ロキ・ファミリアに父親がいるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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家族

度重なる咆哮が轟いていた。

怪物と称するに相応しい巨躯を進撃させ、夥しい数の黒い塊が、鈍器を持つ太い腕を頭上高く振りかぶった。

「盾ェ、構ええぇッ――――!!」

号令とともに打ち上がる、数多の衝突音。

怪物達の進撃を掲げられた何十枚もの大盾が受け止める。

「前衛、密集陣形を崩すな!後衛組は攻撃を続行!」

凶悪獰猛な怪物――――モンスターを迎え撃つのは複数の種族からなるヒューマンと亜人(デミ・ヒューマン)

『――――――――――――――っっ!!』

一本の草木もない荒れ果てた大地。岩や砂、全てが赤茶色に染まった茫漠たる大空間。

地下迷宮(ダンジョン)49階層『大荒野(モイトラ)』。

そこでモンスター『フォモール』と対峙しているのはオラリオの二大派閥の一角である道化師(トリックスター)のエンブレムを掲げた【ロキ・ファミリア】。

「ティオナ、ティオネ!左翼支援急げッ!」

この戦場で誰よりも小柄な少年――――小人族(パルゥム)の首領の指示が、的確かつ矢継ぎ早に飛ぶ。

「あ~んっ、もう体がいくつあっても足りなーいっ!」

「ごちゃごちゃ言ってないで働きなさい」

命を受けたアマゾネスの姉妹が疾走し、三体のモンスターを一瞬で斬り伏せる。

どこからとなく現れるモンスターの大群。屠れども屠れども途切れることなく押し寄せ、その数を持って呑み込もうとする。

「リヴェリア~ッ、まだぁー!?」

アマゾネスの少女、ティオナの声が向かう先、前衛組が庇うその背後。

魔法と矢を連発する魔導士や弓使い(アーチャー)に囲まれた中心から、その美しい声は絶えず、紡がれていた。

「【――――間もなく、焔は放たれる】」

翡翠色の長髪に白を基調とした魔術装束。浅く水平に構えられた白銀の杖。

細く尖った耳を生やした、絶世の美貌を持つエルフ。

「【忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」

玲瓏な声で呪文を紡ぐ。

足もとに展開された魔法円(マジックサークル)は翡翠の色に輝き、無数の光粒を舞い上がる。

「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火】」

流れるその詠唱を耳にしながら、誰もが力を振り絞る。

『――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッッ!!』

一方で、モンスター――――『フォモール』が吠える。

群れの中でも一際巨体を誇る一体が、仲間さえも蹴散らしながら驀進し、自らが持つ得物を上段に構えた。

迫りくる巨影に、正対することになった前衛一人は、盾の隙間からその両目を見開く。

尋常ならざる膂力から放たれた一撃は、構えられた盾へ食い込み、そして周囲を巻き込んで、前線の一角を吹き飛ばした。

「――――ベート、穴を埋めろ!」

「ちッ、何やってやがる!?」

こじ開けられた防衛線。遊撃を務めていた狼人(ウェアウルフ)が急行するが、間に合わない。数匹のモンスターの侵入を許す。

それまで前衛に守られていた魔導士達が青ざめるのと、フォモールの攻撃が炸裂するのは、同時だった。

「レフィーヤ!?」

一人の少女が吹き飛ぶ。

直撃こそ避けたものの、地面を粉砕した鈍器の一撃は、その衝撃波で細身の体を殴り飛ばした。

「―――――ぁ」

地面に転がった少女へ、黒い影が被さる。

凶悪な獣面のフォモール。先程仲間の壁を突破した、あの超大型。

自身を見下ろす赤い目玉に射竦められ、少女は時を止める。

彼女の紺碧の瞳に、振りかぶられた鈍器が映った直後。

二つの斬撃と共に彼女の視界に、金と黒、銀の光が走り抜ける。

間髪入れず、フォモールの体が血しぶきを噴出させ、宙に舞い上がっていた首が地面へと落下した。

「………」

「平気だな、レフィーヤ」

呆然とするレフィーヤの視線の先。

長い金の髪を流す女剣士と黒髪の剣士が剣を振り鳴らす。

「アイズ!秋夜!」

前衛方面、一部始終を見たティオナが歓呼する。

「アイズ。突っ切るぞ」

「うん」

レフィーヤの無事を確認すると極東の装束を身に纏った秋夜がアイズを連れて後方に侵入したモンスターを一気に全滅させた。

「ちょ、アイズ、秋夜、待って!」

「ハハハハハ!待たない!!」

フォモールの大群に突っ込む二人にティオナは制止の声を出すが秋夜は笑って一蹴した。

盾を構える前衛達の遥か頭上を、空高く身を躍らせながら、飛び越えた。

「………すげぇ」

ぽつり、と。

その呟きが、とある者の唇からこぼれ落ちた。

激しい剣舞が行われる。

「右半分は任せたぞ、アイズ」

「……私一人でいい」

「つれないな………」

苦笑を浮かべながら右手に握られた愛刀『刹那』を振るい、フォモールを斬り飛ばしていく秋夜と近づくモンスター全てを断絶する剣撃を放つアイズ。

「あれが【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。そして、【隻腕の剣帝】秋夜・リヨス・アールヴ………」

