Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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男のヤンデレとか誰得


反転:独占献身

 

 

「お前は――――彼女を()()()()()()()()()ちゃ()()()()()()

 

 彼から自分に突きつけられた、その言葉が――俺の動揺を誘う。

 

 自身の見る世界がぐらりと揺れる。

 

 何とも知れぬ自身の積み上げたものが、がしゃりと崩れる。

 

 美しく見えた世界―――彼岸花は、途端に不気味さを醸し出す。

 

「ふむ……ここで、反転か……。俺にも、この可能性はあったということか……?」

 

 ぐらりぐらりと世界が揺れているように感じているせいか、彼が何を言っているのか分からなかった。

 

 ―――俺が、彼女を救う気が……なかった?

 

 

 そんなはずはない、と訴える自分と、やはりそうだったのか、と納得する自分がいる。

 

 それらがせめぎ合って、自身の気持ちが正しいとそれぞれが主張し始め―――やがて、納得が心中を覆った。

 

 ぐにゃりと歪み、揺れていた視界が元にもどる。

 

 不思議なほど、すっと心の中が落ち着いてきた。

 

 

 が、見えている世界は大きく反転していた。

 

 

 不気味な燐光を放つ彼岸花はそのままに、天からこちらを見下ろす青かった地球は赤く燃え上がり、白かった月は碧色。太陽は真っ黒に染め上がっていた。

 

 奇天烈な世界に変わったのを皮切りに、彼は苦しげな表情で額に汗を流す。

 

 

「……で、話の続きだが。まあ、これ以上の追求をする必要はないと思うが……俺が、何故、お前が彼女を救う気がない、と思ったのか―――」

 

 

 その根拠は――――俺の行動にある。

 

 

 彼女の最後のSGの時どんな行動をしてしまっただろうか。

 

 ―――彼女の最後の願いは、俺を利用した自殺だ。

 

 俺を殺す快楽を味わい、なおかつ自殺という本命を達成する。

 

 合理的な手段を選ぶ彼女らしいSGだった。

 

 しかし、俺は―――彼女の願いを、叶えなかった。

 

 それが、彼女にとっての救いの筈なのに―――自分可愛さに、彼女の願いを裏切った。

 

 ……とても、殺せなかった。

 

 殺すことが、正解だ。殺してあげるこそが、彼女の救い。

 

 でも、殺す最後の瞬間に―――泡沫の夢を見てしまった。

 

 こんな風に、自死しか望めない―――その人生を。

 

 小さな意地を、少女のような意地を、ずっと張り続けるしかしかなかった―――その人生を。

 

 暗く、おぞましい闇の中に追いやった誰かに対する絶望。

 

 明るい、光の中にいた誰かを憎ませる、冷たい狂気。

 

 

 そんな中で、怖くない、怖くなんてないと片意地を張る少女の姿を幻視したのだ。

 

 

 

 ……そんなのって、ないじゃないか。

 

 

 

 呪いの巫女に彼女は、なりたかったワケじゃない。

 

 最初から、その狂気を知ったわけじゃない。

 

 誰かを殺したくなったのも、彼女そのもののせいではない。

 

 ―――だが、その憐憫すら彼女は、嫌う。

 

 自分が、悪く。

 

 自分こそが、全ての罪。

 

 

 ―――それは、なんて哀しいのか。

 

 

 気がつけば、俺がその胸に落とそうとした刃は止まってしまっていて、涙がかってに溢れてきた。小さく見えた、その体を思わず抱きしめた。

 

 所詮は、彼女を裏切った言い訳にしか見えなかったことだったとしても。

 

 

 

 ――――俺は、彼女を幸せにしたかったのだ。

 

 

 いや、正確には彼女の幸せを願った。

 

 

 彼女のために、ではなく。

 自分の願いのために、俺は彼女の幸せを欲したのだ。

 

 

「―――――ふん、やっとわかったか。……結局、君はキャスターを欲しただけだ。は、お前のような馬鹿を―――女に惚れた男というのだ」

 

 

 にやつき、こちらを面白いとばかりの口調でそういった。

 

 

 ――――俺は、彼女が欲しい。

 

 

 どこか、夢を見てしまって勘違いしてしまった。

 獣のように彼女を欲した男の末路を見て、そうあってはいけないと目をそらしてしまった。

 こんなじりじりと胃の底を炎で炙られているような、黒々とした感情から目をそらした。

 

 ―――こんなに、彼女を欲しているというのに。

 

 

「目をここぞとばかりに輝かしやがって。……願いなんて、究極的には欲そのもの。誰かを欲すってのは、悪い事じゃない。

 多少汚れて見えるのが恋ってもんだ。なにせ、下心ついているし」

 

 ……笑い所なのか?

