ―――それは大きな勘違いだ。オレは誰も裏切らない。裏切るってのはさ、同じ道を歩くと決めたくせにそれに反することさ。オレはちゃんと約束は守る」
『? 結局なにが目的何ですか?』
BBの声からは警戒がにじんでいた。
「オレの目的なんか一だって一つ―――――救済だよ。オレはバッドエンドは認めない主義なんだわ。だって嫌だろ? そんなの夢見が悪いものを見せつけられるなんてさ」
『…………………』
BBは沈黙を選んだ。
そして、端末にはPIPIと電子音とともにメールが入った。どうやら、壁を突破してどうたらこうたら。
「……なるほど。悪いがBBさっさとここから抜け出せ。扉を開けたらこちらの情報があっちに届いちまう」
『………まあ、貴方が何をしようと勝手ですが―――私の邪魔はしないで下さいね?』
「ああ、約束する」
キャスターを落としていった黒い泥はこぷりこぷりと音を立てて消えてった。
――――ふう。
生徒会が記憶とみられるデータを回収したことは知っていた。なら―――もうキャスターと遊んでいる暇はない。
キャスターは必ずオレが記憶を取り戻すことを何らかの手で阻止しようするはずだから。
「……………ち」
結局。信じよう、なんてことを自分に言い聞かせながら何一つ信頼していなかった自分が無性に腹正しい。ここまでやって―――彼女が――だったら。
いや、それはない。ないはずだ。
それだけは、信じなくては――――信じたい。オレの見た真実が正しいことを。
***
―――女の話をしよう。
肥大化した自我は、女の人生を食いつぶした。
誰だろうと夢を見る自由はある。
理想の自分。理想の快楽。理想の未来。
理想の他人。理想の恋人。理想の別離。
誰だろうと、安い夢を見る自由はある。
だが、その大半は悪い夢だ。
***
パッションリップを倒したが―――今度は、ジナコが新しい衛士になっただとかの状況が報告された。
だが、集まったマスターの関心はそこではない。
岸波が回収したと言う記憶データの件。それで、他のマスターも呼ばれたのだから。
気になる記憶の開封前とあって生徒会室は緊張した空気でいっぱいになっていた。張り詰めた空気というヤツだ。気分的には―――例えるなら、そう、合否発表前のような。
「うむ、実に緊迫した空気。小生も流石に黙っておる。ところでレオ会長、朝食はまだですかな?」
記憶がどういうものなのか気にならないのか―――とも思いはしたが、彼の常日頃の心持ちを考えれば、いつも通りと言うより他ない。修羅道を行くやつは基本的に動じないクセのようなものがついている。が、彼はソレとは関係無くがくがくと震えていた。生まれてたての子鹿レベルである。
そんな沈黙のなか―――ユリウスが口を開いた。
「……………すまんな。オレがもっと早くジナコ=カリギリを補足していればよかったのだが―――――」
それは謝罪だった。彼はジナコの件に責任を感じているようだ。
「それは兄さんの責任はありません。元はと言えばジナコさんを一人にしてしまったボクの責任です」
「さらに、そうなった理由はオレにもある。お前らだけの責任じゃない」
「………………そうだな。そう言ってもらえると、こちらも色々助かる」
すかさずレオ共にフォローを入れておく。レオはその王としての性質か、責任を一身に背負いすぎる悪癖がある。少なくとも中学生が言うセリフではない。
「……ちょっと、大丈夫なのシンジ? 顔色と髪、草みたいに真っ青よ? まさか吐かないでしょうね?」
そう遠坂は心配したのか茶化すつもりかわからないセリフを言う。遠坂、髪型も付け足せばベリーグッドだぞ。
「う、うるさいな、髪が青いのは生まれつきだよ! 僕は怖がってなんかいない、おまえたちに先を越されるのがイヤなだけだ! いいから、さっさと済ませろよな!」
そうシンジは言っているが。
「膝が震えているぞシンジ。強がりは余計に恐れを生む。是、小生のように泰然と構えるがよい」
「なに言ってんだよ、アンタは体全体で震えてるじゃんか。超振動ピストンかって言うの」
ほう。これは良いツッコミセンス。才能あるな。
「否、これはムチャ震いである! ところでレオ会長、朝食はヤムチャというのはいかかがですかな?」
どんだけ腹減ってんの。
ヤムチャしやがって(ノルマ)。そこまでにしておけよガトー。少佐を後ろに付けて呼ぶぞガトー。
そんなやりとりをガン無視し、桜は口を開いた。
「記憶キューブの解放準備、整いました。キアラさん、万が一に備えての
キアラはダメだろ。と、言いかけたが自重した。疑いは罰せずというものだ。
「承知いたしております。暗号化された記憶の解放は容易でしょう。問題があるとしたらその後。皆さんがこの旧校舎で培われたつかの間の思い出と、取り戻された記憶、その双方が
うまく融和しない不具合……深刻な
できれば頼りたくないが。
「―――――――――では、
*
ずるりと。
ナニカが頭の中に―――落ちてきた。フォーリング。フォール・ダウン。
おむすびもかくや。
それは、自分としのぎを削った赤い騎士――『―――魔神戦では世話になったが、それとこれとは別だ。最強のサーヴァント、なんて名乗れるのは今日までだぞ、侵略王。
オレはアーサー王の騎士にして叛逆の騎士。王を殺してこそのオレだ。テメェなんぞに負けてたまるかってンだ!』
それは、かつての相棒によく似た稀代の王――『此こそが―――『
それは、女性への敬愛を示し続けた一人の魔術師――『我が魔術の真価を知れ―――!』