「【汝は業火の化身なり、ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを】」

そして後方。莫大な魔力の高まりを察知した秋夜はアイズを呼ぶ。

「リヴェの魔法が来るぞ、跳べ」

秋夜の声に頷き、二人は跳んだ。

空中で大きな弧を描き、トンボを切って自陣中央へと着地、帰還する。

「【焼きつくせ、スルトの剣―――――――我が名はアールヴ】!」

次の瞬間、弾ける音響とともに魔法円(マジックサークル)が拡大し、アイズ達の、全てのフォモール達の足元にまで広がった。

全戦域が効果範囲内。

白銀の杖を振り上げ、エルフの魔導士、リヴェリアは己の『魔法』を発動させた。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

大炎。

地面――――魔法円(マジックサークル)から放たれる無数の炎柱はフォモール達を焼きつくす。

広範囲殲滅魔法であるリヴェリアの魔法が放たれて一掃されたモンスターを見て秋夜は愛刀を鞘に納める。

誰もが得物を下ろすなかで一人の少女が秋夜の肩を掴むと秋夜はビクと体を震わせ、恐る恐る後ろを振り返るとそこには怒りが怒髪天を衝いた表情を浮かべていた愛する妻と娘がいた。

「秋夜。後で話がある」

「リヴェ………」

愛する妻であるリヴェリアの冷え冷えとした声音に冷や汗を流す。

「お父様。お説教です」

「ルフェル……」

翡翠色の長い髪は怒りで揺れているように見えて黒い双眸は鋭い眼差しを父親である秋夜に向けている。

愛する妻と娘に捕縛された秋夜はこの先に怒る説教に肩を落とした。

「アイズ。君も後で説教だ」

「!?」

その隣でフィンが笑みを浮かべながらアイズに告げた。

 

 

 

 

 

 

ダンジョン50階層はモンスターが産まれない安全階層(セーフティポイント)

そこで【ロキ・ファミリア】一団は天幕を張って休息を取っている。

「いったい何を考えているんですか!?幹部であり、首領陣であるお父様が命令に背いてどうするのですか!?団長がお父様に下した命令は前線維持ではないのですか!?上の立場に立っている自覚はありますか!?」

「すまんすまん………」

「すまんじゃありません!いいですか?幹部である以上……」

一つの天幕の中で愛娘に説教を受ける秋夜はくどくどと話すルフェルの言葉をしっかりと耳に傾けて聞く。

説教の仕方がリヴェに似てきたな、と感慨深くそう思った。

もう【ロキ・ファミリア】の慣習になっているルフェルの説教に他の団員達は助け舟をだすこともなくいつものように過ごしている。

「つい熱が入ると、な?」

「な?じゃありません!少しは組織の幹部としての態度を下の者に見せてください。お父様はただでさえダメダメなのですから」

「うっ……」

娘からの思わぬ一撃に胸を痛める秋夜。

「ルフェル、そのくらいにしてやれ」

「お母様……」

「おお、リヴェ……」

説教をしているルフェルにリヴェリアは制止の声を飛ばすと秋夜はリヴェリアが女神のように見えた。

「後は私が続けよう。お前はアイズ達の様子を見てきてくれ」

「はい」

「おぉ………」

説教の交代。

今度は娘からではなく妻からの説教が待ち構えていたことを知った秋夜は絶望のどん底に突き落とされた気分になった。

天幕から出て行くルフェルにリヴェリアは小さく息を吐いて秋夜を一瞥する。

「まったく、お前という奴は少しは落ち着くことはできないのか?」

「無理だな、それに俺が行かなくてもアイズは行っていたぞ?」

笑みを浮かばせて告げるその言葉にリヴェリアは嘆息する。

「あいつは強くなることにひた向き過ぎるからな。保護者が一緒にいねえとお前達も心配だろう?」

「困ったものだな、お前にも、アイズにも………」

強くなるために止まることが出来ないアイズの行動を先読みして共にモンスターを大群に突っ込んだ秋夜。

どちらの行動にも頭を悩ませるリヴェリアの頭に秋夜は手を置いた。

「それに俺は血の繋がりがなくてもあいつらの父親のつもりだぞ。守ってみせるさ、大切な家族だからな」

「………お前は本当に変わらないな」

秋夜の言葉に苦笑を浮かべるリヴェリアに秋夜は笑みで返す。

「行こうぜ、そろそろ飯だ」

「ああ」

 




オリ主紹介。
リヴェリアと結ばれる前はユウキ・秋夜だったが、リヴェリアと籍を入れて性を捨て、秋夜・リヨス・アールヴと名乗っている。
【ロキ・ファミリア】の首領陣の一人でLv.6の冒険者。
極東から訪れた剣士でロキに勧誘されて【ロキ・ファミリア】に入団。
剣術のみなら【猛者】を上回るほどの剣術の使い手。
妻であるリヴェリアと娘であるルフェルと共に今もダンジョンに潜っている。

こんなところかな?
ダンまち三作目。気楽に書いていきます。
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