 “―――じゃ、そろそろ干渉も厳しくなったし”と彼は、いや彼の姿は、ぼやけていく。

 

 体に残った記録から察するに、彼は自分に心象世界を通して干渉していた。

 

 というか、この心象世界は特異的なものであり、()からは、この心象を持つモノの状況がわかるらしい。

 

 だが、自分は―――火々乃晃平、という証から逸脱した。

 

 この不気味に変質してした世界こそ、その証。

 

 

 「狂気を飲み込んだその姿こそ、今の貴様に相応しい。歓喜せよ――――君の願いはようやく叶う」

 

 

 そういって、完全にこの世界から姿を消した。

 

 

 ―――同時に、自分の意識も薄れていく。

 

 

 

 彼女に巣くう邪悪を断つときだ(すら愛そう)

 

 

***

 

 

 男が、意識を回復させれば―――目の前に白い竜がいた。

 

 ウェールズの伝承における白い竜。

 

 コーンウォールの猪ことアーサー王に打ち倒されるという形で赤い竜は勝利し、白い竜は倒されるという伝承だ。

 

 しかし、その白い竜は俺の前でじっとしている。

 

 あるいは、にらんでいるようにも見える。

 

 何を思ったか、男は立って歩き竜に近づく。

 

 竜は頭を垂れるように、頬を寄せるように男に顔を近づけた。

 

 男は竜の頬をなでる。

 

 

 竜は不思議なことに唸ることすらしない。男が目覚めるまで腹を空かせていたのに。

 

 何故食わないのか、と言えば。

 何故拒絶しないのか、と言えば。

 

 一重に、白い竜が期待したものを彼が持ってきたからだろう。

 

 

 ――――だれか、わたしを、たすけてよ……

 

 

 誰かの声が、耳に届く。

 

 たったそれだけで、男の心は激しく猛るのだ。

 

「……そろそろ、目を覚まさなきゃな。姫様が五月蠅そうだ」

 

 言って肩をすくめる男。

 

 男は、竜に告げる。

 

 

「――――手を貸してくれ、名も知らぬ君。俺には、君が必要だ」

 

 

 欲しかった言葉を、なんでもないように男は告げた。

 

 

 白い竜は、顔をあげ空を見上げ――――

 

 

「GAAAAA―――――――――――!!!」

 

 

 咆吼を一つ、天に捧げる。

 

 それは、祈りのようで。あるいは、勝ち鬨の声のようでもあった。

 

 

 ――――目を覚まそう。

 

 この(希望)を、確信して。

 

 

***

 

 

 キャスターが創出した竜騎士は既に倒れ、彼女も叉マスターを失って消える運命だ。

 

 SGを抜き、いや、心を懲罰するしないに関わらず―――キャスターが消えるのと同時に壁も消え失せるだろう。

 

 ……それは失意の底に沈んでいる彼女を、そのまま見捨てて消失させることを示している。

 

 しかし、自分にはどうすることもできない。彼女の嘆きは―――一人に向けられたもの。

 

 自分に出来ることなど、数秒後には崩壊するだろう心から脱出することだ。

 

 

 ―――だが。

 

 唐突に。

 

 自分の視界端で、それは起き上がった。

 

 セイバーが倒した筈のバーサーカーがゆっくりとだが、起き上がったのだ。

 

 

 ―――心臓は、確実に砕いたはず、なのに。

 

 

 自分の目には、傷など無かったかのような肌を晒しているバーサーカーの姿。

 しかし、壊れた鎧はそのまま。

 

 つまり、内部の肉体だけが修復された――!?

 

 

 思い当たるのは、キャスターの宝具。

 

 『全て失われるべき妖精郷(アヴァロン)』。

 アーサー王の魔法の鞘――――それならば、治癒の逸話が利用できる!

