Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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エイプリルフールネタしようとか思ったけど、時系列的に中途半端なのでやめた。


妖姫:序

 

 ―――――旧い、ユメをオモイダス。

 

 

 

 

 正直、覚えていているような/覚えていないないような

 

 ……そんな曖昧なユメ。不可思議なユメ。

 

 もう。

 

 カオも、見エヌ誰カに。

 

 何か、イッタヨウナ―――気がするだけのユメ。

 

 

 黒い黒い影が―――美しい女に声を掛けている。

 

 

 ソノ影は、自分ナノカドウカ/きっと自分なのだろう。

 

 モウ、思イ出セル/想い出したくない―――願イ一ツ。

 

 タダ、ムナシイ―――最低ナ言葉ヲ。

 

 女に、無責任ナ言葉を。

 

『絶■■、■の■■帰■から』

 

 だから。

 

『■■■■■いて■しいんだ』

 

 黒い影ハ、そうイった。

 

 今となっては、意味ヲ持タヌ約束。

 

 

 

 ――――嗚呼、オレは彼女にナント言ッタノカ。

 

 

 それだけが、思い出せない/ソレダケハ、思イ出シタイノニ。

 

 

 

 意識ガ―――深ク、落チテイク。

 

 

 

 確カ、自分はシニタイだったっけ。

 

 

 モウ、壊レタ/壊レテシマッタ、身体は、動きそうにない。

 

 

 

 

 …………………………このまま、壊れてしま(諦めてしま)―――――

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――諦める? 君が?

 

 

 

 

 

 

 ドコからか、ソンナ言葉ガ響イテキタ。

 

 

 

 

―――――――――勇猛な男と、聞いていたが……随分と、フヌケではないか。よく彼女は、こんなモノを■けたものだ。

 

 

 うるさいコエだ。

 

 モウ、放ッテオイテ欲シイ。

 

 自分は―――壊レルノダカラ。

 

 

 

 ―――――――いいのかね? 本当に?

 

 

 ………………。

 

 

 ふと、疑問に思う。

 

 どうして、そんなに問イカケテクルノだろう?

 ()()()()()()()()はしらない。

 

 

 ――――被害者ぶっても、何も手に入らないぞ。

 

 

 …………………。

 

 やはり、知らない声だ。優しげでもあるのに―――どこか悲しいとも言いたげな声だ。

 

 

 ―――――こまったな。君も、どっかの馬鹿と同じらしい。

 

 

 …………好きにいえばいい。

 

 一秒先には、壊れるてしまうのだから―――。

 

 

 ―――――――あー、めんどくせぇ。

 

 …………。

 

 ―――あんだけ、うっとうしいほど諦めないだのなんだの1500年も続けられたものだ。だが、結果が是とはな! 貴様の信念とやらもたいした事がないらしい!

 

 ………………何を、言ッテイ――。

 

 響く声は、まるで憂さ晴らしをするかのように訴えてくる。

 

 

 ―――――――人の心の中にまでその妄執を押しつけたくせに、その本人は、何も成さずに消えようほざく。酷い詐欺に遭った! マー■ンの口車にのった俺が馬鹿だった!

 

 

 

 …………本当に、何を言っている?

 

 

 

 ――――――――――何も、何も知らないくせにッ! 何も知ろうとせずにッ! のうのうとくたばろうとは………そんなに、彼女の声は、響いたのか……?

 

 激情を垂れ流すように喋っておきながら―――途端に声色を優しげなものに変えた。

 

 どうやら、自分を、心配しているらしい。

 

 ―――はぁ……………これも、ナニカの縁か。

 

 ―――招待してやるよ、色男。

 

 ―――正直、呼ぶのもいやだが。

 

 

 ――――――ようこそ。俺の心の中、紅華水月摩天楼へ。

 

 

 世界が/あっさりと/反転した。

 

 

***

 

 

 ―――――――気づけば。

 

 

 一面の花畑の中に自分はいた。

 

 そこら中に咲いているのは――彼岸花か。たしか、■■から聞いたような気がする。

 

 ――――脳裏をかすめる、誰かがそう言っていたような。

 

 甘く、痺れる香り。

 

