……少し、整理しよう。
キャスターは、自らのSGを是まで見せつけてきた、とヒビノは言った。
・SGは、迷宮にある。
・見せつけた → 誰もが視認出来きるものである。
・SGは好みを差している。
わざわざ、ヒビノはキャスターに年齢を尋ねていた。
そこからは―――歳がSGに関わってくることが……どうだろう。ニュアンスとしては……“その年になって?”というものを感じた。
・歳がSGに関係してくる → 年を取ると恥ずかしい趣味?
そして、彼は第三のヒントとして“自分は無駄なことをしない”といった。わざわざ伝えてきたのだから何かしら意味を持つのかもしれない。
彼がこの迷宮でしたことと言えば―――アイテムの中身の入れ替えだ。
キャスターが調合した即死トラップ系エリクサ―と彼女の書いた手記を交換したのだ。
・ヒビノは無駄なことをしない → 彼女の書いた手記がSGに関係?
そこまで、情報を整理したとき。
「……岸波にしては察しが悪、い――――――――――――――――――――――――――あっ」
とヒビノが言った。
何か伝え忘れたことでも思い出したのだろうか?
彼は頭を片手でかきながら聞いてきた。
「……ひょっとして、迷宮のアイテム全部拾ってないのか? なら、察しが悪いのもうなずける。というか、分かるはずがないな! うん!」
「―――奏者よ。ひょっとして、アレではないか? 迷宮にあるもの、にしては一つおかしなものがあったと思うのだが」
セイバーに言われて、思い出す。
そういえば、五番目のアイテムボックスから“ぬいぐるみ”が出たのだった。
―――これは、彼女の真名に対する助言のようなものだと思っていたのだが。
とりあえず、取り出してみる。けっこう大きい。六十センチ大はありそうだ。
「なんだ、もってんじゃねぇか。烏のぬいぐるみ」
「――――っ、……………」
スゴイ勢いでキャスターが反応した。正確には首をぎゅんと動かして、ぬいぐるみを直視したあと、なんでもないように顔を戻した。
しかし、気になるのかチラチラと見ている。
――――――どくん。
「…………な。もうわかったんじゃないか?」
五停心観が小さくだが、反応した。
その反応でもう察したたろう? と彼は言ってくるが―――なんとなく分かりそうだが、逆にヒビノのヒントが邪魔になっている。
「………下僕。貴方は、わたしの、何ですか?」
「そりゃ、マスターだが」
「では、どうして……彼らに味方するのです?」
「そりゃ、お前の味方だからな」
「………意味が、わかりません。彼らの、私のSGを引き抜くことが……なになるのです。貴方の行動理由が皆目見当がつかないです」
「………ヒビノであるからにはってヤツさ。いつもの病気さ」
「少しは、私にも分かるように言ってくれませんか?」
そんな会話をヒビノとキャスターはしている。SGに関係してくるかなと思っていたが、どうやらそんな気配はない。
―――キャスターは、こっちを見ようとせず、ヒビノとの会話に集中しているようだった。
あるいは、こっちを見ないために集中しているのかもしれない。でも……会話する度に、悲しそうな表情。なんども直そうとしているが……目元が戻っていない。
彼の言う自重染みた声は―――彼の病気とやらのせいなのか。
……………キャスターに頑なに自分の目的を告げないのは、その病気が原因なのだろうか。
今は、彼女たちのことより、SGだ。
今を逃す術はない。
まずは―――迷宮で必ず目にするものについて考えよう。
それは、アイテムなのだろうか……それにしては、この層に入った時点で矛盾する。
彼がアイテムを取り替えたからだ。
当然前の迷宮には、キャスターの手記も、このもふもふのぬいぐるみもなかった。
……………もの、じゃないなら。
―――――景色?
景色を思い浮かべる。
キャスターの最初の層は、黒い森や聖堂に上弦の月。
そしてここの層は、満月に黄金の葉を付けた木に赤い実をつけた植物。あの植物はヤドリキらしいが……今一ピンとこない。
共通のものは確かにあるのだが……それは他のものに繋がる気がしない。
そう言えば、彼のヒントの迷宮には――決闘場の光景も入るのだろうか。
――――――――――――。
どれも、幻想的?
―――――どくん。
心臓が跳ね上がったような感覚。
五停心観が、反応した。
そう、言えば―――。
『ああ、あのステージだが、ラニのアレで行ったろ―――ゲームステージだ。こっちの何十倍かの時間加速がある場所を、キャスターの陣地構築を流用してつくったんだ。……キャスターの趣味が結構出てたけど』
そうだ。キャスターの趣味が出ていたってヒビノは言ってたじゃないか!