 ずっと竜騎士の体の中に使用されていたのか。

 

 だが―――キャスターの崩壊は、止まっていない。

 

 

「――――え? どうして……、ありえない………!」

 

 

 彼にそれを仕込んだ筈のキャスターから、驚きの声が漏れる。

 

 彼女の想定外のようだ。

 

 

 ―――ガシャン。

 

 

 金属のぶつかる音。何かが落下した。

 落ちたのは、兜の破片。

 

 そこから覗く、黒髪と赤い目。隠されていた顔の全貌が顕になった。

 

 ぎしり、と鎧を軋ませながら―――キャスターの元に歩いて行く。

 

 やがて、キャスターの眼前にまでたどり着くと。

 ぽつりと、一言。

 

「…………とりあえず、一発な」

「え?」

 

 状況の理解が追いついていないキャスターを――――バーサーカーは思いっきりひっぱたいた。

 

 グーではなく、パー。

 

 ぱーん、といい音がなる。

 

 キャスターの頬を綺麗に平手打ちにした。

 

 頬を抑え、バーサーカーを涙目で見下げている。

 

 いきなり襲ってきたことに驚いて涙したのか、普通に痛くて涙したのか。

 

 ―――え? 何? どいうこと?

 

 こっちも全く理解が追いつかない。

 

 バーサーカー、というか、竜騎士は冷たい目でキャスターを見下ろす。

 

 

「何、人を、材料にして―――こんなトンデモ生物にしやがってんだ、テメェーーーー!!」

「ひうっっ!!」

 

 言い分からしてヒビノの自我なのだろうが……

 

 彼は、キャスターに膝蹴りをして体を曲げさせ、腕を回して固定し、キャスターの尻が突き出されるような形になった。

 すぱんっ、とキャスターのスパンキングが開始される。

 

 ―――何を自分達は見せられているのだろう?

 

 そういえば、キャスターの手記には彼はドSとかどうとか書いてあったような。

 

 

「な、なんで自我を復活っ、―――はんっ!」

「馬鹿なお姫様のために、地獄の、底から、返ってきたんだよ!」

「にゃぁっっ!!」

 

「なんと、高度な……!」

 

 何やら、セイバーが戦慄した声を挙げる。

 まあ、彼の無駄に洗煉されたスパンキングは目を見張る物がある。

 

 ただ痛めつけるのではなく、しつけられているということの自覚を促すための叩き方。

 痛みで痺れた肌に、もう一回と請わせるような。

 最初こそ軽く叩き、徐々に強くして反応を見ている。

 

 彼の蔑みの目にさらされて―――キャスターの顔は赤くぼおっとしている。じっとりt汗をにじませて、うっとりとしているような。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ひゃぅ!」

「おやぁ? 随分と甘い声を出すなぁ? 人前で尻を叩かれて興奮するとか、変態だなキャスター。少しは恥ずかしくないのか?」

「あ、貴方がっ………んっ」

 

 

 今度は、優しく尻をなで始めた。

 痛みで敏感になった肌には、さぞ甘い痺れを――――って。

 

 

 ――――自分達は、本当に何を見せられているのか。というか、そろそろ説明が欲しい。

 

 

 息を荒くして、四つん這いになるキャスター。

 

 その上に彼は、座った。

 彼は片手に革の首輪を取り出して、キャスターの首に付けた。

 まるで、自分こそがお前の主人だと言い張るように。

 首輪からは無骨な金属の鎖が付いている。

 

「原初の大釜。俺はその中に放り込まれて、このザマなわけだ。でも、センスいいな。ちょっと格好いいわ」

「あ、ありがとうございます…?―――ひゃあっ!」

 

 

 何故かは分からないが、自我を取り戻した彼はキャスターを褒めた。

 褒められたキャスターも礼を返す。―――たぶん、彼なりの皮肉だったのだろう。直後に平手が飛んでいたし。

 

 ちらり、と彼はこっちをむいて言う。

 

「こいつ、俺が動けないことを良いことにこの大釜の中にいれて“貴方に、相応しい体を作ってあげます。まあ、意識の保証は出来かねますが”なんて言っやがった。……めっちゃ痛くてさあ……ホントに死んじまったぜい」

 

 けらけら嗤いながら言うが、顔は笑っていない。

 

 完全に怒っていた。

 

 生きたまま溶かされて、組み直される。

 アゲハチョウの幼虫から成虫に向っての工程を感覚をもったままされる。

 

 その激痛は、そうとうなものだったに違いない。

 

 生き返った、ということは――今の彼は自分達の知るヒビノ、なのだろうか?