 赤い花弁は綺麗の一言に尽きるが……茎は、肌をかぶれさせる。

 

 一種の神経毒として調合することもできる………らしい。

 

 ―――誰から、そんな話を聞いたような。

 

 ………頭が、痛む。

 

 

 こめかみをカッターで斬りつけられているよう。

 

 しばらく、目を瞑って耐えていると―――頭痛は止んだ。

 

 

 周囲を見渡すと―――奥に、なにか建っているのが見えた。

 

 …………どうやら、こっちへこい、ということらしい。

 

 幽鬼もさながらな、おぼつかない足取りで、そこへむかう。

 

 ………少し、不安定。

 

 

 自分が、なんであったかを思い出せない。

 

 

 

 ―――建物は、灰色で直方体。

 

 あきらかに、罠とも思える不自然さ。

 

 扉は、やたら重厚。

 

 金属製の重々しい扉は、ここが監獄というなら似合いそうなもの。

 

 

 ――――ぎぃぃぃ。

 

 

 重い金属音を響かせながら開ける。

 

 中は―――現代的な部屋だった。

 

 暗めの色彩で整えられ、奥には―――受付用のカウンターが置かれている。レジなどもあることから、何かしらの取引をする場所だろう。

 

 その近くにはポップコーンだとか、飲み物だとかも置いてあった。

 売り子はいないようだが。

 

 無人なのに。誰かいたような形式。

 

 まるで、どっかの景色をそこに切り貼りしたような建物だ。

 

 ――ぎぃ。

 

 どこかで、扉が開くような音がする。

 

 奥へ進め、という催促。

 

 かつかつと奥に繋がっているだろう細い通路を歩いて行く。

 

 ―――予想通りに、扉が開いていた。

 

 

 

 扉の向こうは、さらに暗い。

 

 

 暗い部屋には――多くのイスが並んであって。

 

 奥には、白い壁がある。

 

 

 からからから、と何かが回っているような音がする。

 

 

 足が、自然と―――吸い寄せられるように。席へ向う。

 

 自分の目指す席の奥に誰かが座っているのが見えた。

 

 

 黒髪に、黒目。アジア系の肌。

 

 ―――知っているような、知らないような。

 

 

「…………どう見たって似てねぇって思うんだけどなぁ。アイツ、実は目が悪いって落ちなのかね」

 

 

 目の前の男は、そう言った。

 

「座んな。そろそろ始まるから」

 

 何が?

 

 男にいぶかしげな目線を送りながら座る。ここがどこなのか。何か知っているなら、教えて欲しいのだが。

 

 と、彼は懐から何か、紙が折りたたまれたものを出す。

 

「―――パンフレット。これから上演だからな、一応、お前が何を見ているのかぐらいは知ってほしいし」

 

 手に取ったそれには。

 

 

 ―――『妖姫モルガン』

 

 

 と書かれていた。

 

 手が、震える。

 喉が、いたずらに乾く。

 

 

「そら、始まるぞ? ―――――――お前の見逃した物語が」

 

 

 きっと、それは。

 

 

「誰もが、それを知らなくとも―――お前だけは、知らなくてはならぬ」

 

 

 ――――大切な、■■の物語だ。

 

 

 ビィーーーー、と音が鳴る。

 

 

 明かりが消え、部屋は暗闇に。

 

 後ろから――光が筋と成って前を照らす。

 

 

「――――何を望み、何を願い、何を……愛したのか。天邪鬼(うそつき)で、たった一つのユメすら叶えられなかった少女の物語が……………始まるぞ」

 

 

 男の声が、遠く聞こえる。

 

 

「この映像に、残念ながら音は入っていない。故に、今回は俺が不躾ながら語り部をさせてもらう。どうか――――――――――――今度は、見落とすな」

 

 

***

 

 

 

 妖姫モルガン。そう呼ばれたのは、いつ頃だったのか―――彼女は覚えていない。

 

 偉大な先王、ウーサーの娘として彼女は生まれた。

 

 だが、彼女はウーサーのことは知っているが、ついぞその顔を見たことはない。

 

 ウーサーの名は知らぬものはブリテンにあらず。

 輝かしき鎧。幾多の伝説。

 至高にして絶対の騎士。あらゆる戦争に勝利した賢君であると誰もが知っている。

 