SGは好みを差してるとも言っていた。なら――――。
「やっと、わかったらしいな。岸波」
「なにっ!? 真か、奏者! 余には、今一はっきりと言葉が浮かばんというのに……なんか悔しいぞ!」
「………わたしのSGをクイズ当てみたいにするの、やめていただけます?」
それは、ヒビノしだいだと思う。
だってクイズにしたの彼のヒントのせいだし。
そして、こっちをむいたキャスターは、自分が手に持っている烏のぬいぐるみに目が釘付けになっている。
ヒビノは、ゆっくりと自分に近づいてきた。
やがて目の前までくると。
「なら―――きっかけは、任せてくれ。それ、返してくれるかな」
彼とは、思えないほど優しげな声だった。
―――えっと、返す? ひょっとして彼のものだったのだろうか。
取り敢えず、彼に手渡す。
「それだけは間違って、アイテムボックスの中にいれちまってね」
そういう。彼もドジをするのか。
なんだかバカしながらもドジはしないようなイメージを抱いていたけど。
彼は、キャスターの元へと歩いて行って。
「ほらよ、キャスター。………ありがとな。オレのワガママに付き合ってくれてさ。これは、ちょっとした感謝の印。
「――――――え?」
そんな彼の言葉を。
キャスターは、目を白黒させて。
――頬をほんのり、赤く染めて。
「―――――――――はい……」
彼のぬいぐるみを受け取った。
その恥ずかしそうにはにかんだ顔にこっちの心臓まで、跳ね上がる。
――――どくん。
心臓だけじゃなくて、五停心観も反応する。
「それ。オレが作ったんだ。ほら、お前――烏好きだろ……? だから、な。………だあぁぁぁ!! わぁってるよ、オレにしては妙なことしてるってさぁ!」
ヒビノは顔を赤くして照れ隠しにそう言った。
そんな言葉にキャスターは、ぬいぐるみに半分だけ顔を
「わたし、貴方に、烏が好きなこと……いいましたっけ?」
「…………………推理、推測だよ」
―――――ドクン。
「なるほどな……あのキャスターを見れば、SGは一目瞭然というもの。幸せそうな間を裂くのはちとかわいそうだが……」
嗚呼、きっと。
烏が好きなこと自体はSGではないのだ。
彼女の迷宮の景色を考慮すれば、
彼女が、恥ずかしい、と思っている趣味は―――これしかない。
》―――『
彼女の胸からSGが輝く。
「あ、ぁぁ――――――、これが、わたしの……」
その赤く丸く固まった光玉が―――彼女の胸から一人でに離れて、自分の掌に収まった。
さっきから生徒会からの通信がこないことが気になっていたが……こっちの状況は分かっているようだ。
この闘技場ないは通信が通じないのだろう。
「―――――――――はずか、しいです。これは……すごく、恥ずかしい」
キャスターは、より頬の赤さを鮮明にして――その顔をぬいぐるみのなかに埋めるようにして隠す。
ヒビノは――――――――。
「―――――――――――なっ」
………………え?
目の前の光景に理解が追いつかなかった。
そばで、呟いたセイバーの声も遠く感じる。
――――ヒビノは、幸せそうな――穏やかな顔して。
ぴちゃり。鉄の臭いがする。
―――――笑顔を作っている口から止めどなく
そんな自分達の反応に気づいたのか。彼は、こっちに顔を向ける。
「なんだよ、お前ら。なんつー顔を………?」
彼は、今気づいたようだった。
自分が血を吐いていることを。
「ありゃりゃ………、なんじゃ、こりゃ――――――――――――もう、時間が、な……い…?」
どちゃ。
彼は、崩れ落ちるように床に倒れた。
赤い水たまりが広がって――――。
「………どうかなさい――――――あ、ああ……………………」
異常を察したのか、キャスターはぬいぐるみから顔を上げて――――それを直視した。
赤い血だまりに倒れ伏す、彼女に味方と言った青年が。
「…………………………………そ………、んな」
ぱしゃん、と彼女はまるで糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
震えた手で顔を押さえている。
「な、何をしておる! 奏者もだ! キャスター、貴様、そやつのマスターであろう!? はやく、たすけ―――」
そう叱咤するセイバーの声に気を戻す。
そうだ。はやく助けなけれ――――――。
「…………………あはっ」
この場には相応しくない、笑い声が響いた。
―――背筋に冷たいものが流れる。
セイバーも、駆け寄るのをやめ―――その笑い声の主に目を向けた。
「あは、あはははっ、アハアッハッハッハッハハハハハハ――――!」
なにもかもがおかしいと言うかのように、突然キャスターは笑いだした。
その狂気じみた――――嘲笑うような声。
どむっとヒビノの頭もヨコを蹴りつける。
次いで、腹を蹴って転がす。
「――――――もうこわれたの? ……人間にしてはよく持ったものだから目を掛けてあげたっていうのにねぇ? わたしがなにかするより早くイってしまうなんて―――恥ずかしくないの?」
小馬鹿にして叉蹴りつけた。
「―――が、―――――はァッ、あぐぅっ」
「あら? 痛くて死に戻っちゃった?」
童女のような無邪気さで―――異常とも思える悪意をむき出しにする。
目につく何者も見下す傲慢さを瞳ににじませていた。
「―――――――でも、もういらないわ貴方。だって私より弱い人なんて、ヤりがいがないもの」
身勝手さで―――彼女は己がマスターを切り捨てた。
彼女の――ヒビノを見る目は冷たい。屍肉にたかる虫を見ているかのよう。
…………君は、ヒビノを大切に想っていたんじゃなかったのか?