 

「まあ、だいたいそうだ。ウェールズの白き竜と融合しているが―――思考回路は、ヒビノコウヘイで合っているぞい」

 

 何だか、口調まで変わっている気もするが。

 

「……脳の内側でざりざり、がりがりと五月蠅くてたまんない。あー、いらいらする。体の中に何十匹ものムカデに這われている気分だ」

「―――魔人化の影響か……そう言えば、エリザベートもそうであったな」

 

 エリザベート・バートリー。

 

 赤のランサーは、亜竜の血が体に悪影響を及ぼしていた。

 それは、耳鳴りであり、消えるコトのない雑音。

 

 頭を軋ませるソレだったという。

 

 セイバーは、彼の言葉に似たものを感じたのだろう。

 

 

「キャスター。俺は、化け物になっても意識の底でテメェーらのやり取り、全部聞いていたんだ。……だから、お前が何を抱えて、俺を殺したのか―――過去の騎士とやらへの恋慕に付き合わされたのか……全部、知ってる」

「――――っ」

 

 

 彼は、そう言うとキャスターから尻をどけ、四つん這いなキャスターに目線を合わせるように跪く。

 そして、彼はキャスターに付けた首輪の鎖を引き、無理矢理近くに顔を寄せる。

 

「お前が、悪いんだぜキャスター。俺の『献身』じゃ、物足りないんだろ?」

「貴方っ……反転してッ……!」

 

 キャスターを甘く囁く男。

 その男に向って、キャスターは驚きとともに言葉を告げた。

 

 彼女は、ヒビノにむかって、反転と言った。

 

「ああ、そうさ。俺は、オレであるが故に変質し、反転した」

 

 彼は言う。人間には二つの我がある。

 

 そもそも反転とは、おもに混血が魔の血による人外の側面に切り替わって、大我が小我に飲み込まれた状態を指す。

 大我とは大雑把に言うと「社会という大きな世界を知る個」、小我とは「自分自身という小さな世界のみに満足する個」のこと。通常人間は、普段は大我の方が優先順位が高いものだが、反転すると逆になり、小我の方が優先順位が高くなる。こうなると大抵は人としての理性や道徳などが失われ、本能のままに動くようになってしまう。

 

 ―――彼は、今、小我が優先されている、ということだ。

 

 小我が優先されると言うことは、自分本位の思考をするため、恋情を抱えていれば「相手の気分とか関係無く自分の物にする」と思考するようになったということだ。

 「恋人がいるなら排除し、奪え」と、俗に言って病んでいる状態、といえば分かりやすいか。

 人としての理性を大きく欠いた状態なのだ。

 

「お前への『献身』は反転し――――『独占』と相成った。いまや、お前への恋情を自覚して、混じったせいかな。―――お前が、欲しくてたまらないんだ」

 

 狂気の混じった愛を彼は、キャスターに告げた。

 

「オレは、お前が欲しい。お前じゃなきゃだめなんだよ、キャスター。他の誰でもない、モルガン・ル・フェの、全てが欲しい」

 

 キャスターの狂気すら、彼は愛そうと―――いや、愛しているのか。

 

 彼は、キャスターを抱きしめて愛を囁く。

 

「お前の心情とか、もう、どうでもいい。お前は、オレの物だ。昔も、今も、これからも―――お前は、オレだけの物だ」

「――――私、面倒くさいですよ?」

「知ってるよ。その面倒くさい女を、どうしようもなく好きになったんだ。君の、願いとか聞いてやらないからな。オレと、ずっと一緒にいろ。拒絶しようが、一緒にいるけどな」

「……強引ですね」

「―――これなら、もう寂しくないだろ?」

 

 

 反転しても、根底のものは変わらない。

 ヒビノコウヘイは、ヒビノコウヘイだったのだ。

 

