ロキ・ファミリアに父親がいるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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愛の象徴

「ところで、どうして地下水路にいたか、その理由を教えてくれないか?」

唐突に告げられたその言葉を聞いてフィルヴィスの瞳に動揺が見えた秋夜は確信した。

「ロキ、当たりだ」

先程、食人花がいた貯水槽に誰かが足を踏み入れていたことは道中で分かっていた。

足跡や他にも僅かな痕跡から秋夜は自分達以外にも誰か地下水路に足を踏み入れていたことを知った秋夜は直感でその誰かを探り当てた。

「………ほんまか?」

「フィルヴィスの反応で確信は取れた」

直感で探り当てて、かまをかけて自身の直感が正しいことを証明した秋夜にロキの糸目がすっと開く中、ディオニュソスとフィルヴィスは張り詰めた表情を浮かべる。

「安心しろ、フィルヴィス。俺はお前を疑ってはいない」

「秋夜さん………」

「真面目で心優しいお前が悪事に加担するわけがないことぐらい知っている。何かあって俺達と同じように調査しているんだろう? そうですよね? ディオニュソス様」

視線をディオニュソスに変える秋夜にディオニュソスは前に出る。

「逃げも隠れもしない。だからロキ、訳を聞いてはくれないか?」

「………ええやろう。適当にどこか店に入ろうか」

潔い態度と、真っ直ぐ自分の事を見つめてくる硝子色の瞳に、ロキは申し出をまずは了承した。

街路の側にあった赤煉瓦のホテルの一階、外とは窓で仕切られている休憩室(ラウンジ)を利用する。

神々だけで話がしたいというディオニュソスの要望も告げられて二人の眷属は休憩室(ラウンジ)の外で待機するようになった。

「さっきは変なこと言って悪い。確信を得るにはああ言うしかなかったんだ」

「い、いえ、大丈夫です。秋夜さんの考えも理解出来ます」

かまをかけたことに謝罪する秋夜だが、フィルヴィスは首を横に振って全く気にしていないように手を振るう。

「最近の調子はどうだ? うちはいつも通り世話が焼ける子供たちの面倒で手一杯だ」

「……私もいつも通りです」

「そうか……」

表情を曇らせるフィルヴィスに秋夜はガシガシと頭を掻くと、フィルヴィスの濡れ羽色の髪に手を置いて頭を撫でる。

「しゅ、秋夜………さんっ!?」

耳まで真っ赤に染まるフィルヴィスに秋夜は口角を上げて笑みを浮かべる。

「また【ファミリア】に内緒で冒険に行こうぜ。お前の杞憂なんて俺が笑って跳ね返してやる」

「…………はい、その時はよろしくお願い致します」

「ああ」

頷くエルフの少女に秋夜は楽し気に笑いながら少し乱暴に、だけど優しく撫でる。

「何か進展があったら知らせるよ」

休憩室(ラウンジ)から出てきたディオニュソスは二人の姿を見て小さく微笑んだ。

滅多に見れない自身の子供の顔に嬉しくも思う。

「ディ、ディオニュソス! お、お話はもう終えられたのですか!?」

羞恥心に駆られてバッと秋夜の手から離れるフィルヴィスに主神は頷いた。

「ああ、しかしこちらも調査を怠る訳にはいかない。フィルヴィス、ついて来てほしい」

「は、はい!」

自身の主神の元に歩み寄るフィルヴィスにディオニュソスは秋夜を見つめる。

「秋夜・リヨス・アールヴ。時折で構わないからこれからもフィルヴィスの事を気にかけてやって欲しい」

「勿論構いません。フィルヴィス、またな」

「はい……」

小さく手を振るう秋夜にフィルヴィスは軽く頭を下げる。

離れていく一柱とエルフに秋夜は休憩室(ラウンジ)に残されているロキに会いに行く。

「どうだった?」

「んー、すまん秋夜。もう少し付き合ってくれ」

「ほいほい」

主神に従う剣士は主神の赴くままに共に行動する。

「ロキ、用事が済んだら【ステイタス】の更新を頼む」

「ん? それは構わへんけど、どないしたんや? いつもなら遠征前ぐらいだけやのに」

唐突の【ステイタス】の更新を懇願する秋夜にロキは物珍しそうに話す。

秋夜は下の者の成長を妨げない様に基本的は遠征前に一回行う程度の更新で留めている。

それなのに今回は次の遠征よりも早い段階で【ステイタス】の更新を頼んだ。

「勘だ。嫌な予感がするから念の為にな……」

「フィンと秋夜の勘は馬鹿にできへんからな。了解や、戻ったらすぐしたる」

「ああ」

ロキの了承を獲得して二人はギルドへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドから帰還した秋夜は早速ロキに【ステイタス】を更新して貰った。