「はぁ? ふ、ふふふふふ――――バカなこと言わないでくれる? 私が、こんなヤツにどうして気を向けなきゃいけないわけ? 一緒にいるのもイヤだったわよ」
―――魔女の側面を、ようやく自分は認識した。
「ちょっと優しくしてやったら、調子に乗って――――あはははははは! ホント―――無様すぎて面白かったわ! ええ、コイツ諸共頭がお花畑で―――最高に、愉しかったわ」
「じゃぁね。無様なニンゲンども。 ああ、それゴミ以下だけど、欲しいなら上げるわ」
そう言って去って言った。
――――ヒビノ!
彼女が去ってから急いで、ヒビノにかけより声を掛ける。
「脈は、あるようだ。だが――ここまで酷いとなると………サクラの方が本職だ。早く連れて帰るぞ、奏者!」
彼を担ぐ。
――――――軽い。自分より長身でがたいが良いのに。
まるで、構造体がごっそりと消えてるかのようで―――――。
「急ぐぞ―――!」
どうか、持ってくれ――!
力なく揺れる彼の身体を背負いながら―――校舎へ急いだ。
****
SG2『
キャスターの―――つまりは、モルガンのSG。
可愛い者に目がなく、飛び突きほおずりせざるを得ない―――溺愛好者である。溺愛できるから、可愛い物を愛せる。溺愛出来る者でなくては、発現しないSGである。……メルトリリスも持っている―――ちょっと特殊だが。
とかく。可愛らしいものを集める、という行為自体におかしいものはない。
女性が可愛らしいものを求めるのはもはや本能。無条件で可愛いものや綺麗なものを集めて眺めたり集めたいという欲求事態を女性は持っているのである。
だが、彼女に“可愛いものや綺麗なものを集めたがるなんて――お前って烏みたいだよな”とか言うと、もれなくコンクリート製の壁に埋め込まれることになる。……ヒビノみたいに。
―――結論として、女性は自分の価値観にあった“美”をもとめがちだ。
例えば、その『美』がお金に向けられれば―――遠坂凜になるのだ(直球)。
キャスター――つまり、モルガンは生前、賢者であり魔術師であり、薬剤師であった。アーサー王に力を貸したことも何度かある。
彼女は魔術師、そして薬剤師であったが故に、よく錬金や調合に使うための素材を集めていた。
時よりガリアやブリテン各地に飛んでは、素材を収集していた。
それがちょっとした趣味となったのである。――――――そこからこのSGへと発展したのだ。
愛らしい者を集めて、煌びやかな宝石なんかも集めるようになった。
ヒビノがプレゼントした、烏のぬいぐるみだが――――――みごとに彼女のこころに響いた。
彼女は烏をよく使い魔として使用する。それは―――単純に好きな動物だからだ。
アイルランド周辺にすむ一般的な烏はズキンカラス。あるいはハイイロカラスともよばれるもの。雑食なので色々食う。
冬場、食料が少なくなった時、彼らは生存するために屍肉を啄む。
ニンゲンが戦争するのは収穫が終わった後である。
故に、人の屍を啄む姿を戦争後にはよく見たのだろう。アイルランドでは、死と殺戮の神には烏がつきものになった。それがモルガンにも少なくない影響を与えていたのだ。
烏は他の鳥より知性が高く、愛らしい―――と彼女は言う。
断じて―――彼女の色気に負けて、木の実を差し出していたり光り物を持ってきてくれるからではない。
―――調教したら、それはもう宝石がざくざく手に入ったからとか、素材が入手したくてこき使っていたとか…………そんな事実はない。
信じるか信じないかは、貴方次第……。
え? ヒビノは信じたか?
信じてたら壁に埋まってない。
火「ふむ......これは、誰かの意見をきかねば」
ラ「どうかした?」
火「おっ、ちょうど良いところに......これ、食ってみてくんない?」
ラ「なにこれ」
火「ポップコーンだ。客人にだそうと作ったのは良いんだが...味がだな」
ラ「これ、虹色なんだけど...?」
火「ああ」
ラ「これを食べろって?」
火「ああ」
ラ「え?」
火「ああ」