それは、悪の海賊たれた男―――『なんで此奴を見捨てなかったかなんざ――簡単だろ?俺の弟でもあるからだ。俺が見捨てちまったら誰が此奴を救うのさ。人を救えるのは人間だけでね、俺だけは此奴の味方だ』
それは、黒の衣に身を包んだ侠客――『マスターが諦めて無ねぇんだ。なら、俺が諦めるいかねぇだろ。つーか、さっきはよくも罵倒してくれやがったな、覚悟しろよ』
それは、贖罪に身を捧げる騎士――『みよ!我が穢れ!神を否定する我が身業、我が贖罪を!『
―――――――――それは、断片的ではあったが…鮮烈な戦いの記憶だった。
そして、忘れられぬ/忘れてはならない―――一人の
瞳は臙脂色で――炎が燃え盛っているような熱さを感じる。
烈火がごとく、人生を駆け抜けた女。
―――――俺なんかに応えてくれたサーヴァント。
そうだ。俺のサーヴァントは―――彼女だった。
*
脳が痺れたような思考の鈍さ。水の中に閉じ込められたような気さえする。思考速度が平常時に比べると随分遅い。
しかし―――確かに分かったものがある。
俺は――聖杯戦争に勝利していた。おそらく―――彼らの前に。要は、俺は過去の聖杯戦争勝利者というわけだ。そう断じれる理由は―――そちらを見つめる目が応えてくれるだろう。
周りを見てみれば―――記憶を取り戻して真っ当な顔をしているヤツはいなかった。眉をひそめてたたずむ者、表情がどんどん青くなっていく者。笑い始める者―――ガトーだ。
「ふっ……がァッハッハハハハハハッ!!!」
「そのバカ笑いをやめろ! ごった煮宗教家は黙っていろよ! この……っ……うっ……ううぅぅ………」
その場に崩れ落ちたシンジを心配したのか岸波が近づく。そんな岸波の顔をみて、シンジは恐怖と絶望の色を顔に浮かべた。
「……無理もないわ」
そう、遠坂が言った。
「っ…………ボクの記憶の最終更新は五回戦の決戦後で停止しています――皆さんもその認識でよろしいですか」
オレをちらりとレオは一瞥した後そう話した。
どうやら、他のメンバーとの話を聞く限り、自分が誰と戦い、誰を破ってきたかしか思い出せないらしい。
「兄さんはどうですか? ボクと足並みは一緒だった筈ですが……」
「……俺も五回戦までの記憶しかない。対戦相手は――――」
そう言ってユリウスは――岸波に視線をむけた。どうやら、彼らは五回戦で敵対したマスターというわけだ。
「――――――そうですか。その結果は?」
「悪いが、覚えていないな。お前はどうだ岸波。オレとの決着を思い出せるか?」
「いいや」
岸波は首を振った。どうやらどっちが勝ち残ったかは覚えていないらしい。
記憶は、彼らの協力を円滑にするための配慮だった。
BBの秘密を思い出すだとか、そういう方向性だったが、まったくの裏腹。別の意図が隠されていたようだ―――しかもBB戦には全く役に立たないという事実と共に。
結局誰もが自分だけを思い出したというだけだった。
「ハハッ……ハッ……なんとなく、分かってはいたんだ……分かってはいたんだよ……! 記憶なんて取り戻したってしょうがないって! そんなもの、忘れていた方が幸せだって! ああ――――ああ、ああぁもう! 余計なことしやがって!」
きっと勝ち残ったのは岸波の方で、シンジは敗北した。聖杯戦争に敗北するということは―――。
気分は分からなくもない。普通そうなる。
そして、話は進みジナコの話になった。
なにせ、聖杯戦争に参加しているのに誰も一度も見ていないからだ。
すると、どこからか。あるいはもはやいつもの――。
『結論の出ない議論は
―――――BBチャンネルが始まった。
***
BBチャンネルが終わるやいなや、ガトーはジナコのいる迷宮へ飛び出していった。
そして、それを追いかけるようにして――岸波白野が迷宮へと向った。
―――――残ったメンバーが慌ただしく動き出すなか、レオはオレに声をかけた。
「――待って下さい。ヒビノさん」
「なんだ」
「貴方も記憶を思い出した……で、いいですよね?」
「……ああ」
「では、サーヴァントについても?」
「そうだな……第五回戦の
生徒会の空気がビタっと止まった。
二人の間から流れる不穏な空気を悟ったからだろう。
「ちょ、ちょっとまさか―――」
「レオ会長は、五回戦の記憶は
遠坂の呟きにラニが応える。
俺にその
――どうして、俺は彼らを気ほども知らないのか、と。
都合の良い事実は着させて貰うとしよう。
「あなたの、ヒビノさんのサーヴァントは―――キャスターではありません。クラスは――セイバー。立ち姿こそ似てはいましたが、全くの別人でした」
「………キャスターはオレのサーヴァントじゃない。そういうことだろ? 俺は、知りもしない。誰とも分からないサーヴァントと今まで背中を預け合っていたわけだ」
―――ライダー、彼女ですらない。ならやはり――そのセイバーとやらと契約したのは俺の姿をした誰か。そう考えればつじつまが合う。
「………まあ、どうしてオレが、あのキャスターと契約したのか。されたのかは覚えていないが―――そんなことはもはや些末だ。………すまん、レオ。オレはここでリタイアだ」
振り返り、彼らから背くように歩く。道は分かたれた。
誰に言うわけもなく、出る前に呟いた。
「――――――オレも、夢を思い出しちまった。オレのたった一つの哀れな願いをな」
がらりと言う音がやけに重く聞こえた。
次回から岸波視点のオリジナル衛士攻略になると思います。
会長の記憶開帳で調子快調(激寒)