Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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四月になる前までには本編を―――(ここで文は途切れている)


閑話2

 

 

 夜はふけ、草木は眠りにつく。

 街は街灯の色だけを残していて民家の明かりの殆どは消えている。

 

 びゅう、と風が吹く。

 

 鉄骨は冷たさをありありと示し、暖かさを訴えていたネオンは消え去った。

 

 鋼鉄で組まれた―――電波塔の上。

 

 150メートルは優に超えているだろう塔の上に少女が立っていた。

 

 既に春は終りにさしかかり、夏が近づいてくる今ではあるが、夜の寒さはひとしおである。

 しかし、少女の装いは薄着。

 白いトップスに緑色に近いパステルカラーのロングスカート。黒革を編むように作られたヒール系のサンダル。

 

 どこにでもいそうな少女だが、見る人(魔術師)が見ればその華奢な身体に渦巻くエネルギーに驚嘆する。

 

 少女は一点をにらむように見て、自らの主人からの指令を待っている。

 

 少女のにらむ先には廃病院。主人はそこで“格下”の魔術師相手に本気を出している。あくまで本命は裏にいる魔術師とのこと。

 その魔術師を殺すために、少女は冷たい鉄塔の上で立っているのだ。

 

 

 何故、彼が本気で動かなくてはならない事態となったかと言えば、事は二週間ほど前にさかのぼる。

 

 

 人理は修復され、ヒビノの魂も無事に帰還した。完全に崩壊した人理は、フィニス・カルデアのマスターが見事解決した。

 ヒビノは、その事件の残滓を取り除くようカルデアから正式な依頼まで受け、神秘の隠蔽に馬車馬……忙しい日々を送っていた。

 だが、程なくして“新宿幻霊事件”という事件が起こる。

 ―――人理継続保障機関フィニス・カルデアがまたもこの事件を解決。

 

 国連、魔術協会に報告が届き、結果として俺の方にも情報が来た。ヒビノは己の心象に呼び込んだ魔神柱、アウナス(アミー)から人理修復については聞いていたが、新宿の事件は初めて聞く物であり驚いていた。

 

 カルデアからの報告に因れば、幻霊を召喚し英霊に融合させ強力な礼装として扱っていたらしい。

 

 幻霊とは英霊に至れなかった存在。

 虚構の存在であったり、成立するためのそれ相応の理由もなかったもの。霊基数値が足りなかった為に英霊に昇華されず、サーヴァントとしては成立しないもの。精々が都市伝説程度の概念であり、英雄にも反英雄にもなれず朽ちて消えるだけの存在である。

 

 そんな、魔術師がきけば目玉が飛び出しかねない好奇心溢れる事件を見事にカルデアは解決した。

 しかし、そのカルデアの後釜を巡って魔術協会内でちょっとしたいざこざがあったらしく―――それに巻き込まれた結果、今回の事態に関わることになったのだ。

 

 鉄塔の上で立つ少女――ライダーは、ヒビノにちょっとした仕事を頼まれてそこに立っていた。ちなみに、成功報酬は有名なネズミ―ランドでのデートである。

 

 彼女が睨み付ける先に、魔術師はた。

 

 ヒビノが彼女に頼んだのはとある魔術師の抹殺。

 黒魔術の系統の魔女だとかどうとか、ヒビノから説明を受けていたが彼女にとっては特段興味ある話でない。

 ただ、彼女が気になったのは――――ヒビノの行動原理である。

 

 彼はかなりものぐさな人間である。

 自分と関わらなければ絶対に動こうとしないし、やる気は起こさない。

 根っからの能動アンチぜいなのだ。いつも“なんで俺が?”みたいな主張ばかりし、鼻をほじっている。

 

 しかし、そんな彼でもとある女―――メイドが吠えたてれば、一転して主張を変え“仕方ない、動いてやるか”にかわる。ライダーの時には、駄々をこね始めるまで動こうとしないくせに。

 

 それがなんとも彼を思う女としてはもどかしいものをライダーは感じていた。

 

 “異性との仲がいい → 付き合ってるのでは?”と中学生にありがちな邪推をしてしまうのだ。彼が特別な関係にはないと言っている以上、彼の嘘をつけない性格からして信じられよう。されど、それを疑わずにはいられない。恋をする少女として在れば必然とついてくるものである。

 

 目標の魔術師を捕捉し続けること二時間。

 

 