 キャスターは、涙を流しながらはにかむ。少女のような無垢さで、彼女の邪悪に満ちた笑みとは真反対の笑顔だった。

 

 

「―――はい。貴方さえ、いてくれれば。…………本当に、ずっと一緒にいてくれますか?」

「ああ、君に誓おう」

 

 

 彼女の疑いを晴らすように、彼は強い言葉で言った。

 

 抱きしめていた腕をといて、彼女の片手をとる。

 そして、とった手の甲にキスをする。

 

 ―――さながら、それは騎士が女王に誓いを立てるような清廉なやり取り。

 

 

「これより、俺はモルガン・ル・フェの騎士だ。貴方を裏切らず、貴方だけを思い、貴方と共に生きていこう。―――一人の男として、貴方を愛し続ける。

 ……こんな俺を、愛してくれますか?」

「はい。私の騎士。……私、嫉妬の多い女ですから―――」

「それは、こちらのセリフだ。俺は、君の浮気を赦さないぞ?」

「ふふっ―――私が浮気するときは、貴方が悪いときです。だから、一時一瞬も離れないでくださいね、ご主人様?」

「ああ、当然だ。覚悟しろよ?」

 

 

 どうやら、話はついたらしい。

 

 端から聞いていて、恥ずかしくなるようなやり取りだったけど。

 

「――――要は澄んだか? ヒビノよ」

「……悪いね、待たせて。アンタ達にも」

「ふっ。よい、気にするな。女王と騎士の成り行き、とくと楽しませてもらった」

「なら、見物料でも貰おうかな? インペラトール?」

「―――ほう?」

 

 そう言うやいなや、彼は剣を構え、戦意を突きつけてきた。

 セイバーもまた戦う意志を見せている。

 

 ちょっと、待って欲しい。

 このまま戦う意味が分からない。

 

 

「意味? お前は、俺の姫様の心象に無断で侵入しているんだぞ? ―――俺以外の男がなぁ!」

「……ふむ、反転しているとはいえ、『独占欲』が強すぎではないか?」

「お前が言うかね? 惚れたヤツにいいよる女を見て腹を立てない道理があるのかい?」

「なるほど。それは、道理よな」

 

 

 なら、自分達が出て行けば良い話だと思うのだが。

 

 

「―――そりゃ無理だ。

 俺は、彼女の最強の騎士として体を得てるのに――――負けたまんまってのは、いかがな物か?」

 

 

 男のプライドの方を優先しやがったこの騎士(変態)

 

 

「誰が変態だ! ―――皇帝様の宝具すら引き出せずに倒れるとか、最強の名折れ過ぎる。 ほら、構えろ。斬り殺してやるから」

「ふはは。吐いたな、竜騎士!」

 

 どうやら戦うしかないようだ。セイバーも何故か乗り気だし。

 

「さっき改めてキャスターとパスを繋いだが、それでも持って二十分。戦闘込みだと十分程度の稼働時間しかないが――」

「はっ。余と奏者の前で、さっそく負ける言い訳か?」

「いえ。彼が言っているのは、貴方達の勝利条件です」

 

 キャスターが彼の後ろに立つ。

 

 

「私が、マスターとして援護しますから。貴方達の勝利条件など、それくらいです」

 

 

 マスターの差は歴然。恐らくサーヴァントの性能もあちらが上だろう。

 

 

 だが、それがどうした。

 自分達にとっては、いつものことだ。

 

 

我が騎士(マスター)。多くは言いません―――勝ちなさい」

「姫様の御意に」

 

 

 白い竜騎士が、殺気を膨れあがらせる。

 

 黒い魔力が吹き出し、赤雷を迸らせる。

 

 

 片手に、ぶら下げように剣を持つ。

 

 

「―――この身は、原初の呪いを飲み干したモノ。どうか、死んでくれるなよ? ――――――いざ、参る!」

 

 

 赤い剣士(セイバー)に白い騎士(セイバー)がその首級を求め、躍りかかった。

 

 




火「反転かぁ……あれも俺の一つの可能性……。ふむ、興味深い」
ラ「私には、ああいうの言ってくれないの?」
火「Nocomment」
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