ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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第三.五章 Zの秘宝と輝きの仮面
vs ぽにお


キタカミの里への飛行機、なんてものはない。ミアレ空港からパルデア地方へ飛び、オレンジアカデミー付近の飛行場から乗り換えて、更に空港からバスで大体1時間

 なーんて事は面倒なのでせず(というか、今のアズマはもう民間の飛行機には乗れない立場だ。手持ちポケモン検査で「おれの手持ちのイベルタルです」なんて言ったらN級の危険人物として捕縛される)、イベルタルの圧倒的な体力と飛行力にものを言わせて約10時間

 

 あれから四日後の事だ。イベルタルでアサメに戻って直接カルムからあっさり発行された(オモダカは当初渋ったらしいが他地方チャンピオンのお墨付きに折れたのだとか)キタカミの里でリーグ指定の危険地域の調査許可証を受け取り、再建中の屋敷に寄って仮面と共に奪われてなかったキタカミ伝説の資料を確保。やつれた感じの執事に1ヶ月程の休暇を与えて、アズマはキタカミの里の郊外へと降り立っていた

 

 今は夜。外は暗い

 決して間違えた訳ではない。イベルタルはあまりにも一般人には恐怖だ。白昼堂々降り立ったらそれだけで大問題。許可証発行の際、イベルタルの管理は徹底してと釘を刺されている

 

 「お疲れ様、ベル。暫くはボールの中で大人しくしててくれよ?

 調査中とか、人が居ない自然の中なら、また出てきて良いから」

 誉めてくれと頭をアズマの手に擦り付けてくる紅の巨鳥を撫でつつ、そう言い含めて大きめに焼いたポフィンを一つ差し出すアズマ

 五分ほどそうしてから、少しだけまだ物足りなそうだがボールに戻ってくれたイベルタルのボールを一度なで、明かりの灯る公民館へと歩き出す

 

 「そうだ、ギル!」

 そうして、代わりにボールから出すのはニダンギル。くるっと回る相棒に目配せして周囲を見回せば、アズマの近くに爛々と光る目が三対

 灰と黒の勇敢な小型犬のようなポケモン……ポチエナ達だ。ダークオーラに怯えない付近の野生ポケモン達が、余所者のアズマを取り囲んでいた

 

 『バゥ!』

 余所者に馴れていない野生故か、吠えられてアズマは困ったなと頬を掻いた

 ぱっと見そう強くはないだろう、その気になれば倒せる相手だ。が、そうやって野生のポケモンをバタバタと倒してもと思ったアズマは、最低限襲われないように相棒に護衛を任せて早足であまりしっかりと舗装されていない道を歩き出した

 

 そうして、公民館もう閉まってたので、外で夜を明かすことになった

 「よし、毛布だけでも持ってきてて良かった」

 シートを敷いて座り込めばゾロアの火炎放射で拾った枯れ枝に点火して小鍋にお湯を張り、湯煎で温めた缶詰を一口。バッグから顔を出すディアンシーにも姫も食べる?と楊枝を刺して一つ差し出し、それより生命力が欲しそうなニダンギルがアズマの足に布を巻いて体力を吸い取るのをぼんやりと眺める。背もたれには既におねむなモノズがなってくれていた。体重を掛けても嫌がらずうつらうつら、前足の間に頭を入れて眠るそのぽの背を撫でながら、アズマは空を見上げる

 まだ、夜は長かった

 

 「ポケモンセンターとか無いもんなぁ、此処」

 どうしてそうなった、と言いたいが何とこの辺り一帯、現地人以外が殆ど来ないせいかまともなポケモンセンターが無いのである。トレーナーの宿泊施設にもなるそれがなく、当然宿なんかもない。一応滞在中は公民館を使わせてくれると聞いたが、受付が終わって閉まっていたら今日は使えない

 

 「フリーズ村にも最近ポケモンセンターが出来たらしいのになぁ」

 思わずぼやくアズマ。同じく田舎だったあそこは、予め父が色々と準備を終えていたから寝泊まりには困らなかった。けれど、今回のアズマは割と即断即決の強行軍、準備の差は如何ともしがたい

 

 『ロアッ!』

 「ああアーク、そういえばアークにもな」

 ポケモンの為に色々と持っては来ている。缶詰の二個目を湯煎し始めながら、アズマは缶の残りをゾロアの前に置いた

 『(残念そうじゃないなの)』

 言われ、ん?とアズマは周囲を見回す。田舎だからか人々の寝付きは早い。夜中ではあれ日付も変わっていない頃だが人気は無い。が、その分ポケモンの気配は多くあって……

 

 アズマの野宿は村外れの川の畔。横には小型の橋があり、橋を渡れば村だ。そして道を行けばそのうちキタカミセンターという(ポケモンセンターではなく)ともっこと呼ばれる英雄を奉る大きな社、そしてその先には巨大な鬼が山がある。山中腹以降への立ち入りは禁じられており、道には鎖で封鎖が掛けられているって感じだな

 

 そんな道(舗装はされてるが一歩外れれば自然豊かだ。此方は田園風景にも林檎農園にもなってない、多分人手的に切り開く必要がないのだろう)の木の後ろから、何者かがアズマを覗いていた

 

 「あのポケモンか?」

 『ロロア!』

 もこっとしたシルエット。布団を頭から被ったような形状だし、良く見えないが現地人ではないだろう

 アズマは目を凝らしたが良く分からず、とりあえずとバッグを漁る

 「えーと、野生向けのものも持ってきてたよな……これは土産の仮面で」

 