 ついに―――。

 

『――――――やれ、ライダー』

 

 それは告げられた。

 

 死に神に告げる、惨殺の声。

 

 振り上げられた鎌を振り下ろせと彼は命じた。

 

 

「了解よ………マスター」

 

 

 意識を切り替える。

 左手に少女の背丈を超えているだろう大弓が現れる。

 

 ―――宝具『神獣マニの祈りの弓』

 

 金と翡翠で装飾された豪華な弓だ。

 堅く張られた弦は、強靱な肉体を持った人間でも扱うのが難しいとされている。

 

 しかし、彼女は何のこともなげにヒビノが用意した礼装―――魔術で強化された鉄芯を番えて軽く引く。

 

 ぎりり、と引かれた弦に番えられた黒く、杭にすら見えるもの。

 

 狙った魔術師はホテルの部屋のフロアを貸し切って工房化しているらしい。まあ、だからどうしたと彼女は鼻で笑う。

 

 この杭は部屋に突入したのと同時に爆散する。フロア一つ吹っ飛ばす程度は出来るとヒビノはライダーに説明していた。

 

 ―――――要はフロアごとぶち抜いて殺す。

 

 従業員はフロアによりつかないように暗示を掛けて合うらしく、都合よくいない。

 

 明日の朝刊には“原因不明の爆発”として大きく取り上げられるに違いない。

 

 引き絞られた矢がライダーの手から放たれる。

 

 流線にして放物線。

 

 ―――細い螺旋を描き、二キロ先にある目標へ向っていく。

 

 遮る者は何一つない。

 

 

 込められた魔力も、ライダーの宝具の余波―――即ち、マナの揺らぎも―――ヒビノのがしゃ髑髏の神秘と強力な魔力によるジャミング。

 

 故に、魔術師が己を狙う矢を感知することなど不可能だった。また、ライダーが外すというのもあり得ない。彼女は―――かの有名なチンギス・ハンである。

 

 吸い込まれるように、階層に矢は向う。

 

 

 

 ―――――そして、直撃。

 

 

 狙われた魔女は突然壁を穿ち己に突き刺さった矢を、目を瞬かせながらみて。

 

 激しい閃光の中に身を溶かして、痛みを感じる間もなく絶命した。

 

 ホテルの最上階から二段下のフロアは爆発音とともに火の海に包まれた。

 

 ぐずぐずに肉体を溶かす人間だったものを視認してライダーはヒビノに報告する。

 

 

『―――こっちの仕事は終わったわ。計画通り黒幕は絶命。先に帰るけど、さっさとその手下も抹殺して来なさい』

『ああ、わかった』

 

 

 大弓を虚空に溶かすようにして仕舞い。彼女は帰路へとついた。

 

***

 

 

「と言う訳だ。お前の頼るべき師は死んだ。お前を庇護する者はどこにもいない」

 

 床に、身体のあちこちの腱だけを切って放置している魔女に言う。歳は――二十歳もいかないような女。一応、稀代の黒魔術師らしい。

 にしては名前を聞かなかったが。時計塔のいろんなところに出入りしていた俺ですら知らないのだ。稀代、と言えるかは怪しい。

 まあ、魔術が廃れていく中でここまでの工房をつくれるなら優秀とは呼べるのだろう。俺ら相手の引きつけ役―――捨て石扱いだったが。

 

「わ、わたしを殺すの……?」

 

 震えた声で問いかけてくる。

 

「当然」

 

 見逃すなどあり得ない。メイドから頼まれた、というのもある。むしろ頼まれなければ、こんな七面倒なマネするか。

 なにが悲しくて、お前らのいざこざに付き合わなくてはならないのか。

 

「お前を殺す方法は――――どうしようか、髑髏くん」

 

 取り敢えず後ろにたたずんでいるがしゃ髑髏に問うてみる。

 

 さっき膨大な死霊をもぐもぐしちゃったせいか、五月蠅い嘆きの声を漏らすことがなくなり静かである。

 

 魔力がたりてないときも静かになるが、それは考えられないし。お腹いっぱいにでもなったのだろう(思考放棄)。

 実は、ここだけの話。なんでこいつしゃべれるのか、しゃべるのか分からないんだよね。

 いや、マジで。

 

「女、何を犯した」

「えっと……、殺した人間は四十三人。そのうち、半分以上が高校生。これからの将来が期待されていた二十四人。そして大学生七人。小学生が二人。赤子が一人。それ以外は大人。しかし、いずれも女性」