 

秋夜・リヨス・アールヴ

Lv.6

力:B732→733

耐久:C675→676

器用:A899→S901

敏捷:S988→990

魔力:B754→759

修羅:E

狩人:E

剣士:E

耐異常:H

剣戟:H

 

「まぁ、こんなもんか……」

更新用紙を見ながら更新結果に妥当する秋夜は更新用紙を燃やす。

「それにしてもいつ見てもええ細マッチョやな~」

【ステイタス】を更新する為に上半身裸になっている秋夜の引き締まった体を見てゲスな笑みを浮かべるロキの顔は女神ではなく変態嗜好のオッサンの顔だ。

だが、秋夜は己の体を一切恥じることなく、むしろ胸を張る。

「当然だろう。リヴェの夫として恥ずかしくない体だと自負できるぐらいに鍛えてるんだからな」

女神さえ嫉妬を抱かせる美貌を持つリヴェリア。その夫として秋夜も己の肉体を苛め抜いてリヴェリアに相応しい肉体にするべく常日頃から鍛えている。

「それに鍛えれば夜のお楽しみも増えるしな」

「ブレへんな~」

ドヤ顔で告げるロキにやや呆れるロキだが、その気持ちは大いに同意する。

喘ぎ声を出すリヴェリアの顔を是非とも拝見したいロキだが、その代償は命だということぐらい察している。

きっと微塵切りにされて最後は灰すら残らず燃やされるのがオチだろうと少し表情を青ざめながら自身の考えに納得する。

「おいおいロキ、いくら俺の肉体が凄くて見惚れるの気持ちは理解できるが、生憎と見惚れていいのは愛妻であるリヴェだけだから勘弁してくれよ?」

「ああうん、そやな……」

己の肉体を自慢する秋夜に空返事するロキは上着を着ている秋夜に問いかける。

「なぁ、秋夜。あのフィルヴィスって可愛い子どこで知り合ったんや?」

「ああ、六年前に少しな」

簡潔に答える秋夜の言葉にロキは納得した。

六年前に起きたあの事件。フィルヴィスはその生き残りだということに。

「秋夜、浮気は浪漫やけどあかんで?」

「いや、何言ってんだよ?」

突然のロキの言葉に怪訝する秋夜は微塵も気づいていないことに察した。

フィルヴィスが秋夜に向けるあの瞳が何を指しているのかをこの男は気付いていない。

「浮気なんてするかよ、俺はリヴェ一筋だぞ」

「そやな……」

常日頃からこっちがうんざりするほどにイチャつくところを見せられているロキ達にとっては少しは落ち着けと言いたいほどに秋夜はリヴェリアを愛している。

情熱的に、情愛に溢れた言動で毎日のように愛を囁いている秋夜。

それに影響されて一人のアマゾネスも対抗心を抱いて小人族(パルゥム)に猛烈に迫っている。

良くも悪くも秋夜に影響されている者は多い。

最も娘であるルフェルに手を出そうとする輩がいたら腰にある刀に手を伸ばすが。

「変なこと言わないでくれよ? リヴェはああ見えて結構嫉妬深いんだからご機嫌取るのが大変なんだぞ。まぁ、ヤキモチを焼くリヴェを見るのもいいものだが」

「あ~そやな。わかったさかいもう出て行って構わへんで?」

このままでは愛妻自慢が続くと察したロキはとっととこの馬鹿を部屋から追い出す事にした。いったいどれだけ拘束されてしまうかわかったものではない。

「全く、よく聞けよ? ロキ。俺はリヴェリア・リヨス・アールヴを心から、魂の一片に至るまで愛している。この気持ちに一切の嘘偽りはねえ」

堂々と己が抱くリヴェリアに対する想いを語る秋夜にロキは聞く前から知っている。

何故なら二人が互いに想いを寄せて愛し合っていることは自らその背中にある『恩恵(ファルナ)』にスキルとして刻んだのだ。

それが『相思相愛(アモルシンフォス)』。二人の愛を象徴するスキルの名前だ。

名称通り、二人は互いを心から愛している。

一切の恥もなく愛の言葉を綴る秋夜はチラリと扉の向こうにいるであろうハイエルフが顔を真っ赤にしていることを想像する。

後は渾身の土下座をすれば、と企む。

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