 すると、その瞬間そのポケモンらしき影はなにかを持って走り寄ってきた

 『が、がお!』

 月明かりに照らされたのは、緑色のぽてっとした姿。頭にまで被ったような緑色の羽織を上半身に纏い、黒い二本足で立つ、手らしき部分が短い異形。顔はくりっとした眼が愛らしく、羽織には黒い角飾り。そんなぬいぐるみにしたら人気出そうなポケモンが、オーラのこん棒らしきものを手にとてとてと走る

 その表情は強張り、二本の牙のある口を小さく開き、眼には輝きを湛えて……

 「ん、どうしたの?」

 立ち上がれば目線が逸れる。アズマは膝立ちでそのポケモンを見て

 『が、がお!』

 ぶん!とこん棒は振り下ろされた

 「あぐっ!?」

 仮面を手にした方の手を強打され、呻くアズマ。腕が折れる程の衝撃ではないがじぃんとした痛みが右腕に走る

 

 そのショックで少しシートを巻き込んで後ろへ滑り、足が眠っていたモノズの腹に当たった

 『……ノ?』

 その衝撃で目覚めたのだろう、モノズが頭を上げてキョロキョロと周囲を見回す

 

 「いきなり何を、サザ!とりあえず『ほのおの』」

 噛み付けば動きは止められるだろう。色合いと獲物からして恐らくは草タイプ、炎は苦手だから大人しくしやすいと判断し、アズマは指示する

 

 が……

 『ズーッ!』

 トレーナーとそれに向けて二回目のこん棒を振り上げるポケモンを交互に見て、けれどもモノズは命令を無視した。トレーナーを止めるように一声鳴いて、また眠る姿勢に入る

 まるで、戦いたくないと全身で語るかのように

 「サザ!?」

 眼を見開いてならば相棒を、と思いポケモンの襲撃と共に宙に浮かんだニダンギルを探すアズマ。けれど、その姿もポケモンから離れている

 

 ガン!と頭に叩きつけられるこん棒。痛みが走り、つぅと額から血が垂れる

 『……がお』

 ポケモンの勢いが弱まった。が、それでも、泣きそうな顔でぽてっとしたポケモンはこん棒を三度振り上げて……

 「まだ早い!止めてくれベル!」

 仮面を地面に放り、アズマは業を煮やして飛び出そうとカタカタ揺れだしたモンスターボールを強く抑えた

 

 『ぽに!ぽにお!』

 と、こん棒は消え、ポケモンは喜んだように跳び跳ねて地面に落ちた仮面を拾い上げる

 「……こいつが欲しかったのか?」

 お土産の仮面だ。欲しそうに見上げられたらあげても良かったんだけどとアズマはポケモンの方を見る

 まさか襲ってまで欲しがるなんて……と見守っていると、一瞬笑顔になったのに、仮面をじっと眺めたポケモンはすぐ俯いてしまった

 

 「……あげるよ、大丈夫」

 痛みは残る手を動かし、アズマはポケモンの手から取った仮面を顔に被せてやる。けれど、ポケモンはそのまま座り込んで完全にしょげしてしまっていた

 

 見れば、体も傷だらけ。アズマはならばとバッグを漁り、スプレー式の傷薬と棒付きオボン飴を取り出す。誰かに傷つけられて気が立っていて、それで仮面を欲しがった時に攻撃的になったなら、傷が癒えれば……

 『(終わりましたの?)』

 そうして、バッグからひょこっと顔を出すディアンシー

 ちらりとそちらを見た碧のポケモンは、更に深く俯く

 『……ぽに』

 そして、膝を折って先にオボン飴を差し出すアズマの額を拭うと、ちらりと二回ほど飴の棒を見ては目線を逸らすととぼとぼとした足取りでキタカミセンターの方へと歩き出した

 

 「あ、どうしたんだ!?」

 『……がお……』

 思わず追いかけようとするアズマだが、痛みに顔をしかめて少しの間立ち止まる。その間に、自然に紛れて緑色のポケモンの姿は何処かへと消えてしまった




ちなみに、オーガポンの名誉のために言っておくと、アズマ君襲撃は勘違いによるものです。ダークオーラ纏っていて、かつディアンシーを連れていたのでお面の力に近いオーラを持つ誰そ彼色の怖いオーラ持ちでお土産のお面を持つアズマ君を、碧の面を強奪した犯人一味と勘違いして、碧の面を取り戻そうと襲ってきた。
が、無関係の人を襲ったと気が付いてショポンしてしまったという訳です。

ちなみに、今作の個体の好物は昔お祭りに行く度に貰ったりんご飴です。だから形状似たオボン飴に反応しただけで、アズマ君がオーガポンの好物を沢山買い込む動機です。その他の深い意味はありません。

スグリ君がびみょーに役に立たないのですが、キタカミ編での味方キャラは?(チナちゃんは今回のボスのミライドンを倒せちゃうので出禁です)

  • とろぼーねこはんたい!イガレッカ!
  • 運命かなと現れたN
  • 道に迷ったダンデ
  • 誰じゃろな?ナンジャモです!
  • マスコットの座はヨなのである!
  • スグリ君(覚醒)
  • 今はお面屋じゃが昔はのぅ……
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