 

 あれ? 片言じゃない? アレですか、噂に聞く賢者モード的なヤツですか。

 

「どんな方法か」

「子宮を引っこ抜く。腕を交換―――ああ、右腕と左腕を外して入れ替えたっていう意味ね。で、あとは眼球をほじったり、腸を引き抜いたり。いずれも生きたまま行われている。だが、もっとも罪深いのは――――それらが殆ど意味を成さないことだ。

 そもそも地獄とは断罪の場。悪人こそが報いを受けるためのものである。ため込むべき魂は、この造りだと自然に集まってくる。何百年と経過しなくては異界にはならないだろうが。しかし、陵辱を尽す必要は無い。

 欲しいのは魂、生命エネルギーだけの筈だからな」

 

 そう、陵辱は必要ない。惨劇は必要ない。

 

 強い執着をこの場に持ち込みたいというなら話は別だが。強力な地縛霊を増産するきなんだろうか。街で確認された黒い影や、それに纏わる都市伝説はそれが起こしたものだろう。

 

「つまりは、ソイツの趣味で陵辱は行われた」

 

 それを聞いたがしゃどくろの目がつり上がったように見えた。

 つり上がる筋肉を持っていない筈なのだが。骨だし。

 ―――感情あるの?

 

「魔術師によくある事だ。というか黒魔術―――生け贄を基本とする奴等は、まず冷酷であることを求められる。人を呪わばなんとやら。行使する代償が精神汚染っていうのが多い。―――まあ、そこの女のように嗜虐に愉悦を覚え、発情した雌豚のようになった魔術師も多いがね。基本敵に魔術師ってのは人でなしの連中だ。他人を同じ人間としては見れない、欠陥品どもさ。魔術師(おれたち)は他人を餌としか思えないから―――魔術師としては一般的な考えだ」

 

 黒魔術師の時点で、人を自分と同じと思ったのならやっていけないだろうしなぁ。真っ当さ精神では耐えられまい。

 

「そうだ――! 私は悪くない!」

 

 何を勘違いしたのか、そんなことを魔女は宣った。生存への希望を見たから、そんなことを言い出したのだろう。

 

()()()()()()()()()やっ()()()()!!」

 

 いや、そもそも許す許さないで動いているわけでなし。

 というか悪びれもしないとは―――ただ見苦しい醜悪さだけではないか。生への執着。ふむ、悪くはないが――運がなかったな。

 

 がしゃ髑髏は、あえて発言させたかったのかもしれない。

 彼女には二つの選択肢があった。

 自らの罪を認めるか。自らの罪を認めないか。

 

 どっちにしても殺すという結末は変わらないが―――どっちを選んでもでも絶望させられる。

 

「カカ、カカかカカ可っ!―――――――我が、主」

「あん? ていうか、なんで主呼び?」

「ここは―――どこぞ?」

「ここ? そりゃあ…………嗚呼、成る程」

 

 何処かと聞かれれば廃病院の中だが、ここは彼女の工房の中。

 すなわち。

 

「―――――――地獄だ」

「KKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKK!!!」

 

 たいそうにこれほど面白い者はないと言うかのように笑い出す。

 

 ―――アレ? 思考回路在るの? ひょっとして清盛インストールですか?

 

 脳裏にちらつく危険性を振り払いながら―――最悪裏切られても、ライダーが……アイツ帰ったんだった。なにぶんこんなことは初めてである。この場が霊界に近い構造をしているのも関係しているのだろうか。

 

 一人、戦々恐々としていると、がしゃどくろは二の句を告げる。

 

「――――――ここは、地獄。悪徳を積上げし者共を、断罪、贖罪を行使するための異界である。それなるは、亡者による裁定の場である」

 

 つまり、ここは閻魔の御膳ってことか……………ん?

 

 今、何か脳裏を言葉がよぎったような?

 

「遮止。平等―――ヤマにより裁かれた。汝が命運は尽きにけり」

 

 閻魔、といえばインドの古い神格ヤマ――人間の祖ともされている冥界の王である。仏教では閻魔天、地獄の主とされた。六欲天の第3天である夜摩天、あるいは焔摩天ともされている―――む?

 そういや、元のインド神の頃にヤマはペットを飼っていたって話があったような。

 ケロベロスみたいな犬と水牛―――あと何だっけ?