 ――――その名声の一方で。

 

 彼女は、その愛を受けたことはない。期待を掛けられこともない。

 

 その身体が、このブリテンの呪いと相性が良いという名目で巫女にされ(力だけを与えられて)―――知らぬ場所に追いやられた。

 先王の目的は――イグレインと愛し合うだけであり、娘なぞどうでもよかったのだから。

 

 略奪愛で得た女ばかり気にする。自分など、彼女と結婚するための口実でしかない。

 

 そんな男の浅ましい欲望と狂気に彼女が気づくのは当然だった。

 

 それから、ずっと彼女は一人で居続けた。自由はないが、また不自由もなかった。

 

 烏は、何故か自分によくなついてくれて―――不思議と寂しいと、思うことはなかった。

 

 狭い場所であっても、幼い彼女からすれば――広い世界だったのだ。

 

 希望を、抱けない彼女は――自分の役割に徹する様になった。

 

 

 

 

 

 ある日、彼女の元に男―――半魔が訪れた。

 

 若くとも、老いているとも思えるその男は言う。

 

「君には、力がある。そのまま眠らせておくのは忍びない。―――どうだい? 奇蹟を学んでみないかい?」

 

 なんだかすごく胡散臭い。

 

 少女はそう思ったらしい。しかし、その男の目には、嘘がない。

 

 彼の言う奇蹟とは何だろうか。彼女は好奇心を刺激された。

 

「欲しいモノがあれば、何でも求められる。作りたいなら、作ってしまえばいい。それがニンゲンってヤツだからね。君には妖精の血が流れているけど、同時に人間だ。君にはソレを行使する自由がある」

「何でも? 何でも、できる?」

「そう、なんでも」

 

 それは、素晴らしいことだと、彼女は思った。

 

 彼女には、ちょっとしたユメがある。

 

 自分を護って、自分だけを愛して、自分のためだけに生きてくれるような―――そんな都合のよい(誰か)をユメ見ていた。

 

 なんでも出来る。

 

 それはなんて甘美な言葉か。

 

 

***

 

 

 場面は、変わる。

 

 彼女は美しく育った。

 

 花も恥じらうという言葉は、彼女のためにあったと言っていい。あるい絶世の美女か。

 

 男好きのする身体は、雄を例外なく誘い。瑞々しい肌は、雄にとっては垂涎ものだろう。一度みれば――自分こそがあの女を手にするのだと躾のなっていない犬のように吠えてしまうだろう。

 

 

 魔術師としての技量はめきめきと成長し、今や、師に匹敵した。

 

 もとより、才能だけはあったやも知れない。

 

 いつの間にか、師はいずこへと蒸発してしまったが、あのロクデナシのことなど大して気にしていなかったので寂しさはなかった。

 

 そんなことよりも。

 

 ―――やっと、願いが叶う。

 

 そんな思いで、彼女はいっぱいだった。

 

「嗚呼、やっと。―――逢えるのですね。私の騎士に――!」

 

 夢を見る自由は誰にでもある。希望をどう言う風に思うかなど、当人の勝手だ。

 

 だが、しかし。

 

 現実というのは非情だ。

 

 ――――――なんと、皮肉なことか。

 

 

 女の背後に、男が現れた。

 

 

 獣のように、息を吐く男。

 

 目は血走って、女の身体を今にも食らいつきそうなほどに―――情欲を迸らせる。

 

 

 気配を感じて、彼女が振り返れば―――。

 

 彼女の顔を見てしまったが最後、男には、止めることは出来なかった。

 

 

 夢は、叶わなかった。彼女の見えない恋慕は裏切られた。

 

 皮肉なことに、彼女の母、イグレインと同じような結末。

 

 

 希望は、崩される。

 

 

 悲鳴をあげる暇もなく。彼女は襲われた。

 

 抵抗は許されなかった。

 

 悲鳴をあげなかったのは、ひとえに彼女のプライドがあったらだ。

 

 しかし、情欲に脳を煮えたぎらせた男にとってはたいしたことではない。

 

 

 その日、少女から女になった。

 

 

 熱く熱された鉄杭に身体を穿たれた。痛みが彼女の失意を上書きした。

 