 

「よって、魔女よ。貴様には地獄の責め苦こそ相応しい。しかし、それは死後の話―――生前は管轄外だ」

 

 うーん。思いだせん。

 

 何だっけなぁ。確か死の病魔的なヤツがいたような?

 

「な、ならッ……!」

 

 おや? 何だか希望を持った声がする。 絶望させなきゃ(使命感)。

 

「我が主に問う。それをどうサバく?」

「あー、そうだな。………日本は一応民主主義の国だ」

「多数決か?」

「でも、ここは地獄。死者の国―――ならば、民は当然なぁ」

 

 からからと骨をならし髑髏は嗤う。

 どうやら俺の意図をくんでくれたらしい。

 

「酷い話だ。では―――裁判官の招集を」

 

 その髑髏の声に応えるように四十三の人のカタチをした影が現れる。

 

 黒い瘴気が集まって出来たそれは――紛れもなく亡者だった。

 

「諸君、被告――魔女に何を求めるか?」

『死! 死を! 凄惨なる死を!』

『この上ない汚辱を! 我らにした非道を!』

『返せ! 私の未来を! 返せぬのならコロセ!』

『コロセ! 殺せ! 殺さないなら殺させろ!』

 

 一同に喚き立つ。肝を冷やす光景ではある。

 

 というか、俺も冷や汗がやばい。

 なんかとんでもないものを見ているような……そんな悪寒がする。

 腕で払えば消える幻覚だったとしても―――恐ろしい。

 赤子の泣き声がしっかり聞こえるのが、一番怖いです。はい。

 

「だまれ、だまれ黙れ黙れ―――! この虫けらがッ! 研究材料が喚くなァ!!」

 

 お前が黙れェェ―――!

 

 目に見えて我者髑髏さんの機嫌が悪くなっただろうが! とばっちりはごめんである。俺も魔術師だし。結構人命奪ってきたし。まだ余命を閉じるわけにはいかないんだよ! ライダーとの約束的に。

 

「虫けらねぇ……なら、決まったんじゃないか?」

「ほう?」

『コロセ、コロセェ!』

「当然、殺す。大切なのは殺し方。殺すのは簡単だ。我者髑髏にかみ砕かせてもいいし、俺が斬り殺してもいい。豪華に業火であぶってもいいし―――」

「……………」

『……………』

「おい、なんで黙る。つーか死霊まで黙ったんだけど」

 

 こほん。

 

「―――刑罰には被害者感情の程度で大きく変容する。遺族が激しい刑罰を望めば優先されるのもそのせいだ。だが、ここに何の因果か―――被害者本人らがいる」

「なにが言いたい」

「俺達が殺してもいいのかって話だよ。せっかく、ここにお前達はいるのにただの裁判官の役目を果たすだけでいいのか? ―――――どうせなら」

 

『俺達ノ手デ殺ス?』

 

 一人の亡者がそう答えた。

 

 にやり、と笑みを返す。

 死者には困惑が残る。飛びつかないのは、ここが裁判場の役割を仮とはいえ成しているからだ。生者を殺すことが罪になるかもしれない――そう思案しているのかもしれない。

 

 俺は、とんとんと足で床を小突く。

 

「この工房はまだ機能している。亡者を呼んだのは―――そこの女。作ったのは、そこの女。なら、その亡者に殺されるとあらば―――ただの自殺。罪などあろうはずがない。包丁で自害したら包丁を作ったヤツが悪いとでもいうのかね?」

「ふむ。ならば閻魔様もこの件には目をつむろうというもの。そも、ここは地獄ではあるが現世でもある。あくまで地獄は生前を裁くもの。死後に関しては―――不問とする」

「虫けら―――そう言ったな魔女。 なら、相応しい末路をお前に与えよう。その名も―――虫喰いの刑。なぁに、そう怯えるな。覚悟はしていただろう? 俺達は真っ当な死に方は出来ないってさ」

 

 がしゃどくろの目がらんと光る。

 

 亡者のうめき声が激しくなっていく。

 魔女は凍えるような寒さに身体を震わせるだけ。

 

 どっちかっていうと熱いけど。まあ、これから死ぬんだから寒くなるのは当然か。

 

「しかし、裁かれるなんて随分と良い末路じゃないか。人扱いされるなんて」

「不服か? ならば、どうする―――」

「一切の財貨を奪う。三文も持たぬ魂など、三途を渡れる通りもなし。なれば―――」

「酷いことをする。悪魔のようだ」

「お前に言われたかねぇよ、死霊。―――というかなんでしゃべれんの?」

 

 黒い影は―――笑いながら一人の女に群がっていく。

 

 ごしゃ。ばり。むしゃり。ぐちゃり。

 

 咀嚼音。あるいは悲鳴。怨嗟。恐怖。

 

 飢えた犬に食われるようで―――それが自分の末路を示唆しているように見えた。

 

 

「あの女は無間の地獄行き。――――――わるかったな。間に合わなくて」

 

 

 脳裏によぎる女の顔。

 無き腫らした顔で、俺なんかに助けを請うた(ひと)

 

 彼女にとって、俺は(カタキ)

 

 彼女の両親を命を奪った張本人。彼女の幸福奪った罪人だ。

 

 今でこそ、メイドしているが―――生きる手段がそれしかなかっただけだ。大切な人を覚えて生きていく手段がそれしかなかっただけ。

 

『私は――――貴方を、殺す。私の大切な人を奪った報いを必ず受けてもらいます』

 

 間が悪かったと、言い訳はできる。しかし、それは何だか情けない気がした。

 

『………なら、こちらも条件がある』

 

 そのせいか、そんな言葉を返していた。

 

『お前が殺すのは―――俺だけだ。殺して良いのは俺だけだ。俺以外の人命を奪わないこと。それを、約束出来るならば喜んで君に殺されよう。まあ、俺もそのときは全力で抵抗するがね』

 

『当然、俺を殺したいというならそのための手段に協力しよう。魔術―――君には類い希な才能、魔術回路がある。俺の後釜も都合よく空いていることだしな』

 

『体術―――ひいては暗殺術も教えよう。 武術は―――俺は教えれるほど極めてないし、まあ知り合いに頼む』

 

『この条件を呑むなら、覚悟をしろ。お前に真っ当な末路は約束できない。俺を殺すまでは魔術師としても扱う』

 

 

 うちで働く時点で、普通の生活はできないだろうが―――魔術師として生きるよりは幸せを約束できるだろう。給料高めだし。ブラックだけど。

 そこそこ威圧したにもかかわらず間髪入れずに彼女は答えた。

 

『―――その程度、構わない。幸せなんて、いらない』

 

 悲しい答えだったが。提案した以上、俺は受けなくてはいけない。それが責任というものだ。

 

『なら、契約はここに相成った。俺は、約束だけは守る男でね。君を一流の魔術師に仕立て上げよう。―――――――約束する。どうぞ、今後からよろしく……嗚呼、そういえば聞いてなかった』

 

『君の名前は? 確か上のほうは―――しいなって言ったっけ?』

『椎名、なつき』

『下の字はどう描く?』

『名のある月、と』

『……ひょっとして八月生まれ?』

 

 

 そんな会話をしていたのを思い出す。

 

 

 ぼーっとしていたみたいだ。

 

 

 アリの食事風景みたいなものはもう終わっていた。亡霊は冥界へ帰っていき、残されたのは髑髏と、俺だけ。

 

「――もどれ」

 

 瓶を頭上に差し出す。

 

 ずしゃあと一斉に骨が塵となり床を黒く染めた液体と混じり合って―――瓶の中へと帰ってきた。

 

 これにて、事件は終焉。

 

 幕引きにございますってね。

 

 

 メイドとは俺を殺すことを約束した。

 ライダーとは共に生きることを約束した。

 

 一見矛盾だが、見方を変えれば――――。あいや、思考にまたふけるわけにはいかない。

 

 早く帰ってこいとライダーに言われたことを思い出した。

 

 帰路に着く。

 

 ――――――たとえ、この身が怪物に成り果てようとも、彼女との約束は忘れない。

 

 

 空を見上げれば、綺麗な白い月。良い満月だ。

 

「―――――ああ。本当に、綺麗な月」

 

 

 




ラ「おい、どういうことじゃゴラァ!!」
火「―――いつもの、だ。後、キャラ間違えてないかライダー? だいたい今回の話ってアレだから。キャスター編の俺との差異とかに分かりやすくしただけだから..........俺は悪くねぇ!」
ラ「地獄ツアー決定ね!」
火「あれ? 目の前に業火が...あっ、これ死ぬ」

*こっから先は煙が立ちこめて見えない。
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