 肌を這う舌に彼女は、はしたなく絶頂(絶望)した。奥に噴射される白濁した欲望に、絶頂(絶望)した。

 

 恋い焦がれるモノに差し出す筈だった肉体を、汚された。

 快楽を拒まなくなった。もうこんな身体では―――――そう諦めたのだ。

 

 男にとっては征服欲のスパイスにしかならなかったが。

 

 身体が、彼女の静止を無視し快楽に汚染させられていく。

 何度も身体が跳ね上がった。

 

 その度に内側がごっそりと書き換えられ、胸中をぐるぐるとかき乱されたような感覚。

 

 

 

 だが、同時に心の何処かで。

 

 

 

 その男の劣情を、好ましく思ってしまった。

 

 そんなふうに自分を求められたことなど―――彼女にはなかったから。

 

 ――――これが、一つ目のねじれ。

 

 

 

***

 

 

 かくして、彼女はその男の妻となった。

 

 最初の子――ガウェインを孕み、産み落とした。

 

 彼女が生涯に産み落とした子は五人。

 

 ガウェイン。ガレス。ガヘリス。アグラグェイン。モードレッド。

 

 そのうち、四人が、男が孕ませた子だ。

 

 まあ、もっともその男が娘、息子を実際に目に出来たのは、ガウェイン、ガレス、ガヘリスだけだが。

 

 とかく。

 

 女は男の妻になってからというもの―――『妻』という形にこだわるようになった。

 

 男が求めるなら答え。

 子を愛せというなら、愛す。

 

 世間一般が妻ならこうするであろうことを成した。

 

 魔術を学ばせ、草木の学を子に教え込む。

 

 剣術は、無駄にその夫が出来たので教えさえた。

 

 ―――彼女は、最初こそ男を恨みはしたものの。今となっては愛―――いや、認めたくなかったから妻という形にこだわったのか。

 簡単に言えば、当てつけだ。

 

 自分が愛在る行動をするのは、お前を愛しているわけではなく子がいるからである、そう言いたかったのだ。

 

 事実、女が男に笑いかけたことなど一度もない。品性が高いのだ。後、恨み深い。

 

 ガレスが、“お父さん格好いい!”と褒めた時には、夫の子に見せない、見せたくない一面を暴露し、憧憬を断とうとするくらいに徹底していた。“いい? ガレス、アレは、馬鹿よ。戦争する度に現地妻をつくってるようなロクデナシ。おまけに気づいてないって本気で思っているのよ、アレ”と軽く幼子には刺激が強すぎる話をしていたりした。

 

 

 ―――夢見た生活ではなかったが、夢ある生活ではあった。

 

 

 

 女は、頑なに言おうとしないだろうが、やはり、心地よくはあったのだ。

 

 

 

 だが、やはり現実は彼女に優しくない。

 

 

 

 やがて、アーサー王の招集があった。

 

 

 その時は、彼の王をどうもは思わなかった。

 

 別に、いつの間にか死んでいた父がどれだけ愛していようが、期待していようが――今の生活に不満がなく、慎ましやかな生活を好んでいた。

 

 

 ―――――二つ目のねじれ。

 

 

 夫は、彼の王の尊さに目を奪われた。

 

 人でありながら、その座へ着くにいたったアーサー王に敬意すら抱いた。

 

 

 なるほど、ブリテンの王に相応しい。

 

 諸侯が彼女を認めない中―――その男だけはそう思った。

 

 ―――ブリテンの未来を彼女に託してもいいかもしれない。

 

 少なくとも自分よりは。

 

 

 男は、忠義と呼ぶべきソレを果たすべく動く。

 

 それが―――■した妻に対しての盛大な裏切りを知りながら。

 

 




火「この妖姫の物語は、今後の展開状必要不可欠なモノだ。決意無くして邪悪は絶てん。もっとも彼が、ソレを選ぶかはしったことではない。
 だいたい、こんな事態になっのは、彼のせいだ。自業自得。最初に自害を命じとけばよかったんだ。なら――――」
ラ「本当に、貴方じゃなかったんだ......」
火「―――いや、君に非は無い。全て俺が、悪いんだ」

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